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【発明の名称】スライドファスナー 【出願人】 【識別番号】312000398 【氏名又は名称】原崎 貞男 【住所又は居所】静岡県島田市日之出町1番地の11 【発明者】 【氏名】原崎 貞男 【住所又は居所】静岡県島田市日之出町1番地の11 【要約】 【課題】比較的安価で防水性に優れ、また利便性、耐久性においても従来品に劣らないスライドファスナーを提供する。 【解決手段】ゴム材料からなる帯状部材の一方の側縁に沿って、面に平行な方向に嵌合可能になるような向きに雄条を一体成形した第1の嵌合具と、同様にゴム材料からなる帯状部材の一方の側縁に沿って、前記第1の嵌合具と密着して嵌合可能な形状を有する雌条を、面に平行な方向に対向して一体成形した第2の嵌合具を、これら一対の嵌合具の嵌合部分に沿って自在にスライドするスライダーによって結合・分離できるようにすることで、安価で防水性能に優れ且つ利便性、耐久性に富んだスライドファスナーを製造することができる。 【【特許請求の範囲】 【請求項1】 ゴム材料からなる帯状部材の一方の側縁に沿って、面に平行な方向に嵌合可能になるような向きに雄条を設けた第1の嵌合具と、 ゴム材料からなる帯状部材の一方の側縁に沿って前記第1の嵌合具と密着して嵌合可能な形状を有する雌条を、面に平行な方向に対向して設けた第2の嵌合具と、 案内路の一方の側に、分離した前記第1の嵌合具の前記雄条部分と前記第2の嵌合具の前記雌条部分をそれぞれ別個に導入、導出可能な、支持壁で分離された第1の開口部を有し、前記案内路の他方の側に前記第1の嵌合具の前記雄条と前記第2の嵌合具の前記雌条が互いに密着嵌合した状態で導入、導出可能な第2の開口部を有し、これら一対の嵌合具の嵌合部分に沿って自在にスライドしながら前記一対の嵌合具を結合、分離させるスライダーと、 を備えることを特徴とするスライドファスナー 【請求項2】 前記第1の嵌合具及び前記第2の嵌合具における前記ゴム材料として熱可塑性エラストマーを用いたことを特徴とする請求項1に記載のスライドファスナー 【請求項3】 前記第1の嵌合具の前記雄条嵌合部背面に鍔を設け、該第1の嵌合具と前記第2の嵌合具が嵌合した状態でその嵌合部が前記案内路内を円滑に移動でき、且つ該嵌合部の密着性をより高めるように該嵌合部の外周と前記案内路断面を形成したことを特徴とする請求項1または2に記載のスライドファスナー 【請求項4】 請求項3に記載のスライドファスナーにおいて、前記嵌合部の外周面長手方向に、多数の微細な線状突起を設け、または前記嵌合部外周面を粗面にしたことを特徴とするスライドファスナー 【請求項5】 請求項3に記載のスライドファスナーにおいて、前記スライダーの内壁を粗面にしたことを特徴とするスライドファスナー 【請求項6】 前記嵌合部の雄条凸部と雌条凹部の境界面のそれぞれの側に、長手方向に同一の断面形状をした少なくとも上下で1対の咬合部を設けたことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のスライドファスナー 【請求項7】 前記第1の嵌合具の前記雄条または前記第2の嵌合具の前記雌条を、それぞれの帯状部分と一体として成形したことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のスライドファスナー 【請求項8】 前記第1の嵌合具及び前記第2の嵌合具の帯状部分と前記雄条または前記雌条の結合部の断面を、前記雄条または前記雌条側に向けて徐々に拡張すると共に、該結合部と接する前記スライダー内壁部分を該結合部にの形状に合致するように面取りしたことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のスライドファスナー 【発明の詳細な説明】 【技術分野】 本発明は、防水性を備えたスライドファスナーに関する。 【背景技術】 従来のスライドファスナーは、一対の布製ファスナーテープの対向するエッジに沿って多数の連結エレメントが設けられた構造を有するものであり、鞄やリュックサックに用いた場合に布製テープ部及び連結エレメント部からの雨水等の侵入により収納物を汚損させることがあった。 そこで、上記問題を解決するものとして、防水機能を持たせたスライドファスナーが提案されている。たとえば、特許文献1に記載の考案では、芯材の表裏両面にエラストマーの防水層を形成したファスナーテープ上にファスナーエレメントを固着するための孔を設け、この孔を貫通する連結部を介して表裏を跨いで樹脂製ファスナーエレメントを固着し、孔周辺の表裏両面に接着剤層を形成している。しかしながらかかる構成をもってしても完全な水密性を得ることは困難であり、特許文献2では同一考案者により更なる改良がなされている。このように防水性を備えたスライドファスナーは構成が複雑になるため自ずから高価になり、汎用的な用途に採用されるまでには至っていない。 そこで、防水ファスナーを使用しないで防水機能を得るために特許文献3に記載の「防水構造を備えた開閉部」が提案されている。しかし開閉部に一定の厚さを必要とするためバック等以外に用いるには問題が多い。 一方、プラスチック製ファスナーテープには、安価で気密性に優れるという利点がある。しかし、可撓性に乏しいため折りたたみが困難であり、また開閉寿命が短いこともあって、内容物の入れ替えが必要な包装袋への利用に限り種々のものが提案されているにすぎない。 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 本発明は、プラスチック製ファスナーテープのもつ安価で気密性に優れるという利点と、多数のファスナーエレメントの噛み合わせによって開閉する従来型スライドファスナーのもつ利便性、耐久性といった利点と、を併有する新規なスライドファスナーを提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 上記の課題を解決するために、本発明におけるスライドファスナーは、ゴム材料からなる帯状部材の一方の側縁に沿って、面に平行な方向に嵌合可能な向きに雄条を設けた第1の嵌合具と、ゴム材料からなる帯状部材の一方の側縁に沿って、前記第1の嵌合具と密着して嵌合可能な形状を有する雌条を、面に平行な方向に対向して設けた第2の嵌合具と、案内路の一方の側に、分離した前記第1の嵌合具の前記雄条部分と前記第2の嵌合具の前記雌条部分をそれぞれ別個に導入、導出可能な、支持壁で分離された第1の開口部を有し、前記案内路の他方の側に前記第1の嵌合具の前記雄条と前記第2の嵌合具の前記雌条が互いに密着嵌合した状態で導入、導出可能な第2の開口部を有し、これら一対の嵌合具の嵌合部分に沿って自在にスライドしながら前記一対の嵌合具を結合、分離させるスライダーとを備えることを特徴とする。 また、本発明においては、前記第1の嵌合具及び前記第2の嵌合具における前記ゴム材料として熱可塑性エラストマーを用いることができる。これにより、一定の弾力性と熱可塑性とを併有するスライドファスナーを実現できる。 本発明においては、前記第1の嵌合具の前記雄条嵌合部背面に鍔を設けることで、該第1の嵌合具と前記第2の嵌合具が嵌合した状態で、嵌合部外周形状がスライダー内断面の形状に合致するようにさせることができ、これにより、ファスナー嵌合部がスライダーの案内路内を円滑に移動できる。 また、嵌合部外周面の長手方向に多数の微細な線状突起を設け、または該嵌合部外周面に潤滑性塗料をコーティングするなどして粗面にすることで、該嵌合部外周面とスライダー内壁が密着することを防止でき、スライダーの走行をより円滑にすることができる。前記嵌合部外周面に上記の処理をする代わりに、スライダーの内壁を粗面にすることで同様な効果を得ることもできる。 更に、本発明においては、嵌合状態における前記第1の嵌合具と前記第2の嵌合具の嵌合部境界面のそれぞれの側に、長手方向に同一断面をした少なくとも上下1対の咬合部を設けることで、結合した前記雄条と前記雌条が容易に分離できないようにすることができる。 また、前記第1の嵌合具の前記雄条または前記第2の嵌合具の前記雌条を、それぞれの帯状部分と一体として成形することで、それぞれの嵌合具を一工程で製造することもでき、従来の防水スライドファスナーと比較して安価に製造できる。 【発明の効果】 本発明によれば、前記雄条と前記雌条の嵌合部がゴムの弾性によって圧接され、これによって境界部分の空気が排出されるため外圧によって互いに吸着され、従来のスライドファスナーと同程度に結合力が強く、且つ、防水性能も格段に向上したスライドファスナーが実現できる。また比較的長寿命で多用途のスライドファスナーが安価に実現できる。更に、着色も容易であるため、特別に防水性を要しない衣類等にも違和感なく使用することができる。 【発明を実施するための形態】 以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。 図1は、本実施形態におけるスライダー3が取り付けられたスライドファスナーの一部を表した斜視図である。なお、図示しないが、ファスナーの端部に、スライダー3の抜け落ち防止のために金属製または樹脂製のエンドストップを縫合または溶着することもできる。密閉エンドストップを設ける場合のほか、エンドストップを雌条21側にだけ固着し、雄条11側端部は雌条21側端部でスライダーに差し込むことで咬合できるように鍔部分までを樹脂等で成形したものを縫合または溶着することで分離可能にすることもできる。 ファスナーの分離した部分はスライダー3の第1の開口部35から入って支持壁33の端部を通過後、スライダー3の案内路内を通過するにしたがってその内壁から側面内側に加わる力によって雄条11の凸部が雌条21の凹部に徐々に挿入され、半分程度挿入されたところで雌条21凹部の対向片を押し広げて該雌条凹部と嵌合する。 図1では、嵌合部境界面4の上下に二対の鋸歯状咬合部を設けたものを表してあるが、咬合部分の形状は図3乃至図9に示すように種々の形状が可能である。 但し、雄条11の凸部挿入時に該雄条先端部と雌条21の端部が面接触すると摩擦力により該雌条端部が内側に巻き込まれて嵌合してしまう恐れがあり、この状態が継続するとゴム材料に疲労破壊が起こりファスナーとして使用できなくなる。もっとも、かかる状態では嵌合部がスライダー3を通過しにくく、仮に強い力を受けて通過してしまった場合でも境界部分に空気が残存すると考えられるために密着性が損なわれ、わずかな力を受けることで分離すると考えられ、長時間異常結合が維持されることは起こりにくい。いずれにしても上記咬合部分の形状はファスナーがスライダー3を通過する際に該スライダー3に加える必要がある力の大きさにも関わる点でも重要であり、本実施形態では雄条11の凸部境界部分の断面形状が、結合が進行するにしたがって上下に広がるロケットの先端状になるようにし、咬合部分は鋸歯状とすることで上記の異常結合が回避されるようにした。なお、前記嵌合部境界面4をそれぞれ鏡面仕上げとすることで密着力をより高めることができる。 雄条11の凸部と雌条21の凹部が完全に嵌合した後、更にスライダー3の案内路内を進むにしたがってその内壁から受ける圧縮力によって境界面4に残存している空気が押し出され、雄条11と雌条21がこの境界面4で互いに吸着される。 本実施形態では図1乃至図9に示すように雄条11の嵌合部背面に鍔111を設け、嵌合状態の断面外周が楕円形状になるように嵌合部全体を成形した。略長方形や亀の甲羅状に成形することも可能である。ファスナーの嵌合機能を得るためには特に形状にこだわる必要はないが、嵌合部の密着性を高める観点からはスライダー3の通過時にその内壁から嵌合部の中心に向けた力を生み出すために、断面を円形または楕円形にするのがより好ましい。また、前記鍔111を設けて嵌合部全体の断面形状が対称になるようにしたことで、ファスナーがスライダー3の案内路を通過する際にその走行が円滑になる。 なお、図示してないが、本実施形態では、嵌合部外周面の長手方向に多数の微細な線状突起を設けている。これにより嵌合部外周面とスライダー3の内壁が密着してその走行が困難になる現象を防止できる。前記嵌合部外周面に潤滑性塗料をコーティングすることで粗面にしても良い。また、前記嵌合部外周面に前記線状突起を設けたり、嵌合部外周面を粗面にする代わりに、スライダー3の内壁を粗面にすることでも同様な効果を得ることができる。たとえば樹脂製スライダーを射出成形する際に内面に適度なシボ加工をすれば良い。 図10はスライダー3の斜視図である。従来のスライダーとの差違点の1つは、支持壁33側の第1の開口部35から全体の7割程度までが残りの部分より上下に拡張してあることである。雄条11側が雌条21側に嵌合され、または雄条11側が雌条21側から分離される過程において、雌条21の上下対辺の内側に設けた咬合部が外側に逃げる空間を確保するためである。したがってその拡張幅は全体で咬合部突起の高さの2倍程度とすることが好ましい。 また、図14からはわかりにくいが、スライダー3の第2の開口部36側は端部に近づくにしたがってわずかに左右に絞られ、端部における内側断面は嵌合状態のファスナー嵌合部の断面と相似な形状で、断面積がわずかに縮小するようにする。これにより、前記ファスナー嵌合部が前記第2の開口部36から導出する際に嵌合部中心に向けた圧縮力が働き、該嵌合部に残留している空気が前記第1の開口部側に押し出されるため該嵌合部が互いに外圧によって吸着され、強い結合力が得られる。縮小率は使用するゴム材料の弾性率を考慮し、スライダーが通常の力によって移動できる程度にすると良い。 なお、スライダー端部は嵌合状態のファスナーが導入しやすいように内側周囲を面取りすると良い(図14)。 本実施形態では、嵌合状態の断面外周が対称になるように雄条11の背面側に鍔を設けたため、図11のスライダー正面図に表したように支持壁33が中心より前記雌条11側に寄っている。なお、支持壁33は案内路を進むにつれて先薄に作成され、案内路の三分の一程度で終端するようにする(図14)。 本実施形態では前記第1の嵌合具1及び前記第2の嵌合具2をゴム材料(熱可塑性エラストマー(以下、「TPE」と記す。)を含む)を押出成形機で雄条11または雌条21を含めて一体成形する。これにより一工程で成形できるため、ファスナーテープに多数のエレメントを縫製や射出成形で成形する従来のファスナーと比較して価格面で有利で、且つ耐久性のあるスライドファスナーが実現できる。 前記ゴム材料としては、被着物の用途に応じて広範囲の素材を用いることが可能である。たとえば、特殊用途として、被着物が広い温度範囲で用いられる場合には耐熱性・耐候性に優れたシリコンゴムを基材とし、一定の弾性を得るための架橋剤や用途に応じて適当な配合剤を混練した液状コンパウンドを用いると良い。合成皮革製の鞄や、化繊の雨合羽などに用いる場合には、耐水性のあるウレタン系のTPE(たとえばエーテル系ポリウレタン)を用いることで被着物と溶着可能なスライドファスナーが製造できる。 なお、前記ゴム材料としてはこれらに限定されるわけではなく、被着物との接着性や用途に応じて適切な物性を有するものを任意に選択することができる。なお、被着物との接合には縫合のほか接着剤や両面テープを用いることができる。被着物に溶着して使用する必要がある場合は被着物の素材を考慮して適切なTPEを使用すると良い。 スライダー3の素材としては強度が強く潤滑性の良いプラスチック製構造材、たとえばポリアセタールや特殊なナイロンを用いるのが良い。金属材料を用いることもできる。 本発明の別の実施形態においては、前記第1の嵌合具1及び前記第2の嵌合具2の帯状部分と雄条11または雌条21の結合部12、22の断面を、雄条または雌条側に向けて徐々に拡張すると共に、この結合部12、22と接するスライダー3の内壁部分をそれに合致するように面取りした(図15、16)。これにより、スライダー3の円滑な走行を妨げることなく、それぞれの嵌合具の前記結合部12、22が長期間の使用により破断することを防止している。 【図面の簡単な説明】 【図1】図1はスライダーを含むスライドファスナー(嵌合部境界面上下に二対の鋸歯状咬合部を設けたもの)の一部の斜視図である。 【図2】図2は嵌合状態のファスナー(嵌合部境界面上下に二対の鋸歯状咬合部を設けたもの)の一部の斜視図である。 【図3】図3は嵌合状態のファスナー(嵌合部境界面上下に二対の鋸歯状咬合部を設けたもの)の一部断面図である。 【図4】図4は嵌合状態のファスナー(嵌合部境界面上下に一対の鋸歯状咬合部を設けたもの)の一部断面図である。 【図5】図5は嵌合状態のファスナー(嵌合部境界面上下に二対の三角波状咬合部を設けたもの)の一部断面図である。 【図6】図6は嵌合状態のファスナー(嵌合部境界面上下に一対の三角波状咬合部を設けたもの)の一部断面図である。 【図7】図7は嵌合状態のファスナー(嵌合部境界面上下に三対の半波状咬合部を設けたもの)の一部断面図である。 【図8】図8は嵌合状態のファスナー(嵌合部境界面上下に二対の半波状咬合部を設けたもの)の一部断面図である。 【図9】図9は嵌合状態のファスナー(嵌合部境界面上下に一対の波形咬合部を設けたもの)の一部断面図である。 【図10】図10はスライダーの斜視図である。 【図11】図11はスライダーの正面図である。 【図12】図12はスライダーの平面図である。 【図13】図13はスライダーの側面図である。 【図14】図14は図11のA−A切断面における断面図である。 【図15】図15は図3の嵌合状態のファスナー(嵌合部境界面上下に二対の鋸歯状咬合部を設けたもの)において、帯状部分と雄条及び雌条の結合部分の厚さを徐々に拡張したものの一部断面図である。 【図16】図16は図15に表したファスナーに使用するスライダーの正面図である。 【符号の説明】 1 雄条を有する第1の嵌合具 2 雌条を有する第2の嵌合具 3 スライダー 4 嵌合部境界面 11 第1の嵌合具における雄条部分 12 第1の嵌合具における帯状部分と雄条の結合部 21 第2の嵌合具における雌条部分 22 第2の嵌合具における帯状部分と雌条の結合部 31 スライダー本体 32 スライダー把手 33 支持壁 34 スライダー突出片 35 スライダーの第1の開口部 36 スライダーの第2の開口部 111 雄条鍔部分 |
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【図1】 |
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【図2】 |
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【図3】 |
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【図4】 |
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【図5】 |
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【図6】 |
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【図7】 |
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【図8】 |
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【図9】 |
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【図10】 |
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【図11】 |
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【図12】 |
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【図13】 |
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【図14】 |
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【図15】 |
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【図16】 |
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