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飲食・調理
 
【発明の名称】ハリおよびエアガン
【特許権者】
【識別番号】500550256
【氏名又は名称】森光 峰秋
【住所又は居所】和歌山県和歌山市新和歌浦4−8
【発明者】
【氏名】森光 峰秋
【住所又は居所】和歌山市新和歌浦4−8
【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
【特許請求の範囲】
【請求項1】前端が、対象物となる活魚の神経または脊髄部分に突き刺さるように鋭利に形成されているとともに、前端から後端にかけて径が大きくなっているテーパ形状に形成され、後端面に、その後方から送られてきた圧搾空気を受ける凹部が設けられているハリ。
【請求項2】ハリを対象物に突き刺したとき、所定位置より深く突き刺さるのを防止するストッパーが外周に形成されている請求項1に記載のハリ。
【請求項3】合成樹脂により形成されている請求項1または請求項2に記載のハリ。
【請求項4】請求項1〜請求項3の何れかに記載のハリを内蔵し、対象物に向けてガイドする筒部と、この筒部内のハリが筒部の外に射出されるようにハリの凹部に圧搾空気を供給するエア供給部とを備えているエアガン。
【発明の詳細な説明】
【発明の属する技術分野】本発明は、魚類の神経または脊髄に突き刺すことにより、この魚類を仮死状態にするためのハリおよびこのハリを射出するエアガンに関する。
【従来の技術】魚類は、非常に傷みやすく、新鮮さが求められる食品である。新鮮さが欠けた魚類は、食味的に不味くなるばかりか、食中毒など衛生的な問題が生じる原因となってしまう。そこで、通常、捕獲された魚類は、運搬を行う際の鮮度維持を図るための手段として、冷凍・冷蔵などの処理を行うことが一般的に行われているが、この場合魚類は死亡した状態であるため、捕獲された状態(生きている状態)と比べると、明らかに品質が劣化してしまうという問題があった。
一方、捕獲された状態の品質を維持することを目的とした魚類を運搬する方法として、車両や船舶に設けられた生簀に生きたままの魚類(活魚)を入れて運搬することも行われている。活魚は、冷凍・冷蔵処理が行われた魚類と比べて鮮度が全く異なり、特に、すし屋や割烹など魚類の品質にこだわる店にとって大変重宝されている。
しかし、生簀を備えた車両で活魚を運搬することは、以下のような弊害がある。活魚の運搬の際、活魚にストレスなどが生じて、いわゆる生きやせ現象が生じたりすると、せっかく活魚として運搬しても、その商品価値が下がってしまうため、管理が非常に大変である。生簀内に入れることができる活魚の数は限られており、一台の車両で運搬できる魚類の数は、冷凍・冷蔵処理を行った魚類と比べて著しく少なくなってしまい非常に運搬効率が悪い。一つの生簀に複数種の魚を入れることができず、魚の種類に応じた生簀が必要となる。
このようなことから、活魚は、非常に高価で、一般家庭の食卓に上りにくい食品という印象がもたれている。そこで、上記問題を解決する活魚の運搬方法として、魚類の神経または脊髄にハリを刺突して、麻酔状態(仮死状態)にした上で、この仮死状態となった活魚を運搬することが提案されている。
仮死状態となった魚類(以下、「仮死魚」と記す。)は、運動機能が低下するとともに、呼吸などの自律機能が抑制されているが、生命維持活動が停止したわけではない。したがって、仮死魚は、活魚の状態では、不可能な狭い容器などに入れた状態であっても、運搬が可能であり、しかも死んでいるわけではないので仮死状態を解除することにより、元の状態に戻る。
【発明が解決しようとする課題】しかし、活魚にハリを突き刺す作業は、非常に高度な技術が必要で、素人が行うには難しく、仮死状態にするはずの魚を誤って死なせてしまうおそれがある。さらに、暴れる活魚一匹ごとにハリを突き刺して、仮死状態まで持っていく操作は、非常に時間がかかるため、一日あたり10〜20匹くらいしか処理できず、現実的でなかった。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされ、生きている魚類にハリを突き刺して仮死状態とする作業を、容易にしかもすばやく行うことができるハリおよびエアガンの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】このような目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の発明にかかるハリ(以下、「請求項1のハリ」と記す。)は、前端が、対象物となる活魚の神経または脊髄部分に突き刺さるように鋭利に形成されているとともに、前端から後端にかけて径が大きくなっているテーパ形状に形成され、後端面に、その後方から送られてきた圧搾空気を受ける凹部が設けられている構成とした。
上記構成において、本発明にかかるハリは、いわゆる「鍼」のことをいい、対象物の神経や脊髄に突き刺すことにより、その対象物の動きを抑制、すなわち麻酔状態にするために使用するものをいう。ここで、本発明にかかるハリを使用する対象物としては、魚類が好ましい。
また、このとき魚類の種類は、特に限定されない。すなわち、魚類が、たとえば、マグロなどのように比較的大型の魚である場合、長さが10〜20cm程度のハリを用い、ハマチなどの中型の魚である場合、長さが5cm前後のハリを用い、タイなどの小型の魚である場合、長さが1〜2cm程度のハリを用いることで対処することができる。もちろん、ハリの長さを調整することで、アジや秋刀魚などのように、さらに小型の魚に用いることもできる。
また、ハリの形状は、前端が鋭利に形成されているとともに、後端面に圧搾空気を受ける凹部が設けられている形状をしていると特に限定されないが、たとえば、前端から後端にかけて径が大きくなっているテーパ形状などが挙げられる。
特に、ハリは、本発明の請求項2に記載の発明にかかるハリ(以下、「請求項2のハリ」と記す。)のように、ハリを対象物に突き刺したとき、所定位置より深く突き刺さるのを防止するストッパーが外周に形成されている構成をしていることが好ましい。すなわち、ハリは、ストッパーを備えることにより、圧搾空気の力が多少強い場合であっても、ストッパーにより所定位置でハリが止まるため、ハリが必要以上に突き刺さることがない。突き刺したハリを引き抜くときの取っ手代わりになる。ハリが突き刺さっていることを外部から容易に視認することができるなどの利点がある。
また、ハリを形成する材質としては、特に限定されないが、たとえば、鉄、ステンレス、真鍮などの金属や合成樹脂などが挙げられる。特に、本発明の請求項3に記載の発明にかかるハリ(以下、「請求項3のハリ」と記す。)のように合成樹脂により形成されている構成をしていると、錆びない、成形が容易である、軽量であるなどの理由から好ましい。ここで、合成樹脂としては、特に限定されないが、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニルなどが挙げられる。
一方、本発明の請求項4に記載の発明にかかるエアガン(以下、「請求項4のエアガン」と記す。)は、請求項1〜請求項3の何れかに記載のハリを内蔵し、対象物に向けてガイドする筒部と、この筒部内のハリが筒部の外に射出されるようにハリの凹部に圧搾空気を供給するエア供給部とを備えている構成とした。
【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ詳しく説明する。図1は、本発明にかかるハリの1実施形態を示した斜視図および断面図である。図2は、本発明にかかるエアガンの1実施形態を示した一部切り欠き断面の側面図である。
ハリ1は、ポリエチレン樹脂により形成され、図1(a)および(b)に示したように、ハリ本体10とストッパー11とを備えている。ハリ本体10は、前端101が対象物となる生体の神経または脊髄部分に突き刺さるように鋭利に形成されているとともに、後端面102に凹部103が設けられている。また、ハリ本体10は、図1(a)および(b)に示したように、その後端外周にストッパー11が形成されている。
エアガン2は、図2に示したように、筒部20と、エア供給部21と、レバー(引き金)22と、ハリ供給用のマガジン23とを備えており、略ピストル形状をしたいわゆる「釘打ち機」と略同じ構造をしている。筒部20は、ハリ1におけるストッパー11の外径と略同じ大きさをした内径を有しており、ハリ1の前端101が筒部20の先端部201方向を向いた状態が維持されるようにハリ1をガイドするようになっている。また、筒部20は、その一部がマガジン23と結合するようになっており、結合したとき、マガジン23の上端に形成されているハリ供給部231が筒部20内の一部を構成するようになっている。ハリ供給部231は、ハリ1を筒部20の先端部から射出可能なようにハリ1をガイド支持しており、ガイドしているハリ1が射出された後に、マガジン23内から新たなハリ1がハリ供給部に供給されるようになっている。
エア供給部21は、レバー22を引くことにより、コンプレッサー(図示せず)から送られてきた圧搾空気を、ハリ供給部231にガイドされている状態にあるハリ1の後端面102に形成されている凹部103に供給し、この圧搾空気の力により筒部20の先端部201からハリ1を0.1〜0.7MPaで射出するようになっている。
次に、ハリ1およびエアガン2を用いて魚類を仮死状態にする操作を説明する。図3は、図1に示したハリ1および図2に示したエアガン2を用いて、魚類としてハマチHの脊髄に突き刺している様子を示した説明図である。このとき、ハリ1は、図1(b)に示したように、長さLが5cm、先端部Fが5〜10mm、また、先端部Fの径が約1mm、ストッパー11の前方部分の径が約2mmのものを使用する。
まず、水槽から取り出した活けハマチHを、図3に示したようにマットレスMの上に横たえ一方の手で押さえつけるとともに、他方の手に用意したエアガン2の先端部201を、ハマチHの頭部よりもやや後方位置に当接させる。他方の手でエアガン2のレバー22を引き、エアガン2からハリ1を発射させる。
エアガン2から発射されたハリ1は、ストッパー11により、前端101が図4および図5に示したハマチHの神経(脊髄)部分Nに突き刺さった位置で停止し、ハマチHを仮死状態にする。の操作でハマチHが仮死状態にならなければ、同様の操作を行い、ハマチHの脊髄Nにおける他の部分にハリ1を突き刺すようにする。
以上の操作を行うことにより、ハマチ1は、運動能力が低下するとともに呼吸量が減少し、その他の自律機能全てが抑制された状態となる。このように仮死状態となったハマチHは、生簀に入れなくても、ハマチHを水中に浸けた状態で収容することができるだけの容積を有する容器に収容した状態で輸送することができる。
ハリ1が突き刺さったままの仮死状態となったハマチHを水の入った容器に入れて輸送を行う。このときの容器内の水温は、3〜15℃程度(好ましくは、3℃〜8℃)に調整しておくことが好ましい。輸送が完了するなどして、仮死状態となったハマチHの仮死状態を解きたい場合は、ハマチHに突き刺さっているハリ1を引き抜くようにする。脊髄部分に突き刺さっていたハリ1を引き抜かれたハマチHは、運動能力および自律機能が回復し、仮死状態とする以前の状態に近づく。
上述したように、本発明にかかるハリ1およびエアガン2を用いると、ハマチHの輸送に生簀を備えた車両を使用する必要がなくなるため、輸送コストを大幅に低減させることができ、しかも、輸送の際の管理も容易となる。しかも、熟練した技術が必要である魚類の神経または脊髄部分へハリを突き刺す作業が、素人であっても僅かな練習を行うだけで可能となるばかりか、一日あたり一人で行える処理量が大幅に増え作業効率が非常に向上する。すなわち、エアガン2のマガジン23に1000本のハリ1が収容されるようにすると、一匹あたり2本づつハリ打ちした場合であっても500匹分の処理を行うことができるのである。また、ハリ1は、後端面102に凹部103が設けられており、エアガン2は、エア供給部21から凹部103に圧搾空気を供給するようになっているので、圧搾空気の力を無駄なく利用してハリ1を射出することができる。
さらに、ハリ1は、ハリ本体10の外周にストッパー11が設けられているため、容易にしかも確実にハリ1を突き刺す深さを調整することができ、エアガン2の圧搾空気の圧力が多少高い場合であっても所定位置で停止し、深く突き刺さりすぎるということがなくなる。加えて、ストッパー11は、ハマチHに突き刺したハリ1を引き抜くとき、つまみの代わりとなり抜き易さを向上させる役割を有するのに加えて、派手な色に着色するなどして目立つ外観にすると、ハリ1がハマチHに突き刺さっている様子を外部に知らせる目印としての役割も有する。
また、本発明にかかるハリおよびエアガンは、上記実施の形態に限られない。たとえば、上記実施の形態では、ハリ1は、ストッパー11がハリ本体10の後方外周を取り巻くように形成されていたが、ハリ本体10の一部だけ外方に突出させるようにしてストッパーを形成するようにしても良い。また、ハリの長さや径は、対象となる魚の種類に応じて適宜決めればよく上記実施の形態の値に限定されるものではないのはいうまでもない。
また、本発明にかかるエアガンは、上述した使用方法に加えて、水中銃と同様の使用方法でハリ打ちを行うようにしても構わない。この場合であっても、ハリを射出する駆動源がエアであるため錆びることがない。また、本発明にかかるハリおよびエアガンは、食用の魚類に係わらず、たとえば、水族館の水槽内などにおいて、病気となった高価な魚類に対して、麻酔代わりにハリを打ち込んで麻酔状態として治療するのに利用することもできる。
【発明の効果】本発明の請求項1にかかるハリは、以上のように構成されているので、魚類の神経や脊髄にハリを突き刺すという作業を容易に行うことができ、活魚の輸送を効率良く行うことを可能とする。また、本発明の請求項2にかかるハリは、請求項1のハリの効果に加えて、ストッパーが設けられているため、魚類に突き刺す深さの調整を容易に行うことができる。
また、本発明の請求項3にかかるハリは、請求項1または請求項2のハリの効果に加えて、合成樹脂により形成されているため、錆びることがなく長期間使用することができるのに加えて、成形が容易であり、軽量に抑えることができるため操作性に優れている。
また、本発明の請求項4にかかるエアガンは、請求項1〜請求項3の何れかに記載のハリを圧搾空気の力により射出するようになっているため、片手で操作することができ、もう一方の手で魚を押さえておくなど素人であっても少しの練習でハリ打ちが容易に行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるハリの1実施形態を示した斜視図および断面図である。
【図2】本発明にかかるエアガンの1実施形態を示した一部切り欠き断面の側面図である。
【図3】図1に示したハリを、図2に示したエアガンを用いて、ハマチの脊髄に突き刺している様子を示した説明図である。
【図4】魚類の神経および脊髄部分を示した側面図である。
【図5】魚類の神経および脊髄部分を正面から示した断面図である。
【符号の説明】1 ハリ101 前端102 後端面103 凹部11 ストッパー2 エアガン20 筒部21 エア供給部
【図1】
図1
【図2】
図2
【図3】
図3
【図4】
図4
【図5】
図5 
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