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機械器具
 
【考案の名称】防護具
【実用新案権者】
【識別番号】524125245
【氏名又は名称】望月 英彦
【住所又は居所】長野県塩尻市上西条134-1 西条団地 420号
【代理人】
【識別番号】100199819
【弁理士】
【氏名又は名称】大行 尚哉
【考案者】
【氏名】望月 英彦
【住所又は居所】長野県塩尻市上西条134-1 西条団地 420号
【要約】
【課題】スプレー撃退手段と打撃手段とを兼ね備えた防護具を提供する。
【解決手段】防護具1は、打撃を考慮した外形形状を有し、流体流路2aが形成された打撃部2と、スプレー缶SCを収容可能なスプレー缶収容部3と、スプレー缶SCが押し付けられると噴射用ステムSCSに反力を付与するアクチュエータ4と、長尺で延びる柄部5と、スプレー缶SCに先端側へ押し付ける力を加えることが可能な押付部分61、押付部分61から根本側の位置まで延びる伝達棒62、伝達棒62の周壁から柄部5のガイド溝部分51の溝穴を通って突出している操作入力部分63を有する噴射操作機構部6と、を備えている。防護具1は、操作入力部分63に入力操作されることで、押付部分61を軸線方向Lに往復運動させることが可能であり、押付部分61が先端側に移動した際にスプレー缶SCの内容物を打撃部2の先端側から噴射可能である。
【選択図】図2
選択図
【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に沿って長尺形状で形成され、主に使用者が野生動物から身を守るために用いられる防護具であって、
野生動物に有効な打撃を加えることを考慮した外形形状を有し、内側に前記軸線方向に沿って延びる流体流路が形成された打撃部と、
前記軸線方向に沿って前記打撃部の根元側に接続されており、内部に別途用意したスプレー缶を前記打撃部の前記流体流路の根本側の端部に向けて噴射用ステムを突出させた状態で収容可能で、前記軸線方向に前記スプレー缶の外径寸法より小さな開口寸法で開口させた筒型形状を有するスプレー缶収容部と、
中空筒状形態を有し、先端側が前記打撃部の前記流体流路に嵌まり込み、根本側が前記スプレー缶収容部に収容された前記スプレー缶の前記噴射用ステムを抱え込めるようにして配置され、前記スプレー缶が先端側へ向けて所定以上の力で押し付けられると前記スプレー缶の前記噴射用ステムに根本側へ向かう反力を付与するアクチュエータと、
前記スプレー缶収容部の根元側に接続されており、前記軸線方向に沿って長尺で延びる中空棒状形態を有するとともに、根本側の周壁に、前記軸線方向に延びる溝穴が形成されたガイド溝部分を有する柄部と、
前記柄部の先端側から飛び出した位置に配置され、前記スプレー缶収容部に収容された前記スプレー缶の底に前記スプレー缶を先端側へ向けて押し付ける力を加えることが可能な押付部分、前記押付部分の根本側の面から前記柄部の内部を通って前記柄部の根本側の位置まで延びる細棒形状の伝達棒、および、前記伝達棒の根本側の周壁から前記柄部の前記ガイド溝部分の前記溝穴を通って前記柄部の外周面より外側位置まで突出している操作入力部分を有する噴射操作機構部と、
を備え
使用者により前記噴射操作機構部の前記操作入力部分に入力操作されることで、前記柄部に対し前記押付部分を前記軸線方向に往復運動させることが可能であり、前記押付部分が先端側に移動した際に前記スプレー缶収容部に収容された前記スプレー缶が先端側へ向けて押し付けられて内容物を前記打撃部の先端側から噴射可能である、ことを特徴とする防護具。
【請求項2】
請求項1に記載の防護具において、
前記打撃部は、内側に流体流路が形成された胴部分と、前記打撃を加えることを考慮した外形形状として、前記胴部分の先端周囲から先端側に向けて複数突起する縦爪部分と、を有している、
防護具。
【請求項3】
請求項2に記載の防護具において、
前記打撃部は、前記打撃を加えることを考慮した外形形状として、前記胴部分の側壁周囲から外側へ放射状に複数突起する横爪部分を更に有している、
防護具。
【請求項4】
請求項1に記載の防護具において、
前記スプレー缶収容部は、前記スプレー缶を囲うケース、および、収容された前記スプレー缶の先端側の面を受けるように前記ケースの先端側の内面に沿って配置され、収容された前記スプレー缶への先端側へ向けて押し付ける力が弱まると、前記スプレー缶を根本側へ押し戻すことが可能な押し戻し弾性体を有している、
防護具。
【請求項5】
請求項4に記載の防護具において、
前記噴射操作機構部は、前記伝達棒に径方向に張り出すフランジ形状部位が形成されており、前記伝達棒の前記フランジ形状部位を常に先端側へ向けて付勢する押出付勢体を更に有し、
前記柄部の前記ガイド溝部分は、周壁に、前記噴射操作機構部の前記操作入力部分を前記軸線方向に移動可能とするように前記軸線方向に延びる長溝形状部位、および、前記長溝形状部位の根本側の端部に移動した前記噴射操作機構部の前記操作入力部分を周方向に移動させて前記軸線方向への移動を規制可能とするように前記長溝形状部位の根本側の端部から周方向に延びる切り欠き溝形状部位を組み合わせた溝穴形状で形成されており、
その結果、前記噴射操作機構部は、前記操作入力部分が前記柄部の前記ガイド溝部分の前記切り欠き溝形状部位に嵌まり込んでいる状態から、使用者に操作されて前記柄部の前記ガイド溝部分の前記長溝形状部位に移動させられると、前記伝達棒が前記押出付勢体に押し出されて前記押付部分が前記スプレー缶収容部に収容された前記スプレー缶の底を押し付けて前記スプレー缶を先端側に移動させて前記打撃部の先端側から前記スプレー缶の内容物を噴射させ、前記操作入力部分が前記柄部の前記ガイド溝部分の前記長溝形状部位の先端側の位置に嵌まり込んでいる状態から、使用者に操作されて前記長溝形状部位の根本側の位置に嵌まり込んでいる状態に移動させられると前記押付部分による前記スプレー缶の底を押し付ける力が弱まり、前記スプレー缶収容部の前記押し戻し弾性体が前記スプレー缶を根本側へ押し戻すことで、前記スプレー缶の内容物の噴射を停止させる、
防護具。
【考案の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本考案は、主に、使用者が野生動物から身を守るために用いられる防護具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、熊や猪等の野生動物の人里への出没が問題となっているように人と野生動物との生活圏が近くなっており、人が遭遇してしまった野生動物から危害を加えられる事件が多発している状況にある。このような状況においては、例えば山に入る際などには、熊等の危害が加えられる虞の高い野生動物と遭遇した場合に備えて、防護具を持って行くと安心である。
【0003】
このような防護具として、例えば特許文献1では、傘形状のステッキ本体(1)の中棒(8)内に収容したスプリングの付勢力を利用して、握柄(4)に取り付けた展開ボタンを押して親骨(2)と共に展開シート(3)を自動的に展開させるジャンプ機構と、握柄(4)に取り付けた、液化防犯ガスを充填した防犯スプレーのボンベ(5)と、石突(6)に装着した、ボンベ(5)からの防犯ガスを噴射させる噴射ノズル(7)と、を備えた野生動物撃退ステッキが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】 特開2006−121977号公報
【考案の概要】
【考案が解決しようとする課題】
【0005】
大型の野生動物との遭遇に備えるためには、まず、特許文献1で開示されているような防護具による液化防犯ガスの噴射のように、相手との距離を置いた状態で相手を怯ませるスプレー撃退手段を持ち合わせることが効果的である。それによって相手が逃げてくれるのが一番である。しかしながら、そのスプレーガスが効かなかった場合を考えると、スプレー撃退手段だけでなく、相手への打撃効果が期待できる打撃手段も持ち合わせておくと、より安心である。
【0006】
本考案は、このような点に鑑みて、スプレー撃退手段と相手への打撃効果が期待できる打撃手段とを兼ね備えた防護具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、本考案に係る防護具は、軸線方向に沿って長尺形状で形成され、主に使用者が野生動物から身を守るために用いられる防護具である。
この防護具は、
野生動物に有効な打撃を加えることを考慮した外形形状を有し、内側に軸線方向に沿って延びる流体流路が形成された打撃部と、
軸線方向に沿って打撃部の根元側に接続されており、内部に別途用意したスプレー缶を打撃部の流体流路の根本側の端部に向けて噴射用ステムを突出させた状態で収容可能で、軸線方向にスプレー缶の外径寸法より小さな開口寸法で開口させた筒型形状を有するスプレー缶収容部と、
中空筒状形態を有し、先端側が打撃部の流体流路に嵌まり込み、根本側がスプレー缶収容部に収容されたスプレー缶の噴射用ステムを抱え込めるようにして配置され、スプレー缶が先端側へ向けて所定以上の力で押し付けられるとスプレー缶の噴射用ステムに根本側へ向かう反力を付与するアクチュエータと、
スプレー缶収容部の根元側に接続されており、軸線方向に沿って長尺で延びる中空棒状形態を有するとともに、根本側の周壁に、軸線方向に延びる溝穴が形成されたガイド溝部分を有する柄部と、
柄部の先端側から飛び出した位置に配置され、スプレー缶収容部に収容されたスプレー缶の底にスプレー缶を先端側へ向けて押し付ける力を加えることが可能な押付部分、押付部分の根本側の面から柄部の内部を通って柄部の根本側の位置まで延びる細棒形状の伝達棒、および、伝達棒の根本側の周壁から柄部のガイド溝部分の溝穴を通って柄部の外周面より外側位置まで突出している操作入力部分を有する噴射操作機構部と、
を備える、ことを特徴としている。
使用者により噴射操作機構部の操作入力部分に入力操作されることで、柄部に対し押付部分を軸線方向に往復運動させることが可能であり、押付部分が先端側に移動した際にスプレー缶収容部に収容されたスプレー缶が先端側へ向けて押し付けられて内容物を打撃部の先端側から噴射可能である。
【0008】
この防護具において、打撃部は、内側に流体流路が形成された胴部分と、打撃を加えることを考慮した外形形状として、胴部分の先端周囲から先端側に向けて複数突起する縦爪部分と、を有していることが好ましい。また、打撃部は、打撃を加えることを考慮した外形形状として、胴部分の側壁周囲から外側へ放射状に複数突起する横爪部分を更に有していることが更に好ましい。
【0009】
また、この防護具において、スプレー缶収容部は、スプレー缶を囲うケース、および、収容されたスプレー缶の先端側の面を受けるようにケースの先端側の内面に沿って配置され、収容されたスプレー缶への先端側へ向けて押し付ける力が弱まると、スプレー缶を根本側へ押し戻すことが可能な押し戻し弾性体を有していることが好ましい。
【0010】
また、この防護具において、
噴射操作機構部は、伝達棒に径方向に張り出すフランジ形状部位が形成されており、伝達棒のフランジ形状部位を常に先端側へ向けて付勢する押出付勢体を更に有し、
柄部のガイド溝部分は、周壁に、噴射操作機構部の操作入力部分を軸線方向に移動可能とするように軸線方向に延びる長溝形状部位、および、長溝形状部位の根本側の端部に移動した噴射操作機構部の操作入力部分を周方向に移動させて軸線方向への移動を規制可能とするように長溝形状部位の根本側の端部から周方向に延びる切り欠き溝形状部位を組み合わせた溝穴形状で形成されており、
その結果、噴射操作機構部は、操作入力部分が柄部のガイド溝部分の切り欠き溝形状部位に嵌まり込んでいる状態から、使用者に操作されて柄部のガイド溝部分の長溝形状部位に移動させられると、伝達棒が押出付勢体に押し出されて押付部分がスプレー缶収容部に収容されたスプレー缶の底を押し付けてスプレー缶を先端側に移動させて打撃部の先端側からスプレー缶の内容物を噴射させ、操作入力部分が柄部のガイド溝部分の長溝形状部位の先端側の位置に嵌まり込んでいる状態から、使用者に操作されて長溝形状部位の根本側の位置に嵌まり込んでいる状態に移動させられると押付部分によるスプレー缶の底を押し付ける力が弱まり、スプレー缶収容部の押し戻し弾性体がスプレー缶を根本側へ押し戻すことで、スプレー缶の内容物の噴射を停止させる。
【考案の効果】
【0011】
本考案によれば、スプレー撃退手段と相手への打撃効果が期待できる打撃手段とを兼ね備えた防護具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態に係る防護具の外観図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1のB部拡大図である。
【図4】図2のC部拡大図である。
【考案を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を参照して本考案の一実施形態である防護具を説明するが、本考案は、この実施形態に限定されるものではない。なお、各図面は必ずしも実際の形状や寸法を厳密に反映したものではない。
【0014】
(防護具1の構成)
図1は、実施形態に係る防護具1の外観図である。図2は、図1のA−A断面図であり、防護具1の構成を示している。図3は、図1のB部拡大図であり、防護具1の根本側の操作機構周りを示している。図4は、図2のC部拡大図であり、防護具1のスプレー缶SCの接続周りを示している。これらの図を参照し、本考案を適用した防護具1について説明する。なお、防護具1は、略回転対称形状を有しており、本明細書においては、その回転対称軸が延びる方向を軸線方向Lとして説明する。また、本明細書で根本側および先端側と説明している場合、防護具1が使用される際に使用者によって把持されることを想定している側が根本側(図1では紙面下方側)、その反対側の使用者から離れる側が先端側(図1では紙面上方側)である。
【0015】
図1に示す防護具1は、軸線方向Lに沿って長尺形状で形成され、主に使用者が野生動物から身を守るために、根本側が使用者に把持され、先端側が野生動物に向けられて用いられる。防護具1は、図2に示すように、それぞれ軸線方向Lに沿って配置された、最先端側に位置する打撃部2、打撃部2の根本側に接続されているスプレー缶収容部3、打撃部2の内部に配置されたアクチュエータ4、スプレー缶収容部3の根元側に接続されている柄部5、および、主に柄部5の内部に配置された噴射操作機構部6を備えている。
【0016】
打撃部2は、野生動物に有効な打撃を加えることを考慮した外形形状を有し、内側に流体を流すための軸線方向Lに沿って延びる流体流路2aが形成されている。より詳しくは、打撃部2は、軸線方向Lに沿って延びる略円柱外郭形状の胴部分21を有している。この胴部分21には、円柱外郭形状の中心軸に沿って、流体流路2aが貫通している。また、打撃部2は、打撃を加えることを考慮した外形形状として、胴部分21の先端周囲から先端側に向けて複数突起する縦爪部分22、および、胴部分21の側壁周囲から外側へ放射状に複数突起する横爪部分23を有している。この縦爪部分22は、胴部分21先端側の面から山形状の突起が周方向に複数整列されて形成されており、この部分の突きにより相手に対し相当のダメージを与える形状である。また、横爪部分23は、胴部分21の側面から山形状の突起が周方向に複数整列されて形成されており、この部分での殴打により相手に対し相当のダメージを与える形状である。打撃部2については、硬質製とし、金属製、樹脂製、木製等、適宜材質を選択することができるが、防護用の道具であり殺傷するための道具としないとの観点、および、持ち運びや取り扱いしやすいよう軽量化したいとの観点から硬質樹脂製や木製とすることが推奨される。
【0017】
スプレー缶収容部3は、筒型形状を有しており、内部に、例えば熊撃退用のスプレー缶といった別途用意したスプレー缶SCをその噴射用ステムSCSを打撃部2の流体流路2aの根本側の端部に向けて噴射用ステムSCSを突出させた状態で収容可能である(図4も参照)。スプレー缶収容部3の軸線方向Lの両側の端部は、収容したスプレー缶SCを保持するために蓋がされた状態となるが、少なくとも先端側にはスプレー缶SCの外径寸法より小さな噴射用ステムSCSを突出させることが可能な開口寸法、根本側にはスプレー缶SCの外径寸法より小さな後述の噴射操作機構部6の伝達棒62(場合によっては更に押付部分61)を通過させることが可能な開口寸法で開口している。更に説明すると、スプレー缶収容部3は、スプレー缶SCを囲う略円筒形状のケース31、および、収容されたスプレー缶SCの先端側の面を受けるようにケース31の先端側の内面に沿って配置され、スプレー缶SCによって押されると弾性変形する押し戻し弾性体32を有している。
【0018】
ケース31は、金属製、樹脂製、木製等から適宜選択された硬質製で、全体的に軸線方向Lに沿って延びる小開口が形成された端面を含む有底円筒形状で形成されており、軸線方向Lに対し垂直な面に沿って先端側と根本側とに分割可能である。一例としてのケース31は、先端側において根本側が大きく開口する円筒状の先端側分割ケース31Aと、根本側において、先端側分割ケース31Aの根本側の大きな開口の蓋となる有底円筒形状の根本側分割ケース31Bと、に分割可能である。ケース31は、先端側分割ケース31Aと根本側分割ケース31Bとを分割させて、先端側分割ケース31Aの根本側の開口から、噴射用ステムSCSを先端側に向けたスプレー缶SCが挿入され、根本側分割ケース31Bで蓋をするようにして先端側分割ケース31Aと根本側分割ケース31Bとを接合されることで、内部にスプレー缶SCを収容する。ケース31の内径寸法および内面長さについては、収容しようとするスプレー缶SCの外径寸法および高さ寸法に応じて適宜設定されている。ケース31は、可変機構やスペーサ等を用いて内径寸法および内面長さを可変できるように構成されていてもよい。
【0019】
押し戻し弾性体32は、スポンジ、Oリング、圧縮バネ等、の中から適宜選択されたものであり、先端側の端面をケース31の先端側の内面に当接させて配置され、根本側からの力を受けると軸線方向Lの寸法が小さくなるように弾性変形する。このため、ケース31内に収容されたスプレー缶SCは、先端側へ向けて押し付けられると、押し戻し弾性体32が撓んでその分先端側へ移動し、先端側へ向けて押し付ける力が弱まると、撓み量を小さくしようとする押し戻し弾性体32により根本側へ押し戻されて根本側へ移動する。
【0020】
アクチュエータ4は、中空筒状形態を有し、先端側が打撃部2の流体流路2aに嵌まり込み、根本側がスプレー缶収容部3に収容されたスプレー缶SCの噴射用ステムSCSを抱え込めるようにして配置されている。アクチュエータ4は、スプレー缶SCが先端側へ向けて所定以上の力で押し付けられるとスプレー缶SCの噴射用ステムSCSに根本側へ向かう反力を付与する。アクチュエータ4がスプレー缶SCの噴射用ステムSCSに根本側へ向かう反力を付与することで、噴射用ステムSCSがスプレー缶SCの本体に対し押し込まれてスプレー缶SCは内容物を噴射する。
【0021】
柄部5は、軸線方向Lに沿って長尺で延びる中空棒状形態を有している。この柄部5は、根本側の周壁に、後述の噴射操作機構部6の操作入力部分63を軸線方向Lに移動可能とするように溝穴が形成されたガイド溝部分51を有している。このガイド溝部分51は、軸線方向Lに延びる長溝形状部位51a、および、長溝形状部位51aの根本側の端部に移動した噴射操作機構部6の操作入力部分63を周方向に移動させて軸線方向Lへの移動を規制可能とするように長溝形状部位51aの根本側の端部から周方向に延びる切り欠き溝形状部位51bを組み合わせた溝穴形状で形成されている(図3も参照)。柄部5の根本側の端部は、エンドキャップ5aで蓋がされている。
【0022】
噴射操作機構部6は、図3および図4も参照し、先端側に配置された押付部分61、押付部分61から根本側へ延びる伝達棒62、伝達棒62の根本側の周壁から軸線方向Lに交差する方向へ突出する操作入力部分63、および、伝達棒62を付勢する押出付勢体64を有しており、大部分が柄部5の内部に配置されている。噴射操作機構部6は、押出付勢体64の付勢力および使用者の操作入力部分63への入力によって、一体となった押付部分61、伝達棒62、および操作入力部分63を柄部5に対し軸線方向Lに往復運動させることが可能である。
【0023】
押付部分61は、軸線方向Lに垂直な方向に広がる皿形状で形成されており、柄部5の先端側から飛び出した位置に配置され、スプレー缶収容部3に収容されたスプレー缶SCの底にスプレー缶SCを先端側へ向けて押し付ける力を加えることが可能である。
【0024】
伝達棒62は、押付部分61の根本側の面から柄部5の内部を通って柄部5の根本側の位置まで延びる細棒形状を有している。伝達棒62の根本側には、径方向に張り出すフランジ形状部位62aが形成されている。
【0025】
操作入力部分63は、使用者が操作入力するために操作される部分である。操作入力部分63は、伝達棒62の根本側の周壁から柄部5のガイド溝部分51の溝穴を通って柄部5の外周面より外側位置まで突出している。操作入力部分63は、使用者が指で操作しやすいよう、柄部5から露出している先端部分の形状が適宜最適化されている。例えば、操作入力部分63は、伝達棒62の外周面から柄部5の外周面よりも外側位置まで軸線方向Lと交差する方向へ延びる突起形状で形成されており、柄部5から露出している先端部分がスライドレバーの入力部として楕円板形状で形成されている。
【0026】
押出付勢体64は、例えば、伝達棒62のフランジ形状部位62aの根本側の面と柄部5のエンドキャップ5aとの間に配置された圧縮バネであり、伝達棒62のフランジ形状部位62aを常に先端側へ向けて付勢する。これにより、一体となった押付部分61、伝達棒62、および、操作入力部分63が操作入力部分63は、柄部5がガイド溝部分51の溝穴に沿って移動できる範囲において、先端側へ向けて常に移動しようとする。
【0027】
このように構成された防護具1は、使用者により噴射操作機構部6の操作入力部分63に入力操作されることで、柄部5に対し押付部分61を軸線方向Lに往復運動させることが可能であり、押付部分61が先端側に移動した際にスプレー缶収容部3に収容されたスプレー缶SCの内容物を打撃部2の先端側から噴射可能である。防護具1の動作状態については、この後、防護具1の使用方法の説明において、詳述する。
【0028】
(防護具1の使用方法)
続いて、図1〜図4を参照し、防護具1の使用方法について説明する。防護具1は、使用者が山等に入る際など、危険な野生動物との遭遇に備えて持ち運ばれ、いざ危険な野生動物と遭遇してしまった際に身を守る道具として使用される。
【0029】
防護具1を使用するには、使用者は、まず準備段階として、柄部5のガイド溝部分51から突出している噴射操作機構部6の操作入力部分63がガイド溝部分51の長溝形状部位51aに位置している場合に、操作入力部分63を長溝形状部位51aの溝穴に沿って根本側に引いてから切り欠き溝形状部位51bに嵌まり込むように周方向へずらす。そうすると、操作入力部分63が切り欠き溝形状部位51bで移動規制されるため、噴射操作機構部6の押付部分61が根元側に移動した状態となる。この状態で、例えば熊避けスプレーといった野生動物撃退用のスプレー缶SCを用意し、スプレー缶収容部3のケース31の先端側分割ケース31Aと根本側分割ケース31Bとを分割し、先端側分割ケース31Aの開口にスプレー缶SCを噴射用ステムSCS側から差し込んでから再び、先端側分割ケース31Aと根本側分割ケース31Bとを一体化させる。これにより、スプレー缶SCがスプレー缶収容部3のケース31内に、噴射用ステムSCSがアクチュエータ4に嵌まり込んだ状態および噴射操作機構部6の押付部分61によって先端側に押し付けられていない若しくは弱い力で押し付けられている状態で収容される。なお、この状態においては、スプレー缶SCが押付部分61によって先端側に強い力で押し付けられていないため、押し戻し弾性体32が大きく撓んでおらず、アクチュエータ4もスプレー缶SCの噴射用ステムSCSに根本側へ向かう反力を付与していない。この状態では噴射用ステムSCSがスプレー缶SCの本体に対して押し込まれていない状態であるため、スプレー缶SCは、その内容物を噴射しない状態となっている。これにより、準備段階が完了する。
【0030】
使用者は、準備段階が完了した防護具1を持ち運び、その際に野生動物から身を守る状況に置かれてしまった場合には、防護具1を例えば、次の防御手段として用いることができる。
【0031】
防御手段の一つとして、防護具1にはスプレー撃退手段が備わっており、使用者は、防護具1を撃退用スプレー噴射の道具として用いることができる。撃退用スプレー噴射による防御手段においては、使用者は、柄部5の根本側を把持し、打撃部2の縦爪部分22をなるべく自身から遠い距離に離し、野生動物に向けて構える。その構えた状態で、柄部5の切り欠き溝形状部位51bに嵌まり込んでいた噴射操作機構部6の操作入力部分63を柄部5の長溝形状部位51aに向けて周方向に動かす。そうすると、操作入力部分63が長溝形状部位51aにずれ、長溝形状部位51aの溝穴に沿って移動可能となり、押出付勢体64の付勢力で、伝達棒62が押し出されて、押付部分61が先端側に向けて移動する。そして、先端側に向けて移動した押付部分61により、底を押されたスプレー缶SCが押し戻し弾性体32を撓ませながらスプレー缶収容部3のケース31の先端側の端面に押し付けられる。そうすると、打撃部2内で先端側への移動が規制されたアクチュエータ4がスプレー缶SCの噴射用ステムSCSに根本側へ向かう反力を付与し、噴射用ステムSCSがスプレー缶SCの本体に対して押し込まれている状態となり、スプレー缶SCは、その野生動物撃退用の内容物を噴射する。これにより、スプレー缶SCの野生動物撃退用の内容物が打撃部2の流体流路2aを通り、縦爪部分22の先端側から野生動物に向けて噴射されることとなる。また、この防御手段において、噴射を停止したい場合には、使用者は、長溝形状部位51aの先端側に移動していた操作入力部分63を長溝形状部位51aの溝穴に沿って根本側に引いてから切り欠き溝形状部位51bに嵌まり込むように周方向へずらせばよい。そうすると、押出付勢体64が縮み押付部分61のスプレー缶SCの底を押し付ける力が弱まり、撓んでいた押し戻し弾性体32の撓みが戻る力でスプレー缶収容部3のケース31の先端側の端面から離れる方向に移動する。そうすると、アクチュエータ4がスプレー缶SCの噴射用ステムSCSに根本側へ向かう反力を付与していない状態となり、噴射用ステムSCSがスプレー缶SCの本体に対して押し込まれていない状態に戻り、スプレー缶SCの噴射が停止する。
【0032】
また、別の防御手段として、防護具1には打撃手段が備わっており、使用者は、防護具1を打撃具として用いることができる。使用者は、柄部5の根本側を把持し、突きによる打撃を打撃部2の縦爪部分22により行うことができ、振り回しによる打撃を打撃部2の横爪部分23により行うことができる。
【0033】
(作用・効果)
防護具1は、軸線方向Lに沿って長尺形状で形成され、主に使用者が野生動物から身を守るために用いられる防護具であり、野生動物に有効な打撃を加えることを考慮した外形形状を有する打撃部2を備えている。このように、防護具1には、打撃部2によって相手への打撃効果が期待できる打撃手段が備わっている。
【0034】
また、防護具1は、打撃部2の内側に流体流路2aが形成されている。そして、防護具1は、打撃部2の根元側に接続されており、内部に別途用意したスプレー缶SCを収容可能なスプレー缶収容部3と、スプレー缶SCが先端側へ向けて所定以上の力で押し付けられるとスプレー缶SCの噴射用ステムSCSに根本側へ向かう反力を付与するアクチュエータ4と、スプレー缶収容部3の根元側に接続されており、長尺で延びるとともに、根本側の周壁に、軸線方向Lに延びる溝穴が形成されたガイド溝部分51を有する柄部5と、スプレー缶収容部3に収容されたスプレー缶SCを先端側へ向けて押し付ける力を加えることが可能な押付部分61、押付部分61の根本側の面から根本側の位置まで延びる伝達棒62、および、伝達棒62の根本側の周壁からガイド溝部分51の溝穴を通って柄部5の外周面より突出している操作入力部分63を有する噴射操作機構部6と、を備えている。これにより、防護具1は、使用者により操作入力部分63に入力操作されることで、押付部分61を軸線方向Lに往復運動させることが可能であり、押付部分61が先端側に移動した際にスプレー缶SCが先端側へ向けて押し付けられて内容物を打撃部2の先端側から噴射可能に構成されている。このように、防護具1には、野生動物撃退用の内容物が入っているようなスプレー缶SCを用い、その内容物を噴射できるように構成されていることで、スプレー撃退手段が備わっている。
【0035】
従って、防護具1のように構成すれば、スプレー撃退手段と相手への打撃効果が期待できる打撃手段とを兼ね備えた防護具を提供することができる。
【0036】
この防護具1においては、打撃部2が、胴部分21の先端周囲から先端側に向けて複数突起する縦爪部分22、および、胴部分21の側壁周囲から外側へ放射状に複数突起する横爪部23分を有している。防護具1によれば、打撃部2がこのように構成されていることで、突きと振り回しの両方の動きで相手への打撃効果が期待できるため、危険な野生動物と遭遇した際に身を守れる可能性をより高めることができる。
【0037】
また、この防護具1においては、スプレー缶収容部3は、スプレー缶SCを囲うケース31、収容されたスプレー缶SCへの先端側へ向けて押し付ける力が弱まると、スプレー缶SCを根本側へ押し戻すことが可能な押し戻し弾性体32を有している。このため、防護具1によれば、押し戻し弾性体32を有していることで、スプレー缶SCへの押し付ける力を弱め、スプレー缶SCが根本側へ押し戻されることで、例えば、野生動物を撃退した後といった場合に、スプレー缶SCの意味のない噴射を停止させ、スプレー缶SCの使用量を減らすことができる。
【0038】
また、この防護具1においては、噴射操作機構部6が伝達棒62のフランジ形状部位62aを常に先端側へ向けて付勢する押出付勢体64を更に有し、柄部5のガイド溝部分51が周壁に軸線方向Lに延びる長溝形状部位51a、および、長溝形状部位51aの根本側の端部から周方向に延びる切り欠き溝形状部位51bを組み合わせた溝穴形状で形成されている。このように構成されているため、防護具1によれば、操作入力部分63が切り欠き溝形状部位51bに嵌まり込んでいる状態から、使用者に操作されて長溝形状部位51aに移動させられると、伝達棒62が押出付勢体64に押し出されて押付部分61をスプレー缶SCを先端側に移動させて打撃部2の先端側からスプレー缶SCの内容物を噴射させる。すなわち、使用者は、このような操作することで素早くスプレー缶SCを噴射させることができる。一方で、防護具1によれば、操作入力部分63が長溝形状部位51aの先端側の位置に嵌まり込んでいる状態から、使用者に操作されて長溝形状部位51aの根本側の位置に嵌まり込んでいる状態に移動させられると押付部分61によるスプレー缶SCを押し付ける力が弱まり、押し戻し弾性体32がスプレー缶SCを根本側へ押し戻すことで、スプレー缶SCの内容物の噴射を停止させる。すなわち、使用者は、このような操作することで素早くスプレー缶SCの噴射を停止させることができる。これらにより、防護具1によれば、使用者が必要な際には素早くスプレー撃退手段を用いて身を守ることができるとともに、スプレー噴射に意味がないときは、スプレー缶SCの噴射を即停止させ、スプレー缶SCの使用量を減らすことができる。
【0039】
[その他の形態]
以上、本考案を上記の実施形態に基づき説明したが、本考案は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0040】
(1)上記実施形態において記載した数、形状、位置、大きさ、材質、接合の方法等は例示であり、本考案の効果を損なわない範囲において変更することが可能である。
【0041】
(2)上記した実施形態においては、打撃部2は先端側に向けて複数突起する縦爪部分22、および、周方向に複数突起する横爪部分23を有しているものとして説明したが、本考案はこれに限定されるものではない。打撃部については、例えば、縦爪部分および横爪部分のいずれか一方を有するよう構成されたものでもよい。また例えば、ハンマー形状のように突起がない形状で構成されたものでもよい。
【0042】
(3)上記した実施形態においては、噴射操作機構部6の操作入力部分63がスライドレバーの入力部として楕円板形状で形成されているものとして説明したが、本考案はこれに限定されるものではない。操作入力部分については、例えば、トリガー形状で形成されていてもよい。また、リンク機構やカム機構等を用いて、回転レバー形状で形成されていてもよい。
【0043】
(4)上記した実施形態においては、押出付勢体64が圧縮バネであるものとして説明したが、本考案はこれに限定されるものではない。押出付勢体については、押付部分を軸線に沿って移動させるよう付勢できればよく、例えば、引っ張りバネやトーションバネが用いられてもよい。
【0044】
(5)上記した実施形態においては、防護具1は、野生動物の撃退手段として、スプレー撃退手段と打撃手段の他、特に別の手段を有していなかったが、本発明はこれに限定されるものではない。防護具1については、スプレー撃退手段と打撃手段に加え、例えば、先端にライトやスピーカを搭載して光や音により野生動物を威嚇するような、光撃退手段や音撃退手段を設けるといった、野生動物から身を守る多くの手段を搭載することも好ましい。
【符号の説明】
【0045】
1…防護具、2…打撃部、2a…流体流路、3…スプレー缶収容部、4…アクチュエータ、5…柄部、5a…エンドキャップ、6…噴射操作機構部、21…胴部分、22…縦爪部分、23…横爪部分、31…ケース、32…押し戻し弾性体、51…ガイド溝部分、51a…長溝形状部位、51b…切り欠き溝形状部位、61…押付部分、62…伝達棒、62a…フランジ形状部位、63…操作入力部分、64…押出付勢体、L…軸線方向、SC…スプレー缶、SCS…噴射用ステム
【図1】
図1
【図2】
図2
【図3】
図3
【図4】
図4
試作品図
メッセージ

発明者からのメッセージ 
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