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【考案の名称】舌筋強化器具 【実用新案権者】 【識別番号】514318736 【氏名又は名称】鈴木 由江 【住所又は居所】東京都中野区沼袋3丁目26番5号 【代理人】 【識別番号】100089026 【弁理士】 【氏名又は名称】木村 高明 【考案者】 【氏名】鈴木 設矢 【住所又は居所】東京都中野区沼袋3丁目26番5号 【要約】 (修正有) 【課題】使用者に応じた適切な付勢力によって舌筋群を鍛えると共に、協調運動として口輪筋や頸部・顔面の筋を含む口腔周囲筋を活性化し、摂食嚥下障害や口腔機能障害の改善を図ることができる舌筋強化器具を提供する。 【解決手段】上顎前歯を固定し得る上顎前歯固定部11と、上顎前歯固定部に上顎前歯が固定された場合には、舌背の前舌面に当接する舌背当接部12と、舌背当接部が前舌面に当接した場合には、舌背当接部を下顎方向へ付勢するように付勢力を付与する付勢部とを備え、上顎前歯を上顎前歯固定部に固定すると共に、舌背当接部を下方から付勢力に抗した舌による上顎方向への移動を繰り返すことができる。 【選択図】図1 【実用新案登録請求の範囲】 【請求項1】 上顎前歯を固定し得る上顎前歯固定部と、前記上顎前歯固定部に上顎前歯が固定された場合には、舌背の前舌面に当接する舌背当接部と、前記舌背当接部が前舌面に当接した場合には、前記舌背当接部を下顎方向へ付勢するように付勢力を付与する付勢部とを備え、上顎前歯を前記上顎前歯固定部に固定すると共に、前記舌背当接部を下方から前記付勢力に抗した舌による上顎方向への移動を繰り返すことを特徴とする舌筋強化器具。 【請求項2】 前記舌背当接部は下方へ膨出する膨出部を有して形成されていることを特徴とする請求項1記載の舌筋強化器具。 【請求項3】 前記付勢部はコイルスプリングにより形成され、異なるバネ定数のコイルスプリングに交換可能に構成されていることを特徴とする請求項2記載の舌筋強化器具。 【請求項4】 使用者が使用時に把持しうる把持部を備え、前記上顎前歯固定部は上顎前歯固定部本体部と前記上顎前歯固定部本体部を取り付けうる第一アーム部とからなると共に、前記舌背当接部は、前記第一アーム部と上下方向において所定間隔を置いて配置され、舌背当接部本体部と前記舌背当接部本体部を取り付けうる第二アーム部とからなり、前記第一アーム部及び第二アーム部は前記把持部内において前記コイルスプリングを介して、前記第二アーム部のみが上下方向に可動可能に接合されていることを特徴とする請求項3記載の舌筋強化器具。 【請求項5】 前記上顎前歯固定部本体部は横断面L字状に形成され、取付面部と、前記取付面部の端部に折曲形成された上顎前歯固定面部とを有すると共に、前記舌背当接部本体部は、横断面L字状に形成され、取付面部と、前記取付面部の先端部において折曲形成された舌背当接面部とを有していることを特徴とする請求項4記載の舌筋強化器具。 【請求項6】 前記上顎前歯固定面部の表面には、複数の小突起が所定間隔を置いて設けられていることを特徴とする請求項5記載の舌筋強化器具。 【請求項7】 前記第二アーム部には前記第一アーム部との間の移動距離を規制しうる規制部が設けられていることを特徴とする請求項4記載の舌筋強化器具。 【考案の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本考案は、舌筋強化器具に係り、特に、舌筋群が弱まることにより発生する摂食嚥下障害や口腔機能障害を防止し、又は解消しうる舌筋強化器具に関する。 【背景技術】 【0002】 一般に、口を閉じた状態で舌背が口蓋に接していない状態を低位舌の状態と称する。低位舌の状態は、舌筋をはじめとした口腔周囲筋が弱まっているために舌の自重を支えることが出来なくなって発生する。低位舌は、二重顎や気道が狭まり息苦しくなる直接的な原因となる。 【0003】 また、低位舌は、摂食嚥下障害や口腔機能障害を引き起こすこともある。例えば、歯列は、口腔内から舌筋群により受ける力と、口腔外から頬筋、口輪筋により受ける力のバランスが保たれた位置に並ぶので、舌筋が弱ることにより口輪筋と舌筋とのバランスが崩れると、歯列が不正になる場合もある。歯列不正になると、口腔機能障害を招くと共に、正しい筋肉の発育ができないので、顔貌不良を生じやすい。また、舌筋の機能低下は、口腔の運動機能の低下も招くので、咀嚼機能が低下し、嚥下障害を発症させる要因にもなる。 【0004】 従って、口腔機能の正常化に向けて、低位舌の状態を改善するためには、舌筋を積極的に強化する必要がある。 従来、舌筋を鍛えるための器具が各種提案されている。例えば、特許文献1には、口腔内に挿入されて使用される口腔機能のトレーニング用器具において、口腔内へ挿入される基部と、前記基部から膨出するように形成された弾性体からなる中空状の膨出部とを備え、前記膨出部の外面と内面との少なくとも一方における膨出方向の中間部には、段部が設けられていることを特徴とする口腔機能のトレーニング用器具が開示されている。 【0005】 また、特許文献2には、口腔内に挿入されて使用される口腔機能のトレーニング用器具において、口腔内への挿入方向に延びる板状をなし、口腔内に挿入される基部と、前記基部の口腔内側に設けられた弾性変形部とを備え、前記基部の上面及び下面には、夫々使用者の前歯が係止する上側係止部及び下側係止部が設けられ、前記上側係止部と前記下側係止部とは前記基部の長手方向にずれていることを特徴とする口腔機能のトレーニング用器具が開示されている。 【0006】 また、特許文献3には、舌の運動器具であって、棒状部材と、前記棒状部材の先端近傍に設けられる噛合い部と、前記噛合い部の端部に設けられる舌押し上げ部とを具備し、前記舌押し上げ部は、弾性変形可能な板状部材であり、前記噛合い部を、対向する任意の上下の歯で噛んで固定し、この状態で前記舌押し上げ部を舌で押し上げることで、舌の筋肉トレーニング運動が可能であることを特徴とする舌の運動器具が開示されている。 【0007】 また、特許文献4には、上顎歯に当接する上顎歯当接部と、舌背に当接する舌背当接部及び口蓋に当接する口蓋当接部と、上顎歯当接部と舌背当接部及び口蓋当接部とを連結する弾性を有する連結部と備え、舌筋に負荷を付与しうることを特徴とする舌筋強化具が開示されている。 【0008】 また、特許文献5には、弾性樹脂を成型してなり、実質的に人間の歯列に沿ったU字形に形成された咬合部と、前記咬合部の中央部から後方に延在する舌支え部と、前記咬合部の中央部から前方に延在する棒状の突出部とを具えることを特徴とする口腔筋トレーニング器具が開示されている。 【0009】 また、特許文献6には、上唇を当接する上唇当接部と、下唇を当接する下唇当接部と、上唇当接部及び下唇当接部とを連結する弾性を備えた連結体と、下唇当接部の上唇当接部側、又は上唇当接部の下唇当接部側に一端を固定し、口内方向に突設して、この突出方向の下面に舌の押圧受部を形成した弾性を有する舌受片とから成ることを特徴とする口輪筋及び舌筋鍛練器具が開示されている。 【0010】 前記特許文献1及び2に記載された器具は、いずれも膨出部を舌で押し上げるようにすると、膨出部が舌と硬口蓋とによって挟まれて上下方向に押し潰されるように作用し、舌筋をはじめとした口腔関連の筋肉や顔面の筋肉を鍛えることができるというものである。 しかしながら、特許文献1及び2に記載の器具にあっては、舌背に当接する膨出部が小さいために局所的にしか舌筋を鍛えることができない。従って、舌筋群をはじめとして口輪筋や頸部・顔面の筋を含む口腔周囲筋を活性化するという目的に対して、安定した訓練効果を得ることができないという不具合があった。 【0011】 また、前記特許文献3に記載された器具にあっては、舌筋への付勢において前記舌押し上げ部を構成する板状部材固有の弾性力を利用するため、使用者に応じた適切な付勢力を舌筋に付与できないという不具合があった。 【0012】 また、前記特許文献4〜6に記載された器具にあっては、いずれも舌背への当接部が小さいため、前記特許文献1及び2と同様の不具合があった。 【特許文献1】特開2013−223702号公報 【特許文献2】特開2013−192698号公報 【特許文献3】特開2011−83524号公報 【特許文献4】特開2009−28202号公報 【特許文献5】特開2008−67732号公報 【特許文献6】特開2006−288953号公報 【考案の開示】 【考案が解決しようとする課題】 【0013】 本考案は、以上のような従来からの不具合を解決するためのものであって、その課題は、使用者に応じた適切な付勢力によって舌筋群を鍛えると共に、協調運動として口輪筋や頸部・顔面の筋を含む口腔周囲筋を活性化し、摂食嚥下障害や口腔機能障害の改善を図ることができる舌筋強化器具を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0014】 前記課題を解決するために、請求項1に記載の考案にあっては、上顎前歯を固定し得る上顎前歯固定部と、前記上顎前歯固定部に上顎前歯が固定された場合には、舌背の前舌面に当接する舌背当接部と、前記舌背当接部が前舌面に当接した場合には、前記舌背当接部を下顎方向へ付勢するように付勢力を付与する付勢部とを備え、上顎前歯を前記上顎前歯固定部に固定すると共に、前記舌背当接部を下方から前記付勢力に抗した舌による上顎方向への移動を繰り返すことを特徴とする。 【0015】 従って、前記上顎前歯固定部に上顎前歯が固定された場合には、前記舌背当接部が前舌面に当接し、前記付勢部が前記舌背当接部を下顎方向へ付勢するように付勢力を付与し、前記舌背当接部を下方から前記付勢力に抗した舌による上顎方向への移動を繰り返すことができる。 【0016】 請求項2に記載の考案にあっては、前記舌背当接部は下方へ膨出する膨出部を有して形成されていることを特徴とする。 【0017】 従って、前記上顎前歯固定部に上顎前歯が固定された場合には、前記舌背当接部に形成された前記膨出部が前舌面に当接する。 【0018】 請求項3に記載の考案にあっては、前記付勢部はコイルスプリングにより形成され、異なるバネ定数のコイルスプリングに交換可能に構成されていることを特徴とする。 【0019】 従って、使用時に前記付勢部を形成するコイルスプリングを使用者の希望に応じた付勢力を有するコイルスプリングに交換することができる。 【0020】 請求項4に記載の考案にあっては、使用者が使用時に把持しうる把持部を備え、前記上顎前歯固定部は上顎前歯固定部本体部と前記上顎前歯固定部本体部を取り付けうる第一アーム部とからなると共に、前記舌背当接部は、前記第一アーム部と上下方向において所定間隔を置いて配置され、舌背当接部本体部と前記舌背当接部本体部を取り付けうる第二アーム部とからなり、前記第一アーム部及び第二アーム部は前記把持部内において前記コイルスプリングを介して、前記第二アーム部のみが上下方向に可動可能に接合されていることを特徴とする。 【0021】 従って、使用者が使用時に把持部を把持しうると共に、前記上顎前歯固定部に対して前記舌背当接部のみが上下方向に可動しうる。 【0022】 請求項5に記載の考案にあっては、前記上顎前歯固定部本体部は横断面L字状に形成され、取付面部と、前記取付面部の端部に折曲形成された上顎前歯固定面部とを有すると共に、前記舌背当接部本体部は、横断面L字状に形成され、取付面部と、前記取付面部の先端部において折曲形成された舌背当接面部とを有していることを特徴とする。 【0023】 従って、前記上顎前歯固定部本体部は前記取付面部により前記第一アーム部に取り付けることができると共に、前記舌背当接部本体部は前記取付面部により前記第二アーム部に取り付けることができる。 【0024】 請求項6に記載の考案にあっては、前記上顎前歯固定面部の表面には、複数の小突起が所定間隔を置いて設けられていることを特徴とする。 【0025】 従って、上顎前歯は前記複数の小突起のいずれかに当接することにより固定される。 【0026】 請求項7に記載の考案にあっては、前記第二アーム部には前記第一アーム部との間の移動距離を規制しうる規制部が設けられていることを特徴とする。 【0027】 従って、前記第二アーム部は前記第一アーム部との移動距離を規制される。 【考案の効果】 【0028】 請求項1に記載の舌筋強化器具にあっては、前記上顎前歯固定部に上顎前歯が固定された場合には、前記舌背当接部が前舌面に当接し、前記付勢部が前記舌背当接部を下顎方向へ付勢するように付勢力を付与し、前記舌背当接部を下方から前記付勢力に抗した舌による上顎方向への移動を繰り返すことができるので、使用者に応じた適切な付勢力によって舌筋群を鍛えると共に、協調運動として口輪筋や頸部・顔面の筋を含む口腔周囲筋を活性化することができる。また、口腔周囲筋の活性化に伴い、摂食嚥下障害や口腔機能障害の改善を図ることができる。 【0029】 請求項2に記載の舌筋強化器具にあっては、前記上顎前歯固定部に上顎前歯が固定された場合には、前記舌背当接部に形成された前記膨出部が前舌面に当接するので、前舌面の広範囲に亘って付勢力を与え、舌筋群を全域的に鍛えることができる。また、協調運動による口輪筋や頸部・顔面の筋を含む口腔周囲筋の活性化を効率よく行うことができる。 【0030】 請求項3に記載の舌筋強化器具にあっては、使用時に前記付勢部を形成するコイルスプリングを交換することができるので、前記付勢部による舌への付勢力を調節し、使用者に応じた適切な付勢力により、無理なく舌筋群を鍛えることができる。 【0031】 請求項4に記載の舌筋強化器具にあっては、使用者が使用時に把持部を把持しうると共に、前記上顎前歯固定部に対して前記舌背当接部のみが上下方向に可動しうるので、使用者が把持部を把持することにより、上顎前歯を前記上顎前歯固定部に対して確実に固定することができると共に、前記付勢部が前記舌背当接部に対して安定した付勢力を付与することができる。 【0032】 請求項5に記載の舌筋強化器具にあっては、前記上顎前歯固定部本体部は前記取付面部により前記第一アーム部に取り付けることができると共に、前記舌背当接部本体部は前記取付面部により前記第二アーム部に取り付けることができるので、使用後に前記上顎前歯固定部本体部及び前記舌背当接部本体部を取り外して洗浄し、衛生的に使用することができる。また、前記取付面部を統一された規格に形成することにより、異なる形状若しくは寸法を有する上顎前歯固定部本体部及び舌背当接部本体部と交換して使用することができる。 【0033】 請求項6に記載の舌筋強化器具にあっては、上顎前歯は前記複数の小突起のいずれかに当接することにより固定されるので、使用者の上顎前歯の位置に合わせて、上顎前歯を前記上顎前歯固定部に対し確実に固定して使用することができる。 【0034】 請求項7に記載の舌筋強化器具にあっては、前記第二アーム部は拡開角度を規制されるので、例えば、使用者が子どもであって開口量が小さいような場合においても、前記上顎前歯固定部及び前記舌背当接部を上下方向において適切な間隔に保つことができる。 【図面の簡単な説明】 【0035】 【図1】本考案に係る舌筋強化器具の一実施の形態を示す斜視図である。 【図2】本考案に係る舌筋強化器具の第一の実施の形態において、把持部の一端部側半部、上顎前歯固定部本体部及び舌背当接部本体部を外した状態でのII−II線相当断面図である。 【図3】本考案に係る舌筋強化器具の一実施の形態において、上顎前歯固定部本体部の拡大斜視図である。 【図4】本考案に係る舌筋強化器具の一実施の形態において、舌背当接部本体部の拡大斜視図である。 【図5】本考案に係る舌筋強化器具の第二の実施の形態において、把持部の一端部側半部、上顎前歯固定部本体部及び舌背当接部本体部を外した状態でのII−II線相当断面図である。 【考案を実施するための最良の形態】 【0036】 以下、添付図面に示す実施の形態に基づき、本考案を詳細に説明する。 図1及び図2に示すように、本考案の第一の実施の形態に係る舌筋強化器具10は、全体合成樹脂製であって、上顎前歯を固定し得る上顎前歯固定部11と、上顎前歯固定部11に上顎前歯が固定された場合には、舌背の前舌面に当接する舌背当接部12と、舌背当接部12が前舌面に当接した場合には、舌背当接部12を下顎方向へ付勢するように付勢力を付与する付勢部13とを備えている。 【0037】 また、図1及び図2に示すように、舌背当接部12は下方へ膨出する膨出部14を有して形成されている。付勢部13はコイルスプリング15により形成され、異なるバネ定数のコイルスプリングに交換可能に構成されている。 【0038】 また、本考案の第一の実施の形態に係る舌筋強化器具10は、使用者が使用時に把持しうる把持部16を備えている。上顎前歯固定部11は上顎前歯固定部本体部17と上顎前歯固定部本体部17を取り付けうる第一アーム部18とから構成されている。また、舌背当接部12は、第一アーム部18と上下方向において所定間隔を置いて配置され、舌背当接部本体部19と舌背当接部本体部19を取り付けうる第二アーム部20とから構成されている。 本実施の形態に係る第一アーム部18及び第二アーム部20は、把持部16内においてコイルスプリング15を介して、第二アーム部20のみが上下方向に可動可能に接合されている。 【0039】 また、図3に示すように、上顎前歯固定部本体部17は横断面L字状に形成され、取付面部21と、取付面部21の端部22に折曲形成された上顎前歯固定面部23とを有している。また、図4に示すように、舌背当接部本体部19は、横断面L字状に形成され、取付面部24と、取付面部24の先端部25において折曲形成された舌背当接面部26とを有している。 本実施の形態に係る上顎前歯固定面部23の表面27には、複数の小突起28、28、・・・が所定間隔を置いて設けられている。 【0040】 第一の実施の形態に係る舌筋強化器具10の構成について、添付図面を用いてより詳細に説明する。 図2に示すように、本実施の形態に係る第一アーム部18及び第二アーム部20は、夫々、合成樹脂により全体略細長直方体状に形成されている。第一アーム部18の先端部30には、上方に折曲形成された略直方体形状の取付凸部31が設けられると共に、第二アーム部20の先端部32には、下方に折曲形成された略直方体形状の取付凸部33が設けられている。 【0041】 また、図3に示すように、上顎前歯固定部本体部17の取付面部21は、上顎前歯の歯列弓と略同一の曲率を有する曲面として形成され、取付面部21の反上顎前歯固定面部側には下方に開口した凹状の取付凹部34を有する直方体状の取付部56が設けられている。また、図4に示すように、舌背当接部本体部19の取付面部24の反舌背当接面部側には、上方に開口した凹状の取付凹部35を有する直方体状の取付部57が設けられている。 本実施の形態に係る取付部56、57は取付凹部34、35を介して、取付凸部31、33に、夫々、着脱可能に取り付けられている。 【0042】 図3に示すように、本実施の形態に係る上顎前歯固定面部23は平面略楕円状に形成され、上顎前歯固定面部23の表面27に設けられた複数の小突起28、28、・・・は、夫々、円柱状に形成され、上顎前歯に当接して固定しうるように取付面部21方向へ膨出する円弧状に列をなして配設されている。 また、図4に示すように、本実施の形態に係る舌背当接面部26は全体略長方形板状に形成され、下方に膨出する膨出部14は舌背当接面部26の略全域に亘る滑らかな膨出曲面として形成されている。 【0043】 また、図2に示すように、本実施の形態に係る第一アーム部18及び第二アーム部20は、基端部36、37が一体に連設されている一方で、先端部30、32は基端部36、37側から先端部30、32側に至るに従って徐々に離間して拡開するように配設されている。基端部36、37の連設部には、横断面略円状に形成され、コイルスプリング15の中央コイル部38を収納しうるコイル収納部39が設けられている。 また、第一アーム部18及び第二アーム部20には、夫々、中央コイル部38に連設され、コイルスプリング15の両端棒状部40、40を係止しうる係止溝部41、42が長さ方向に沿って形成されている。 【0044】 また、コイル収納部39の後方には把持部固定部43が延設され、把持部固定部43には2つの固定孔44、44が上下方向に沿って穿設されている。また、第一アーム部18の基端部36から把持部固定部43にかけて第一アーム部固定部45が上方向へ延設されている。 【0045】 また、図2に示すように、コイルスプリング15の中央コイル部38は、コイル収納部39に収納され、コイルスプリング15の両端棒状部40、40は、夫々、第一アーム部18及び第二アーム部20に形成された係止溝部41、42に係止されている。 【0046】 図1及び図2に示すように、本実施の形態に係る把持部16は、薄型円盤状に形成された把持部本体16aと、把持部本体16aの径方向に延設された開口部16bとからなり、合成樹脂製の中空のケースとして厚さ方向に沿って分割可能に形成され、一端部側半部46と他端部側半部47とにより構成されている。また、一端部側半部46及び他端部側半部47にはネジ通し孔部48、49が、他端部側半部47にはナット固定孔部(図示せず)が厚さ方向において設けられ、六角穴付きボルト50及び六角ナット(図示せず)により接合されている。 【0047】 また、図2に示すように、把持部16の他端部側半部47の内面部51には、把持部固定部43に設けられた固定孔44、44に対応して固定ピン52、52が、夫々、突設され、固定ピン52、52が固定孔44、44に、夫々、挿入されることにより、第一アーム部18及び第二アーム部20の基端部36、37が、把持部16に対し固定されている。なお、図示しないが、把持部16の一端部側半部46の内面部においても、固定孔44、44に対応した固定ピンが突設されている。 また、第一アーム部固定部45に設けられたアーム固定孔53が、一端部側半部46及び他端部側半部47に設けられたネジ通し孔部48、49に係合することで、第一アーム部18が把持部16に対し固定されている。 【0048】 また、図2に示すように、把持部16の他端部側半部47の内面部51には、断面十字状に形成された固定突起54が形成され、固定突起54がコイルスプリング15の中央コイル部38を収納しうるコイル収納部39に挿入されることにより、コイルスプリング15が把持部16に対して挟持固定されている。なお、図示しないが、把持部16の一端部側半部46の内面部においても、断面十字状に形成された固定突起が形成されている。 【0049】 また、図1及び図2に示すように、第一アーム部18及び第二アーム部20の基端部36、37は、把持部16の内部に収納されている一方、第一アーム部18及び第二アーム部20の先端部30、32は、把持部16の開口部16bから前方へ突出するように配置されている。 【0050】 また、第一の実施の形態に係る舌筋強化器具10にあっては、前述のように舌筋強化器具10を口腔内に挿入して上顎前歯固定部11に上顎前歯を固定し、舌前面を舌背当接部12に形成された膨出部14の裏面側に当接させて舌を上下方向に動かして使用するものであり、舌背当接部12の拡開角度は本件考案者の知見に基づき、一般の成人の口腔の大きさを前提に構成されている。 【0051】 以上の構成を有する第一の実施の形態に対して、図5に示す第二の実施の形態に係る舌筋強化器具55は、子どもの口腔の大きさを前提に構成されている。 第二の実施の形態に係る舌筋強化器具55にあっては、図5に示すように、第二アーム部20には子どもの小さな口腔の大きさに適合するように、把持部16のケース内側面部16cに当接して、第二アーム部20の拡開角度を規制しうる規制部29が設けられており、規制部29を有する点が第一の実施の形態に係る舌筋強化器具10との相違点である。 【0052】 以下、第一の実施の形態に係る舌筋強化器具10の作用について、添付図面を用いて説明する。 図1に示すように、本実施の形態に係る舌筋強化器具10は、把持部16を手で把持して口腔内に挿入し、上顎前歯を上顎前歯固定部11に固定した状態において、舌背当接部12を前舌面に当接させ、舌によって舌背当接部12をコイルスプリング15の付勢力に抗して下方から上顎方向へ繰り返し移動させて使用する。 この際、付勢部13が舌背当接部12に対し下顎方向への付勢力を付与しているので、舌による前記付勢力に抗した運動によって舌筋群を鍛えることができる。特に、舌背当接部12に形成された膨出部14が前舌面に当接するので、前舌面の広範囲に亘って付勢力を与え、舌筋群を全域的に鍛えることができる。 従って、協調運動による口輪筋や頸部・顔面の筋を含む口腔周囲筋の活性化を効率よく行うことができ、また、口腔周囲筋の活性化に伴い、摂食嚥下障害や口腔機能障害の改善を図ることができる。 【0053】 また、図2に示すように、本実施の形態に係る舌筋強化器具10にあっては、第一アーム部固定部45に設けられたアーム固定孔53が、他端部側半部47に設けられたネジ通し孔部49に係合することで、第一アーム部18が把持部16に対し固定されているので、第二アーム部20のみが上下方向に可動する。すなわち、図1に示すように、第二アーム部に取り付けられた舌背当接部12のみが上下方向に可動する構成を有している。 従って、使用者が使用時に把持部16を把持しうると共に、上顎前歯固定部11に対して舌背当接部12のみが上下方向に可動しうるので、使用者が把持部16を把持することにより、上顎前歯を上顎前歯固定部11に対して確実に固定することができると共に、付勢部13が舌背当接部12に対して安定した付勢力を付与することができる。 【0054】 また、図1及び図2に示すように、本実施の形態に係る舌筋強化器具10にあっては、把持部16において、六角穴付ボルト50を外し、一端部側半部46を他端部側半部47から取り外すことにより、把持部16の内部に収納されている第一アーム部18及び第二アーム部20の基端部36、37とコイルスプリング15とが露呈する。 さらに、第一アーム部18及び第二アーム部20は、把持部固定部43の固定孔44、44から他端部側半部47の固定ピン52、52を、夫々、引き抜くと共に、コイル収納部39を固定突起54から抜き取ることにより、他端部側半部47から取り外すことができる。 また、コイルスプリング15は、両端棒状部40、40を係止溝部41、42から、夫々、脱出させることにより、第一アーム部18及び第二アーム部20から取り外すことができる。前記操作を逆の手順に沿って行うことにより、コイルスプリング15を予め準備した異なるバネ定数のコイルスプリングに交換することができる。 従って、使用者に応じた付勢力を付与するバネ定数のコイルスプリングに交換して舌筋強化器具10を使用することにより、使用者に応じた適切な付勢力でもって無理なく舌筋群を鍛えることができる。 【0055】 また、図1及び図2に示すように、本実施の形態に係る上顎前歯固定部本体部17は、取付凹部34が第一アーム部18の先端部30に上顎方向に折曲形成された取付凸部31に対して着脱可能に取り付けられていると共に、舌背当接部本体部26は、取付凹部35が第二アーム部20の先端部32に下顎方向に折曲形成された取付凸部33に対して着脱可能に取り付けられている。 従って、使用時において、上顎前歯が上顎前歯固定部本体部17に対し下顎方向に付勢する力、及び舌が舌背当接部本体部26に対し上顎方向に付勢する力は、取付凹部34、35を取付凸部31、33に係合させる方向に作用するため、使用中に上顎前歯固定部本体部17及び舌背当接部本体部26が外れるといった事態を防止することができる。 また、取付凸部31、33は略直方体状に形成されているので、係合状態における回転を抑止することができ、使用時に上顎前歯固定部本体部17及び舌背当接部本体部26が回転するといった事態を防止することができる。 また一方で、舌筋強化器具10は合成樹脂製であることから、使用後に上顎前歯固定部本体部17及び舌背当接部本体部19を容易に取り外して洗浄し、衛生的に使用することができる。また、取付面部21、24を統一された規格に形成することにより、異なる形状若しくは寸法を有する上顎前歯固定部本体部及び舌背当接部本体部と交換して使用することができる。 【0056】 また、図1及び図3に示すように、本実施の形態に係る上顎前歯固定部11にあっては、上顎前歯は上顎前歯固定面部23に設けられた複数の小突起28、28、・・・のいずれかに当接することにより固定されるので、使用者の上顎前歯の位置に合わせて、上顎前歯を上顎前歯固定部11に対し確実に固定して使用することができる。 【0057】 また、第二の実施の形態に係る舌筋強化器具55にあっては、図5に示すように、第二アーム部20の下端部に設けられた規制部29が把持部16のケース内側面部16cに当接することにより第二アーム部20の拡開角度を規制されるので、例えば、使用者が子どもであって開口量が小さいような場合においても、上顎前歯固定部11及び舌背当接部12を上下方向において適切な間隔に保つことができる。 【0058】 本実施の形態に係る付勢部13はコイルスプリング15により形成されている場合を例に説明したが、前記構成に限定されず、付勢力を付与するものであればよい。 また、本実施の形態に係る上顎前歯固定部11は上顎前歯固定部本体部17と上顎前歯固定部本体部17を取り付けうる第一アーム部18とからなると共に、舌背当接部12は、第一アーム部18と上下方向において所定間隔を置いて配置され、舌背当接部本体部19と舌背当接部本体部19を取り付けうる第二アーム部20とからなる場合を例に説明したが、前記構成に限定されない。 【0059】 また、本実施の形態に係る上顎前歯固定部本体部17は横断面L字状に形成され、取付面部21と、取付面部21の端部22に折曲形成された上顎前歯固定面部23とを有すると共に、舌背当接部本体部19は、横断面L字状に形成され、取付面部24と、取付面部24の先端部25において折曲形成された舌背当接面部26とを有している場合を例に説明したが、前記構成に限定されない。 【0060】 また、本実施の形態に係る上顎前歯固定面部23の表面27には、複数の小突起28、28、・・・が所定間隔を置いて設けられている場合を例に説明したが、前記構成に限定されず、上顎前歯を固定できる構成であればよい。 【産業上の利用可能性】 【0061】 本考案は、舌筋群を鍛える舌筋強化器具に広く適用可能であり、産業上利用可能性を有している。 【符号の説明】 【0062】 10、55:舌筋強化器具 11:上顎前歯固定部 12:舌背当接部 13:付勢部 14:膨出部 15:コイルスプリング 16:把持部 16a:把持部本体 16b:開口部 16c:ケース内側面部 17:上顎前歯固定部本体部 18:第一アーム部 19:舌背当接部本体部 20:第二アーム部 21、24:取付面部 22:端部 23:上顎前歯固定面部 25:先端部 26:舌背当接面部 27:表面 28:小突起 29:規制部 30、32:先端部 31、33:取付凸部 34、35:取付凹部 36、37:基端部 38:中央コイル部 39:コイル収納部 40:両端棒状部 41、42:係止溝部 43:把持部固定部 44:固定孔 45:第一アーム固定部 46:一端部側半部 47:他端部側半部 48、49:ネジ通し孔部 50:六角穴付きボルト 51:内面部 52:固定ピン 53:アーム固定孔 54:固定突起 56、57:取付部 【図面の簡単な説明】 【0035】 【図1】本考案に係る舌筋強化器具の一実施の形態を示す斜視図である。 【図2】本考案に係る舌筋強化器具の第一の実施の形態において、把持部の一端部側半部、上顎前歯固定部本体部及び舌背当接部本体部を外した状態でのII−II線相当断面図である。 【図3】本考案に係る舌筋強化器具の一実施の形態において、上顎前歯固定部本体部の拡大斜視図である。 【図4】本考案に係る舌筋強化器具の一実施の形態において、舌背当接部本体部の拡大斜視図である。 【図5】本考案に係る舌筋強化器具の第二の実施の形態において、把持部の一端部側半部、上顎前歯固定部本体部及び舌背当接部本体部を外した状態でのII−II線相当断面図である。 |
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【図1】 |
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【図2】 |
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【図3】 |
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【図4】 |
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