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健康・医療
 
【発明の名称】介護用ベッド
【特許権者】
【識別番号】507034229
【氏名又は名称】石田 孝行
【住所又は居所】茨城県神栖市平泉2513−1
【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
【発明者】
【氏名】石田 孝行
【住所又は居所】茨城県神栖市平泉2513−1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
要介護者の臀部を支持する臀受け部と、前記臀部より上半身部分を支持する上半身受け部と、前記臀部より下半身部分を支持する下半身受け部と、を有するマット体と、
前記上半身受け部の足元側部分を支点に該上半身受け部を回動させる背上げ装置と、
前記上半身受け部の左側部分と右側部分のいずれか一方側を上昇させて該上半身受け部を凹状に湾曲させる寝返り装置と、
を備え、
前記寝返り装置は、前記上半身受け部が水平姿勢に維持されている時にのみ、前記上半身受け部の左側部分又は右側部分の上昇動作が可能なように設けられていることを特徴とする介護用ベッド。
【請求項2】
前記寝返り装置は、前記上半身受け部の左右両側部分に沿ってそれぞれ設けられる枠体と、該枠体に対して頭部側及び足元側にスライド可能に設けられる可動部材と、前記枠体に対して下方から当接可能に設けられる押上げ部材と、を備え、頭部側と足元側のうちのいずれか一方側に前記可動部材をスライドさせると、該可動部材が前記枠体に係合すると共に、前記背上げ装置が前記寝返り装置から切り離されて、該背上げ装置による前記上半身受け部の回動動作が許容される一方、頭部側と足元側のうちのいずれか他方側に前記可動部材をスライドさせると、該可動部材が前記押上げ部材に係合し、前記寝返り装置による前記上半身受け部の左側部分又は右側部分の上昇動作が許容されることを特徴とする請求項1に記載の介護用ベッド。
【請求項3】
前記臀受け部は、前記寝返り装置による前記上半身受け部の左側部分又は右側部分の上昇動作に伴い、該上昇した左右いずれかの方向にスライドするように設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の介護用ベッド。
【請求項4】
前記背上げ装置は、前記上半身受け部を回動させる際に、該上半身受け部の左右両側部分を上昇させて該上半身受け部を凹状に湾曲させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1の請求項に記載の介護用ベッド。
【請求項5】
前記臀受け部が下方に収納されることにより形成される開口部に移動可能な便器装置を備え、
前記下半身受け部は、
頭部側中央において上昇可能に設けられ、前記要介護者の大腿部を支持する大腿受け部と、
該大腿受け部の左右両側にそれぞれ隣接して設けられ、各左右外側部分を支点に左右外側に回転可能に設けられる第1の布団持上げ部と、
を備え、該第1の布団持上げ部が左右外側に回転した後、前記大腿受け部が上昇するように構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1の請求項に記載の介護用ベッド。
【請求項6】
前記大腿受け部は左右に分割可能に設けられ、前記大腿受け部を左右に離間又は近接する方向にスライドさせる左右スライド装置を備え、大腿部を持ち上げる際、前記左右スライド装置が前記各大腿受け部を互いに左右に離間する方向にスライドさせることを特徴とする請求項5に記載の介護用ベッド。
【請求項7】
前記下半身受け部の左右外周部及び足元側外周部に収容され、前記下半身受け部の左右外周部の頭部側支点を中心に頭部側上方に回転可能に設けられる第2の布団持上げ部を備えていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1の請求項に記載の介護用ベッド。
【請求項8】
前記マット体の左右外側には該マット体より高い隆起部が形成されており、少なくとも左右いずれか一方の該隆起部は着脱可能に設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1の請求項に記載の介護用ベッド。
【請求項9】
要介護者を吊り上げ移動させるための要介護者吊り上げ移動装置を備え、該要介護者吊り上げ移動装置は、ベッド枠体に固定される支柱と、支柱に左右側方及び上下に回転可能に支持されるアームと、該アームの先端に取り付けられる吊り上げ具と、該吊り上げ具に着脱自在に取り付けられ該吊り上げ具を介して前記アームに吊り上げられる要介護者保持具とを備えていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1の請求項に記載の介護用ベッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、要介護者のための介護用ベッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ベッドに寝たきりの身体障害者や老人等の要介護者の介護を行う際には、看護士等の介護者に多大な労力の負担を掛けている。特に、自力で寝返りを打つことができない要介護者に対しては、体圧の最もかかる腰から尻の当たりを浮かせて床ずれを防止する必要があり、介護者の負担が大きかった。
【0003】
そこで、従来、ベッド基台を左右に傾斜させることで要介護者の寝返りを助けるための
寝返り支援装置を備えた介護用ベッド装置や、或いは、ベッドに寝ている要介護者がスイッチ操作を行うことにより要介護者の臀部に対応する位置に便器がセットされる介護用ベッドなどが提案されている(例えば、特許文献1又は2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−82388号公報
【特許文献2】特開2001−212186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した特許文献1に記載の介護用ベッド装置では、寝返り支援装置がベッド基台を左右に傾斜させることにより要介護者の寝返りを助けるようになっているため、ベッド基台の傾斜時における要介護者の不安感が大きいという問題や、介護ベッドとしての安全性を向上させることが難しいという問題が生じている。
【0006】
また、上記した特許文献2に記載の介護用ベッドでは、要介護者の寝返りを助ける機能を備えていないため、要介護者を寝返りさせる時の介護者の負担が大きいという問題がある。また、要介護者が排便時に排便し易い姿勢を取ることができないため、要介護者が容易に排便をすることができないといった問題や、排便時の姿勢がつらいといった問題もある。さらに、介護者が要介護者の腸内洗浄を行う際、マットの上に載って無理な姿勢を取らなければならないため、介護者が腸内洗浄作業を行い難いといった問題や、腸内洗浄作業時にマット等を汚すおそれがあるといった問題などもあった。
【0007】
本発明は、上記した課題を解決すべくなされたものであり、要介護者が不安感を抱くことなく安全に要介護者の寝返りや排便動作を助けることができると共に、要介護者が容易且つ楽な姿勢で排便を行うことができ、介護者が腸内洗浄作業を容易に行うことができ、腸内洗浄作業時にマット等を汚すおそれのない介護用ベッドを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するため、本発明に係る介護用ベッドは、要介護者の臀部を支持する臀受け部と、前記臀部より上半身部分を支持する上半身受け部と、前記臀部より下半身部分を支持する下半身受け部と、を有するマット体と、前記上半身受け部の足元側部分を支点に該上半身受け部を回動させる背上げ装置と、前記上半身受け部の左側部分と右側部分のいずれか一方側を上昇させて該上半身受け部を凹状に湾曲させる寝返り装置と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る介護用ベッドにおいて、前記寝返り装置は、前記上半身受け部が水平姿勢に維持されている時にのみ、前記上半身受け部の左側部分又は右側部分の上昇動作が可能なように設けられることを特徴としてもよい。
【0010】
また、本発明に係る介護用ベッドにおいて、前記寝返り装置は、前記上半身受け部の左右両側部分に沿ってそれぞれ設けられる枠体と、該枠体に対して頭部側及び足元側にスライド可能に設けられる可動部材と、前記枠体に対して下方から当接可能に設けられる押上げ部材と、を備え、頭部側と足元側のうちのいずれか一方側に前記可動部材をスライドさせると、該可動部材が前記枠体に係合すると共に、前記背上げ装置が前記寝返り装置から切り離されて、該背上げ装置による前記上半身受け部の回動動作が許容される一方、頭部側と足元側のうちのいずれか他方側に前記可動部材をスライドさせると、該可動部材が前記押上げ部材に係合し、前記寝返り装置による前記上半身受け部の左側部分又は右側部分の上昇動作が許容されることを特徴としてもよい。
【0011】
また、本発明に係る介護用ベッドにおいて、前記臀受け部は、前記寝返り装置による前記上半身受け部の左側部分又は右側部分の上昇動作に伴い、該上昇した左右いずれかの方向にスライドするように設けられていることを特徴としてもよい。
【0012】
また、本発明に係る介護用ベッドにおいて、前記背上げ装置は、前記上半身受け部を回動させる際に、該上半身受け部の左右両側部分を上昇させて該上半身受け部を凹状に湾曲させることを特徴としてもよい。
【0013】
また、本発明に係る介護用ベッドは、前記臀受け部が下方に収納されることにより形成される開口部に移動可能な便器装置を備え、前記下半身受け部は、頭部側中央において上昇可能に設けられ、前記要介護者の大腿部を支持する大腿受け部と、該大腿受け部の左右両側にそれぞれ隣接して設けられ、各左右外側部分を支点に左右外側に回転可能に設けられる第1の布団持上げ部と、を備え、該第1の布団持上げ部が左右外側に回転した後、前記大腿受け部が上昇するように構成されていることを特徴としてもよい。
【0014】
また、本発明に係る介護用ベッドにおいて、前記大腿受け部は左右に分割可能に設けられ、前記大腿受け部を左右に離間又は近接する方向にスライドさせる左右スライド装置を備え、大腿部を持ち上げる際、前記左右スライド装置が前記各大腿受け部を互いに左右に離間する方向にスライドさせることを特徴としてもよい。
【0015】
また、本発明に係る介護用ベッドは、前記下半身受け部の左右外周部及び足元側外周部に収容され、前記下半身受け部の左右外周部の頭部側支点を中心に頭部側上方に回転可能に設けられる第2の布団持上げ部を備えていることを特徴としてもよい。
【0016】
また、本発明に係る介護用ベッドは、前記マット体の左右外側には該マット体より高い隆起部が形成されており、少なくとも左右いずれか一方の該隆起部は着脱可能に設けられていることを特徴としてもよい。
【0017】
また、本発明に係る介護用ベッドは、要介護者を吊り上げ移動させるための要介護者吊り上げ移動装置を備え、該要介護者吊り上げ移動装置は、前記ベッド枠体に固定される支柱と、支柱に左右側方及び上下に回転可能に支持されるアームと、該アームの先端に取り付けられる吊り上げ具と、該吊り上げ具に着脱自在に取り付けられ該吊り上げ具を介して前記アームに吊り上げられる要介護者保持具とを備えていることを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、要介護者が不安感を抱くことなく安全に要介護者の寝返りや排便動作を助けることができる。また、要介護者が容易且つ楽な姿勢で排便を行うことができると共に、介護者が腸内洗浄作業を容易に行うことができ、腸内洗浄作業時にマット等を汚すおそれがない等、種々の優れた効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態に係る介護用ベッドを示す平面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る介護用ベッドを示す側面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る介護用ベッドを示す斜視図である。
【図4】(a)は本発明の実施の形態に係る介護用ベッドの寝返り装置を示す斜視図、(b)は本発明の実施の形態に係る介護用ベッドの寝返り装置を示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る介護用ベッドの便器装置を示す平面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る介護用ベッドの便器装置を示す断面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る介護用ベッドの要介護者吊り上げ移動装置を示す背面図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る介護用ベッドの要介護者吊り上げ移動装置を示す側面図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る介護用ベッドの動作を示す斜視図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る介護用ベッドの動作を示す斜視図である。
【図11】本発明の実施の形態に係る介護用ベッドの動作を示す斜視図である。
【図12】本発明の実施の形態に係る介護用ベッドの動作を示す斜視図である。
【図13】本発明の実施の形態に係る介護用ベッドの動作を示す斜視図である。
【図14】本発明の実施の形態に係る介護用ベッドの動作を示す斜視図である。
【図15】本発明の実施の形態に係る介護用ベッドの動作を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。
【0021】
図1及び図2に示されているように、本発明の実施の形態に係る介護用ベッド1は、マット体2と、マット体2を支持するベッド枠体3と、マット体2の下方に設けられる便器装置4と、ベッド枠体3の頭部側に取り付けられる要介護者吊り上げ移動装置5と、を備えて構成されている。
【0022】
マット体2は、介護用ベッド1に横たわった要介護者Pの臀部を支持する臀受け部6と、前記臀部より上半身部分を支持する上半身受け部7と、前記臀部より下半身部分を支持する下半身受け部8と、に分割されている。
【0023】
臀受け部6は、中央部分9と、左右外側部分10,11とに分割され、中央部分9はマット体2の下方に収納可能なように構成されている。
【0024】
上半身受け部7は、介護用ベッド1に横たわった要介護者Pの頭部を支持する頭受け部12と、要介護者Pの胴部を支持する胴受け部13と、に分割されて構成され、頭受け部12は取り外し可能に設けられている。上半身受け部7には、その足元側部分を支点に上半身部分7を起立する方向に回動させる背上げ装置(図示せず)と、上半身受け部7の左側部分と右側部分のいずれか一方側を上昇させて上半身受け部7を凹状に湾曲させる寝返り装置15(図4参照)と、が設けられている。
【0025】
下半身受け部8は、介護用ベッド1に横たわった要介護者Pの左右の大腿部をそれぞれ支持する左右の大腿受け部16,17と、要介護者Pの下腿部を支持する下腿受け部14と、に分割されて構成されている。左右の大腿受け部16,17はお互いに左右に離間又は近接する方向にスライド可能及び又は上昇可能なように構成されている。
【0026】
大腿受け部16,17の左右両側には、それぞれ隣接して第1の布団持上げ部18,19が配置され、第1の布団持上げ部18,19は各左右外側部分を支点に左右外側に回転可能に設けられている。
【0027】
下腿受け部15は、左右外側部分20,21と中央部分22とに分割され、中央部分22は取り外し可能に形成されている。
【0028】
下半身受け部8の左右外周部及び足元側外周部には、第2の布団持上げ部24が収容されており、第2の布団持上げ部24は下半身受け部8の左右外周部の頭部側支点を中心に頭部側上方に回動可能に設けられている。
【0029】
図3から良く分かるように、マット体2の左右外側にはマット体2より高い隆起部25,26がそれぞれ形成されており、少なくとも左右いずれか一方(本実施の形態では右側)の隆起部26は着脱可能に設けられている。
【0030】
図4(a)及び(b)に示されているように、寝返り装置15は、上半身受け部の左右両側部分に沿ってそれぞれ設けられる枠体72と、枠体72に対して頭部側及び足元側にスライド可能に設けられる可動部材73と、枠体72に対して下方から当接可能に設けられる押上げ部材74と、を備えて構成されている。
【0031】
枠体72は、下方及び両端部が開放されたコの字状断面を有して頭部側から足元側に延出するように形成され、天板75と、天板75の左右縁部から垂下する左右一対の側板76,77と、を備えている。そして、左右の枠体72は、可撓性を有する複数のベルト部材92(図14参照)により連結されている。
【0032】
天板75の下面には、一方の側板76との間に所定の隙間を形成するように第1及び第2ガイド板78,79がそれぞれ垂下され、第2ガイド板79には長手方向に長溝80が形成されている。
【0033】
一方の側板76には、その内面下端部に直交する方向に2個のストッパー板81がそれぞれ突設されている。他方の側板77の内面中央部には、中央部にハの字状にズレ止め部82が二個一対で突設されている。また、他方の側板77の長手方向端部の内面には、長手方向に溝部83を有する受け部84が突設されている。
【0034】
可動部材73は、細長い平板形状を有し、枠体72の一方の側板76と第1及び第2ガイド板78,79との間の前記隙間に挿入され、ストッパー板81により落下しないようになっている。可動部材73の一端部内面には、係合ピン85及び押し板86が突設されている。係合ピン85は細長円柱形状を有し、他方の側板77に向かって片持ち支持されている。押し板86は、鉛直姿勢を成し、係合ピン85より他端部側に配置され、他方の側板77に向かって片持ち支持されている。
【0035】
図4(a)に示されているように、係合ピン85と押し板86の間には、例えばL字形状の係合部材98が配置され、係合部材98はモータ99等の駆動源により可動部材73の長手方向に沿ってスライド可能に設けられている。
【0036】
可動部材73の他端部内面には、細長円柱形状を有する第1ロックピン87が突設されている。この第1ロックピン87は、他方の側板77に向かって片持ち支持され、その先端部が他方の側板77の受け部84の溝部83に係合可能に形成されている。
【0037】
可動部材73の内側には、押し板86と第2ロックピン87との間に、一端部側から順に、第1〜第3の3個の係合片88,89,90が所定間隔で突設されており、各係合片88,89,90は可動部材73の長手方向に沿って細長い形状を有している。第2係合片89と第2ガイド板79との間には、第2ロックピン91が突設されている。この第2ロックピン91は、他方の側板77に向かって片持ち支持され、その先端部が第2ガイド板79の長溝80に係合可能に形成されている。
【0038】
図4(b)に示されているように、押上げ部材74は、可動部材73の第1〜第3係合片88,89,90に対応した位置においてそれぞれ上方に突出する第1〜第3係合凸部(第2係合凸部93のみ図示)を備えている。前記第1〜第3係合凸部は、その上端部に横溝95を有しており、この横溝95に第1〜第3係合片88,89,90が係脱可能となっている。また、中央の第2係合凸部93は2個一対のズレ止め部82の間に配設されている。
【0039】
再び、図2を参照すると、ベッド枠体3は、内部に空間27を有するように金属製角パイプを外周に配設することにより形成され、ベッド枠体3の足元側及び少なくとも左右いずれか一方側は開放可能に形成されている。ベッド枠体3の頭部側にはヘッドボード28が取り付けられ、ベッド枠体3の四隅の下部にはそれぞれ脚部29が高さ調整可能なように取り付けられている。そして、ベッド枠体3の空間27には、頭部側に洗面装置30が配置され、足元側に便器装置4が配置されている。また、ベッド枠体3の空間27には、特に図示しないが、背上げ装置駆動機構、寝返り装置駆動機構、臀受け部収納機構、臀受け部の左右外側部分駆動機構、大腿受け部駆動機構などが配設されている。なお、これらの各機構は、例えばモータやアクチュエータ等の電動式或いは空圧式等の公知の駆動源や、リンク機構や歯車、ベルト等の公知の伝達機構により実現可能であるため、ここでの詳細な説明を省略する。
【0040】
洗面装置30は、頭受け部12の下方に配置される洗面器31と、洗面器31の下方に配置されるバケツ32とを備えて構成されている。そして、洗面器31は、マット体2の頭受け部12を取り外すことにより使用できるようになっている。
【0041】
図5及び図6に良く示されているように、便器装置4は、上方に開口を有するポリエチレン製でバケツ状の容器33と、舟形状の内容器71を介して容器33内に収容されて上方を開閉可能なビニル袋34と、容器33の足元側において昇降可能で上端に吸引口40を有する尿吸引器35と、尿吸引器35を昇降させる尿吸引器昇降装置36と、を備えて構成されている。そして、便器装置4は、臀受け部6の下方から足元側に平行に延出する2本のレール37に沿ってスライド可能に設けられており、このレール37はベッド枠体3の足元側から外側に引き出し可能となっている(図2参照)。
【0042】
容器33の上端には、足元側と頭部側の方向にスライド可能なように横架材38が設けられ、この横架材38の上面には左右2か所に頭部側フック39がそれぞれ設けられている。また、容器33の上方には、左右に分割された台座(図示省略)が左右に離間又は近接する方向にスライド可能に設けられており、要介護者Pの排泄時には、この台座により要介護者Pの臀部を支持できるようになっている。
【0043】
尿吸引器35は、蛇腹ホース製で、上端の吸引口40が頭部側に向かって水平姿勢を成すように角パイプ状の支持部材41によって支持されている。そして、尿吸引器35は、この支持部材41に支持された状態で尿吸引器昇降装置36により平行なガイドレール32に沿って容器33の上方に上昇し、尿吸引器35の下端の開口42が容器33内に収容されたビニル袋34上で開放されるようになっている。なお、尿吸引器35の下端の開口42は、別体のバキューム式装置(図示省略)に接続したり、或いは、専用の容器(図示省略)に流すようにしたりしてもよい。
【0044】
また、支持部材41の頭部側には左右2か所に足元側フック43がそれぞれ設けられており、頭部側フック39と足元側フック43とにビニル袋34の把手44を引っ掛けることにより、ビニル袋34が容器33内に収容されるようになっている。ビニル袋34としては、スーパーやコンビニ等で買い物をした時に提供されるビニル袋を使用することができ、ビニル袋34の内部には吸水性の良い使い捨て用便処理材45が設けられている。
【0045】
容器33の底部には底板46が設けられ、この底板46の頭部側端部46aにはローラ47が枢設されており、底板46の足元側端部(図示省略)は支持部材41に枢設されている。これにより、支持部材41に支持された尿吸引器35の上昇動作に伴って、底板46の前記足元側部端部が上昇すると共に頭部側端部46aが足元側に移動することにより、底板46が傾斜姿勢を成すように構成されている。
【0046】
図7及び図8に良く示されているように、要介護者吊り上げ移動装置5は、鉛直姿勢で下端部がベッド枠体3の頭部側角部に立設される伸縮自在の支柱48と、支柱48の上端部に片持ち支持され、左右側方及び上下に回転可能なアーム49と、アーム49の先端に取り付けられる吊り上げ具50と、図示しない駆動装置の駆動により吊り上げ具50を介してアーム49に吊り上げられる要介護者保持具51とを備えて構成されている。
【0047】
吊り上げ具50は、鉛直姿勢で平行に設けられた鉛直フレーム52と、各鉛直フレーム52の上端部とアーム49との間に掛け渡された吊りロープ53と、各鉛直フレーム52の間に介装された背板54と、各鉛直フレーム52の下端に接続されたスプリング55と、を備えて構成されており、背板49の表面はスポンジ等のクッション材(図示省略)により覆われている。
【0048】
要介護者保持具51は、要介護者Pの正面側に配置されるぬいぐるみ56と、ぬいぐるみ56の両肩部分からそれぞれ前後方向に水平に延出して要介護者Pの脇の下を支持する腕部57と、ぬいぐるみ56の左右下端部からそれぞれ後方に水平に延出する脚部58,59と、スプリング55の下端部に連結されて要介護者Pの大腿部を支持する大腿受け部60と、を備えている。
【0049】
腕部57は、前後方向に平行に延出する筒状の左右外フレーム61,62と、左右外フレーム61,62の内部に前後方向にスライド可能に貫挿される平面視コの字状の内フレーム63と、を有し、ぬいぐるみ56の両肩部を支点に鉛直方向(図8の矢印方向)に90度回転可能に設けられている。また、腕部57の内フレーム63は、左右外フレーム61,62との間に介装されたスプリング(図示省略)を介して左右外フレーム61,62に対しての前方に付勢されており、左右後端部にはそれぞれ結合部材64,65が取り付けられ、この結合部材64,65は背板54の左右両端に掛脱自在に設けられている。これにより、内フレーム63の前端部を前記スプリングの付勢力に抗して後方に押圧して左右外フレーム61,62に対して後方にスライドさせると、結合部材64,65が左右外フレーム61,62の後端から突出し、結合部材64,65が背板54の左右両端に掛止することにより腕受け部57が吊り上げ具50に固定されるようになっている。さらに、腕部57は、ダイヤル式の操作部(図示省略)を左右に回転させることにより前フレーム63が左右に伸縮するように形成されており、吊り上げる要介護者Pの肩幅に合わせて左右方向の幅を調整できるようになっている。
【0050】
大腿受け部60は、円筒形状のスポンジ材68と、スポンジ材68に挿通されて両端部にそれぞれ連結具(図示省略)が取り付けられた帯状のベルト70とを備えており、各連結具はスプリング55の下端部に着脱可能となっている。
【0051】
左右の脚部58,59の後端部にはそれぞれフック部66,67が取り付けられており、このフック部66,67はベルト70に掛止可能となっている。
【0052】
次に、図面を参照しつつ、上記した構成を備えた介護用ベッド1の動作について説明する。
【0053】
先ず、要介護者Pが排泄する時の介護用ベッド1の動作について説明する。リモートコントローラ(図示省略)から排泄用の操作釦を選択すると、まず、図9に示すように、左右の布団持上げ部18,19が上昇すると共に左右外側に回転する。これにより、要介護者Pの膝が当たることによる布団のズレを防止することができる。また、この時、左右の大腿受け部16,17が10cm上昇し、便器装置4がレール37に沿って中央方向に移動し、臀受け部6の中央部分9が10cm上昇する。
【0054】
次いで、図10に示すように、臀受け部6の左右外側部分10,11が10cm上昇すると共に、左右の大腿受け部16,17がそれぞれ頭部側に傾動しながら上昇する。また、この上昇時、左右の大腿受け部16,17はお互いに左右に離間する方向にスライドするため、要介護者Pの大腿部は持ち上げられながら左右に開脚される。
【0055】
次いで、図11に示すように、臀受け部6の中央部分9をベッド枠体3の空間27に収納し、臀受け部6の中央部分9の下方に開口が形成される。そして、便器装置4がレール37に沿ってこの開口の下方までスライドし、所定位置にセットされる。この時、要介護者Pの大腿部が大腿受け部16,17に支持されていると共に、前記開口が小さいので、要介護者Pの臀部が該開口から落ちることはない。また、この時、臀受け部6の中央部分9及び左右外側部分10,11をそれぞれ10cm降下させ、フラットな状態にすると共に、左右の大腿受け部16,17を3cmまで降下させる。
【0056】
次いで、前記背上げ装置が足元側部分を支点に上半身受け部7を上方に回転させ、要介護者Pの上半身部分が起こされる。この時、図4(a)に示すように、モータ99の駆動により係合部材98及び係合ピン85を介して可動部材73が一方向(図示右方向)に引っ張られ、第1ロックピン87が受け部84の溝部83に係合する。これにより、可動部材73は枠体72と一体化されると共に、可動部材73の第1〜第3係合片88,89,90が押上げ部材74の横溝95に係合しない状態となるため、前記背上げ装置が寝返り装置15から切り離されて、前記背上げ装置による上半身受け部7の回転動作が可能となる。
【0057】
また、この時、前記背上げ装置は、上半身受け部7を回動させる際に、上半身受け部7の左右両側部分を上昇させて上半身受け部7を凹状に湾曲させる。これにより、筋力の衰えた要介護者Pが背上げ動作中に上半身受け部7からズレ落ちるのを防止することができるため、安全性を高めると共に介護者の負担を軽減することができる。
【0058】
その後、要介護者Pの臀部を便器装置4の台座上に載せ、尿吸引器昇降装置36が尿吸引器35を容器33の上方に上昇させ、要介護者Pが男性の場合には尿吸引器35の吸引孔40に男性の性器を挿入させた上で、要介護者Pに排泄姿勢を取らせ、ビニル袋34内に排泄を行わせる。
【0059】
この場合、要介護者Pは左右の大腿受け部16,17により大腿部を持ち上げられているため、無理のない楽な排泄時に力の入り易い姿勢を取ることができる。また、排泄時、要介護者Pが男性の場合には尿が尿吸引器35を通ってビニル袋34内に回収される一方、要介護者Pが女性の場合にはビニル袋34の足元側部分34a(図5参照)によって尿のビニル袋34の外部への飛散が防止されると共に、容器33の底板46が尿吸引器35の上昇動作に伴って傾斜姿勢を成す(図6参照)ことによりビニル袋34に溜まった排泄物を1箇所に簡単に集めることができる。したがって、排泄物の回収作業を容易に行うことができ、介護者の労力の軽減を図ることができる。
【0060】
要介護者Pによる排泄の終了後は、尿吸引器昇降装置36により尿吸引器35を降下させると共に、横架材38を容器33の上端に沿って足元側の方向にスライドさせて、ビニル袋34の上方の開口を閉塞させた上で、便器装置4をレール37に沿ってベッド枠体3の足元側から外側に引き出し、介護者がビニル袋34の把手44を各フック39,43から取り外し、ビニル袋34ごと排泄物を所定の場所に廃棄する。
【0061】
また、要介護者Pの腸内洗浄を行う場合には、図12に示すように、第2の布団持上げ部24を下半身受け部8の左右外周部の頭部側支点を中心に頭部側上方に回動し、布団を持ち上げることもできる。そして、上記した便器装置4の代わりにレール37にセットされた容器33より大容量の容器を備えた便器装置(図示省略)を記空間までスライドしてセットする。
【0062】
この状態で、要介護者Pの臀部を前記便器装置の台座上に載せ、図13に示すように下腿受け部15の中央部分22を取り外すと共にベッド枠体3の足元側を開放することにより形成された空間に配置した椅子(図示せず)に介護者が着座した姿勢で要介護者Pの腸内洗浄を行う。このように、介護者は、腸内洗浄時、マッ体2の上に載って無理な姿勢を取る必要がなく、腸内洗浄作業を容易に行うことができると共に、腸内洗浄作業時にマット等を汚すおそれもない。
【0063】
介護者による腸内洗浄の終了後、前記便器装置をレール37に沿ってベッド枠体3の足元側から外側に引き出し、介護者がビニル袋をフックから取り外し、所定の場所に廃棄する。
【0064】
次に、要介護者Pを寝返りさせる時の介護用ベッド1の動作について説明する。前記リモートコントローラにより、例えば右側への寝返りモードを選択すると、左側の押上げ部材74において、モータ99の駆動により係合部材98が他方向(図4(a)の左方向)に移動し、押し板86を押圧する。これにより、可動部材73が前記他方向にスライドし、第1ロックピン91が第2ガイド板79の長溝80に係合する。これにより、可動部材73は枠体72と一体化されると共に、図4(b)に示すように可動部材73の第1〜第3係合片88,89,90が押上げ部材74の横溝95に係合した状態となるため、寝返り装置15による左側の押上げ部材74の上昇動作が可能となる。この時、押上げ部材74は内側中央に向かって僅かに傾斜した姿勢(例えば、水平に対して約70度の傾斜角度)で上昇する。
【0065】
このように左側の押上げ部材74が内側中央に向かって傾斜した姿勢で上昇すると、図14に示すように、左右の枠体72が可撓性を有する複数のベルト部材92により連結されているため、上半身受け部13は左右に湾曲した状態となる。また、この時、臀受け部6の中央部分9は、押上げ部材74が上昇した側(この場合は左側)の外側部分10が上方に回転して退避した所にスライドする。これにより、要介護者が不安感を抱くことなく安全に要介護者の寝返りを助けることができる。なお、この中央部分9のスライド動作は手動で行うようにしてもよい。
【0066】
また、このように要介護者Pを寝返りさせる時、図15に示すように、マット体2の右側隆起部26を取り外すと共に、ベッド枠体3の右側を開放することにより、介護者の作業性を高め、介護者の負担を軽減することができる。
【0067】
また、要介護者保持具51により要介護者を吊り上げて移動させる場合、要介護者Pがぬいぐるみ56に対峙するように要介護者Pの上半身部分をぬいぐるみ56と背板54との間に入れ、要介護者Pの両脇の下に腕部57の左右フレーム61,62をそれぞれ配置すると共に、要介護者Pの臀部の下にスポンジ材68を配置する。そして、この状態で要介護者Pを吊り上げると、要介護者Pは前傾し、ぬいぐるみを抱きかかえた姿勢となり、要介護者Pを所望な位置に安全且つ確実に移動させることができる。また、要介護者Pの吊り上げ時、要介護者Pの正面にぬいぐるみ56が接触し、背面に背板54の表面を覆うクッション材が接触し、臀部にスポンジ材68が接触すると共に、スプリング55により要介護者Pの座高に合わせて要介護者保持具51の高さが調整されるため、要介護者Pに不快感を与えることはない。
【0068】
なお、上記した本発明の実施の形態の説明は、本発明に係る介護用ベッドにおける好適な実施の形態を説明しているため、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限り、これらの態様に限定されるものではない。さらに、上記した本発明の実施の形態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、かつ、他の既存の構成要素との組合せを含む様々なバリエーションが可能であり、上記した本発明の実施の形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【符号の説明】
【0069】
1 介護用ベッド
2 マット体
4 便器装置
5 要介護者吊り上げ移動装置
6 臀受け部
7 上半身受け部
8 下半身受け部
10 左外側部分
11 右外側部分
14 大腿受け部
15 寝返り装置
16,17 大腿受け部
18,19 第1布団上げ部
24 第2布団上げ部
25,26 隆起部
48 支柱
49 アーム
50 吊り上げ具
51 要介護者保持具
72 枠体
73 可動部材
74 押上げ部材
パンフレット タイトル 
パンフレット1 
パンフレット2 
パンフレット3 
パンフレット4 
パンフレット5 
パンフレット6 
パンフレット7 
【図1】
図1
【図2】
図2
【図3】
図3
【図4】
図4
【図5】
図5
【図6】
図6
【図7】
図7
【図8】
図8
【図9】
図9
【図10】
図10
【図11】
図11
【図12】
図12
【図13】
図13
【図14】
図14
【図15】
図15        
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