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【発明の名称】生ジュースおよその製造方法 【出願人】 【識別番号】713011957 【氏名又は名称】田島 彰一 【住所又は居所】佐賀県藤津郡太良町大字多良4144番地 【代理人】 【識別番号】100195970 【弁理士】 【氏名又は名称】本夛 伸介 【発明者】 【氏名】田島 彰一 【住所又は居所】佐賀県藤津郡太良町大字多良4144番地 【要約】 【課題】野菜または果実の生ジュースであって、使用素材が固有に有する呈味と糖度を引き出し、安定な鮮度品質を有する生ジュースとその製造方法を提供することを目的とするものである。 【解決手段】本発明によれば、生ジュースの出発原料である野菜または果実1個の全体重量に対し、使用する芯部の搾汁重量が15乃至30重量部となるよう調整された圧搾工程を含み、その後、70℃乃至80℃で殺菌する工程を経て得られる生ジュースとその製造方法が提供される。得られた生ジュースについては、鮮度を維持するためにプロトン凍結を含む冷却工程を適宜採用するものである。 【特許請求の範囲】 【請求項1】 野菜または果実から得られる生ジュースであって、当該生ジュースの出発原料である野菜または果実1個の全体重量に対し、使用する芯部の搾汁重量が15乃至30重量部となるよう調整された圧搾工程を含み、その後、70℃乃至80℃で殺菌する工程を経て得られる生ジュース。 【請求項2】 野菜がバターナッツ又はトマトのいずれかである請求項1記載の生ジュース。 【請求項3】 果実が柑橘系に属するもの又はイチゴのいずれかである請求項1に記載の生ジュース。 【請求項4】 得られた生ジュースにつき、プロトン凍結を含む冷却工程によって鮮度を高めた請求項1乃至請求項3に記載の生ジュース。 【請求項5】 野菜または果実から得られる生ジュースであって、当該生ジュースの出発原料である野菜または果実1個の全体重量に対し、使用する芯部の搾汁重量が15乃至30重量部となるよう調整された圧搾工程を含み、その後、70℃乃至80℃で殺菌する工程を経て得られる生ジュースの製造方法。 【請求項6】 野菜がバターナッツ又はトマトのいずれかである請求項5記載の生ジュースの製造方法。 【請求項7】 果実が柑橘系に属するもの又はイチゴのいずれかである請求項5に記載の生ジュースの製造方法。 【請求項8】 得られた生ジュースにつき、プロトン凍結を含む冷却工程によって鮮度を高めた請求項5乃至請求項7に記載の生ジュースの製造方法。 【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は、野菜または果実を使用した新しい呈味と品質を有する生ジュースに関するものである。さらに詳細には、野菜または果実の特定の部位を一定量使用し、加工処理することによって、安定した品質と呈味を有する日持ちに優れた生ジュースの提供とその製造方法に関するものである。 【背景技術】 【0002】 生ジュースは、搾汁後の絞りたてを飲むと大変美味しいが、日持ちが悪く、冷蔵庫で低温保存しても呈味が安定しない。たとえ凍結させて保存したとしても、解凍後の生ジュースは、果肉細胞等が破壊され呈味成分のバランスが壊れていることが多く、その結果、官能的には濃度ムラ等が生じることによって搾汁時の呈味が再現できないという致命的な問題があった。 【0003】 また呈味変化の問題以外にも、滅菌が難しく、熱をかけすぎるとビタミン等の栄養成分自体も化学変化し、空気酸化も進行しやすくなるため、品質維持がかなり難しい食品の一つであった。そのために、これらの観点から様々な改良がなされている。 【0004】 例えば、特許文献1乃至6があげられる。特許文献1は、凍結ジュースとその製造方法に関する発明であるが、特に家庭や飲食店等において100%天然果汁を必要な分を安定な品質で提供するものであるところ、冷凍と解凍後の手間暇がかかり、使用利便性が悪い 。 【0005】 特許文献2は、飲料果汁中に存在する各種ビタミン類の失活を防ぐ飲料果汁の製造方法を提供するものであるが、多段階処理を経るため、設備と処理方法の観点から改善すべき課題が多い。 【0006】 特許文献3は、濃縮ジュースの製造において、果物の皮を含め丸ごと搾汁する方法を提供するものであるが、分散安定のための添加物を必須とするため、健康志向に逆行するものであり、問題がある。 【0007】 特許文献4に係る発明は、果汁の殺菌効果を高めることと風味劣化を少なくすることとをうまく両立させることのできる方法を提供することを主たる目的とし、熱殺菌処理に代わるパルス電界方法をするものであるが、官能評価レベルにおいて風味変化をコントロールするのが依然課題として挙げられる。 【0008】 特許文献5は、特に、リンゴから果汁を抽出して透明で果汁100% のリンゴジュースを製造する果汁100% の果実飲料の製造方法を開示するが、ろ過工程において果汁本来の呈味成分も濾されてしまい、外観重視のあまり果汁本来の特性が生かされていない。 【0009】 特許文献6は、野菜または果実のジュースの色を劣化させず、果物または野菜の果肉成分と水との分離を防止したジュースの製造方法を提供する発明であるが、特許文献3と同様に添加物を多用することから、消費者の健康志向にそぐわない。 【0010】 一方で、生ジュースと言えば、大抵は果実が対象であるが、近年の健康志向を反映し、野菜類も生ジュースの対象として搾汁され、技術開発がされてきた。しかしながら、一般には飲みづらいものが多く、消費者側での受入れが難しかった。その解決を図り、愛飲者を開拓する一つの策としては、甘味料の添加の他、様々な果実との混合によって呈味を工夫することであり、一連の研究が盛んである。 【0011】 しかしこのような研究開発が行き過ぎてしまうと、多種の添加物混合による搾汁の提供を招来することとなり、消費者にとっては本来の健康志向とは離れた商品を到底受け入れられない。この点については、先述した品質向上のために取られる対策がもたらす問題と同様である。 【0012】 これらの従来技術を概観すると、例えば、特許文献7乃至10などが挙げられる。特許文献7は、カボチャ処理物を応用した乳酸発酵飲料に関するものであるが、呈味改善の方法として選択された素材の組合せである。裏を返せば、生カボチャだけでの味の限界(飲みづらさ)を乳酸菌の特性でマイルドに変化させる技術の着想である。乳酸菌とカボチャ処理物(搾汁を含む)の応用技術は特許文献10にも開示があるが、カボチャ自体を単独で嗜好品として飲食するという思想はなく、医薬的な用途利用に向けた着想である。 【0013】 特許文献8は、カボチャの付加価値を高め、有効利用することが課題するものであるが、カボチャを麹により糖化してカボチャジュースを得るとともに、当該カボチャジュースを濃縮してカボチャシロップ等の加工食品を提供するものである。したがって、素材そのものの特性を食する着想がない。 【0014】 特許文献9は、特にスイカの薬理特性に着目した飲料の製造方法を提供するものであるが、素材自体の果汁を美味しく食する発想はなく、市場価格の低下を防ぐ付加価値商品の提供の手段にすぎない。 【0015】 以上に鑑みて、消費者からは、素材本来の呈味と品質を損なわず、美味しい生ジュースの提供が待ち望まれていた。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0016】 【特許文献1】 特開昭58−56641号公報 【特許文献2】 特開昭61−227767号公報 【特許文献3】 特開昭64−71465号公報 【特許文献4】 特開2003−116459号公報 【特許文献5】 特開2004−194569号公報 【特許文献6】 特開2007−6793号公報 【特許文献7】 特開昭60−241847号公報 【特許文献8】 特開平10−295340号公報 【特許文献9】 特開2010−193840号公報 【特許文献10】 特開2015−198638号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0017】 本発明は、上記問題に鑑みて見出された野菜または果実の生ジュースであって、使用素材が固有に有する呈味と糖度を引き出し、安定な鮮度品質を有する生ジュースとその製造方法を提供することを目的とするものである。 【課題を解決するための手段】 【0018】 本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、出発原料として使用する野菜または果実の特定の部位を一定量使用し、最適押圧下、加工処理することによって、安定した品質と呈味を有する日持ちに優れた生ジュースを提供できることを見出し、本発明を完成した。 【0019】 すなわち、本発明によれば、請求項1乃至8に記載のとおり、野菜または果実から得られる生ジュースであって、当該生ジュースの出発原料である野菜または果実1個の全体重量に対し、使用する芯部の搾汁重量が15乃至30重量部となるよう調整された圧搾工程を含み、その後、70℃乃至80℃で殺菌する工程を経て得られる生ジュースとその製造方法が提供される。 【0020】 ここで、本発明における野菜としては、特に東洋カボチャに属するバターナッツ及びトマトが好適な原料であり、果実としては、柑橘系に属するもの又はイチゴが好適な原料である。柑橘系に属するものとしては、温州みかん、クレメンティン、ポンカン、不知火、はるか、清見、ネーブル、マーコット及びなつみ等があげられ、イチゴとしては、大型の品種、代表例としてはあまおう(登録商標)等があげられる。これらの野菜や果実については、好適には、芯部の糖度が10以上のものを選定し、原料に供するものである。 【0021】 得られた生ジュースについては、鮮度を維持するためにプロトン凍結を含む冷却工程を適宜採用するものである。 ここで、プロトン凍結とは、冷凍時に搾汁中の氷の粒が成長して果実細胞を破壊し、呈味成分が流出しないよう、磁気と電磁波を作用させる凍結方法である。 本発明による搾りたての生ジュースを急速冷凍することによって、細胞を傷つけず、呈味が安定するメリットがある。そのため、解凍後もいわゆるドリップ等の冷凍変化がなく、店舗での保存手段として優れるものであり、テイクアウト後の一般家庭での保存にも有用である。 【発明の効果】 【0022】 本発明によれば、出発原料として使用する野菜または果実の特定の部位を一定量使用し、最適押圧下、加工処理することによって、安定した品質と呈味を有する日持ちに優れた生ジュースを提供できる。また、本発明の製造方法において、プロトン凍結を併用することによって、冷凍劣化のほとんどない冷凍ジュースが得られ、解凍後も製造時の鮮度が維持された呈味を味わうことができることから、店舗や家庭内でも手軽に嗜好品として堪能できるものである。さらに、生ジュースを使用したデザート類にもアレンジできるため、高級レストランにおいても有用なデザート食材として幅広く利用できるものである。ドリップ等の冷凍劣化がないことに鑑みれば、日本国内のみならず、日本国外への物流にも対応できることから、幅広く消費拡大に寄与しうるものである。 【発明を実施するための形態】 【0023】 以下、本発明に係る生ジュースにつき、その製造方法と共にさらに詳述する。 本発明は、野菜または果実を使用した新しい呈味と品質を有する生ジュースに関するものである。さらに詳細には、野菜または果実の特定の部位を一定量使用し、加工処理することによって、安定した品質と呈味を有する日持ちに優れた生ジュースの提供とその製造方法に関するものである。 【0024】 本発明の生ジュースは、主原料として、野菜又は果実を用いる。野菜は、バターナッツまたはトマトから選択される。バターナッツ(butternut squash)は、日本(東洋)カボチャ(学名Cucurbita moschata)の品種の一つである。糖度基準は10以上のものを選択する。トマトについては、熟したもので、糖度基準が8以上の品種を選択する。 果実は、柑橘系に属するもの又はイチゴから選択される。柑橘系は、特段の制約はないが、特に温州みかん、クレメンティン、ポンカン、不知火、はるか、清見、ネーブル、マーコット及びなつみが好適に使用できる。糖度基準は8以上のものを使用する。イチゴは、品種は特に制限されないが、糖度基準が10以上のものを使用する。 【0025】 バターナッツは、選別洗浄後、下部の種を除いた後、実芯部の基準糖度をチェックし圧搾使用する。圧搾する場合、呈味成分と基準糖度との関係で、種除去後のバターナッツの総重量に対して、15乃至30重量部の範囲で使用するが、実の中央部を押圧し、搾汁として取り出す。トマトについてもこれに準じるが、実を上下半分にカットし、実芯部の基準糖度をチェックし圧搾使用する。使用部位は、呈味成分と基準糖度との関係で、中央部の搾汁を実全体の総重量に対して15乃至30重量部の範囲で調整する。実の芯部を使用するのは、呈味成分の均一化と糖度の均一化を図るためであり、使用量が15乃至30重量部の範囲外になると、水分量増減の影響があるためである。とろみ等の食感や滅菌効果上の品質保持度が変わることからである。柑橘系の果実およびイチゴについても上記トマトに準じて搾汁する。これらの搾汁工程を経て、適宜ろ過し、生ジュース原液を得る。 【0026】 生ジュースの原液は、直ちに70℃乃至80℃で短時間の滅菌を経て、瞬間冷却後に本発明の生ジュースを得る。保存品としては、所定容量のパウチに充填し、滅菌後にプロトン凍結により凍結ジュースを製造する。 【実施例】 【0027】 以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は当該実施例に限定されるものではない。 【0028】 <実施例1>カボチャジュースの製造 選別したバターナッツを水洗後、使用する下部位をカットする。下部の種を除いた後、実芯部の基準糖度をチェックすると11であった。当該糖度チェック後のバターナッツを徐々に圧搾し、ろ過後、総重量に対して30重量部の搾汁液を得た。その後、スパウトパ ックに小分け充填、続いて直ちに80℃で1分間加熱殺菌し、20℃の冷却水で冷却しカボチャジュースを得た。保存用として、30分間のプロトン凍結により冷凍ジュースを得た。 【0029】 <実施例2>トマトジュースの製造 選別したトマト(糖度8以上)を水洗後、上下半分にカットする。カットしたトマトを徐々に圧搾し、ろ過後、総重量に対して15重量部の搾汁液を得た。その後、窒素雰囲気下でスパウトパックに充填し、直ちに80℃で1分間加熱殺菌し、20℃の冷却水で冷却し濃厚トマトジュースを得た。 【0030】 <実施例3>温州みかんジュースの製造 選別した温州ミカンを水洗後、上下半分にカットする。実芯部の基準糖度をチェックすると10であった。当該糖度チェック後の温州ミカンを徐々に圧搾し、ろ過後、総重量に対して25重量部の搾汁液を得た。その後、スパウトパックに小分けし、直ちに70℃で1分間加熱殺菌し、20℃の冷却水で冷却し温州ミカンジュースを得た。保存用として、1時間のプロトン凍結により冷凍ジュースを得た。 【0031】 <実施例4>イチゴジュースの製造 選別したイチゴ(糖度8以上)を水洗後、上下半分にカットする。カットしたイチゴを徐々に圧搾し、ろ過後、総重量に対して15重量部の搾汁液を得た。続いて直ちに窒素雰囲気下でスパウトパックに充填し80℃で1分間加熱殺菌し、20℃の冷却水で冷却し、濃厚なイチゴジュースを得た。 【0032】 <試験例1>官能試験(呈味チェック) 製造例1のカボチャジュースについて、製造直後と解凍直後及び解凍後10日目の呈味チェックを行った。 また、比較例1として、製造例1において、カボチャの使用部位(種部除去後、実全体を使用して搾汁量無調整)以外は、製造例1と同じ方法で製した生ジュースを製造直後と解凍直後及び解凍後10日目の呈味でチェックした。 比較例2として、製造例1と凍結方法をプロトン凍結によらず製した場合の生ジュースを製造直後と解凍直後及び解凍後10日目の呈味でチェックした。 結果を表1に示すが、本発明品の呈味変化はないのに対し、比較例は経変劣化が大きく、製造条件の相違が明らかであった。 【表1】 【0033】 <試験例2>品質試験(菌チェック) 製造例1乃至4で得た生ジュースにつき、製造時の一般細菌、大腸菌および黄色ブドウ球菌について、食品衛生検査指針(微生物編)により検査したところ、いずれも未検出であった。また、製造例1の冷凍ジュースについては、解凍後の品質をチェックしたところ、解凍後10日迄は安全に食するレベルにあることが確認できた。 |
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