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【発明の名称】大豆茶用大豆粉の製造方法及びその製造方法により製造した大豆茶用大豆粉 【出願人】 【識別番号】521464972 【氏名又は名称】角田 光淳 【住所又は居所】埼玉県所沢市荒幡1055-7 【代理人】 【識別番号】100124327 【弁理士】 【氏名又は名称】吉村 勝博 【発明者】 【氏名】角田 光淳 【住所又は居所】埼玉県所沢市荒幡1055-7 【要約】 【課題】本件出願に係る発明は、ふくよかな香りやまろやかな風味等の優れた二次機能(感覚機能)を有する大豆茶飲料を得るための大豆茶用大豆粉を、比較的簡便且つ安価に製造する方法、及びその製造方法により製造した大豆茶用大豆粉を提供することを目的とする。 【解決手段】この課題を解決するために、本件出願に係る発明は、生大豆を水洗した後、水切りを行い、含水量が5質量%〜15質量%となるまで乾燥させることにより、乾燥大豆を得る工程と、前記乾燥大豆を耐圧容器内に入れて密閉し、160℃〜200℃に加熱する工程と、前記耐圧容器内の圧力を瞬時に大気圧まで減圧し、膨化大豆を得る工程と、前記膨化大豆を粉砕し、大豆茶用大豆粉を得る工程とを備える大豆茶用大豆粉の製造方法及びその製造方法により製造した大豆茶用大豆粉を採用する。 【特許請求の範囲】 【請求項1】 以下の工程1〜工程4を備えることを特徴とする大豆茶用大豆粉の製造方法。 工程1: 生大豆を水洗した後、水切りを行い、含水量が5質量%〜15質量%となるまで乾燥させることにより、乾燥大豆を得る。 工程2: 前記乾燥大豆を耐圧容器内に入れて密閉し、160℃〜200℃に加熱する。 工程3: 前記耐圧容器内の圧力を瞬時に大気圧まで減圧し、膨化大豆を得る。 工程4: 前記膨化大豆を粉砕し、大豆茶用大豆粉を得る。 【請求項2】 前記工程2における耐圧容器内の圧力は、0.8MPa〜1.5MPaである請求項1に記載の大豆茶用大豆粉の製造方法。 【請求項3】 前記工程2における前記乾燥生大豆の加熱時間は、1分間〜5分間である請求項1又は請求項2に記載の大豆茶用大豆粉の製造方法。 【請求項4】 請求項1に記載の大豆茶用大豆粉の製造方法により製造した大豆茶用大豆粉であって、 含有するイソフラボン類におけるイソフラボンアグリコンの割合が20%〜55%であることを特徴とする大豆茶用大豆粉。 【請求項5】 色差計で測定した明度(L*値)が15〜35である請求項4に記載の大豆茶用大豆粉。 【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本件出願に係る発明は、大豆茶用大豆粉の製造方法及びその製造方法により製造した大豆茶用大豆粉に関する。 【背景技術】 【0002】 大豆は脂質や蛋白質を多く含み、一次機能(栄養機能)が優れている。また、大豆は女性ホルモン(エストロゲン)様作用を有するイソフラボン類や、コレステロールを下げるレシチン等を含むことから、三次機能(生体調整機能)にも優れている。ここで、大豆及び多くの大豆加工食品に含まれるイソフラボン類(大豆イソフラボン)は、主にイソフラボン配糖体として存在している。そして、このイソフラボン配糖体を体内に摂取すると、イソフラボン配糖体は腸内細菌等の作用により非配糖体(イソフラボンアグリコン)となり、腸管から吸収される。エストロゲン受容体に結合して、上述の女性ホルモン(エストロゲン)様作用を示す成分も、この非配糖体(イソフラボンアグリコン)である。 【0003】 一方、大豆及び多くの大豆加工食品には青臭さや収斂味(渋味)等の独特の風味があり、二次機能(感覚機能)は劣る部分がある。この大豆の二次機能を改善して体内に摂取する方法として、焙煎した大豆を用いる大豆茶が知られている。例えば、特許文献1には、「大豆と黒豆にささげ豆と小豆の両方若しくは一方を加えてなる4種類若しくは3種類の豆類を所要の配分率で混合して焙煎し、或いは前記豆類を焙煎した後に所要の配合率で混合し、これを粉砕して該粉砕物を適宜抽出手段によって抽出したことを特徴とする豆類焙煎健康飲料」が開示されている。 【0004】 特許文献2には、「生大豆を水又はアルカリ水に浸漬し膨潤させる浸漬工程と、前記浸漬工程終了後の大豆を水切りする水切り工程と、前記水切り工程終了後の大豆を焙煎する焙煎工程とを含むことを特徴とする大豆茶の製造方法」が開示されている。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0005】 【特許文献1】 特開平11−18738号公報 【特許文献2】 特開2000−41638号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 しかし、特許文献1の豆類焙煎健康飲料を製造するためには、大豆の他に複数種類の豆類を用意し、それらを所要の配分率で混合する必要がある。また、特許文献2の大豆茶の製造方法は、生大豆を水又はアルカリ水に2時間〜10時間程度浸漬する必要がある。そのため、特許文献1及び特許文献2に係る発明は、製造に手間がかかり、且つ製造コストの増大を招くものであった。 【0007】 以上のことから理解できるように、当業者間では、ふくよかな香りやまろやかな風味等の優れた二次機能(感覚機能)を有する大豆茶飲料を得るための大豆茶用大豆粉を、比較的簡便且つ安価に製造する方法、及びその製造方法により製造した大豆茶用大豆粉の提供が求められてきた。 【課題を解決するための手段】 【0008】 そこで、本発明者は、鋭意研究の結果、以下の製造方法等を採用することにより、上述の課題を達成するに至った。 【0009】 A.大豆茶用大豆粉の製造方法 本件出願に係る大豆茶用大豆粉の製造方法は、以下の工程1〜工程4を備えることを特徴とする。 工程1: 生大豆を水洗した後、水切りを行い、含水量が5質量%〜15質量%となるまで乾燥させることにより、乾燥大豆を得る。 工程2: 前記乾燥大豆を耐圧容器内に入れて密閉し、160℃〜200℃に加熱する。 工程3: 前記耐圧容器内の圧力を瞬時に大気圧まで減圧し、膨化大豆を得る。 工程4: 前記膨化大豆を粉砕し、大豆茶用大豆粉を得る。 【0010】 本件出願に係る大豆茶用大豆粉の製造方法は、前記工程2における耐圧容器内の圧力が、0.8MPa〜1.5MPaであることが好ましい。 【0011】 本件出願に係る大豆茶用大豆粉の製造方法は、前記工程2における前記乾燥生大豆の加熱時間が、1分間〜5分間であることが好ましい。 【0012】 B.大豆茶用大豆粉 本件出願に係る大豆茶用大豆粉は、上述の本件出願に係る大豆茶用大豆粉の製造方法により製造したものであって、含有するイソフラボン類におけるイソフラボンアグリコンの割合が20%〜55%であることを特徴とする。 【0013】 本件出願に係る大豆茶用大豆粉は、色差計で測定した明度(L*値)が15〜35であることが好ましい。 【発明の効果】 【0014】 本件出願に係る発明によれば、ふくよかな香りやまろやかな風味等の優れた二次機能(感覚機能)を有する大豆茶飲料(大豆茶)を得るための大豆茶用大豆粉を、比較的簡便且つ安価な方法で製造することができる。そして、本件出願に係る大豆茶用大豆粉をお湯(熱湯)で抽出して得た大豆茶は、含有するイソフラボン類におけるイソフラボンアグリコンの割合が比較的高いことから、体内におけるイソフラボン類の吸収効率が良好であり、三次機能(生体調整機能)も大いに優れている。 【発明を実施するための形態】 【0015】 以下に、本件出願に係る大豆茶用大豆粉の製造方法、及びその製造方法で製造した大豆茶用大豆粉について説明する。なお、本件出願に係る発明は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。 【0016】 A.大豆茶用大豆粉の製造方法 本件出願に係る大豆茶用大豆粉の製造方法は、以下の工程1〜工程4を備えることを特徴とする。本件出願に係る大豆茶用大豆粉の製造方法は、以下の工程1〜工程4を備えることにより、優れた一次機能(栄養機能)及び三次機能(生体調整機能)を保持したまま、ふくよかな香りやまろやかな風味等の優れた二次機能(感覚機能)を有する大豆茶飲料を得るための大豆茶用大豆粉を、比較的簡便且つ安価な方法で製造することができる。以下、各工程ごとに説明する。 【0017】 工程1: この工程では、生大豆を水洗した後、水切りを行い、所定の含水量になるまで乾燥させることにより、乾燥大豆を得る。ここで、原料に用いる大豆の種類について特段の制限はないが、黄大豆、黒大豆及び青大豆等の油脂を5質量%〜25質量%程度含むものであると、一次機能(栄養機能)及び三次機能(生体調整機能)に特に優れる大豆茶飲料を得るための大豆茶用大豆粉を製造できるため好ましい。また、原料に用いる大豆の品種についても特段の制限はないが、オリゴ糖等の生体調整機能を有する成分を多く含む、小糸在来(商品登録)等の在来品種であると、三次機能に特に優れる大豆茶飲料を得るための大豆茶用大豆粉を製造できるため好ましい。 【0018】 ここで、生大豆の水洗は、汚れ除去と不良大豆の選別とを目的として行う。生大豆を水洗する際の条件等については、特段の制限はなく、例えば、市販の乾燥生大豆を容器に入れて、室温の水を用いて10秒間〜30秒間程度これを洗浄し、付着している土や埃等を除去すればよい。その際、水に浮いた不良の生大豆は廃棄して、それ以外の生大豆のみを原料として使用すると、大豆茶用大豆粉から得た大豆茶飲料が、より風味の良いものとなるため好ましい。生大豆を水洗した後は、ざるに揚げる等して直ちにこれを水切りする。 【0019】 水切りした生大豆は、従来公知の方法で、含水量が5質量%〜15質量%となるよう乾燥させる。水切りした生大豆の乾燥には、例えば、市販の低温乾燥機等を用いればよい。ここで、乾燥後の大豆の含水量が5質量%未満であると、次工程で乾燥大豆を密閉加熱した際に、乾燥大豆から放出される水分に起因する飽和水蒸気の量が不足して、大豆に備わる不快味や不快臭の原因となる成分の分解や、脂質、糖質等の加水分解が十分進まず、風味のよい大豆茶飲料を得るための大豆茶用大豆粉を製造できない傾向にあるため好ましくない。一方、乾燥後の大豆の含水量が15質量%を超えても、当該大豆茶用大豆粉から格別に風味のよい大豆茶飲料が得られるものでもなく、保存時に乾燥大豆が腐敗し易くなる等、取り扱いが困難になる傾向があるため好ましくない。 【0020】 洗浄後の生大豆を乾燥させる際の条件について特段の制限はないが、乾燥時の温度が25℃〜70℃程度であると、乾燥大豆の含水量を所定の数値範囲内とする作業がより容易となるため好ましい。乾燥時の温度が25℃未満であると、所定の含水量となるよう乾燥させるために比較的長い時間を要し、作業効率が悪くなる。一方、乾燥時の温度が70℃を超えると、大豆内の水分量が減少する速度がより速くなり、所定の含水量に調整することが比較的困難になる。 【0021】 工程2: この工程では、上述の工程1で得た乾燥大豆を耐圧容器内に入れて密閉し、160℃〜200℃で加熱する。乾燥大豆の密閉加熱には、例えば、市販の耐圧容器等を用いた従来公知の方法を採用すればよい。乾燥大豆を当該温度で密閉加熱すると、乾燥大豆に含まれる水分が蒸発して耐圧容器内に高温の飽和水蒸気が発生する。そして、高温の飽和水蒸気内で乾燥大豆を加熱(焙煎)すると、大豆に備わる不快味や不快臭の原因となる成分が分解すると共に、脂質や糖質等が加水分解されて、ふくよかな香りやまろやかな風味等が生じ、当該大豆茶用大豆粉から得た大豆茶飲料の二次機能(感覚機能)が大幅に改善される。更に、本工程により、原料である生大豆に含まれるイソフラボン配糖体の一部が分解して非配糖体(イソフラボンアグリコン)となり、体内におけるイソフラボン類の吸収効率が良好な大豆茶飲料を得るための大豆茶用大豆粉を製造することができる。 【0022】 ここで、乾燥大豆の密閉加熱温度が160℃未満であると、大豆に備わる不快味や不快臭の原因となる成分を分解することができず、風味のよい大豆茶飲料を得るための大豆茶用大豆粉を製造することができない傾向にあるため好ましくない。一方、乾燥大豆の密閉加熱温度が200℃を超えると、大豆に含まれる糖質やアミノ酸等の好ましい呈味成分、栄養機能や生体調整機能を有する成分等が分解する等して低減したり、乾燥大豆が炭化するおそれがあるため好ましくない。 【0023】 また、この工程2における耐圧容器内の圧力は、0.8MPa〜1.5MPaであることが好ましい。ここで、耐圧容器内の圧力が0.8MPa未満であると、乾燥大豆に含まれる水分の沸点が十分に上昇せず、大豆に備わる不快味や不快臭の原因となる成分を分解して風味のよい大豆茶飲料を得るための大豆茶用大豆粉を製造することができない傾向にあるため好ましくない。一方、耐圧容器内の圧力が1.5MPaを超えると、乾燥大豆に含まれる水分の沸点が高くなりすぎて、大豆に含まれる糖質やアミノ酸等の好ましい呈味成分、栄養機能や生体調整機能を有する成分等が分解する等して低減したり、乾燥大豆が炭化するおそれがあるため好ましくない。 【0024】 そして、この工程2における乾燥大豆の加熱時間は、1分間〜5分間であることが好ましい。ここで、乾燥大豆の加熱時間が1分間未満であると、乾燥大豆に加熱むらが生じたり、大豆に備わる不快味や不快臭の原因となる成分を分解して風味のよい大豆茶飲料を得るための大豆茶用大豆粉を製造することができない傾向にあるため好ましくない。一方、乾燥大豆の加熱時間が5分間を超えても、当該大豆茶用大豆粉から格別に風味のよい大豆茶飲料が得られるものでもなく、単なる製造コストの増大となるため好ましくない。 【0025】 工程3: この工程では、上述の工程2における耐圧容器内の圧力を瞬時に大気圧まで減圧し、膨化(パフ)大豆を得る。耐圧容器内の圧力を瞬時に大気圧まで減圧する方法としては、従来公知の方法を用いればよく、例えば、上述の密閉加熱に用いた耐圧容器等の機器に耐圧バルブ等を取付けて、耐圧容器内の気体を瞬時に大気開放する等の方法が挙げられる。耐圧容器内の圧力を瞬時に大気圧まで減圧すると、加熱大豆内の水分が急激に蒸発及び膨張して、加熱大豆の体積が1.5倍〜3.0倍程度に増大して膨化大豆となる。この膨化大豆は、内部に多くの孔部を有するため、従来の大豆茶用焙煎大豆と比較して、次工程の粉砕作業が極めて容易になる。そして、この瞬間減圧に伴い、耐圧容器内の温度は一気に100℃以下まで低下する。この急激な温度低下により、加熱大豆に含まれるふくよかな香りや良好な酸味を生じる成分の揮散が抑制されて膨化大豆内に吸着保持される。 【0026】 工程4: この工程では、上述の工程3で得た膨化大豆を粉砕し、大豆茶用大豆粉を得る。膨化大豆を粉砕する方法としては、従来公知の方法を用いればよく、例えば、膨化大豆を市販の食品用粉砕機内に入れて、所望の大きさになるまで適宜粉砕すればよい。膨化大豆を粉砕して大豆茶用大豆粉とすることにより、より簡便にお湯等による大豆茶用大豆粉の抽出液(大豆茶飲料)を得ることができる。以上に、大豆茶用大豆粉の製造方法について説明した。以下に、この製造方法により製造した大豆茶用大豆粉について説明する。 【0027】 B.大豆茶用大豆粉 本件出願に係る大豆茶用大豆粉は、上述の本件出願に係る大豆茶用大豆粉の製造方法により製造したものであって、含有するイソフラボン類におけるイソフラボンアグリコンの割合が20%〜55%であることを特徴とする。ここで、大豆に含まれるイソフラボン類は、ダイゼイン、ゲニステイン及びグリシテインの3種からなる非配糖体(イソフラボンアグリコン)、ダイジン、ゲニスチン及びグリシチンの3種からなる配糖体、これら配糖体のアセチル化体及びマレニル化体の合計12種が知られている。そして、原料である生大豆及び多くの大豆食品に含まれるイソフラボン類におけるイソフラボンアグリコンの割合は、概ね3%〜10%程度である。上述のとおり、イソフラボン配糖体を体内に摂取すると、イソフラボン配糖体は腸内細菌等の作用により非配糖体(イソフラボンアグリコン)となり、腸管から吸収される。そのため、含有するイソフラボン類におけるイソフラボンアグリコンの割合が20%〜55%である本件出願に係る大豆茶用大豆粉は、体内におけるイソフラボン類の吸収効率が良好であり、当該大豆茶用大豆粉をお湯(熱湯)で抽出して得た大豆茶飲料は、二次機能(感覚機能)に加えて三次機能(生体調整機能)も大いに優れているといえる。 【0028】 また、本件出願に係る大豆茶用大豆粉は、色差計で測定した明度(L*値)が15〜35であることが好ましい。ここで、大豆茶用大豆粉の明度(L*値)が15未満であると、外観色が黒色に近くなり、当該大豆茶用大豆粉をお湯(熱湯)で抽出して得た大豆茶飲料の外観色も同様により黒色に近くなることから、美味しさを感じさせる視覚的要因が低下し、大豆茶飲料としての商品価値が下がる傾向にあるため好ましくない。一方、大豆茶用大豆粉の明度(L*値)が35を超えると、当該大豆茶用大豆粉をお湯(熱湯)で抽出して得た大豆茶飲料の外観色が明るくなりすぎて、高級感のあるきれいな琥珀色とならず、大豆茶飲料としての商品価値が低下する傾向にあるため好ましくない。そして、本件出願に係る大豆茶用大豆粉は、色差計で測定した明度(L*値)に応じて、明度(L*値)が15〜17を極深煎り、18〜20を深煎り、21〜23を中深煎り、24〜26を中煎り、27〜31を中浅煎り、32〜35を浅煎りと、例えば6段階に分別して市販することも好ましい。 【0029】 以下に、本件出願に係る実施例を示し、より具体的に説明する。なお、本件出願に係る発明の技術的思想は、以下に述べる実施例等の記載に限定して解釈されるものではない。 【実施例1】 【0030】 市販の乾燥生黄大豆(小糸在来(商標登録))100gを容器に入れて室温の水道水で20秒間水洗し、金属製のざるに揚げて水切りを行い、金属製のざるに入れたまま低温乾燥機内に静置した。これを50℃で10分間、大気中で乾燥させて、含水量が10質量%の乾燥黄大豆を得た。次いで、これをステンレス製の耐圧容器内に入れて密閉し、耐圧容器の内部が180℃、1.3MPaとなるよう調整した状態で1分間放置した。続いて、耐圧容器に備わる圧力バルブを開けて耐圧容器の内部に存在する気体を大気開放することにより、耐圧容器内の圧力を瞬時に大気圧まで減圧して、膨化黄大豆を得た。この膨化黄大豆を室温まで放冷した後、市販のコーヒーミルを用いて粉砕し、40メッシュの茶こしからなる篩に通して粒径5mm以下の大豆茶用大豆粉を得た。 【0031】 (評価方法) 上述の方法で得た大豆茶用大豆粉を5g計量して白色のカップに入れて平らにならし、カラーアナライザー色差計(佐藤商事株式会社製のTES−135Aプラス)を用いて明度(L*値)及び色度(a*値、b*値)を測定した。次いで、評価基準として、原料に用いたものと同じ市販の乾燥生黄大豆(小糸在来(商標登録))100gを市販のコーヒーミルを用いて粉砕し、40メッシュの茶こしからなる篩に通して粒径5mm以下の生大豆粉を得た。そして、この生大豆粉で同様の測定を行った。これらの結果を表1に示す。 【0032】 続いて、上述の方法で得た生大豆粉を5g計量して撹拌子と共に容器内に入れて、これに70vоl%(体積パーセント濃度)のエタノール100mlを加えて、撹拌機を用いて室温で30分間攪拌した。その後、容器内から撹拌子を取り出し、遠心分離機を用いて遠心分離を行い、上澄み液を10μl採取して、高速液体クロマトグラフィー法(HPLC法)で生大豆粉に含まれるイソフラボン類の定性分析及び定量分析を行った。表2に、生大豆粉に含まれるイソフラボン類の総量(12種の大豆イソフラボンの合計量)、生大豆粉に含まれるイソフラボンアグリコンの総量(3種の非配糖体の合計量)、及び「イソフラボン類の総量」に対する「イソフラボンアグリコンの総量」(含有するイソフラボン類におけるイソフラボンアグリコンの割合)を示す。次に、これを評価基準として、上述の方法で得た大豆茶用大豆粉を5g計量して、同様の測定を行った。表2に、その結果を示す。なお、表2には、「イソフラボン類の残存量」として、「生大豆粉に含まれるイソフラボン類の総量」に対する「大豆茶用大豆粉に含まれるイソフラボン類の総量」についても、併せて記載した。 【0033】 更に、上述の方法で得た大豆茶用大豆粉を別途10g計量して容器内に入れて、これに85℃のお湯(熱湯)200mlを加えて、5分間保温した。その後、遠心分離機を用いて遠心分離を行い、上澄み液を得て、当該上澄み液(抽出液)を試験用に10μl採取した。次いで、高速液体クロマトグラフィー法(HPLC法)で当該抽出液に含まれるイソフラボン類の定性分析及び定量分析を行い、上述の試験で得た「大豆茶用大豆粉に含まれるイソフラボン類の総量」に対する、「抽出液(大豆茶)に含まれるイソフラボン類の総量」である「抽出液におけるイソフラボン類の残存量」を算出した。95℃のお湯(熱湯)でも同様の試験を行い、それらの結果を表3に記載した。 【0034】 また、上述の方法で得た大豆茶用大豆粉を5g計量して撹拌子と共に容器内に入れて、これに85℃のお湯(熱湯)200mlを加えて、保温したまま撹拌機を用いて5分間攪拌した。その後、容器内から撹拌子を取り出し、室温まで放冷した後、市販の濾紙で濾過を行うことにより、抽出液100mlを得た。この抽出液を10ml採取し、屈折糖度計(エルマ販売株式会社製の標準アッベ屈折計)で糖度(Brix値)を測定した。次いで、当該抽出液を別途10ml採取し、市販のpHメーターで当該抽出液のpHを測定した。続いて、当該抽出液を別途10ml採取し、撹拌子と共に容器内に入れた。これに純水(イオン交換水)50mlを加えて市販の撹拌機で攪拌を行いながら、濃度0.5mоl/Lの水酸化ナトリウム水溶液で滴定を行い、pHメーターの表示が7.0となるまでに消費した水酸化ナトリウム水溶液の量から、酢酸を換算値として酸度(抽出液1ml当たりの酢酸換算での酸成分の総量)を算出した。評価基準として、上述の方法で得た生大豆粉についても同様の試験を行った。これらの結果を表4に示す。 【0035】 そして、上述の方法で得た大豆茶用大豆粉を5g計量して撹拌子と共に容器内に入れて、これに70vоl%(体積パーセント濃度)のエタノール100mlを加えて、撹拌機を用いて室温で30分間攪拌した。その後、容器内から撹拌子を取り出し、遠心分離機を用いて遠心分離を行い、上澄み液を10μl採取して、高速液体クロマトグラフィー法(HPLC法)で大豆茶用大豆粉に含まれる有機酸の定性分析及び定量分析を行った。検出された主な有機酸は、α−ケトグルタール酸、クエン酸、コハク酸、酢酸、リンゴ酸及びギ酸で、その総量は大豆茶用大豆粉1g当たり17.4mgだった。この結果も表4に記載した。なお、これらの有機酸は、原料である生大豆に含まれる糖類が変化してできたものである。また、人体に有害な作用を及ぼすシュウ酸は、当該大豆茶用大豆粉に関する本試験では、検出されなかった。 【0036】 更に、上述の方法で得た大豆茶用大豆粉を別途10g計量して不織布製のティーフィルターパック内に収容し、これを容器内に入れて90℃のお湯(熱水)200mlを注いで1分間放置した後、大豆茶用大豆粉入りのティーフィルターパックを容器から取り出し、大豆茶(大豆茶飲料)を得た。この大豆茶を六等分して6人のパネルによりこれを試飲し、その風味(二次機能)について官能評価を行った。その結果を表5に示す。ここで、表5には、後述する各試験を含めて得た大豆茶のうち、各風味が最も強いものを「3.0」として、これを基準値として各大豆茶の風味を「3.0」以下の数値で採点し、6人のパネルの評価結果の平均値を記載した。表5に記載したとおり、本試験で得た大豆茶は、苦みや焦げ臭さは少なく、さわやかな酸味とまろやかな風味とを有する、二次機能(感覚機能)が良好なものだった。なお、この大豆茶に備わる酸味のもととなる成分は、上述の方法で測定した、人体に無害な有機酸によるものである。 【実施例2】 【0037】 実施例2は、乾燥黄大豆を耐圧容器内で密閉加熱する時間を1分間から2分間に変更した点のみが、実施例1と異なる。そのため、試験及びその評価方法については、記載を省略する。この実施例2の試験結果を表1及び表2に示す。なお、表中への記載は省略したが、本試験で得た大豆茶用大豆粉における、「抽出液におけるイソフラボン類の残存量」、「抽出液のBrix値」、「抽出液のpH」、「抽出液の酸度」、及び「大豆茶用大豆粉に含まれる有機酸の総量」は、実施例1の試験結果と同程度の数値だった。また、人体に有害な作用を及ぼすシュウ酸は、実施例1と同様に検出されなかった。そして、本試験で得た大豆茶は、焦げ臭さや収斂味は少なく、さわやかな酸味とふくよかな香りとを有する、二次機能(感覚機能)が良好なものだった。 【実施例3】 【0038】 実施例3は、乾燥黄大豆を耐圧容器内で密閉加熱する時間を1分間から3分間に変更した点のみが、実施例1と異なる。そのため、試験及びその評価方法については、記載を省略する。この実施例3の試験結果を、表1〜表5に示す。表5に記載したとおり、本試験で得た大豆茶は、焦げ臭さや収斂味は少なく、さわやかな酸味、ふくよかな香りと深味、及びまろやかな風味を有する、二次機能(感覚機能)が極めて良好なものだった。なお、本試験で得た大豆茶用大豆粉に関する高速液体クロマトグラフィー法(HPLC法)での分析結果によれば、人体に有害な作用を及ぼすシュウ酸は、実施例1と同様に検出されなかった。 【実施例4】 【0039】 実施例4は、乾燥黄大豆を耐圧容器内で密閉加熱する時間を1分間から4分間に変更した点のみが、実施例1と異なる。そのため、試験及びその評価方法については、記載を省略する。この実施例4の試験結果を、表1及び表2に示す。なお、表中への記載は省略したが、本試験で得た大豆茶用大豆粉における、「抽出液におけるイソフラボン類の残存量」、「抽出液のBrix値」、「抽出液のpH」、「抽出液の酸度」、及び「大豆茶用大豆粉に含まれる有機酸の総量」は、実施例3の試験結果と同程度の数値だった。人体に有害な作用を及ぼすシュウ酸も実施例3と同様に検出されなかった。そして、記載は省略するが、本試験で得た大豆茶は、きな粉風味や収斂味は少なく、心地よい苦み(ほろ苦さ)とさわやかな酸味とを有する、二次機能(感覚機能)が良好なものだった。 【実施例5】 【0040】 実施例5は、乾燥黄大豆を耐圧容器内で密閉加熱する時間を1分間から5分間に変更した点のみが、実施例1と異なる。そのため、試験及びその評価方法については、記載を省略する。この実施例5の試験結果を、表1〜表5に示す。表5に記載したとおり、本試験で得た大豆茶は、きな粉風味が少なく、さわやかな酸味を有する、二次機能(感覚機能)が良好なものだった。なお、本試験で得た大豆茶用大豆粉に関する高速液体クロマトグラフィー法(HPLC法)での分析結果によれば、人体に有害な作用を及ぼすシュウ酸は、実施例1と同様に検出されなかった。 【実施例6】 【0041】 実施例6は、原料に用いた生大豆を市販の乾燥生黄大豆から市販の乾燥生黒大豆に変更した点のみが、実施例1と異なる。そのため、試験及びその評価方法については、記載を省略する。この実施例6の試験結果を、表5に示す。表5に記載したとおり、本試験で得た大豆茶は、焦げ臭さや収斂味は少なく、さわやかな酸味、ふくよかな香りと深味、及びまろやかな風味を有する、二次機能(感覚機能)が極めて良好なものだった。なお、表中への記載は省略したが、本試験で得た大豆茶用大豆粉の明度(L*値)は17、「イソフラボン類の残存量」、「イソフラボンアグリコンの割合」、「抽出液におけるイソフラボン類の残存量」、「抽出液のBrix値」、「抽出液のpH」、「抽出液の酸度」、及び「大豆茶用大豆粉に含まれる有機酸の総量」は、原料に市販の乾燥生黄大豆を用いた上述の試験結果と同程度の数値だった。人体に有害な作用を及ぼすシュウ酸も実施例1と同様に検出されなかった。 【比較例】 【0042】 [比較例1] 市販の乾燥生黄大豆100gを容器に入れて室温の水道水で20秒間水洗し、金属製のざるに揚げて水切りを行った後、ステンレス製のトレーに入れて市販のマッフル炉内に静置した。これを180℃で1時間、大気中で加熱した後、室温になるまで放冷して、焙煎大豆を得た。この焙煎大豆を市販のコーヒーミルを用いて粉砕し、40メッシュの茶こしからなる篩に通して粒径5mm以下の大豆茶用大豆粉を得た。次いで、この大豆茶用大豆粉を10g計量して不織布製のティーフィルターパック内に収容し、容器内に入れて90℃のお湯(熱水)200mlを注いで1分間放置した後、大豆茶用大豆粉入りのティーフィルターパックを容器から取り出し、大豆茶(大豆茶飲料)を得た。この大豆茶について、実施例1と同様の方法で、その風味(二次機能)について官能評価を行った。この比較例1の試験結果を、表5に示す。表5に記載したとおり、本試験で得た大豆茶は、焦げ臭さや収斂味は少ないものの、ふくよかな香りが乏しくきな粉風味が強い、二次機能(感覚機能)が劣るものだった。 【0043】 [比較例2] 比較例2は、水洗及び水切り後の乾燥黄大豆をマッフル炉内で加熱焙煎する時間を、1時間から2時間へと変更した点のみが、比較例1と異なる。そのため、試験及びその評価方法については、記載を省略する。この比較例2の試験結果を、表5に示す。表5に記載したとおり、本試験で得た大豆茶は、苦み、焦げ臭さ及び収斂味が強い、二次機能(感覚機能)が劣るものだった。 【0044】 【表1】 【0045】 【表2】 【0046】 【表3】 【0047】 【表4】 【0048】 【表5】 【0049】 以上の結果から理解できるように、本件出願に係る大豆茶用大豆粉の製造方法により製造した実施例1〜実施例6の大豆茶用大豆粉は、15〜35の明度(L*値)を有し、「生大豆粉に含まれるイソフラボン類の総量」に対する「大豆茶用大豆粉に含まれるイソフラボン類の総量」(イソフラボン類の残存量)は50%〜65%程度だったものの、「イソフラボン類の総量」に対する「イソフラボンアグリコンの総量」(含有するイソフラボン類におけるイソフラボンアグリコンの割合)は20%〜55%と高いものであった。特に、密閉加熱時間(焙煎時間)が比較的長い実施例4及び実施例5の大豆茶用大豆粉は、この「イソフラボンアグリコンの割合」が50%以上と、極めて高かった。また、「大豆茶用大豆粉に含まれるイソフラボン類の総量」に対する「抽出液に含まれるイソフラボン類の総量」(抽出液におけるイソフラボンの残存量)が40%〜55%程度であることを考えると、原料である生大豆に含まれるイソフラボン類の総量の30%程度の量のイソフラボン類が、大豆茶(大豆茶飲料)中に残存していると推察できる。 【0050】 そして、当該大豆茶用大豆粉から得た抽出液のBrix値、pH及び酸度と、当該大豆茶用大豆粉に含まれる有機酸の総量とからみて、当該大豆茶用大豆粉から得た大豆茶は、柔らかな甘みとさわやかな酸味とを有することが推察できる。実際に、この実施例1〜実施例6の大豆茶用大豆粉から得た大豆茶は、焦げ臭さや収斂味(渋味)が比較的少なく、さわやかな酸味、心地よい苦み(ほろ苦さ)、ふくよかな香りと深味、及びまろやかな風味を有する、二次機能(感覚機能)が優れたものであった。また、高速液体クロマトグラフィー法(HPLC法)での分析結果によれば、当該大豆茶用大豆粉からは人体に有害な作用を及ぼすシュウ酸は検出されなかった。そのため、本件出願に係る大豆茶用大豆粉の製造方法により製造した実施例1〜実施例6の大豆茶用大豆粉から得た大豆茶は、万人が安心して摂取できる飲料であるといえる。 【0051】 一方、本願とは異なる、マッフル炉を用いた従来の製造方法により製造した比較例1及び比較例2の大豆茶用大豆粉から得た大豆茶は、酸味、香り、深味及びまろやかさが比較的少なく、きな粉風味が強いか、又は苦み、焦げ臭さ及び収斂味(渋味)が強く、二次機能(感覚機能)が劣るものであった。 【産業上の利用可能性】 【0052】 本件出願に係る大豆茶用大豆粉の製造方法は、比較的簡便且つ安価に、ふくよかな香りやまろやかな風味等の優れた二次機能(感覚機能)を有する大豆茶飲料を得るための大豆茶用大豆粉の製造に用いることができる。そして、本件出願に係る大豆茶用大豆粉の製造方法で製造した大豆茶用大豆粉は、含有するイソフラボン類におけるイソフラボンアグリコンの割合が比較的高いことから、三次機能(生体調整機能)に優れた大豆茶飲料の抽出に用いることができる。 |
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