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【発明の名称】防刃服 【出願人】 【識別番号】504098484 【氏名又は名称】桑山 昭英 【住所又は居所】群馬県前橋市上佐鳥町742−2 【代理人】 【弁理士】 【識別番号】100097744 【氏名又は名称】東野 博文 【発明者】 【氏名】桑山 昭英 【住所又は居所】群馬県前橋市上佐鳥町742−2 【要約】 【課題】 学生や婦女等の市民が着用する場合にも、他の衣服との重ね着が容易でファッション性を阻害しない防刃服を提供する。 【解決手段】 後見頃20及び左右の前見頃(11L、11R)の各内面に形成された少なくとも3個のポケット部(23、24、25、16L、17L、18L、16R、17R、18R)と、後見頃のポケット部(23、24、25)内に装脱可能に装填される後見頃補強板40と、左前見頃のポケット部(16L、17L、18L)内に装脱可能に装填される左前見頃補強板30Lと、右前見頃のポケット部(16R、17R、18R)内に装脱可能に装填される右前見頃補強板30Rと、左右の前見頃を着脱自在に連結する前見頃連結部15とを備え、左右の前見頃補強板がオーバーラップする状態で、前見頃連結部によって左右の前見頃が連結されることを特徴とする。 【特許請求の範囲】 【請求項1】 後見頃及び左右の前見頃の各内面に形成された少なくとも3個のポケット部と; 前記後見頃のポケット部内に装脱可能に装填される後見頃補強板と; 前記左前見頃のポケット部内に装脱可能に装填される左前見頃補強板と; 前記右前見頃のポケット部内に装脱可能に装填される右前見頃補強板と; 前記左右の前見頃を着脱自在に連結する前見頃連結部と; を備え、前記左右の前見頃補強板がオーバーラップする状態で、前記左右の前見頃が連結されることを特徴とする防刃服。 【請求項2】 前記左右の前見頃補強板は、身体の形状に適合するように可塑変形可能であることを特徴とする請求項1記載の防刃服。 【請求項3】 前記左右の前見頃補強板は、下端部が装着される身体の臍近傍に位置することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の防刃服。 【発明の詳細な説明】 【技術分野】 本発明は、主として短刀や匕首等の刃物から身を守るために着用する防刃服に関し、特に被保護者の上半身に着用する防刃用チョッキ等に関するものである。 【背景技術】 防刃用チョッキの従来技術として、ポリアミド繊維から成るシートを複数枚積層したものや、ガラス繊維と強化プラスチックとを組合せた板片を複数枚積層したものが存在する。このような防刃用チョッキによれば、刀剣に対する防護に効果があるが、アイスピックのような先の尖る鋭利な錐類を突き刺すと貫通したり、割れが生じて、身体を確実に防御することができないという課題があった。そこで、特許文献1には、前身頃の背面に複数のポケットを設け、各ポケットに金属板片を収納して、刀剣の切り付けと共に、アイスピックのような先の尖る錐類の突き刺しに対しても身体を確実に保護する防刃用チョッキが提案されている。 他方、弾丸の飛び交う危険な現場で使用される防弾チョッキとしては、高強度シェルを主体にした鎧状のものが開示されている。しかし、ライフルや拳銃から発射される弾丸から身体を保護するためには、防弾チョッキに厚さ数mm程度の鋼鉄製の板を用いる必要がある。そこで、防弾チョッキの重量が10〜20kgとなり、警察官の職務執行中における緊急配備のような特別の事情のある場合以外、利用者は着用しないのが実際である。そこで、特許文献2には、防弾チョッキの軽量化の為に厚さ4mmのチタン板を装着して、全体の重量を数kg程度に軽量化したものが提案されている。 【特許文献1】 実公平6−39267号 【特許文献2】 特許第2718879号 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 ところが、特許文献1のような複数の金属板片を収納した防刃用チョッキでは、刀剣の切付けから身体を保護するために、金属板片相互でオーバーラップした状態で防刃用チョッキに収用する必要がある。そこで、金属板片相互でオーバーラップした状態で防刃用チョッキに収用する為に、複雑な縫製作業が必要になるという課題があった。また、特許文献2のように、防弾チョッキにチタン板を用いると、軽量化の点では従来の鋼鉄製板と比較して一歩前進であるが、依然として防刃用チョッキよりは重くなる。さらに、防弾用の保護金属板の剛性が高いので、着用者の体の動きを制限するという課題があった。 他方で、傷害犯や強盗犯等の凶悪犯の犯罪率が、高度成長期と比較して近年では数倍に増大している。また犯罪者の検挙率も、特に窃盗犯において急激に低下しており、窃盗犯の検挙率と日本国における刑罰の重さを考慮すると、犯意に対して充分な抑止力となっていない。そこで、小中学生や婦女等の市民においても、自衛の必要性が増大している。ところが、前述したように防刃用チョッキや防弾チョッキは、主に警察や軍隊を前提に用途開発された関係で、日常着用するにはデザイン的な洗練度が低く、ファッション的な処理がなされていない。そこで、学生や婦女等の市民が着用するには、日常服との組合せについて、ファッション性からも適していないと言う課題があった。 本発明は、上述した課題を解決するもので、第1の目的は、学生や婦女等の市民が着用する場合にも、他の衣服との重ね着が容易でファッション性を阻害しない防刃服を提供することである。本発明の第2の目的は、軽量でありながら着易く防刃効果の高い防刃服を提供することである。 【課題を解決するための手段】 上記目的を達成する本発明の防刃服は、例えば図2、図3に示すように、後見頃20及び左右の前見頃(11L、11R)の各内面に形成された少なくとも3個のポケット部(23、24、25、16L、17L、18L、16R、17R、18R)と、前記後見頃のポケット部(23、24、25)内に装脱可能に装填される後見頃補強板40と、前記左前見頃のポケット部(16L、17L、18L)内に装脱可能に装填される左前見頃補強板30Lと、前記右前見頃のポケット部(16R、17R、18R)内に装脱可能に装填される右前見頃補強板30Rと、前記左右の前見頃を着脱自在に連結する前見頃連結部15とを備え、前記左右の前見頃補強板がオーバーラップする状態で、前記前見頃連結部によって前記左右の前見頃が連結されることを特徴とする。 このように構成された本発明の防刃服においては、後見頃のポケット部内に後見頃補強板を装填し、左右の前見頃のポケット部内に左右の前見頃補強板を装填する。左右の前見頃補強板がオーバーラップする状態で、前見頃連結部によって左右の前見頃を連結することで、前方から切掛ってくる刃物に対して、左右の前見頃補強板で覆われる領域に、防刃効果を発揮できない死角が存在しなくなる。 好ましくは、本発明の防刃服において、左右の前見頃補強板は、身体の形状に適合するように可塑変形可能である構成とすると、着用者の着心地や装着感が良好になる。前見頃補強板を、塑性変形可能とするには、例えば板厚が0.5mm程度のアルミニューム板や銅板で構成するとよい。塑性変形可能な板厚の前見頃補強板とすることで、防刃服の軽量化も推進される。 好ましくは、本発明の防刃服において、左右の前見頃補強板は、下端部が装着される身体の臍近傍に位置する構成とすると、左右の前見頃補強板と着用者の身体姿勢の変化との干渉が少なくなり、左右の前見頃補強板による姿勢規制効果が少なくて済む。例えば、着用者が着席した場合や正座した場合でも、身体の屈曲によって左右の前見頃補強板がせりあがって、首ぐりにより着用者の首が圧迫されることがない。 【発明の効果】 本発明の防刃服によれば、後見頃のポケット部内に後見頃補強板を装填し、左右の前見頃のポケット部内に左右の前見頃補強板を装填すると共に、左右の前見頃補強板がオーバーラップする状態で、前見頃連結部によって左右の前見頃を連結することで、前方から切掛ってくる刃物に対して、左右の前見頃補強板で覆われる領域に防刃効果を発揮できない死角が存在しなくなる。また、従来の防弾チョッキのように1枚の前見頃によって着用者の身体正面を保護する場合と比較すると、本発明の防刃服によれば前見頃連結部によって左右の前見頃を連結する構造としているので、着脱が容易にできる。 【発明を実施するための最良の形態】 以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。 図1は本発明の防刃服をハンガーに掛けた状態を説明する構成図で、(A)は正面図、(B)は背面図である。図において、ハンガー1は、合成樹脂(例えばABS樹脂など)或いは木材で構成されるもので、洋服掛け部2、吊り金具3、並びにズボン掛け部4を備えている。防刃服10は、例えばハンガー1に吊り下げられた状態で、洋服販売店やクローゼットに収用される。 防刃服本体10は、左前見頃11L、右前見頃11R、並びに後見頃20を有している。左前見頃11Lの表地には、着用者の肋骨より下で臍より上に位置する面ファスナ14L、着用者の正面に位置する線ファスナ15Lが設けられている。右前見頃11Rの表地には、着用者の心臓付近に位置する正面ポケット12、正面ポケット12の上側開口部のふたをするポケットカバー13、着用者の肋骨より下で臍より上に位置する面ファスナ14R、線ファスナ15Lと係合して着用者の正面を保護する状態を保持する線ファスナ15Rが設けられている。後見頃20には、着用者の左脇腹に位置する左係止布21L、着用者の右脇腹に位置する右係止布21Rを有している。 面ファスナ22Lは、左係止布21Lの裏面に固定されるもので、面ファスナ14Lとの係止位置を調整できる。面ファスナ22Rは、右係止布21Rの裏面に固定されるもので、面ファスナ14Rとの係止位置を調整できる。面ファスナ14L、14R、22L、22Rには、例えば商品名マジックテープのような着脱自在であって、通常の衣類の着用に適する係合力を有する部材を用いると良い。面ファスナ14L、14R、22L、22Rの係止位置を適宜に調整することによって、着用者の腹部のだぶつきを少なくできる。また、線ファスナ15L、15Rの係合長さを調整することで、着用者の胸部のだぶつきを少なくでき、例えば男性と女性とで生じる胸囲の差を吸収して、男女兼用とすることもできる。 図2は本発明の防刃服の裏地展開図である。左前見頃11Lの裏地には、左前見頃補強板30Lを挿入する開口部が下腹部側に形成された左ポケット16L、左ポケット16Lの開口部を覆う左ポケットカバー17L、並びに左ポケットカバー17Lを左ポケット16Lに着脱自在に保持する開閉ボタン18Lを有している。開閉ボタン18Lは、例えば雄雌のボタンを等間隔で3個左ポケットカバー17Lに配列されているが、線ファスナや面ファスナのような着脱自在の連結具を用いても良い。開閉ボタン18Lの係合強度は、左前見頃補強板30Lを挿入した状態で、左ポケットカバー17Lから左前見頃補強板30Lが脱落しない程度の強度を有すればよい。 右前見頃11Rの裏地には、右前見頃補強板30Rを挿入する開口部が下腹部側に形成された右ポケット16R、右ポケット16Rの開口部を覆う右ポケットカバー17R、並びに右ポケットカバー17Rを右ポケット16Rに着脱自在に保持する開閉ボタン18Rを有している。開閉ボタン18Rは、例えば雄雌のボタンを等間隔で3個右ポケットカバー17Rに配列されているが、線ファスナや面ファスナのような着脱自在の連結具を用いても良い。開閉ボタン18Rの係合強度は、右前見頃補強板30Rを挿入した状態で、右ポケットカバー17Rから右前見頃補強板30Rが脱落しない程度の強度を有すればよい。 後見頃20の裏地には、後見頃補強板40を挿入する開口部が臀部側に形成された背面ポケット23、背面ポケット23の開口部を覆う背面ポケットカバー24、並びに背面ポケットカバー24を背面ポケット23に着脱自在に保持する背面ボタン25を有している。背面ボタン25は、例えば雄雌のボタンを等間隔で5個背面ポケットカバー24に配列されているが、線ファスナや面ファスナのような着脱自在の連結具を用いても良い。背面ボタン25の係合強度は、後見頃補強板40を挿入した状態で、背面ポケットカバー24から後見頃補強板40が脱落しない程度の強度を有すればよい。 左肩連結ベルト26Lは、着用者の左肩上方で後見頃20と左前見頃11Lを連結するもので、例えば幅5cm程度の自在に変形可能な布材が用いられる。右肩連結ベルト26Rは、着用者の右肩上方で後見頃20と右前見頃11Rを連結するもので、例えば幅5cm程度の自在に変形可能な布材が用いられる。左肩連結ベルト26Lと右肩連結ベルト26Rは、屈曲性を確保するために、左右の前見頃補強板30L、30Rや後見頃補強板40を有しない部位としている。 左脇腹連結部27Lは、着用者の左脇腹付近で後見頃20と左前見頃11Lを連結するもので、例えば幅5cm程度の自在に変形可能な布材が用いられる。右脇腹連結部27Rは、着用者の右脇腹付近で後見頃20と右前見頃11Rを連結するもので、例えば幅5cm程度の自在に変形可能な布材が用いられる。左脇腹連結部27Lと右脇腹連結部27Rは、着用者のウェストによって必要な幅が変化するが、面ファスナ14L、14R、22L、22Rの係止位置によって調整される。左右の脇腹連結部27L、27Rは、着用者の脇腹に位置しているが、脇腹付近は左右の腕によって保護されている可能性が高いため、左右の前見頃補強板30L、30Rや後見頃補強板40を有しない部位としている。 図3は補強板を説明する平面図で、(A)は左前見頃補強板30Lの表面、(B)は右前見頃補強板30Rの表面、(C)は後見頃補強板40の表面を示している。左前見頃補強板30Lは、袖ぐり31L、襟保護部32L、肩保護部34L、脇腹保護部35L、ウェスト保護部36L、左襟下部37L、縁保護部38Lを有している。右前見頃補強板30Rは、袖ぐり31R、襟保護部32R、奥身部33R、肩保護部34R、脇腹保護部35R、ウェスト保護部36R、右襟下部37R、縁保護部38Rを有している。後見頃補強板40は、右袖ぐり41、右脇腹保護部42、腰保護部43、左脇腹保護部44、左袖ぐり45、左肩保護部46、首襟保護部47、右肩保護部48を備えている。左右の前見頃補強板30L、30Rや後見頃補強板40には、例えばステンレス鋼板、チタン、アルミニューム、ジュラルミンなどの軽量でありながら刃物が貫通しない程度の引き裂き強度を有する金属板を用いるとよい。また、例えば板厚0.3〜0.7mm、好ましくは0.5mm程度とすると、着用者が女性であっても素手で塑性変形させることができて、着用者の体型に適合するように、左右の前見頃補強板30L、30Rや後見頃補強板40の形状をカスタマイズできる。 袖ぐり31L、31Rは、腕の動作を拘束しない形状であって、左右の肺が保護されるような形状としている。襟保護部32L、32Rは着用者の首の動きを拘束せず、且つ肋骨と共に肺や心臓を保護する形状とする。奥身部33Rは、線ファスナ15L、15Rを係合させたとき、左右の前見頃補強板30L、30Rのオーバーラップする領域を形成するもので、例えば2〜4cm程度の重なりを確保できる形状とする。男性用が右前、女性用が左前とする前あわせの慣行に従う場合は、奥身部33Rを設置する側を適宜に選択する。即ち、男性用は奥身部33Rを右前見頃補強板30Rに設け、女性用の場合は奥身部を左前見頃補強板30Lに設ける。肩保護部34L、34Rは、着用者の肩や胸を保護する領域で、例えば上部肋骨から鎖骨まで覆う。 脇腹保護部35L、35Rは、着用者の脇腹を保護する領域で、例えば匕首等で深さ10cm程度の傷害を受けた場合にも、肝臓やすい臓のような重要な臓器に傷害が発生しないように、着用者の腹部まで保護するとよい。ウェスト保護部36L、36Rは、着用者の臍近傍領域を保護するもので、着用者の動きを制限しない範囲で下腹部まで覆うとよい。例えば妊婦用の防刃服では、子宮に収用されている胎児を保護できる位置にウェスト保護部36L、36Rを設けると良い。左襟下部37Lと右襟下部37Rは、線ファスナ15L、15Rを係合させたとき、着用者の胸骨付近を保護するもので、奥身部33Rが存在する分だけ、左右の前見頃補強板30L、30Rが非対称になっている。縁保護部38L、38Rは、左右の前見頃補強板30L、30Rの縁に設けられたゴムやプラスチック製の保護カバーで、左右の前見頃補強板30L、30Rの芯材が金属板である場合に、端面に形成された鋭利箇所で皮膚が傷付かないように保護している。縁保護部38L、38Rには、例えばビニールテープやテフロン(登録商標)コーティングを用いても良い。 右袖ぐり41と左袖ぐり45は、着用者の左右背面側の肩を保護すると共に、腕の動きを拘束しない程度にえぐられている。右脇腹保護部42と左脇腹保護部44は、着用者の背中を保護すると共に、着用者のウェストサイズによらず汎用的に着用できる程度に脇腹側に張り出している。腰保護部43は、着用者のウェスト近傍の腰付近を保護するもので、例えばイスに腰掛ける場合にも着用者の邪魔にならない程度の丈を有している。左肩保護部46と右肩保護部48は、着用者の肩甲骨を覆う。首襟保護部47は、ネックラインの背面側を保護するが、通気性を確保するために丈をネックラインの下側で留めてもよい。 このように構成された防刃服について、その利用形態を説明する。図4は、防刃服の外形図で、(A)は補強板の変形前、(B)は変形後を示している。図4(A)に示すように、洋服店で販売して場合には、左右の前見頃補強板30L、30Rや後見頃補強板40は、平板状態とする。このように金属製の補強板を平板状態とすると、運搬や保管に場所を占有しないため便利である。 次に、着用者が防刃服を装着する場合を説明する。着用者の体型は、男性や女性等の性別・肥満度・身長に依存する。そこで、図4(B)に示すように、着用者の体型に適合するように左右の前見頃補強板30L、30Rや後見頃補強板40を変形させる。左右の前見頃補強板30L、30Rや後見頃補強板40は、例えば薄い金属板を素材としているので、容易に変形できる。次に、着用者は左肩連結ベルト26Lと右肩連結ベルト26Rに左右の腕を通して、線ファスナ15L、15Rを結合させて左前見頃11Lと右前見頃11Rを連結する。すると、左右の前見頃補強板30L、30Rが奥身部33Rでオーバーラップするから、着用者の前面が保護される。 防刃服は、着用者の体型に適合するようにSサイズ、Mサイズ、Lサイズ等の標準体型に基づいて縫製するとよい。例えば、Sサイズでは、着用者の身長が160cmで、ウェストが100cmまでに対処する。ウェストが細い着用者に対しては、面ファスナ14L、14R、22L、22Rの係止位置を調整して、左脇腹連結部27Lと右脇腹連結部27Rの実効的な幅を調整する。Mサイズでは、着用者の身長が170〜175cmで、ウェストが116cmまでに対処する。Lサイズでは、着用者の身長が180〜185cmで、ウェストが128cmまでに対処する。防刃服の重量は、例えば1.2〜1.8kg程度となり、典型的には1.5kgと軽量化される。 なお、防刃服は左右の前見頃補強板30L、30Rや後見頃補強板40を左前見頃11L、右前見頃11R、並びに後見頃20で被覆する構造としており、左前見頃11L、右前見頃11R、並びに後見頃20には、ナイロン、ポリエステル等の繊維材料を用いた薄い布地で足りる。そこで、着用者が防刃服を下着の上に重ね着し、さらに上着を着用しても、外観上は防刃服を着用している印象を与えることがない。そこで、チェーン展開する店舗で勤務する店員・アルバイトや、塾通いや部活によって夜間外出することの多い小中学生・高校生の防犯用に、防刃服を着用することが推進される。 更に、防刃服では、左右の前見頃補強板30L、30Rや後見頃補強板40を左前見頃11L、右前見頃11R、並びに後見頃20に対して着脱自在な構造としている。そこで、暴漢の加害行為を受けて防刃服が傷んだ場合にも、左右の前見頃補強板30L、30Rや後見頃補強板40を交換することによって、防刃性能を常に維持できる。また、高校生のようなファッション性に敏感な需要者層の場合には、ファッション性の高い生地や布地を用いた左前見頃11L、右前見頃11R、並びに後見頃20からなる防刃服を複数準備して、日々の感覚に応じて防刃服を選択して着用する場合に考えられる。この場合も、ファッション性の高い防刃服に、自己の体型に適合するように変形された左右の前見頃補強板30L、30Rや後見頃補強板40を装着することで、日々の防刃服の着用が楽しく行なえる。 なお、本実施例において、左右ポケット16L、16Rの開口部が下腹部側に形成されている場合を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。即ち、左右ポケット16L、16Rの開口部を設ける位置は、左右前見頃11L、11Rの裏地側であれば表地側にファッション性の干渉を及ぼさないから、線ファスナ15L、15R側でもよく、左右の脇腹側でもよく、さらに胸側や肩側に設けてもよい。すると、仮に左右前見頃補強板30L、30Rが傷ついた場合でも、左右ポケットカバー17L、Rを開口して容易に左右前見頃補強板30L、30Rを交換できる。さらに、左右ポケット16L、16Rの開口部を表地側に設けたほうがファッション性を増すと考える顧客向けには、左右ポケット16L、16Rの開口部を覆う左右ポケットカバー17L、17Rを左右前見頃11L、11Rの表地側に設けてもよい。 また、本実施例において、背面ポケット23の開口部が後見頃20の臀部側に形成されている場合を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。即ち、背面ポケット23の開口部を設ける位置は、後見頃20の裏地側であれば表地側にファッション性の干渉を及ぼさないから、左右の脇腹側でもよく、さらに背中の中間領域や肩側に設けてもよい。すると、仮に後見頃補強板40が傷ついた場合でも、背面ポケットカバー24を開口して容易に後見頃補強板40を交換できる。さらに、背面ポケット23の開口部を表地側に設けたほうがファッション性を増すと考える顧客向けには、背面ポケット23の開口部を覆う背面ポケットカバー24を後見頃20の表地側に設けてもよい。 また、本実施例において、左右の肩連結ベルト26L、26Rと左右の脇腹連結部27L、27Rには、屈曲性を確保するために、左右の前見頃補強板30L、30Rや後見頃補強板40を有しない部位とする場合を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。即ち、肩や脇腹での防刃性能を確保するために、後見頃補強板40や左右の前見頃補強板30L、30Rとは独立した小金属片を、左右の肩連結ベルト26L、26Rと左右の脇腹連結部27L、27Rに装着する構造としても良い。 さらに、本発明の防刃服においては、左右の前見頃補強板30L、30Rや後見頃補強板40を防弾性能のある厚い鋼板にすれば、防弾チョッキとして転用することも可能である。防弾性能のある厚い鋼板には、例えば厚さ4〜5mmの炭素鋼板を用いる。すると、重量が10kg〜15kgとなる。この場合、左右の前見頃補強板30L、30Rや後見頃補強板40を着用者の体型に適合させるには、小片に細分化するか、一枚板を予め塑性変形させる必要がある。そこで、防弾チョッキは、テロリストや暴漢に襲われる可能性が著しく高い場所で執務する警備員や警察官に適する。しかし、防弾チョッキは、作業者のユニフォームや通勤・通学服として日常的に着用する用途には、重量とフィット感の悪さから適さなくなる。 好ましくは、左右の前見頃補強板30L、30Rや後見頃補強板40を収用する左前見頃11L、右前見頃11R、並びに後見頃20の表生地として、超高強力・高弾性のポリエチレン繊維で織られた高強度織物を用いると良い。すると、弾丸が左前見頃11L、右前見頃11R又は後見頃20に衝突するが、その衝突時に摩擦により弾丸の自転に制動がかけられ、当該弾丸の貫通エネルギー、衝撃エネルギーがある程度生地に吸収される。そして、その弾丸は、左前見頃11L、右前見頃11R又は後見頃20の内側に配された左右の前見頃補強板30L、30R又は後見頃補強板40に衝突して、停止する。 以上説明したように、本実施例の防刃服によれば、防刃性能を有する比較的薄い板状の左右の前見頃補強板30L、30Rや後見頃補強板40を左前見頃11L、右前見頃11R、並びに後見頃20に収用する構造としているため、従来の防刃服や防弾チョッキと比較して、軽量化が容易になるとともに、着用者のファッション性の要請にも対処できる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の防刃服をハンガーに掛けた状態を説明する構成図で、(A)は正面図、(B)は背面図である。 【図2】本発明の防刃服の裏地展開図である。 【図3】補強板を説明する平面図で、(A)は左前見頃補強板30L、(B)は右前見頃補強板30R、(C)は後見頃補強板40を示している。 【図4】防刃服の外形図で、(A)は補強板の変形前、(B)は変形後を示している。 【符号の説明】 10 防刃服本体 11L 左前見頃 11R 右前見頃 15 前見頃連結部(線ファスナ) 20 後見頃 30L、30R 前見頃補強板 40 後見頃補強板 |
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【図1】 |
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【図2】 |
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【図3】 |
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【図4】 |
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