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飲食・調理
 
【考案の名称】冷却・保冷力を有する陶器性容器
【実用新案権者】
【識別番号】505407829
【氏名又は名称】川原 荘三郎
【住所又は居所】東京都八王子市長沼町104−2、3−4
【考案者】
【氏名】川原 荘三郎
【住所又は居所】東京都八王子市長沼町104−2、3−4
【要約】(修正有)
【課題】
自然状態で冷却・保冷力を発揮する陶器製容器で、ビールや冷酒用カップ、花器、漬物用容器等として利用することで周囲温度による劣化を抑制し、また急冷力を利用して、猫舌の人向け湯呑として活用し、熱さによる呑みにくさを解消する事のできる陶器製容器を提供する。
【解決手段】
陶器製容器は内面に釉薬を施し外面は無釉の状態で約24時間かけ最高温度1230℃〜1250℃で焼成する。外面を無釉にすることで微細な多孔構造を構成する外面が出来あがり、この微多孔からの放熱、及び微多孔内の結露水の気化作用により容器内液体を冷やし、上記課題を解決する。
【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】
粘土で成形し素焼した容器の内面に施釉、外面は無釉の状態で焼成した焼き物で、内面に釉薬がかかり外面が微細な多孔構造を構成する素焼きであることで、容器に水等の液体を注入した場合、外側素焼面の微多孔内に結露した水分が気化することにより、周囲から気化熱を奪うことで容器が冷やされ、容器内の液体の温度を下げることで高い保冷力を持つことを特徴とする陶器製容器。
【請求項2】
請求項1の陶器製容器で粘土に粒子の粗いものを使用することにより、自然状態で熱湯など温度の高い液体をより早く冷却できる能力を有することを特徴とする陶器製容器。
【考案の詳細な説明】
【技術分野】
本考案は自然状態で冷却・保冷力を発揮する陶器製容器に関するものである。
【背景技術】
従来陶器製容器は内面及び外面に釉薬を施し焼成するのが一般的である。本考案は容器外面に釉薬を施さず焼成し、微細な多孔構造を構成する素焼面を容器外面とすることで、微多孔内に生ずる結露水が気化する際に周囲から気化熱を奪うこと、あるいは容器内が熱湯であるような外部より高温である場合には、外気との通気性を良くし放熱を促進することを利用したものである。
【考案の開示】
【考案の解決しようとする課題】
通常の住空間では、自然状態で、あらゆるものは周囲温度の影響を受け劣化する。カップに注がれたビールの泡は消滅し炭酸ガスによる爽快な刺激を失い、ぐい呑みに注がれた冷酒は温まり喉越しの良さを失い、花器のなかの生花は萎み、容器のなかの漬物は味を変える。
また、いわゆる猫舌の人は熱い飲み物、熱い食べ物はすぐには飲食できず、かなりの時間待って飲食するという不自由さがある。
本考案は自然状態で冷却・保冷することを特徴とする陶器製容器であり、ビールや冷酒用カップとして利用することで、ビールや冷酒の喉越しのよい冷たい状態をより長く持続させること、また花器として利用することで生花をより長持ちさせること、漬物用容器として利用することで、漬物の味の変化を抑制すること等、自然状態での周囲温度による劣化を抑制すること、また急冷力を利用して猫舌の人向け湯呑等に活用し、熱さによる呑みにくさを解消することを目的とする。
【解決するための手段】
本考案の陶器製容器は、粘土を使い成形した後よく乾燥させ、最高温度800℃程度で素焼したのち、内面に釉薬を施し外面は無釉の状態で約24時間かけ最高温度1230℃〜1250℃で焼き締める。外面に釉薬を施さないことの他は通常の焼き物の製作方法と変わりはない。なお最高温度1230℃持続時間30分で焼成したものと、最高温度1250℃持続時間90分で焼成したものとでは冷却・保冷の性能の差はなかった。
内面に釉薬が施され外面が無釉の状態で焼成された陶器製容器では、内側に水等の外気温より低い液体が注入された場合、外部素焼面にある微多孔内に結露し、この結露水が気化することにより、周囲から気化熱を奪うことで内部液体の温度を下げる。また熱湯など外気温より高い液体を注入した場合は、外部素焼面が微多孔構造を構成しているため通常の外面施釉容器と比べ表面積即ち放熱面積が大きく、内部の熱湯など液体の温度は急速に下降し、外気温より低い状態となり上述の作用に入っていく。この冷却・保冷力を活用することにより前述の課題を改善する。
【考案の効果】
この冷却・保冷力を冷酒用ぐい呑みに活用することにより、通常の内・外面施釉品の陶器製ぐい呑みに比べ喉越しのよい冷たい状態をより長く持続させ(図1)、長時間美味しい冷酒が味わえる。
この急速冷却力(図2)をいわゆる猫舌の人向け湯呑等に活用することで、猫舌の人が熱いものを飲食する際の不自由さを軽減する。
この冷却・保冷力を花器として活用することにより、通常の内・外面施釉品の陶器製花器に比べ生花の開花時間を長くする。(図3)
この冷却・保冷力をビール用カップに活用することにより、通常の内・外面施釉品の陶器製カップに比べクリーミィーな泡の層の持続時間が大幅に延び(図5)、ビール内部からの炭酸ガスが逃げるのを防止、ビールの美味さのもとである炭酸ガスによる爽快な刺激を長持ちさせる。
この冷却・保冷力を漬物用容器として活用することで漬物の味の変化、美味しさの劣化を抑制する。
【考案を実施するための最良の形態】
前述の通り容器外面に施釉をせず焼成し、外面に微多孔構造をつくり、この微多孔内の結露水の気化作用、あるいは微多孔からの放熱を活用するため、外面は波状に成形するなどできるかぎり表面積を大きくすることが望ましい。また図1からビール用カップ、ぐい呑、花器及び漬物用容器など容器内が水等外気温より低いものの場合は、粘土の粒子は細かいものが良く、図2から猫舌の人向け容器、つまり容器内が熱湯など外気温より高い場合には粘土の粒子は粗いものが良い。
なお花器や漬物用容器では、粘土は焼き上がりが硬い「信楽赤」などを使い、底面に施釉し、結露による卓上の濡れを防止するなどの対策が望ましい。また水位線より上部の外面には釉薬をかけ美観をつくることができる。
図4は猫舌の人向け湯呑の実施例である。1は粘土に古信楽粗を使い波状に成形された本体。波状の成形は人差指又は中指を使って成形することで、手に持ったときしっくりするよう配慮している。2は容器内部の釉薬層。3は微多孔構造をした外面断面。4は口縁部で口当たりを配慮して釉薬をかけている。
【産業上の利用分野】
本考案は容器内部の液体を自然状態で短時間に冷却・保冷することを特徴としており、利用分野はビール用カップ、冷酒用ぐい呑、花器、漬物用容器、及び急冷力を利用した猫舌の人向け湯呑等である。特に猫舌の人向け湯呑、花器としての利用は有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】室温26.5℃での水(26.4℃)の温度変化。
【図2】室温26.5℃での熱水(79.4℃)の温度変化。
【図3】切花の開花持続時間。室温27。0℃、切花はサフィニア。
【図4】猫舌の人向け湯呑。
【図5】ビールの泡の持続時間。室温26.0℃、ビール温度12.5℃。5回測定。持続時間はビールを容器に注入してから泡が消えビールの液面が確認できるまでの時間。ビールはアサヒスーパードライ(缶)を使用、第1缶目は3回で注ぎ終わり、4回目のとき第2缶目にした。
【符号の説明】
(図1・図2)
イ 内外両面施釉品の容器。
ロ 内面のみ施釉品の容器(粘土は古信楽粗)。
ハ 内面のみ施釉品の容器(粘土は古信楽細)。
(図3)
▲ 内外両面施釉品の花器に入れた花。
● 内面のみ施釉品の花器に入れた花(粘土は古信楽細)。
△ 花弁が1枚以上萎び始めたとき。
× 花弁が全て萎んだとき。
(図4)
1 本体
2 内面釉楽層
3 微多孔構造の外面断面
4 施釉された口縁
(図5)
A 内外両面施釉品。
B 内面のみ施釉品(粘土は古信楽細)。
【図1】
図1
【図2】
図2
【図3】
図3
【図4】
図4
【図5】
図5
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