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土木・建設
 
【発明の名称】木製耐震壁
【特許権者】
【識別番号】507089171
【氏名又は名称】小宮 正住
【住所又は居所】大分県日田市城町1丁目7番31号 吉弘アパート101号
【代理人】
【弁理士】
【識別番号】100127155
【氏名又は名称】来田 義弘
【発明者】
【氏名】小宮 正住
【住所又は居所】大分県日田市亀山町5番18号 丸菱ビル3F
【要約】
【課題】
面内方向の変形能力に富み、しかも低コストで施工が容易な木製耐震壁を提供する。
【解決手段】
木製耐震壁1は、正方形断面を有する棒材からなる鉛直材11と、前記棒材からなる水平主材12および水平副材13とから構成されている。具体的には、前記棒材の幅分の間隔をあけて壁面と平行に配設される水平主材12と、水平主材12の方向に前記棒材の幅分の間隔をあけて水平主材12,12間に配設される鉛直材11と、鉛直材11,11間に、水平主材12と直交するように配設される水平副材13とからなり、水平主材12および水平副材13は交互に積層して配設される。鉛直材11と水平主材12とは、釘や接着剤などで一体に組み立てられるが、水平副材13は、水平主材12および鉛直材11に固着しないようにし、仮に固着するとしても、水平副材13の上面または下面の少なくとも一方のみが水平主材12に固着されるようにする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面形状を同じくする複数の棒材から構成された木製耐震壁であって、
前記棒材の幅分の間隔をあけて壁面と平行に配設される前記棒材からなる水平主材と、前記水平主材の方向に前記棒材の幅分の間隔をあけて前記水平主材間に配設される前記棒材からなる鉛直材と、前記鉛直材間に前記水平主材と直交するように配設される前記棒材からなる水平副材とからなり、
前記水平主材および前記水平副材は交互に積層して配置されることを特徴とする木製耐震壁。
【請求項2】
前記水平副材の上面または下面の少なくとも一方が前記水平主材に固着されていないことを特徴とする請求項1に記載の木製耐震壁。
【請求項3】
壁体内に形成された空洞部および/または壁面に形成された凹陥部に、弾性体が充填されていることを特徴とする請求項1または2に記載の木製耐震壁。
【請求項4】
前記弾性体が粘弾性体であることを特徴とする請求項3に記載の木製耐震壁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、断面形状を同じくする複数の棒材から構成された木製耐震壁に関する。
【背景技術】
従来、木造建築物における壁は、水平および鉛直方向にそれぞれ配設した桟材の両面に板材を貼り付けたものが多い(例えば特許文献1参照)。このような従来の木造壁の場合、面内方向の剛性が大きいため、面内方向の変形能力に乏しく、地震時におけるエネルギー吸収能の低い壁となる。このため、大地震時には、これら木造壁が脆性的に破壊するおそれがある。
他方、特許文献2では、左右一対の柱材の上下両側にそれぞれ横材を架設して構成した主体枠と、前記左側柱材方向に傾斜上りにした複数本の傾斜材と前記右側柱材方向に傾斜上りにした複数本の他の傾斜材とを互いに係合させて組み付けてなる格子枠とから構成した木造建物用壁構成材の発明が開示されている。この発明では、格子枠が筋交いの機能を果たし、面内方向に大きな変形能力を有する構造となっている。
【特許文献1】
特開2001−227086号公報
【特許文献2】
特開2004−232429号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献2に記載された発明の場合、予め傾斜材に係合溝を形成しておく必要があるため、加工に手間が掛かるという問題がある。また、この発明の場合、格子枠は大きな鉛直荷重を負担できず、格子枠に作用する鉛直荷重は左右の柱材に伝達されるようになっている。即ち、柱材に大きな負荷が掛かる構造になっている。
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、面内方向の変形能力に富み、しかも低コストで施工が容易な木製耐震壁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、断面形状を同じくする複数の棒材から構成された木製耐震壁であって、前記棒材の幅分の間隔をあけて壁面と平行に配設される前記棒材からなる水平主材と、前記水平主材の方向に前記棒材の幅分の間隔をあけて前記水平主材間に配設される前記棒材からなる鉛直材と、前記鉛直材間に前記水平主材と直交するように配設される前記棒材からなる水平副材とからなり、前記水平主材および前記水平副材は交互に積層して配置されることを特徴としている。
本発明では、断面形状を同じくする複数の棒材を用いて木製耐震壁を構成しているので、安価な辺材を利用することができ、材料費を低く抑えることができる。また、同断面の棒材を格子状に組み合わせるだけなので熟練技術を必要とせず、施工が容易であることに加え、様々な断面寸法の木製耐震壁の製作が可能となる。
また、本発明に係る木製耐震壁では、前記水平副材の上面または下面の少なくとも一方が前記水平主材に固着されていないことを好適とする。
本発明では、水平副材の上面または下面の少なくとも一方が水平主材に固着されていないので、木製耐震壁に面内せん断力が作用した際に、水平副材が水平主材の動きを拘束せず、大きなせん断変形能力を発揮することができる。
また、本発明に係る木製耐震壁では、壁体内に形成された空洞部および/または壁面に形成された凹陥部に、弾性体が充填されていてもよい。
本発明では、壁体内に形成された空洞部および/または壁面に形成された凹陥部に、弾性体が充填されているので、変形性能を確保しつつ、木製耐震壁の剛性を増大させることができる。
また、本発明に係る木製耐震壁では、前記弾性体が粘弾性体であってもよい。
本発明では、弾性体として粘弾性体を用いることにより、上記能力に加えて大きな履歴エネルギー吸収能力を発揮することができる。
【発明の効果】
本発明では、断面形状を同じくする複数の棒材を用いて木製耐震壁を構成しているので、安価な辺材を利用することができ、材料費を低く抑えることができる。また、同断面の棒材を格子状に組み合わせるだけなので熟練技術を必要とせず、施工が容易である。加えて、水平副材の上面または下面の少なくとも一方が水平主材に固着されていないので、木製耐震壁に面内せん断力が作用した際に、水平副材が水平主材の動きを拘束せず、大きなせん断変形能力を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1に本発明に係る木製耐震壁の斜視図を、図2に本木製耐震壁の立面図および断面図をそれぞれ示す。
本木製耐震壁1は、18mm×18mmの正方形断面を有する棒材からなる鉛直材11と、前記棒材からなる水平主材12および水平副材13とから構成されている。具体的には、前記棒材の幅分の間隔をあけて壁面と平行に配設される水平主材12と、水平主材12の方向に前記棒材の幅分の間隔をあけて水平主材12,12間に配設される鉛直材11と、鉛直材11,11間に、水平主材12と直交するように配設される水平副材13とからなり、水平主材12および水平副材13は交互に積層して配設される。
但し、木製耐震壁1の上下端部16および両側端部17には、後述するように、組立梁から突出する梁副材もしくは組立柱から突出する柱副材が挿入されるため、水平副材13が配されていない。また、木製耐震壁1の両側端部17の水平主材12,12間には、水平主材12と同断面の補剛材15を水平主材12の方向に介装する。
鉛直材11と水平主材12とは、釘や接着剤などで一体に組み立てられるが、水平副材13は、水平主材12および鉛直材11に固着しないようにし、仮に固着するとしても、水平副材13の上面または下面の少なくとも一方のみが水平主材12に固着されるようにする。
図3は、本木製耐震壁1がせん断変形した状態を示したものであるが、水平副材13が水平主材12および粘弾性体14の背後にある鉛直材11に固着されていないため、水平主材12は水平副材13に拘束されずに水平方向にスライドすることができる。その結果、木製耐震壁1に面内せん断力が作用した際、大きくせん断変形することができる。
一方、水平主材12に作用する鉛直荷重は、水平副材13を介して下方の水平主材12に伝達されるため、鉛直材11に大きな負荷が掛かることはない。
また、壁体内に形成された空洞部と壁面に形成された凹陥部に粘弾性体14を充填しておくことで、木製耐震壁1がせん断変形した際に、大きな履歴エネルギー吸収能力を発揮させることができる(図2参照)。即ち、制震壁として機能させることができる。
次に、上記の構造からなる木製耐震壁が取り付けられる木造建築物について説明する。
ここでは、図4に示す組立柱および組立梁を骨組とする木造建築物を対象とする。
組立柱2および組立梁3は、上記木製耐震壁1と同じ木質棒状の柱主材21,梁主材31と柱副材22,梁副材32から概略構成されている。
組立柱2は、直交する二方向(梁間方向および桁行方向)に柱副材22の幅分の間隔をあけて3本ずつ、即ち3×3のマトリックス状に柱主材21を平行配置し、当該柱主材21,21間に、柱主材21の材軸方向から見て柱副材22が格子状(本実施形態では井桁状)となるように、柱副材22を2本ずつ直交する方向に交互に積層して配置し、釘や接着剤などで一体に組み立てる。また、上下方向に並んだ柱副材22,22間に、柱副材22と断面形状を同じくする木質棒状の補剛材23を介装する。
組立梁3も組立柱2と同様に、直交する二方向(鉛直方向および梁間方向もしくは桁行方向)に梁副材32の幅分の間隔をあけて3本ずつ梁主材31を平行配置する。そして、当該梁主材31,31間に、梁主材31の材軸方向から見て梁副材32が格子状(本実施形態では井桁状)となるように、梁副材32を2本ずつ直交する方向に交互に積層して配置し、釘や接着剤などで一体に組み立て、梁副材32,32間には補剛材33を介装する。
次に、上記構造からなる組立柱および組立梁を骨組とし、本発明に係る木製耐震壁を備える木造建築物の施工手順について、図5〜図8を用いて説明する。なお、図が煩雑となるため、図5〜図8では、粘弾性体および補剛材に網掛けを施していないが、図1〜図4に記載された粘弾性体および補剛材と変わるものではない。
(1)組立梁および組立柱を支持するための基礎コンクリート4を打設する。この際、組立柱が設置される箇所には、柱用金物6を基礎コンクリート4内に埋設しておくとともに、組立梁が設置される基礎コンクリート4の上端部には、梁用金物5を所定の間隔をあけて設置しておく。
(2)梁用金物5内に、組立梁3の下面から下方に突出する梁副材32および補剛材33を挿入して固定するとともに、組立柱2の下端部を柱用金物6に固定する(図5参照)。この際、組立柱2の長さは、施工性を考慮して階高の半分以下に抑え、組立柱2の上端部には柱副材22および補剛材23を設置せず、柱主材21が上方に突出するようにする。また、木製耐震壁が接合される組立梁3の上部には補剛材33を介装しないようにする。
なお、基礎コンクリート4と組立梁3との間には、シート状のゴム材7を介装しておく。これにより、基礎コンクリート4と組立梁3との間に隙間が形成され、換気口として機能する。
(3)梁用金物5の張出し部を利用して床パネル8を構築する(図5参照)。床パネル8は、対向する一対の外部パネル81,81と、当該外部パネル81,81間に配される内部パネル82と、内部パネル82と各外部パネル81との間にそれぞれ形成される断熱部83とから構成されており、内部パネル82、外部パネル81、および断熱部83の厚さは、それぞれ柱副材22および梁副材32の幅と同じになっている。
(4)基礎コンクリート4上に設置された組立柱2の上端部に、組立柱2aを接合する(図6参照)。この際、組立柱2aの下端部は、柱副材22および補剛材23が組立柱2aの下端面から突出するようにしておき、組立柱2の柱主材21,21間に、組立柱2aの柱副材22および補剛材23を挿入して組立柱2,2a同士を接合する。
(5)組立柱2,2aの側面から側方に突出している柱副材22および補剛材23を、木製耐震壁1の側端部17に挿入させた状態(平面視で側方に突出する水平主材12,12間に柱副材22および補剛材23を挿入した状態)で、木製耐震壁1を上方から落とし込んで組立梁3上にセットする。この際、木製耐震壁1の下端部16については、組立梁3の上面から上方に突出する梁副材32,32間に鉛直材11を挿入する(図7参照)。
(6)2階の組立梁3aの下面から下方に突出している梁副材32を、木製耐震壁1の上端部17の鉛直材11,11間に挿入してセットする(図8参照)。なお、組立梁3aの上下面から上下方向に突出している梁副材32,32間には補剛材33を介装しないようにする。
本発明では、断面形状を同じくする複数の棒材を用いて木製耐震壁1を構成しているので、安価な辺材を利用することができ、材料費を低く抑えることができる。また、同断面の棒材を格子状に組み合わせるだけなので熟練技術を必要とせず、施工が容易である。加えて、水平副材13の上面または下面の少なくとも一方が水平主材12に固着されていないので、木製耐震壁1に面内せん断力が作用した際に、水平副材13が水平主材12の動きを拘束せず、大きなせん断変形能力を発揮することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記の実施形態では、木造建築物の柱および梁はそれぞれ組立柱および組立梁としたが、一般に使用されている一本物の角材からなる柱および梁でもよい。また、上記の実施形態では、壁体内に形成された空洞部と壁面に形成された凹陥部に粘弾性体を充填したが、ゴムなどでも良いし、あるいは何も充填しなくても良い。さらにまた、上記の実施形態では、木製耐震壁を構成する棒材を正方形断面としたが、矩形断面でもよい。要は、本発明において所期の機能が得られればよいのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る木製耐震壁の斜視図である。
【図2】(a)は本発明に係る木製耐震壁の立面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図、(c)は(a)のB−B矢視断面図である。
【図3】本発明に係る木製耐震壁がせん断変形した際の状態を説明するための模式図である。
【図4】木造建築物を構成する組立柱および組立梁の斜視図である。
【図5】木造建築物の施工手順を説明するための模式図である。
【図6】木造建築物の施工手順を説明するための模式図である。
【図7】木造建築物の施工手順を説明するための模式図である。
【図8】木造建築物の施工手順を説明するための模式図である。
【符号の説明】
1 木製耐震壁
2,2a 組立柱
3,3a 組立梁
4 基礎コンクリート
5 梁用金物
6 柱用金物
7 ゴム材
8 床パネル
11 鉛直材
12 水平主材
13 水平副材
14 粘弾性体
15,23,33 補剛材
21 柱主材
22 柱副材
31 梁主材
32 梁副材
81 外部パネル
82 内部パネル
83 断熱部
【図1】
図1
【図2】
図2
【図3】
図3
【図4】
図4
【図5】
図5
【図6】
図6
【図7】
図7
【図8】
図8
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