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運輸
 
【発明の名称】ワイパー持ち上げ装置
【出願人】
【識別番号】599036266
【氏名又は名称】遠藤 正友
【住所又は居所】山形県山形市城西町五丁目24番地の3
【代理人】
【識別番号】100085589
【弁理士】
【氏名又は名称】桑原 史生
【発明者】
【氏名】遠藤 正友
【住所又は居所】山形県山形市城西町五丁目24番地の3
【要約】
【課題】機械的な動きのみで設計された新規構成で実用性の高いワイパー持ち上げ装置を提供する。
【解決手段】ワイパーアーム(15)と略平行に延長するメインシャフト(21)と、メインシャフトに沿って移動可能に設けられる第一移動リング(27)および第二移動リング(28)と、その一端(22a)がワイパーアームのスライド窓(19)内を移動可能且つ回転可能に連結されると共に、その他端(22b)が第一移動リングに回転可能に連結される第一持ち上げアーム(22)と、車室内からの操作に応答して第一移動リングを第二移動リングに対して移動させる第一ワイヤー(31)および第二ワイヤー(32)とを有する。第一移動リングの移動により、第一持ち上げアームがメインシャフトから立ち上がり、その一端がスライド窓内を移動しながらワイパーアームを持ち上げるように動作する。
【選択図】図2
選択図
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイパー装置(10)においてワイパーアーム(15)の先端に連結されたワイパーブレード(17)をガラス面(18)から離した状態に持ち上げて該状態を維持するためのワイパー持ち上げ装置(20)であって、
ワイパー装置(10)の任意箇所に固定されてワイパーアーム(15)と略平行に延長するメインシャフト(21)と、
メインシャフト(21)に沿って移動可能に設けられる第一移動リング(27)および第二移動リング(28)と、
その一端(22a)がワイパーアーム(15)のスライド窓(19)内を移動可能且つ回転可能に連結されると共に、その他端(22b)が第一移動リング(27)に回転可能に連結される第一持ち上げアーム(22)と、
車室内からの操作に応答して第一移動リング(27)を第二移動リング(28)に対して移動させる駆動手段とを有してなり、
第一移動リング(27)の前記移動により、第一持ち上げアーム(22)がメインシャフト(21)から立ち上がり、その一端(22a)がスライド窓(19)内を移動しながらワイパーアーム(15)を持ち上げるように動作することを特徴とするワイパー持ち上げ装置(20)。
【請求項2】
前記駆動手段が、第一ワイヤー(31)および第二ワイヤー(32)を有してなることを特徴とする、請求項1記載のワイパー持ち上げ装置(20)。
【請求項3】
前記第一ワイヤー(31)は第一プーリー(33)に掛け回され、その一端は車体側に連結され、その他端はメインシャフト(21)の内部を通り、該メインシャフトの先端に設けた回転ころ(51)で折り返して前記第一移動リング(27)に係止されており、前記第二ワイヤー(32)は第二プーリー(34)に掛け回され、その一端は車体側に連結され、その他端はメインシャフト(21)の内部を通って前記第一移動リング(27)に係止されていることを特徴とする、請求項2記載のワイパー持ち上げ装置(20)。
【請求項4】
車室内からワイパーを持ち上げるべき操作が行われたときは前記第一ワイヤー(31)の前記車体側一端が車体側に引っ張られ、車室内からワイパー持ち上げ状態を解除すべき操作が行われたときは前記第二ワイヤー(32)の前記車体側一端が車体側に引っ張られるものであって、それぞれの場合において第一ワイヤー(31)および第二ワイヤー(32)が逆方向に移動することを防止するリバーシブルラチェット機構部(26)が設けられることを特徴とする、請求項3記載のワイパー持ち上げ装置(20)。
【請求項5】
前記第一移動リング(27)と前記第二移動リング(28)の間に、これら移動リングを互いに引き離す方向に移動付勢する押しバネ(30)が設けられることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか記載のワイパー持ち上げ装置(20)。
【請求項6】
前記ワイパーアーム(15)の任意箇所に取付金具(50)を介して後付けされることを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか記載のワイパー持ち上げ装置(20)。
【請求項7】
前記駆動手段がパーキングブレーキのON/OFFに連動して動作することを特徴とする、請求項1ないし6のいずれか記載のワイパー持ち上げ装置(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のフロントガラスなどに装着されるワイパーのワイパーブレードをワイパー動作不要時に車室内からの操作によりガラス面から持ち上げるワイパー持ち上げ装置
に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のフロントガラスなどに装着されるワイパーは、公知のように、車室内からON/OFF操作可能なワイパースイッチと、ワイパースイッチをONにしたときに低速で回転駆動されるワイパーモーターと、ワイパーモーターの出力軸に連結されるリンクアームと、リンクアームの先端に連結されてウインドシールドガラス(以下、単に「ガラス」という。)の下方に配置されるピボットと、ピボットの先端に連結されるワイパーアームと、このワイパーアームの先端部に着脱可能に装着されるワイパーブレードと、を有して構成される。ワイパースイッチがONにされると、ワイパーモーターの回転がリンクアームおよびピボットを介してワイパーアームの左右に振れる動きに変換され、ワイパーブレードのゴムがガラス面の略扇状領域に接触しながら該領域に付着した水滴などを拭き取るように動作する。
【0003】
このようにワイパーが動作することにより、ガラス面に薄く均一な水の膜を形成し、光の屈折を阻止してクリアな視界を確保することができるので、運転の安全性を高める上できわめて重要な役割を果たす。
【0004】
一方で、ワイパーは通常の状態においてワイパーブレードが比較的強い圧力でガラス面に常に押し付けられているため、夏季の高温時には、ガラス面から伝わる高温の熱や輻射熱などでワイパーゴムに亀裂やヒビが入るなどの損傷とヘタリが生じ、寿命を低下させる原因となる。また、冬季の寒冷地においてこのようにワイパーゴムがガラス面に圧接している状態に長時間放置されると、ワイパーゴムに付着した水分が凍結してガラス面に剥離不能に固着してしまい、ワイパーが稼働不能になる恐れがあり、また、積雪によるワイパーアームの曲がりなどが発生し、運転時の安全性が十分に確保されなくなる。また、このような状態でワイパースイッチをONにしてワイパーを作動させようとすると、ワイパーゴムに大きなダメージを与えたり、ワイパーモーターを焼き付かせてしまうなどの事態を招く恐れがある。また、ガラス面を清掃したいときなどにワイパーゴムがガラス面に圧接していると清掃の邪魔になり、作業性が損なわれる。
【0005】
ワイパーアームは、内蔵するバネの強い力に抗してガラス面から引き離す方向に手動で回動させることができるように構成されているので、上記のような事態が生ずることを回避するためには、運転手などが車室内から外に出て、ワイパーアームやワイパーブレードを手で持ち上げてガラス面から離した状態にして必要な作業を行えば良いが、特に外気がきわめて高温または低温であるときには心理的なハードルも高く面倒であると共に、自動車の発進を遅らせることになる。
【0006】
駐車時などに運転席にいながらワイパーブレードを持ち上げておくことができれば、ワイパーブレードの機能を保全すると共に長寿命化し、特に、寒冷地において凍結を防止して運転時の視野を確保することができ、きわめて有用であり実用性が高い。
【0007】
特許文献1に記載されるワイパーアーム昇降装置によれば、ワイパーブレードが装着される箇所の近くにおいて、ワイパーアームに、室内からON/OFF操作される小型直流モーターにより昇降可能なプッシュロッドが取り付けられている。プッシュロッドは常時は縮小していてワイパーゴムがガラス面に圧接する状態を確保するが、室内からの操作によりモーターを駆動させるとプッシュロッドが伸長し、ワイパーアームをガラス面から離して、ワイパーゴムをガラス面から非接触に維持することができる。このようにして、車室内から外に出て持ち上げ作業を行わなくても、車室内からの操作によって持ち上げ作業を実行することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】 特開2008−222193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1記載の従来技術によれば、モーターおよびこれにより昇降駆動されるプッシュロッドが室外に設定されるため、特に寒冷条件においては凍結などによって動作不良を来す恐れがある。寒冷条件での使用を考えると、モーターなどの電気部品を含む電気的設計は極力避け、機械的な動きのみで設計された装置構成とすることが好ましい。
【0010】
また、特許文献1記載の従来技術によれば、ワイパーアームないしワイパーゴムを持ち上げてガラス面から離した状態に維持しているときに、プッシュロッドの下端がガラス面に常に接触している。すなわち、ガラス面の全面が開放されていないので、ガラス面の清掃時に邪魔になり、作業性が悪い。また、プッシュロットの下端にはガラスを傷付けない素材の当たり面を設けるものとしている(段落0007)が、これが常にガラス面に接触するので、高温条件下では該当たり面が劣化ないし損傷しやすく、また、寒冷条件下では該当たり面に付着した水分が凍結して、ワイパーゴムがガラス面に凍結する場合と同様の問題を生じる恐れが大きい。
【0011】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、機械的な動作のみで設計された新規構成で実用性の高いワイパー持ち上げ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題を解決するため、請求項1に係る本発明は、ワイパー装置(10)においてワイパーアーム(15)の先端に連結されたワイパーブレード(17)をガラス面(18)から離した状態に持ち上げて該状態を維持するためのワイパー持ち上げ装置(20)であって、ワイパー装置(10)の任意箇所に固定されてワイパーアーム(15)と略平行に延長するメインシャフト(21)と、メインシャフト(21)に沿って移動可能に設けられる第一移動リング(27)および第二移動リング(28)と、その一端(22a)がワイパーアーム(15)のスライド窓(19)内を移動可能且つ回転可能に連結されると共に、その他端(22b)が第一移動リング(27)に回転可能に連結される第一持ち上げアーム(22)と、車室内からの操作に応答して第一移動リング(27)を第二移動リング(28)に対して移動させる駆動手段とを有してなり、第一移動リング(27)の前記移動により、第一持ち上げアーム(22)がメインシャフト(21)から立ち上がり、その一端(22a)がスライド窓(19)内を移動しながらワイパーアーム(15)を持ち上げるように動作することを特徴とする。
【0013】
請求項2に係る本発明は、前記駆動手段が、第一ワイヤー(31)および第二ワイヤー(32)を有してなることを特徴とする、請求項1記載のワイパー持ち上げ装置(20)である。
【0014】
請求項3に係る本発明は、前記第一ワイヤー(31)は第一プーリー(33)に掛け回され、その一端は車体側に連結され、その他端はメインシャフト(21)の内部を通り、該メインシャフトの先端に設けた回転ころ(51)で折り返して前記第一移動リング(27)に係止されており、前記第二ワイヤー(32)は第二プーリー(34)に掛け回され、その一端は車体側に連結され、その他端はメインシャフト(21)の内部を通って前記第一移動リング(27)に係止されていることを特徴とする、請求項2記載のワイパー持ち上げ装置(20)である。
【0015】
請求項4に係る本発明は、車室内からワイパーを持ち上げるべき操作が行われたときは前記第一ワイヤー(31)の前記車体側一端が車体側に引っ張られ、車室内からワイパー持ち上げ状態を解除すべき操作が行われたときは前記第二ワイヤー(32)の前記車体側一端が車体側に引っ張られるものであって、それぞれの場合において第一ワイヤー(31)および第二ワイヤー(32)が逆方向に移動することを防止するリバーシブルラチェット機構部(26)が設けられることを特徴とする、請求項3記載のワイパー持ち上げ装置(20)である。
【0016】
請求項5に係る本発明は、前記第一移動リング(27)と前記第二移動リング(28)の間に、これら移動リングを互いに引き離す方向に移動付勢する押しバネ(30)が設けられることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか記載のワイパー持ち上げ装置(20)である。
【0017】
請求項6に係る本発明は、前記ワイパーアーム(15)の任意箇所に取付金具(50)を介して後付けされることを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか記載のワイパー持ち上げ装置(20)である。
【0018】
請求項7に係る本発明は、前記スライド窓(19)が前記取付金具(50)に形成されることを特徴とする、請求項6記載のワイパー持ち上げ装置(20)である。
【0019】
請求項8に係る発明は、前記駆動手段がパーキングブレーキのON/OFFに連動して動作することを特徴とする、請求項1ないし7のいずれか記載のワイパー持ち上げ装置(20)である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、車室内からの操作に応答して第一移動リングが第二移動リングに対して移動することにより、第一持ち上げアームがメインシャフトから立ち上がり、その一端がワイパーアームのスライド窓内を移動しながらワイパーアームを持ち上げるように動作する。これにより、駐車時などに運転席にいながらワイパーブレードを持ち上げておくことができ、ワイパーブレードの機能を保全すると共に長寿命化し、特に、寒冷地において凍結を防止して運転時の視野を確保することができるので、きわめて有用であり実用性が高い。本発明によりワイパーが持ち上げられた状態においては、いかなる部品や部分もガラス面とは非接触に離れて保持されるので、高温条件下における接触部の劣化ないし損傷の懸念がなく、また、寒冷条件下における付着水分の凍結などの問題を生ずることがない。さらに、車室外に設けられる装置構成は機械的設計のみであって電気的設計を含まないので、特に寒冷条件での使用において実用性・信頼性が高い。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、車室内からワイパーを持ち上げるべき操作が行われたときに車体側に引っ張られる第一ワイヤーにより第一移動リングを第二移動リングから引き離す方向に移動させ、車室内からワイパー持ち上げ状態を解除すべき操作が行われたときに車体側に引っ張られる第二ワイヤーにより第一移動リングを第二移動リングに近付ける方向に移動させる。このように第一ワイヤーと第二ワイヤーを駆動手段として第一移動リングを移動させることにより、機械的でシンプルな装置構成を実現している。また、第一移動リングと第二移動リングとの間に、これら移動リングを互いに引き離す方向に移動付勢する押しバネを設けたことにより、ワイパーを常態から持ち上げるときの動作および持ち上げ位置から常態に戻すときの動作をスムーズにしている。
【0022】
本発明のワイパー持ち上げ装置は、既存のワイパーアームに対して取付金具を介して後付けすることができる。取付金具は、ワイパーアームに既設または新設の穴を利用してワイ
パーアームに固定することができるので、既存のワイパーアームに何らの加工も必要なしに、あるいはごく簡単な加工手間のみで、本発明のワイパー持ち上げ装置を後付けすることができ、加工手間およびコスト面で有利である。
【0023】
本発明のワイパー持ち上げ装置は車室内からの所定の操作に応答しで動作するが、一実施形態においては、車両を駐車させた後にパーキングブレーキを踏み込む操作(または車両によってはパーキングブレーキレバーを引き上げたり、パーキングブレーキスイッチを押したりする操作)が行われたときに、これを検知してワイパーアームを自動的に持ち上げるようにし、パーキングブレーキを解除する操作が行われたときに、これを検知して、持ち上げ位置にあるワイパーアームを自動的に戻すようにする。このようにパーキングブレーキのON/OFFに連動して本発明のワイパー持ち上げ装置を自動的に動作させるようにすれば、運転者に対してワイパーアームの持ち上げ/解除のための操作を特別に意識させることなく、効率的な装置稼働を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明によるワイパー持ち上げ装置を自動車のフロントガラスに装着されたワイパー装置に適用した実施形態を示す概略構成図である。図1にはワイパー持ち上げ装置が不作動の状態が示されており、ワイパーブレードはフロントガラスの外表面に圧接している。
【図2】図1の構成においてワイパー持ち上げ装置が作動した状態を示す概略構成図である。この状態では、ワイパーアームがベースから起立し、ワイパーブレードがフロントガラスの外表面から離れた位置に非接触に維持される。
【図3】このワイパー持ち上げ装置の持ち上げ機構部を拡大して示す詳細図である。
【図4】このワイパー持ち上げ装置のリバーシブルラチェットストップ機構部を拡大して示す平面図である。
【図5】図4中X−X切断面による断面図である。
【図6】図4中Y−Y切断面による断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、添付図を参照して、本発明によるワイパー持ち上げ装置を自動車のフロントガラスに装着されたワイパー装置に適用した実施形態について詳細に説明する。ワイパー装置10は、車室内からのワイパースイッチ(図示せず)操作によりONされることにより回転駆動されるワイパーモーター(図示せず)によりリンクアーム(図示せず)を介して軸11を中心に所定角度範囲内を往復回動するピボット12と、ピボット12の先端近くから軸11に対して略直角方向に延長するように一体形成されたピボットアーム13と、ピボットアーム13の先端に連結されてピボット12およびピボットアーム13と共に回動すると共に軸14を中心に所定角度範囲内において回転可能(起伏可能)に設けられるワイパーアーム15と、ワイパーアーム15の先端部に押さえ金具16を介して着脱可能に装着されるワイパーブレード17と、を備えている。このようなワイパー装置10自体の構成は既述した従来技術と同様である。
【0026】
ワイパー装置10には、本発明の一実施形態によるワイパー持ち上げ装置20が取り付けられている。このワイパー持ち上げ装置20は、メインシャフト21と、第一持ち上げアーム22と、第二持ち上げアーム23と、持ち上げ補助アーム24と、持ち上げ機構部25と、リバーシブルラチェットストップ機構部26とを有して構成されている。ワイパー持ち上げ装置20の主要部は、ワイパー装置10の下方(ピボットアーム12/ワイパーアーム15とフロントガラス18との間の空間領域)に配置され、たとえば、メインシャフト21の基端部を軸14やピボット12に固定するとともに、リバーシブルラチェットストップ機構部26をピボットアーム12の下面に固定し、あるいは外気温の影響を極力排除するために車室内の適所に固定することによって配置可能である。
【0027】
第一持ち上げアーム22は、ワイパーアーム15の先端近辺に後付けで固定した取付金具50に一体に形成したスライド窓19の長さ範囲内を移動可能且つ回転可能に連結される先端軸22aと、持ち上げ機構部25の第一移動リング27に回転可能に連結される基端軸22bとを有する。第二持ち上げアーム23は、第一持ち上げアーム22の長さ方向略中間において側面を貫通するスライド窓29の長さ範囲内を移動可能且つ回転可能に連結される先端軸23aと、メインシャフト21の先端近くに回転可能に連結される基端軸23bとを有する。持ち上げ補助アーム24は、第一持ち上げアーム22の基端軸22bに比較的近い位置で第一持ち上げアーム22に回転可能に連結される先端軸24aと、持ち上げ機構部25の第二移動リング28に回転可能に連結される基端軸24bとを有する。
【0028】
運転中などワイパー装置10を通常に作動させる必要がある場合は、ワイパー持ち上げ装置20は図1に示す不作動状態に維持され、第一持ち上げアーム22、第二持ち上げアーム23および持ち上げ補助アーム24はいずれも折り畳まれた状態であり、メインシャフト21と共に、ピボットアーム13およびワイパーアーム15の下方(フロントガラス18側)に沿って延長し、運転席からの視界を邪魔しないように実質的に格納されている。この状態から、車室内側から所定の操作が行われると、持ち上げ機構部25およびリバーシブルラチェットストップ機構部26が動作して第一持ち上げアーム22、第二持ち上げアーム23および持ち上げ補助アーム24を立ち上げ、これによりワイパーアーム15をピボットアーム13との連結軸14を中心として図において時計方向に回転させて、図2に示す作動位置が得られる。これによりワイパーブレード17をフロントガラス18から離した状態に維持することができる。
【0029】
図1の不作動状態から図2の作動状態へと移行させる際に重要な枠割を果たす持ち上げ機構部25の詳細について、図3を参照して詳述する。持ち上げ機構部25は、第一移動リング27および第二移動リング28を有する。第一移動リング27および第二移動リング28はメインシャフト21に対して軸方向に移動可能に外装され、これらの間に配置された押しバネ30により互いに引き離す方向に移動付勢されている。上述したように、第一移動リング27には第一持ち上げアーム22の基端軸22bが回転可能に連結され、第二移動リング28には持ち上げ補助アーム24の基端軸24bが回転可能に連結されている。
【0030】
メインシャフト21は中空パイプ状であり、その内部を第一ワイヤー31および第二ワイヤー32が通っている。第一ワイヤー31(図3において太実線で示されている)は、リバーシブルラチェットストップ機構部26の第一プーリー33に掛け回され、その一端(図4において第一プーリー33の右方向に延長する先の端部、以下「始端」という。)はたとえばパーキングブレーキONに連動して引っ張られるように車体側に連結され、他端(図4において第一プーリー33の左方向に延長する先の端部、以下「先端」という。)はメインシャフト21の内部を通り、メインシャフト21の先端に設けた回転ころ51で折り返して、第一移動リング27に設けた係止ピン48に係止されている。一方、第二ワイヤー32(図3において太点線で示されている)は、リバーシブルラチェットストップ機構部26の第二プーリー34に掛け回され、その一端(図4において第二プーリー34の右方向に延長する先の端部、以下「始端」という。)はたとえばパーキングブレーキOFFに連動して引っ張られるように車体側に連結され、他端(図4において第二プーリー34の左方向に延長する先の端部、以下「先端」という。)は、第一移動リング27に設けた係止ピン48に直接係止されている。
【0031】
次に、持ち上げ機構部25と共に、図1の不作動状態から図2の作動状態へと移行させる際に重要な役割を果たすリバーシブルラチェットストップ機構部26の詳細について、図4〜図6を参照して詳述する。
【0032】
リバーシブルラチェットストップ機構部26は、第一ワイヤー31が巻き回された第一プーリー33と、第二ワイヤー32が巻き回された第二プーリー34と、両端に第一プーリー33および第二プーリー34を固着してこれらプーリー33,34の共通回転軸となる軸35と、軸35に固着されたラチェット歯車36,37と、ラチェット歯車36の回転方向を規制するストッパー38,39と、ストッパー38,39をラチェット歯車36と噛み合う方向に付勢するバネ40,41と、ストッパー38,39の一方をバネ40またはバネ41の付勢に抗してラチェット歯車36から離すように働くカム42と、ラチェット歯車37と噛み合ってラチェット歯車37の回転につれて揺動することによりカム42をカム軸43を中心としていずれかの方向に回転させるように働くカム制動アーム44とを有する。カム制動アーム44は、略円弧状の先端面を有し、該先端面にはラチェット歯車37と噛み合う歯45が形成されている。カム制動アーム44は、カム押さえビス49,49によりねじれ状態で設けられるバネ46により常にニュートラル位置(図6)に向けて付勢されている。ラチェット歯車36およびストッパー38,39はケース47aに収容され、ラチェット歯車37およびカム制動聖堂アーム44はケース47bに収容されており、これらケース47a,47bの側壁を貫通して延長する軸35のスムーズな回転を確保するためにベアリング53,53…が設けられている。
【0033】
リバーシブルラチェットストップ機構部26は、パーキングブレーキのON/OFFに連動して、または、運転席などの車室内側からのスイッチ操作により動作して、第一移動リング27を移動させる。たとえば、駐車するためにパーキングブレーキを踏み込む(パーキングブレーキON)と、第一ワイヤー31が図4右方向(矢印方向)に引っ張られ、第一プーリー33が図4において時計回りに回転する。この場合は、第一プーリー33が動力源として働いて第一ワイヤー31を所定方向(図3において回転ころ51で反時計回りに折り返す方向)に移動させ、第二プーリー34が従車として働いて第二ワイヤー32を第一ワイヤー31と共に移動させる。パーキングブレーキを解除する(パーキングブレーキOFF)と、第二ワイヤー32が図4右方向に引っ張られ、第二プーリー34が図4において反時計回りに回転する。この場合は、第二プーリー34が動力源として働いて第二ワイヤー32を所定方向(図3および図4において右方向)に移動させ、第一プーリー33が従車として働いて第一ワイヤー31を第二ワイヤー32と共に移動させる。
【0034】
すなわち、既述したように第一ワイヤー31の先端側は、メインシャフト21の内部を通り、メインシャフト21の先端に設けた回転ころ51で折り返して、第一移動リング27に設けた係止ピン48に係止されているので、パーキングブレーキONにより第一ワイヤー31が図4右方向に移動すると、第一移動リング27は第一ワイヤー31に引っ張られて、図1および図2において左方向に移動する。同時に、同じく第一移動リング27に設けた係止ピン48に形成されている第二ワイヤー32も同方向に移動し、第二プーリー34が図4において時計回りに回転する。パーキングブレーキOFFにより第二ワイヤー32が図4右方向に移動すると、第二プーリー34が図4において反時計回りに回転するので、第一移動リング27が図1および図2において右方向に移動し、これに引っ張られて第一ワイヤー31も同方向に移動し、第一プーリー31が図4において反時計回りに回転する。
【0035】
パーキングブレーキONのときに第一ワイヤー31が図4右方向に引っ張られ、これにより第一プーリー33が図5において時計回りに回転すると、軸35に固着されている第二プーリー34およびラチェット歯車36,37も同方向に回転する。ラチェット歯車37が図6において時計回りに回転すると、これと噛み合っているカム制動アーム44がバネ46の付勢に抗して反対方向(図6において反時計回り)に回転するので、回転軸43に固定されたカム42も同方向に回転する。これにより、カム42の突起部がストッパー38に接触してストッパー38をバネ40の付勢に抗してラチェット歯車36から引き離す
ので、歯車36の時計回りの回転を妨げない。一方、ストッパー39はバネ41の付勢を受けて図5に示す回転角度位置に維持されるので、その先端がラチェット歯車36に係止されて、その反時計回りの回転を阻止する。このようにして、第一ワイヤー31が右方向に引っ張られているときは、リバーシブルラチェットストップ機構部26は、歯車36の時計回りの回転のみを許容するように働く。
【0036】
既述したように第一ワイヤー31の先端はメインシャフト21の内部を通ってその先端の回転ころ51で折り返して第一移動リング27上の係止ピン48に連結されているので、第一ワイヤー31が右方向に引っ張られると、第一移動リング27はメインシャフト21の外周に沿って図1において左方向に移動し、これによりコイルバネ30が伸びて、第一移動リング27と第二移動リング28の間が開き、持ち上げ補助アーム24が第一持ち上げアーム22を持ち上げるように働く(図2,図3)。このワイパーアーム持ち上げ時の動作はジャンプ傘を開くときの動作と近似しており、持ち上げ補助アーム24はジャンプ傘における受け骨と同様の役割を果たして第一持ち上げアーム22の回動をアシストする。
【0037】
図2では、第二持ち上げアーム23の先端軸23aが第一持ち上げアーム22のスライド窓29の最先端側に位置し、また、第一持ち上げアーム22の先端軸22aがスライド窓19の最先端側に位置しており、このときのワイパーアーム15の位置が本装置によって実現する最大の持ち上げ位置(角度)である。第一ワイヤー31を右方向(図4)に引っ張る長さを調整可能とする(たとえば運転席側からの操作により持ち上げ角度を数段階に設定可能とし、それに応じて第一ワイヤー31の引っ張り長さを数段階に調整可能とする)ことにより、ワイパーアーム15の持ち上げ位置を、図1に示す不作動状態の位置と図2に示す最大持ち上げ位置との間で任意に設定することができる。このようにして、車室内からの操作によって、ワイパーブレード17のゴムがフロントガラス18に接触しない状態に維持することができ、寒冷地において長時間駐停車する際の凍結を防止して運転時の視野を確保し、あるいは、フロントガラス18の清掃時にガラス全面を開放して作業をしやすくすることができる。
【0038】
図2の状態からワイパーアーム15を図1の状態に戻すときは、第一ワイヤー31と共に第一移動リング27上の係止ピン48に繋がれている第二ワイヤー32を右方向(図4)に引っ張ることにより、上記とは反対の動作を実行させる。たとえば、パーキングブレーキが解除されたときに第二ワイヤー32が右方向に引っ張られるように設計することにより、移動リング27,28間を拘束している持ち上げ補助アーム24が、前記とは逆の動作をして、第一移動リング27と第二移動リング28間のコイルバネ30を縮ませながら、第一持ち上げアーム22が徐々に閉じていって、最終的に図1の状態に戻る。ワイパーアーム15には強力なバネが内蔵されていて、従来技術では手を添えてゆっくり戻さないとバネで一挙にワイパーアーム15が戻ってしまってガラス面を傷付ける恐れがあり、また、ワイパーブレード17交換時に誤ってワイパーアーム15を引き戻してしまうとガラス面に衝突してガラス面を傷付ける恐れがあったが、本装置によれば、第一持ち上げアーム22を中心として、ワイパーアーム15を徐々にゆっくりとガラス面に近付けていくので、このような不利欠点を生ずることがない。
【0039】
また、リバーシブルラチェットストップ機構部26が設けられていることにより、ワイパー持ち上げ動作時には、歯車36の時計回り(図5)回転のみが許容されるため、第一ワイヤー31は右方向(図4)に引っ張られるだけで逆方向には移動せず、ワイパー戻し動作時には、歯車36の反時計回り(図5)回転のみが許容されるため、第二ワイヤー32は右方向(図4)に引っ張られるだけで逆方向には移動しない。また、車外に露出する構成部品はすべて機械的に設計され、電気的設計が一切排除されている。したがって、寒冷条件下においても各動作が確実に実行され、安定性および信頼性の高い装置となる。
【0040】
この実施形態では、第一持ち上げアーム22の先端軸22aをスライド移動可能に収容するスライド窓19が、ワイパーアーム15とは別部材である取付金具50に形成され、この取付金具50をワイパーアーム15に着脱可能に取り付けた構成が採用されている。一例として、取付金具50はワイパーアーム15の外周面を取り囲む(または内接する)ような形状を有し、ワイパーアーム15にある既設の穴(または新設した穴)を利用して取付ネジ52でワイパーアーム15の下側に取り付けるような構成を採用することができる。このような構成とすることにより、既存のワイパーアーム15には何らの加工も必要なしに、あるいはごく簡単な加工手間のみで、本発明のワイパー持ち上げ装置20を後付けすることができる。
【0041】
以上に本発明の一実施形態によるワイパー持ち上げ装置の構成および作用について詳述したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において多種多様に変形ないし変更可能である。
【符号の説明】
【0042】
10 ワイパー装置
11 ピボットの回転軸
12 ピボット
13 ピボットアーム
14 ワイパーアームの回転軸
15 ワイパーアーム
16 押さえ金具
17 ワイパーブレード
18 フロントガラス
19 スライド窓
20 ワイパー持ち上げ装置
21 メインシャフト
22 第一持ち上げアーム
22a 先端軸
22b 基端軸
23 第二持ち上げアーム
23a 先端軸
23b 基端軸
24 持ち上げ補助アーム
25 持ち上げ機構部
26 リバーシブルラチェットストップ機構部
27 第一移動リング
28 第二移動リング
29 スライド窓
30 押しバネ
31 第一ワイヤー(駆動手段)
32 第二ワイヤー(駆動手段)
33 第一プーリー
34 第二プーリー
35 第一/第二プーリーの共通回転軸
36 歯車
37 歯車
38 ストッパー
39 ストッパー
40 バネ
41 バネ
42 カム
43 回転軸
44 カム制動アーム
45 カム歯
46 バネ
47 ケース
48 ワイヤー係止ピン
49 カム押さえビス
50 取付金具
51 回転ころ
52 取付ネジ
53 ベアリング
【図1】
図1
【図2】
図2
【図3】
図3
【図4】
図4
【図5】
図5 
【図6】
図6 
発明者からのメッセージ

ワイパー装置は、常に、運転者等の視野と安全を確保できるよう、最良の状態で作動させる必要がある。
寒冷・降雪地における運転者は、ブレード部とガラス面との凍結、降雪によるアーム部の曲がり等の損傷・トラブルの防護策として、駐車時等に下車して、ブレード部を手で上げ下げする操作が通例となっている。
近年の高温時にも、ガラス面とブレード部の固着、黄砂による被害回避策としてこの操作が不可欠となっている。
しかし、これらの対策も、天候や煩雑さから、操作を敬遠したり、その後のトラブルを気に掛けつつ放置することが多かった。この操作を運転席に居て容易に出来ることは、心理的な負担を減らし、トラブル被害を避けると共に、ブレード部の老化やヘタリ・亀裂の防護策としても極めて有効である。
本機構は、従来のワイパー装置とガラス面との空間に、アーム裏面に固定する細いパイプを這わせ、その中を通すワイヤーとリンク機構で作動する装置である。軽量で本体の動作に負担を掛けず、簡易な機構でかつ四季を通し故障が考えられない機構である。新開発のリヴァーシブルラチェット機能を介したワイヤーで、持上げ角をどの位置にも保持できる極めて有用な装置である。
As for installing a wiper, it must be ensured to work in the best condition so that it guarantees the security and the eye sight of the driver at any time. The drivers in a cold or snow fall area often have troubles for their car, such as frozen parts of blade and glass sides, damage to the arm part due to heavy snowfall. In order to prevent those troubles, when they park their car, they get off the car and manipulate to arrange the position of blade part upwards and downwards by hands. In recent hot days, it is necessary for them to do the manipulation mentioned above as the measure for preventing harm caused by adherence between glass side and blade side due to the heat and yellow sand. However, as the matter of fact, those measures tend to be ignored or not done completely because of weather and reluctance though they are aware of the possible problematic outcomes by doing so. Being able to do those procedures easily on the driver’s seat reduces mental burdens and can prevent troubles and also can be extremely effective as protecting measures for deterioration and bend of the blade parts and cracks. Between a conventional wiper device and glass surface, install a thin pipe on the back side of the arm to be fixed. The device works due to the wire that runs inside of the pipe and the link device. The light body will not cause much load on its body while being activated, and the simply designed device can guarantee its durability through a whole season. This device is quite practical for the wire with a newly designed reversible ratchet being able to sustain at any angle and location while lifted.
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