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【発明の名称】プレス用金型及びパンチプレス機用ダイ金型 【出願人】 【識別番号】503415851 【氏名又は名称】椛沢 稔 【住所又は居所】神奈川県横浜市栄区桂台南2丁目26番5号 【代理人】 【弁理士】 【識別番号】100080816 【氏名又は名称】加藤 朝道 【発明者】 【氏名】椛沢 稔 【住所又は居所】神奈川県横浜市栄区桂台南2丁目26番5号 【要約】 【課題】 材質や板厚に拘りなく良好な加工精度を確保でき、耐久性に優れるプレス成型用金型及びダイ金型を提供する。 【解決手段】 ダイ金型の打ち抜き孔2を囲繞するよう配設した濠状の溝3と、打ち抜き孔2周縁から前記濠状の溝までの区間に延在する貫通スリット4a、4b、4c、4dと、を形成する。タレットパンチプレス装置の打撃要素(ストライカー)により、プレス金型が押し下げられる剪断過程において、抜き荷重の大きさに応じて貫通スリット4a、4b、4c、4dが開き、溝3が狭められ、打ち抜き孔2周縁のダイ刃先部分5a、5b、5c、5dが拡大する。 【特許請求の範囲】 【請求項1】 雌型の凹部に沿って、該凹部の端から所定の距離を隔てて設けた非貫通の溝と、 前記凹部の端部から前記非貫通の溝に到る複数の貫通スリットとを含み、 前記非貫通の溝は、前記雌型の凹部と非貫通の溝と貫通スリットに挟まれた領域が少なくとも該凹部の反対側に撓むよう所定の深さを有すること、 を特徴とするプレス用金型。 【請求項2】 雌型の凹部に沿って、該凹部の端から所定の距離を隔てて設けた非貫通の溝と、 前記凹部の端部から前記非貫通の溝に到る複数の貫通スリットとを含み、 前記非貫通の溝は、前記雌型の凹部と非貫通の溝と貫通スリットに挟まれた領域が少なくとも該凹部の反対側に撓むよう所定の深さを有し、 前記非貫通の溝の外側部分が、プレス荷重に応じて撓む前記雌型の凹部と非貫通の溝と貫通スリットに挟まれた領域を支持すること、 を特徴とするプレス用金型。 【請求項3】 雌型の凹部周縁の領域を囲繞する非貫通の溝と、 前記凹部の端部から前記非貫通の溝に到る複数の貫通スリットとを含み、 前記非貫通の溝は、前記雌型の凹部と非貫通の溝と貫通スリットに挟まれた前記凹部周縁の領域が少なくとも外方に撓むよう所定の深さを有すること、 を特徴とするプレス用金型。 【請求項4】 雌型の凹部周縁の領域を囲繞する非貫通の溝と、 前記凹部の端部から前記非貫通の溝に到る複数の貫通スリットとを含み、 前記非貫通の溝は、前記雌型の凹部と非貫通の溝と貫通スリットに挟まれた前記凹部周縁の領域が少なくとも外方に撓むよう所定の深さを有し、 前記非貫通の溝の外周部は、プレス荷重に応じて撓む前記雌型の凹部と非貫通の溝と貫通スリットに挟まれた前記凹部周縁の領域を支持すること、 を特徴とするプレス用金型。 【請求項5】 前記凹部の形状は、コーナー部を有し、 前記凹部のコーナー部を起点として延在する前記貫通スリットを有すること、 を特徴とする請求項1乃至4いずれか一に記載のプレス用金型。 【請求項6】 請求項1乃至5いずれか一に記載のプレス用金型であって、 前記貫通スリットによって区切られる雌型の凹部と非貫通の溝と貫通スリットに挟まれた各領域が均等に撓むように、前記非貫通の溝又は貫通スリットを組み合わせたこと、 を特徴とするプレス用金型。 【請求項7】 ダイ金型の孔周縁のダイ刃先部分の外側に設けた非貫通の溝と、 前記ダイ金型の孔の端部から前記非貫通の溝に到る複数の貫通スリットとを備え、 前記溝は、少なくとも前記ダイ金型の孔と非貫通の溝と貫通スリットに挟まれた前記ダイ金型の孔周縁のダイ刃先部分が少なくとも前記ダイ金型の孔の反対側に撓むよう所定の深さを有すること、 を特徴とするパンチプレス機用ダイ金型。 【請求項8】 ダイ金型の孔周縁のダイ刃先部分の外側に設けた非貫通の溝と、 前記ダイ金型の孔の端部から前記非貫通の溝に到る複数の貫通スリットとを備え、 前記非貫通の溝は、少なくとも前記ダイ金型の孔と非貫通の溝と貫通スリットに挟まれた前記ダイ金型の孔周縁のダイ刃先部分が少なくとも前記ダイ金型の孔の反対側に撓むよう所定の深さを有し、 前記非貫通の溝の外側部分が、プレス荷重に応じて撓む前記ダイ刃先部分を支持すること、 を特徴とするパンチプレス機用ダイ金型。 【請求項9】 ダイ金型の孔周縁のダイ刃先部分を囲繞する非貫通の溝と、 前記ダイ金型の孔の端部から前記非貫通の溝に到る複数の貫通スリットとを備え、 前記非貫通の溝は、前記ダイ金型の孔と非貫通の溝と貫通スリットに挟まれた前記ダイ金型の孔周縁のダイ刃先部分が少なくとも外方に撓むよう所定の深さを有すること、 を特徴とするパンチプレス機用ダイ金型。 【請求項10】 ダイ金型の孔周縁のダイ刃先部分を囲繞する非貫通の溝と、 前記ダイ金型の孔の端部から前記非貫通の溝に到る複数の貫通スリットとを備え、 前記非貫通の溝は、前記ダイ金型の孔と非貫通の溝と貫通スリットに挟まれた前記ダイ金型の孔周縁のダイ刃先部分が少なくとも外方に撓むよう所定の深さを有し、 前記非貫通の溝の外周部は、プレス荷重に応じて撓む前記ダイ刃先部分を支持すること、 を特徴とするパンチプレス機用ダイ金型。 【請求項11】 前記ダイ金型の孔の形状は、コーナー部を有し、 前記ダイ金型の孔のコーナー部を起点として延在する前記貫通スリットを有すること、 を特徴とする請求項7乃至10いずれか一に記載のパンチプレス機用ダイ金型。 【請求項12】 請求項7乃至11いずれか一に記載のパンチプレス機用ダイ金型であって、 前記貫通スリットによって区切られる各ダイ刃先部分が均等に撓むように、前記非貫通の溝又は貫通スリットを組み合わせたこと、 を特徴とするパンチプレス機用ダイ金型。 【発明の詳細な説明】 【技術分野】 本発明は、プレス用金型及びパンチプレス機等に用いるパンチプレス用のダイ金型に関する。 【背景技術】 一般に、プレス加工においては、仕上がり品の形状、板材の材質、厚さ等に応じて設計した雄型と雌型とからなるプレス用金型が用いられ、また、タレットパンチプレス機を含む汎用のパンチプレス機による加工においては、加工形状、板材の材質、厚さ等に応じて選択する、パンチ金型及びダイ金型とが用いられている。図9は、パンチプレス用の従来のダイ金型を示した図である。一般に、クリアランスが過大である場合は、いわゆる抜きダレの過大、カエリ、ソリが生じる可能性があり、クリアランスが過小である場合は、抜き荷重が増大するため、パンチプレスの際に、クリアランス(パンチ金型の刃先径rと、ダイ金型の刃先径Rの寸法差(R−r)をいう)の管理が適切になされていることが要請される。そして、適切なクリアランスktは、製品の母材となる板材の板厚tに、板材の材質毎に決定するいわゆるクリアランス係数kを乗じて決定され、そのようなクリアランスを確保できるよう、パンチ金型と、ダイ金型とを選定することが望まれている。従って、例えば、特定の材質・板厚の板材に特定の形状の孔等を抜く作業を行っている場合において、次作業の板厚や材質が異なる場合や次作業のパンチの径が異なる場合は、ダイ金型を交換する必要が生じていた。 図10は、従来のタレットパンチプレス装置の正面図である。図10を参照すると、タレットパンチプレス装置10は、円盤状の上部タレット11、下部タレット12を、それぞれ相対向して回転自在に備えてなっている。上部タレット11は、その円周上に適当な間隔で、多数のパンチ金型を、上下動自在に搭載している。また、下部タレット12も同様に、その円周上に適当な間隔で、多数のダイ金型を搭載している。更に、タレットパンチプレス装置10は、クランク、油圧等で動作する、打撃要素(ストライカー)13を備え、所定の位置のパンチ金型を打撃可能となっている。タレットパンチプレス装置10は、更に、ワークの把持移動手段14を備えて、ワーク上の所定の位置を、打撃要素(ストライカー)の下に水平移動することが可能となっている。これらのタレットパンチプレスの動作は、予め作成されたプログラムを読み込み、実行する、数値制御(NC制御)装置20によって、数値制御される。以上のとおり、タレットパンチプレス装置は、数値制御によって、適切なパンチ金型と、ダイ金型を選択して、種々の仕様の製品を作りこむことが可能である。 こうした多数のダイ金型を収容しうるタレットパンチプレス装置10においても、タレットパンチプレス装置10に搭載できるダイ金型の数は、下部タレット12に設けられたダイホルダの数によって、制約を受けており、適当なダイ金型が、下部タレット12のダイホルダに納められていない場合には、ダイ金型自体を交換する必要がある。また、ダイ金型自体、磨耗するため、所定のヒット数毎に、金型の再研磨等のメインテナンスを行う必要がある。そこで、特開平9−141349号公報では、タレットパンチ装置に、ダイ交換装置を設けることで、ダイの交換を容易化することで解決している。 【特許文献1】 特開平9−141349号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 ところで、加工材の材質や板厚等に変更が生じた場合であっても、所望の品質を確保した上で、可用性に優れたプレス用金型が提供できれば、金型の修正等を行う必要が無くなり、コスト上有為である。また、パンチプレス機、タレットパンチプレス機を用いるパンチプレスの場面においても、上記した特開平9−141349号公報等に記載されたダイ交換装置等を用いるまでもなく、より少ない金型の数で、所望の品質を確保して、パンチプレス加工を行うことが可能である。本発明は、上記した各観点からなされたものであって、その目的とするところは、加工精度を保持した上で、加工材の材質・板厚に拘りなく使用でき、耐久性に優れるプレス用金型及びパンチプレス用ダイ金型を提供することにある。 また、本発明は併せて、コーナー部を有する雄型金型の劣化の一因となっていた雌型金型のコーナー部との干渉を解決し、コーナー部を有する抜き形状及びその他成型形状の加工に好ましく適用できるプレス用金型及びダイ金型を提供することをも目的とする。 【課題を解決するための手段】 前記課題を解決するための手段を提供する本発明の第1の視点によれば、雌型の凹部(抜き/成型用凹部)に沿って、該凹部の端から所定の距離を隔てて設けた非貫通の溝と、前記凹部の端部から前記溝に到る複数の貫通スリットとを含むこと、を特徴とするプレス用金型が提供される。前記非貫通の溝の深さは、プレスの際に、前記雌型の凹部と前記非貫通の溝と前記貫通スリットに挟まれた領域が少なくとも該凹部の反対側に撓む程度とする。この構成により、雌型の凹部周縁に柔軟性を与え、プレス荷重の大きさに応じて、前記貫通スリットが開き、前記非貫通の溝が狭められて、前記雌型の凹部の反対側に弾性変形するようにする。 また、本発明の第2の視点によれば、ダイ金型の孔周縁のダイ刃先部分の外側に設けた非貫通の溝と、前記ダイ金型の孔の端部から前記非貫通の溝に到る複数の貫通スリットとを備えたこと、を特徴とするパンチプレス機用ダイ金型が提供される。前記溝の深さは、少なくとも前記ダイ金型の孔と非貫通の溝と貫通スリットに挟まれたダイ刃先部分が少なくとも前記ダイ金型の孔の反対側に撓む程度とする。この構成により、ダイ刃先部分に柔軟性を与え、抜き荷重の大きさに応じて前記貫通スリットが開き、前記非貫通の溝が狭められて、前記ダイ刃先部分が前記大金型の孔の反対側に弾性変形するようにする。 また、本発明の第3の視点によれば、前記非貫通の溝を雌型の凹部又はダイ金型の孔に対して、濠状の配置とし、雌型の凹部周縁又はダイ刃先部分を囲繞するようにしたプレス用金型若しくは、パンチプレス機用ダイ金型が提供される。 また、前記溝の外側、外周部(外側の壁部分)が、打ち抜き等のプレス過程において、前記雌型の凹部周縁の領域又はダイ刃先部分を支持可能となるように、前記非貫通の溝の幅を、所定の幅に設定することが好ましい。 また、前記雌型の凹部の形状又はダイ金型の孔が、任意の角度のコーナー部(角部)を有する場合においては、上記した貫通スリットは、前記コーナー部を起点として、前記溝までの区間に、延在するよう配設されることが好ましい。 【発明の効果】 本発明によれば、一組のプレス用金型又は一つのダイ金型によって、クリアランスに制約されることなく、各種の板材材質・板厚に対応することが可能となる。また、位置ずれやクリアランス不足等に起因する、雄型・パンチ金型側の劣化及び雌型・ダイ金型の割れ等を防止し、耐久性を向上させることが可能となる。更に、汎用パンチプレス機においては、ダイ金型の交換頻度を著しく減少させることが可能である。また更に、プレス金型の雄型の押し出し部形状が任意の角度のコーナー(角)部を含む場合や、パンチ金型が正方形、矩形、或いは、六角形等の角形形状である場合等において、対応する雌型及びダイ金型の貫通スリットの起点を上記の通りにコーナー部に配した場合には、両者の干渉を回避し、雄型又はパンチ金型の劣化を防止し、一層耐久性を向上させることができる。 【発明を実施するための最良の形態】 続いて、本発明を実施するための最良の形態について説明する。本発明は、その好ましい最良の形態において、ダイ金型(図1の1)の打ち抜き孔(図1の2)を囲繞する濠状の溝(図1の3)を設け、前記打ち抜き孔の内側端から前記溝までの区間に複数の貫通スリット(図1の4a、4b、4c、4d)を設けて構成される。溝(図1の3)は、打ち抜き孔の形に応じて、同心、同型とし、ダイ刃先部分(図1の5a、5b、5c、5d)が撓む程度の深さで形成される。貫通スリット(図1の4a、4b、4c、4d)は、ダイ金型(図1の1)のダイ刃先部分が抜き荷重に応じて均一に拡大するよう、各位置に設けられ、例えば、打ち抜き孔(図1の2)の中心から放射状に延在するように配置することで、プレスの際に、プレス金型から附加される荷重に応じて、ダイ刃先部分(図1の5a、5b、5c、5d)が同心状に拡大するものとなる。このようにしてなるダイ金型によれば、ダイ刃先部分に柔軟性を具備するものとなっているため、板厚や材質に拘りなく、良好な精度で、打ち抜き加工を行うことが可能となる。また、従来大きなクリアランスを取ることが要請された厚板をプレス加工する場合や、クリアランス管理上からはクリアランスが過大である状態においても、適切な寸法精度を維持したままで、いわゆる抜きダレの過大、カエリ、ソリの発生を抑えることが可能となる。そして、上記構成よりなるダイ金型は、打ち抜き孔(図1の2)の形状や仕様が目視で確認することが困難なものであっても、その溝(図1の3)や貫通スリット(図1の4a、4b、4c、4d)の配置で、容易に、識別することが可能なものとなる。 【実施例1】 続いて、本発明の第1の実施例について、図面を参照して、詳細に説明する。図1(a)(b)は、それぞれ、径3.0mmの丸抜きを行うパンチプレス用ダイ金型1の一例を示した平面図と、正面図である。図1を参照すると、ダイス鋼よりなるダイ金型1には、両側で0.2mmのクリアランスが与えられた、円形の打ち抜き孔2が設けられるとともに、円形の打ち抜き孔2を囲繞する、円形の幅△rの溝3が設けられている。また、ダイ金型1の打ち抜き孔2の周縁から溝3にわたって、十字状に貫通スリット4a、4b、4c、4dが設けられ、円形の溝3の内側のダイ刃先部分5a、5b、5c、5dが、図1の(b)の矢印方向に撓むことが可能となっている。円形の溝3の内周は、例えば、ダイ刃先部分5a、5b、5c、5dの直径方向の幅として、3.0mmを取るのであれば、内径6.2mmの円形の溝となり、ダイ刃先部分5a、5b、5c、5dの撓み限界として、片側0.2mmを取るのであれば、溝3の幅△rは、0.2mmとする。また、溝3の深さは、抜き荷重に応じて、適当に、ダイ刃先部分5a、5b、5c、5dが撓み、かつ、所定の強度・耐用性が得られるように、決定される。図1の例では、ダイ刃先の鉛直方向の厚さの6割程度としてある。 例えば、冷間電気亜鉛めっき鋼板(SPC)のクリアランス係数を0.15とした場合、板厚2.0mmの場合は、0.3mmのクリアランスをとることが好ましく、板厚4.0mmの場合は、0.6mmのクリアランスをとることが好ましいとされている。被加工板材の板厚が所定のクリアランスを満足する個々のダイ金型を用いずとも、上記溝3、スリット4を設けた本発明に係るダイ金型1を共用して用いることが可能である。また、同様に、ステンレス鋼板のクリアランス係数を0.2とした場合、板厚2.0mmの場合は、0.4mmのクリアランスをとることが好ましいとされているが、上記溝3、スリット4a、4b、4c、4dを設けた本発明に係るダイ金型1を共用して用いることが可能である。そして、抜き荷重が過大となった場合であっても、ダイ刃先部分5a、5b、5c、5dは、溝3の外周部分に当接し、支持される構成となっているため、ダイ刃先部分が欠損する事態も有効に回避される。 また、本発明が、パンチ金型やダイ金型の位置ずれに対しても、有用であることを以下に説明する。本実施例のダイ刃先部分5a、5b、5c、5dは、柔軟に撓むことが可能であるため、例えば、図1、図11において、パンチ金型が、右上側にずれてしまっている場合、従来であれば、ダイ刃先部分の右上側が、クリアランス過小となり、反対に、図1の左下側は、クリアランス過大な状態となる。しかしながら、本実施例のダイ金型によれば、図1のダイ刃先部分5aが大きく撓んで、プレス金型のずれを吸収させることが可能となり、良好な寸法精度をもって、プレス加工を行うことが可能となる。勿論、上述のとおり、ダイ刃先部分が柔軟に拡がる構成となっているため、従来、大きめのクリアランスが必要とされた追い抜き加工にも、本実施例のダイ金型を容易に適用することが可能である。 【実施例2】 続いて、本発明の第2の実施例について、図面を参照して、詳細に説明する。図2(a)(b)は、それぞれ、角抜きを行うパンチプレス用ダイ金型1の一例を示した平面図と、正面図である。図2を参照すると、ダイ金型1には、正方形の打ち抜き孔2を囲繞し、ダイ刃先部分5a、5b、5c、5dとその余の部分の境界をなす、正方形の溝3が設けられている。正方形の溝3のサイズ及び幅は、上述した本発明の第1の実施例と同様に、ダイ刃先部分5a、5b、5c、5dの幅、強度、耐用性、撓みの程度により決定される。また、正方形の打ち抜き孔2のコーナー部から、溝3のコーナー部にわたって、貫通スリット4a、4b、4c、4dが設けられている。 本実施例によれば、上述した本発明の第1の実施例の説明からも明らかな通り、板厚や材質に拘りなく共用でき、金型の位置ずれにも対応しうる角形のダイ金型が提供されるとともに、ダイ金型のコーナー部の微小なR(円弧部分)が取り除かれ、方形のパンチ金型のコーナー部の干渉による、劣化を防止することが可能となる。 【実施例3】 続いて、本発明の第3の実施例について、図面を参照して、詳細に説明する。図3(a)(b)は、それぞれ、矩形の角抜きを行うパンチプレス用ダイ金型1の一例を示した平面図と、正面図である。図3を参照すると、ダイ金型1には、横長長方形の打ち抜き孔2を囲繞し、ダイ刃先部分の強度と、所定の位置・深さで配設した、横長長方形の溝3が設けられ、打ち抜き孔2のコーナー部から、溝3の各コーナー部の貫通スリットに加え、更に、溝3長辺の中間点に、4e、4fが設けられている。従って、ダイ刃先部分5a、5b、5c、5dのうち、断面積の大きいダイ刃先部分5a、5cが、更に5a、5a’、5c、5c’に分割されて、ダイ刃先部分5b、5dと均等に拡がるものとなっている。本実施例によれば、上述した本発明の第1、第2の実施例の説明からも明らかな通り、板厚や材質に拘りなく共用でき、金型の位置ずれにも対応しうる矩形角形のダイ金型が提供されるとともに、ダイ金型のコーナー部の微小なR(円弧部分)が取り除かれ、方形のパンチ金型のコーナー部の干渉による、劣化を防止することが可能となる。 上記第3の実施例において説明した通り、本発明は、真円、正方形以外の形状のプレス加工にも、十分に適用できるものであり、上記した本発明の第3の実施例においては、貫通スリットの配置を調整することで、ダイ刃先部分の均等な拡がりを実現する例を説明したが、例えば、図4に示す如く、ダイ刃先部分の厚さを調節することで、これを実現することが可能である。図4においては、ダイ刃先部分5a、5cの幅(図4の天地方向)が狭くなるように、溝3を形成している。また、図5に示す如く、打ち抜き孔の形状に応じて、溝3の深さt、或いは、ダイ金型の厚みTを、部分的・全体的に変更するものとしても良い。例えば、図5においては、溝3の上下辺の部分の溝の深さを、左右辺の部分の深さよりも深くし、(T−t)に差異を設けた溝3を形成している。また、同様に、図6、図7に示す如く、打ち抜き孔2側に向かって、或いは、打ち抜き孔2側の反対方向に、傾斜角θで掘り下げた態様からなる溝3を形成し、撓み具合を調節するものとしてもよい。以上のとおり、溝3の深さt、溝3の傾斜角θ、ダイ金型の厚みT、ダイ刃先部分の厚さによって、ダイ刃先部分の均等な拡がりを実現することが可能であるが、打ち抜き孔2の形状に応じて、これらを適宜組み合わせて、ダイ刃先部分の柔軟性と耐久性とを両立させることが可能である。 なお、上記した各実施例における、溝3及び貫通スリット4は、放電加工、ワイヤ放電加工等の公知の金型加工手段によって形成可能であるが、本発明がもたらす効果に鑑みれば、その他、従来コストの観点から見送られてきたその他の加工手段を採用することとしても良いことは、勿論である。 以上、本発明を円抜き、角抜き、矩形抜きを行うパンチプレス用のダイ金型に適用した例を説明したが、本発明は上記した各実施例の説明から理解されるように、適宜の変更を行うことで、図8に例示する6角形のダイ金型はもちろんとして、いわゆるアール型(扇形)、ジョイント型、コーナーラジアス型、その他の特殊形状の抜き加工、ダイパンチ等を附加したダイ金型を用いる成型加工に適用することが可能である。 また、例えば、追い抜き用として用いる場合や、所定の部分のみの磨耗が早い特殊なパンチ形状である場合には、必ずしもダイ金型の打ち抜き孔2を周回するように溝3及び貫通スリット4を設ける必要は無く、ダイ金型の打ち抜き孔2の外側の一部(非剪断側や磨耗の早い部分)の区間のみに溝3と貫通スリット4を配するものとしても良い。例えば、図1の溝3を右半分のみの半円形状とし、溝3の無い側のダイ刃先部分には貫通スリット4dを設けない構成や、同様に、図3の溝3を左半分のみのC字状とし、貫通スリット4e、4fより右側のコーナー部貫通スリット(図4の4a、4bに対応)を省略する構成が挙げられる。 また、ダイ金型の母材材質も、ダイス鋼の他、その他金型用合金工具鋼等、本発明の原理の範囲において採用可能である。 また同様に、本発明は上記した各実施例の説明から理解されるように、あらゆるプレス形状に適用することが可能であることからして、パンチプレス機用のダイ金型に限らず、一般のプレス用金型の雌型に含まれる打ち抜き孔や成型加工用凹部周辺に、本発明の溝と貫通スリットを具備することによって、容易に適用できるものである。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の第1の実施例のダイ金型の平面図(a)と、正面図(b)である。 【図2】本発明の第2の実施例のダイ金型の平面図(a)と、正面図(b)である。 【図3】本発明の第3の実施例のダイ金型の平面図(a)と、正面図(b)である。 【図4】本発明の別の実施例を説明するためのダイ金型の平面図(a)と、正面図(b)である。 【図5】本発明の別の実施例を説明するためのダイ金型の平面図(a)と、正面図(b)である。 【図6】本発明の別の実施例を説明するためのダイ金型の平面図(a)と、正面図(b)である。 【図7】本発明の別の実施例を説明するためのダイ金型の平面図(a)と、正面図(b)である。 【図8】本発明の別の実施例を説明するためのダイ金型の平面図(a)と、正面図(b)である。 【図9】従来のダイ金型の平面図(a)と、正面図(b)である。 【図10】従来のタレットパンチプレス装置の正面図である。 【符号の説明】 1 ダイ金型 2 打ち抜き孔 3 溝 4、4a、4b、4c、4d 貫通スリット 5、5a、5b、5c、5d ダイ刃先部分 10 タレットパンチプレス装置 11 上部タレット 12 下部タレット 13 打撃要素(ストライカー) 14 把持移動手段 20 数値制御(NC制御)装置 |
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【図1】 |
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【図2】 |
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【図3】 |
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【図4】 |
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【図5】 |
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【図6】 |
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【図7】 |
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【図8】 |
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【図9】 |
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【図10】 |
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