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【考案の名称】スリングシート 【実用新案権者】 【識別番号】594185835 【氏名又は名称】田熊 規方 【住所又は居所】東京都国分寺市東元町2丁目5番20号 【代理人】 【識別番号】100087550 【弁理士】 【氏名又は名称】梅村 莞爾 【考案者】 【氏名】田熊 規方 【住所又は居所】東京都国分寺市東元町2丁目5番20号 【要約】 (修正有) 【課題】挙上装置のフック部の先端にスリングシートの吊り紐が載置される不安定な状態となることを解消できる、スリングシートを提供する。 【解決手段】被介護者の背側にあてがわれる基布体11と、この基布体の周縁部に複数設けられ、挙上装置が備えるフック部に係止可能な環状領域を形成する平たい帯状の吊り紐12とを備えるスリングシート10において、吊り紐は、フック部を一面側から他面側へ挿通可能とする切れ目15を備える。この切れ目によって吊り紐がフック部の先端上に載置されたとしても、フック部の先端が吊り紐に設けられた切れ目を押圧して拡開し、切れ目を介して吊り紐がフック部に沿って滑り落ちる。ゆえに、吊り紐はフック部内に納まって確実に引っ掛かった状態となり、スリングシートの不安定な吊り下げ状態が作り出されることが回避される。 【選択図】図1 【実用新案登録請求の範囲】 【請求項1】 被介護者を挙上装置によって移動させるときに用いられるスリングシートであって、 寝たままもしくは座った状態の被介護者の背側にあてがわれる基布体と、 この基布体の周縁部に複数設けられ、その一端側と他端側とが前記基布体に取り付けられることで、前記挙上装置が備えるフック部に係止可能な環状領域を形成する平たい帯状の吊り紐とからなり、 前記吊り紐は、前記フック部を一面側から他面側へ挿通可能とする不安定係止状態回避手段を備えていることを特徴とするスリングシート。 【請求項2】 前記不安定係止状態回避手段は、前記吊り紐の長さ方向に沿って線状に形成された切れ目であることを特徴とする請求項1に記載のスリングシート。 【請求項3】 前記不安定係止状態回避手段は、前記吊り紐の幅方向中央から放射状に形成された切れ目であることを特徴とする請求項1に記載のスリングシート。 【請求項4】 前記不安定係止状態回避手段は、前記切れ目の拡開を制止する閉塞手段をさらに備えることを特徴とする請求項2又は3に記載のスリングシート。 【請求項5】 前記閉塞手段は、前記切れ目を全体的又は部分的に覆う被覆材と、前記被覆材を前記吊り紐に対して着脱自在とする係止部材とから構成されていることを特徴とする請求項4に記載のスリングシート。 【請求項6】 前記係止部材は、一対の面ファスナであることを特徴とする請求項5に記載のスリングシート。 【請求項7】 前記係止部材は、一対のホックであることを特徴とする請求項5に記載のスリングシート。 【考案の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本願考案は、スリングシートに係り、詳しくは、スリングシートの吊り紐が挙上装置(クレーン)のフック部から脱落してしまう虞を生じないように改良した技術に関する。 【背景技術】 【0002】 近年、起伏や寝返りの困難な老人や病人、傷害者等の介護が大きな問題となっている。特に、少子高齢化社会の到来により、高齢者自身が介護者にならなければいけない事態があり、たとえば、高齢者が自身よりも高齢の者の介護を行う、いわゆる老-老介護が現実問題として発生している。 【0003】 この様な介護においては、介護者が自らの力で被介護者を抱きかかえたり、持ち上げたりして移動させ、ベッドの敷布の交換や入浴等をさせなければならない等、極めて労力を必要とし、老齢な介護者にはとても困難な作業である。 【0004】 そこで、従来から起伏や寝返りの困難な要介護者をベッド、車椅子、便座、風呂等の相互間で移動させるときに、要介護者の安全等を確保し、また介護者の負担を軽減するため、挙上装置等を使用する方法が知られている。この挙上装置を使用する方法では、被介護者をスリングシートに載せた後、スリングシートを吊り上げるためにその周縁部等に設けられた吊り紐を挙上装置のフック部に引っ掛け、吊り上げることで使用される。もちろん、数名の介護者が吊り紐を掴んで持ち上げるなどして使用される場合もある。(例えば、 特許文献1参照)。 【0005】 しかしながら、スリングシートの吊り紐は、一般的に平たい帯状をしている。そのため、吊り紐が挙上装置のフック部に正しく引っ掛った状態ではなく、たとえば、図7(A)に示すように、介護者の不注意によって吊り紐112がフック部Fの先端(爪)上に載置される不安定な状態を作り出してしまうことがある。 このような不安定な載置状態のまま挙上装置によってスリングシートを吊り上げると、図7(B)に示すように、帯状をした吊り紐に被介護者の体重が掛かり、吊り紐は下方に向かって略「く」の字状に曲折したものとなる。 【0006】 さらに、被介護者の移動を続けると、フック部Fの先端上での吊り紐112のバランスが徐々に崩れ、吊り紐112がフック部Fの先端から次第に滑り落ちるものとなる。この際、図8において破線矢印で示すように、吊り紐112がフック部Fの先端から内側に滑り落ち、吊り紐112がフック部F内に納まって確実に引っ掛かった安定した状態となれば良いが、図9において破線矢印で示すように、吊り紐112がフック部Fの先端から外側に滑り落ち、吊り紐112がフック部Fから完全に外れてしまうことがある。 【0007】 つまり、スリングシートの吊り紐112が挙上装置のフック部Fの内側に正しく引っ掛っていないと、挙上装置を用いた被介護者の移動中に吊り紐112がフック部Fから外れ、スリングシートの吊り上げ状態のバランスを崩してスリングシートから被介護者を落下させてしまう事故を引き起こす虞がある。 【0008】 このような吊り紐112の不確実な引っ掛け状態を引き起こしてしまう一因として、作業時における介護者の視線や、介護者が抱える仕事量が一因であると考えられる。つまり、挙上装置を使用する際、介護者は斜め下から見上げる方向で吊り紐112をフック部Fに引っ掛けるようにしているため、介護者は視線の角度によって吊り紐112のフック部Fへの引っ掛け状態を見誤ってしまうことがある。また、決まった時間内に多くの業務を片付けなければならないといった介護者の心理状態が焦りとなり、吊り紐112のフック部Fへの引っ掛け状態の確認作業を疎かにしてしまうことがある。 【0009】 そこで、吊り紐がフック部の先端上に載置(不安定係止)しないように、吊り紐を、その断面が円形等の立体形状をしたロープやワイヤ等とすることが考えられる。 ところが、吊り紐は、スリングシートの周縁部に縫製等によって取り付けられるものであるため、平面的な帯状のものが望ましく、断面が円形等の立体形状をしたものとすると、スリングシートに対して吊り紐の端部を取り付けることが困難なものとなってしまう。 【0010】 また、スリングシートを折り畳む場合、吊り紐の断面が円形等の立体形状をしたものであると、吊り紐をスリングシートの周縁部から綺麗に内側へ折り畳むことが困難であると共に、全体的に嵩張った収納し辛いものとなってしまう。 【0011】 そのため、出願人は、吊り紐の断面形状を円形等の立体形状とすることなく、吊り紐がフック部の先端上に載置しないようにする手段として、吊り紐の一面側に、部分的に突出する肉厚部材を設けることを提案している(特許文献2参照)。 【0012】 このような吊り紐は、肉厚部材が妨げとなって一面側がフック部の先端上に載置されることがなく、偶然に吊り紐の一面側がフック部の先端上に載置される状態が作り出されたとしても、スリングシートの吊り上げ作業の初期段階において吊り紐はバランスを崩し、フック部の内側もしくは外側の何れかに落ちるため、不安定な吊り下げ状態が作り出されることが事前に回避されることとなる。 【0013】 また、吊り紐の他面側がフック部の先端上に載置された場合でも、一面側において突出する肉厚部材をフック部の内側に向かって指等で押し込むように操作することで、吊り紐はフック部の先端から内側に脱落し、フック部内に納まって確実に引っ掛かった状態となる。ゆえに、吊り紐は不安定な吊り下げ状態が容易に解消されるものとなるため非常に望ましい。 【0014】 このように、吊り紐の一面側において部分的に突出する肉厚部材を設ける手段は望ましいものであるが、さらに安易な手段によって不安定な吊り下げ状態が作り出されることを回避する手段の提案が望まれている。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0015】 【特許文献1】 特開2001-87324号公報 【特許文献2】 実用新案登録第3189048号公報 【考案の概要】 【考案が解決しようとする課題】 【0016】 本考案は、上記事情に鑑みて成されたものであり、挙上装置のフック部の先端にスリングシートの吊り紐が載置される不安定な状態となることを解消し、スリングシートを安全に吊り上げることを可能とした新たな技術を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0017】 今般、出願人は鋭意研究の結果、吊り紐の一面側に部分的に突出する肉厚部材を設けることなく、不安定な吊り下げ状態が作り出されることを回避される手段を、次のとおり創出した。 【0018】 すなわち、本考案は、被介護者を挙上装置によって移動させるときに用いられるスリングシートであって、寝たままもしくは座った状態の被介護者の背側にあてがわれる基布体と、この基布体の周縁部に複数設けられ、その一端側と他端側とが前記基布体に取り付けられることで、挙上装置が備えるフック部に係止可能な環状領域を形成する平たい帯状の吊り紐とからなり、前記吊り紐は、フック部の先端を一面側から他面側へ挿通可能とする不安定係止状態回避手段を備えていることを特徴とする。 【0019】 本考案のスリングシートにおいて、不安定係止状態回避手段は、たとえば、吊り紐の幅方向の中央部に長さ方向に沿って線状に形成された拡開可能な切れ目や、吊り紐の幅方向中央から放射状に形成された拡開可能な切れ目、もしくは事前に拡開した開口とすることができる。 【0020】 また、本考案のスリングシートにおいて、不安定係止状態回避手段は、切れ目の拡開を制止する閉塞手段をさらに備えるものとしても良い。 この閉塞手段としては、たとえば、切れ目を全体的又は部分的に覆う被覆材と、この被覆材を吊り紐に対して着脱自在に取り付けることを可能とする、たとえば、一対の面ファスナや一対のホック等の係止部材とから構成されたものとすることができる。 【考案の効果】 【0021】 本考案のスリングシートは、吊り紐が、フック部の先端を一面側から他面側へ挿通可能とする不安定係止状態回避手段の一つとして切れ目を備えるものとなっている。ゆえに、フック部の先端上に吊り紐が配されたとしても、吊り紐は挙上装置によるスリングシートの吊り上げ開始時に、フック部の先端が吊り紐の切れ目を押圧することで一面側から他面側への挿通を可能とし、吊り紐はフック部内に納まって確実に引っ掛かった状態となる。 【0022】 したがって、スリングシートの吊り紐の中途半端な引っ掛けによってもたらされる不安定な吊り下げ状態を解消し、挙上装置を用いた被介護者の移動中に吊り紐がフック部の外側に外れてしまう虞をなくし、安全にスリングシートを吊り上げることができる。 【図面の簡単な説明】 【0023】 【図1】本考案に係るスリングシートを示す平面(展開)図である。 【図2】本考案に係るスリングシートの吊り紐に設けられた不安定係止状態回避手段(切れ目)を示す(A)部分拡大平面図、(B)I-I線に沿う断面図である。である。 【図3】図2に示す吊り紐の吊り下げ動作を順次説明する模式図である。 【図4】本考案に係るスリングシートに設けられた不安定係止状態回避手段(切れ目)に閉塞手段をさらに設けた状態を示す(A)部分拡大一部破断平面図、(B)II-II線に沿う断面図である。 【図5】図4に示す吊り紐の吊り下げ動作を順次説明する模式図である。 【図6】本考案に係るスリングシートの吊り紐に設けられた他の不安定係止状態回避手段(切れ目)を示す部分拡大平面図である。 【図7】従来のスリングシートを用いたときの吊り紐の動作を順次説明する模式図である。 【図8】従来のスリングシートを用いたときの吊り紐の動作を説明する、吊り紐がフック部の先端から内側に滑り落ちてフック部に引っ掛かった状態を示す模式図である。 【図9】従来のスリングシートを用いたときの吊り紐の動作を説明する、吊り紐がフック部の先端から外側に滑り落ちてフック部から外れてしまった状態を示す模式図である。 【考案を実施するための形態】 【0024】 以下、本考案における実施の形態の一例について、図面を参照して説明する。 なお、以下に述べる実施の形態は、本考案の好適な具体例であるため技術的に種々の限定が付されているが、本考案の範囲は、以下の説明において特に限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。 【0025】 本実施の形態におけるスリングシート10は、被介護者を挙上装置によって移動させるときに用いられるものであって、図1に示すように、基布体11と、吊り紐12とから構成され、当該吊り紐12は、不安定係止状態回避手段の一つとして切れ目15を備えている。 【0026】 ここで、図示しないが、挙上装置は、支柱に回動自在に取付けた回動スリーブと、この回動スリーブの上端部に傾動可能に設けた吊り下げバーと、吊り下げバーの先端部に設けたフック部と、回動スリーブと吊り下げバーとの間に設けたリニアアクチュエータとで構成されている。 本考案のスリングシート10は、この挙上装置のフック部に吊り紐12を掛止し、被介護者を乗せて吊り上げるものとなっている。 【0027】 基布体11は、寝たままもしくは座った状態の被介護者の背側にあてがわれ、被介護者の大腿部から背中を支えるように形成されたシート体である。 この基布体11は、たとえば、ナイロンやポリエステル等の化学繊維製布、又はナイロン製メッシュ等により構成されている。また、基布体11の適宜箇所には、補強帯13が設けられており、たとえば、100Kg以上の荷重に耐えられるように縫製されたものとなっている。 【0028】 図1は、スリングシート10の背面側(外側)を示すものであり、図1において、基布体11は、少なくとも尻部を十分に覆うことができ、下方に左右の脚サポート部がそれぞ れ延設された、脚分離型のスリングシートを構成するものとして示されている。なお、図中の符号14は、介護用バンドである。 【0029】 吊り紐12は、その一端側と他端側とが基布体11の周縁部に取り付けられることで、挙上装置が備えるフック部に係止可能な環状領域を形成する平たい帯状体である。 この吊り紐12は、基布体11の周縁部に設けられた補強帯13を介して複数取り付けられており、これらの吊り紐12を挙上装置が備えるフック部に取り付けることで、挙上装置によってスリングシート10をバランス良く持ち上げ、被介護者を移動可能とするものである。 【0030】 図1において、吊り紐12は、基布体11の左右の上端と左右の下端にそれぞれ、合計4つ設けられたものとして示されており、左右の下端に設けられた吊り紐12,12が、上述した左右の脚サポート部となっている。 なお、本実施の形態では、吊り紐12は4つ設けられたものとなっているが、通常のスリングシートでは4〜6点で吊り上げるものとなっているため、吊り紐12の設置数はこれに限定されず、適宜所望の数とすることができる。 【0031】 切れ目15は、図2に示すように、吊り紐12の一面12a側から他面12b側に貫通する開口領域であって、フック部での押圧によって拡開し、挿通可能となるものである。 この切れ目15は、吊り紐12における長さ方向の一部分、具体的には、スリングシートを吊り上げたときに荷重が掛かる支点となる中央領域に、長さ方向に沿って設けられている。また、切れ目15には、少なくとも長さ方向両端の縁に、不用意に裂けないように補強のための糸かがりが施されたものとなっている。 【0032】 また、切れ目15の形状は、フック部が挿通可能なように拡開することとなるのであれば特に限定されず、たとえば、図2に示すように、吊り紐12の幅方向の中央部に長さ方向に沿って形成された、平面視一直線状をしたものとすることができる。 【0033】 このような切れ目15を備える吊り紐12は、図3に示すように動作する。 まず、図3(A)に示すように、吊り紐12の一面がフック部Fの先端(爪)上に位置して配されたとする。 この場合、上述した図7に示す従来の吊り紐112では、このまま挙上装置によってスリングシート10を吊り上げると、吊り紐112は下方に向かって略「く」の字状に曲折し、やがてフック部Fの先端上での吊り紐112のバランスが徐々に崩れて滑り落ち、最悪の場合、吊り紐112がフック部Fから外れて滑落してしまうおそれがある。 【0034】 ところが、本考案では、挙上装置によってスリングシート10を吊り上げると、図3(B)において白抜き矢印で示すように、吊り紐12に荷重(すなわち、被介護者の体重)が掛かることで、フック部Fの先端が吊り紐12に設けた切れ目15を押圧して拡開するものとなる。 【0035】 引き続き、スリングシート10を吊り上げて被介護者の移動を続けると、図3(C)に示すように、切れ目15はさらに拡開してフック部Fの先端が切れ目15を挿通し、切れ目15を介して吊り紐12の幅方向の一部がフック部Fの内側に滑り落ち、吊り紐12はフック部F内に納まって確実に引っ掛かった状態となる。ゆえに、吊り紐12は、幅方向の一部だけが引っ掛かった状態でも破損しない強度を備えたものとなっている。 【0036】 このように、本スリングシート10によれば、吊り紐12の中途半端な引っ掛けによってもたらされる不安定な吊り下げ状態を解消し、被介護者を安全に吊り上げて、吊り上げ途中における被介護者の不慮の落下を防止することが出来る。 【0037】 なお、吊り紐12は、切れ目15側が長さ方向に沿う外縁部側より柔軟となるように、たとえば、外縁部に糸かがりを施して外縁部を硬くするものとしても良い。 これにより、フック部の先端に吊り紐12の一面が位置して配された場合、吊り紐12における外縁部側の伸びより切れ目15側の伸びが優れ、フック部の先端が切れ目15に向かって誘導され易く、吊り紐12がフック部から外れてしまうおそれを抑制することが出来る。 【0038】 また、本実施の形態におけるスリングシート10は、図4に示すように、不安定係止状態回避手段としての切れ目15が閉塞手段16をさらに備えるものとしても良い。すなわち、吊り紐12が挙上装置のフック部Fに正しく引っ掛からずに、吊り紐12に設けた切れ目15が機能するようなことは稀であるが、何回か切れ目15が機能することで切れ目15の周囲がよれよれになって切れ目15が無闇に拡開(開口)した状態となってしまうことが想定される。その場合、フック部Fに対する吊り紐12の引っ掛け作業が行い難くなってしまうため、閉塞手段16を設けることによって切れ目15の無闇な拡開を抑止するものである。 【0039】 このような閉塞手段16としては、たとえば、切れ目15を全体的又は部分的に覆う被覆材17と、この被覆材17を吊り紐12に対して着脱自在とする係止部材18とから構成されたものとすることができる。 【0040】 被覆材17は、切れ目15を覆うことができれば素材は特に限定されない。ゆえに、基布体11と同様に、たとえば、ナイロンやポリエステル等の化学繊維製布、又はナイロン製メッシュ等により構成されたものとすることができる。 【0041】 また、係止部材18は、吊り紐12に対して被覆材17を装着可能とし、切れ目15が無闇に拡開しないように係止状態を維持すると共に、フック部Fの先端による押圧によって係止状態が容易に解除される機能を有するものが望ましい。このような係止部材18としては、具体的に、たとえば、一対の面ファスナやホックとすることができる。 【0042】 ゆえに、このような閉塞手段16によれば、被覆材17が切れ目15を覆っている状態では、係止部材18による係止よって切れ目15の拡開を制止するが、フック部Fの先端が被覆材17を押圧することで、係止部材18(18a,18b)による係止状態が容易に解除されて被覆材17が捲れるものとなる。そうすると、切れ目15は拡開可能となり、フック部Fの先端が吊り紐12の一面側から他面側への挿通を可能とすることができる。 【0043】 図4において、被覆材17によって切れ目15が全体的に覆われ、被覆材17は一対の面ファスナ18a,18bによって吊り紐12に対して着脱自在となる閉塞手段16が示されている。 なお、互いに係合可能な一対の面ファスナ18a,18bは、一方の面ファスナ18aが被覆材17に取り付けられ、他方の面ファスナ18bが吊り紐12に取り付けられたものとなっている。また、図中の符合19は、被覆材17を吊り紐12に固定するために縫製した際のミシン目である。 【0044】 このように切れ目15が閉塞手段16を備える場合の吊り紐12は、図5に示すように動作する。 まず、図5(A)に示すように、他面側に閉塞手段16を備える吊り紐12の一面側がフック部Fの先端(爪)上に位置して配されたとする。 この際、吊り紐12は、閉塞手段16を構成する一対の面ファスナ18a,18bの係 合によって被覆材17は吊り紐12に装着され、切れ目15の無闇な拡開が抑止されて扱い易いものとなっている。 【0045】 引き続き、挙上装置によってスリングシート10を吊り上げると、図5(B)において白抜き矢印で示すように、吊り紐12に荷重(すなわち、被介護者の体重)が掛かることでフック部Fの先端が吊り紐12に設けられた切れ目15を押圧して拡開すると共に、被覆材17を吊り紐12に装着する一対の面ファスナ18a,18bの係合が解除され、被覆材17が吊り紐12から捲れ上がるものとなる。 【0046】 さらに、スリングシート10を吊り上げて被介護者の移動を続けると、図5(C)に示すように、切れ目15はさらに拡開してフック部Fの先端が切れ目15を挿通し、切れ目15を介して吊り紐12の幅方向の一部がフック部Fの内側に滑り落ち、吊り紐12はフック部F内に納まって確実に引っ掛かった状態となる。 【0047】 したがって、本スリングシート10によれば、切れ目15が閉塞手段16を備えることによって、フック部Fに対する吊り紐12の引っ掛け作業に支障のないものとすることができると共に、吊り紐12の中途半端な引っ掛けによってもたらされる不安定な吊り下げ状態を解消し、安全に吊り上げることができる。 【0048】 なお、上述した実施の形態では、切れ目の形状が平面視一直線状をしたものとして説明したが、本考案はこれに限定せず、たとえば、図6に示すように、吊り紐12の幅方向中央から均等に四方に放射状に開口する平面視X状に形成された切れ目25としても良い。 また、図示しないが、切れ目は、吊り紐の幅方向中央から放射状に三方又は五方もしくはそれ以上の複数方向に開口するものや、不均等に放射状に開口するものとしても良い。 【符号の説明】 【0049】 F フック部、10 スリングシート、11 基布部、12 吊り紐、13 補強布、14 介護用バンド、15,25 切れ目(不安定係止状態回避手段)、16 閉塞手段、17 被覆材、18 係止部材(面ファスナ)、19 縫い目。 |
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【図1】 |
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【図2】 |
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【図3】 |
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【図4】 |
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【図5】 |
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【図6】 |
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【図7】 |
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【図8】 |
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【図9】 |
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