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【発明の名称】木造建築物における免震構造 【特許権者】 【識別番号】595134917 【氏名又は名称】木下 国夫 【住所又は居所】愛知県名古屋市守山区白沢町24番地 【代理人】 【弁理士】 【識別番号】100073287 【氏名又は名称】西山 聞一 【発明者】 【氏名】木下 国夫 【住所又は居所】名古屋市守山区白沢町24番地 【特許請求の範囲】 【請求項1】 木造建築物における基礎スラブ上に設けた複数個の支持基礎上に、圧縮コイルバネからなる弾性体の上下に設けた座板間に弾性を有する筒状の胴部を設けてその内部を気密閉塞すると共に、胴部に空気流通口を設けた免震装置を載置すると共に、免震装置間に土台を載架、固定した免震構造において、 上記免震装置における下方の座板の下面に、上記支持基礎の上面に設けた凹部の底面上を任意方向に移動可能な転がり支承手段を設けたことを特徴とする木造建築物における免震構造。 【請求項2】 凹部の底面の中央を平坦部とすると共に、該平坦部の外周部を緩斜面部としたことを特徴とする請求項1記載の木造建築物における免震構造。 【請求項3】 基礎スラブと土台間に圧縮弾性材を配設すると共に、該圧縮弾性材の上下部を基礎スラブ及び土台に固定したことを特徴とする請求項1又は2記載の木造建築物における免震構造。 【請求項4】 建築物の外周の適宜箇所に、建築物を基礎スラブ又は支持基礎に固定する手段における構成部品の一方を、基礎スラブ又は支持基礎に固定手段における構成部品の他方を設けると共に、両者を係脱自在としたことを特徴とする請求項1、2又は3記載の木造建築物における免震構造。 【発明の詳細な説明】 【発明の属する技術分野】 本発明は、地震による木造建築物の倒壊、破壊を確実に防止する様にした木造建築物における免震構造に関する。 【従来の技術】 従来、木造建築物はコンクリートの基礎上に建築物の土台をアンカーボルトによって緊結し、地震の衝撃、振動などによって基礎から建築物がずれ落ちない様にし、又木造建築物においては柱間に斜めに取付けた筋違を設けたり、壁を多数設けたりして地震による衝撃に耐える構造となしているだけであって、衝撃、振動を緩和する構造ではないため、規模の大きい地震では建築物の倒壊、破壊を防止することが出来ないのが現状であった。 そこで、本願出願人は、特許第3034449号として、「木造建築物における基礎と土台の間に介装される免震装置であって、圧縮コイルバネからなる弾性体の上下に座板を設け、該座板間に弾性を有する筒状の胴部を設けてその内部を気密閉塞すると共に、胴部に空気流通口を設けたことを特徴とする木造建築物における免震構造。」を発明した。 これは、弾性体の弾性作用により、地震による振動の減衰を早め、建築物に生ずる衝撃や振動の吸収、緩衝を図り、而も地震による衝撃、特に直下型地震の縦揺れを受けて弾性体が収縮する時に胴部内の空気室内の空気が圧縮され、空気流通穴より徐々に排気され、かかる空気室内の空気の圧縮により急激な衝撃に対する緩衝作用を促し、逆に弾性体が伸長する時には空気室内の空気が空気流通穴より徐々に吸い込まれ、弾性体の急激な伸長状態を抑制し、伸縮する弾性体に生ずる衝撃を緩和出来、よって弾性体のみを有し空気室を設けていない他の免震装置よりもその免震性の向上を図ることが出来、建築物の破壊、倒壊を防止出来る様にしたものである。 【発明が解決しようとする課題】 しかし、上記従来技術のものは、縦揺れに対する確実な免震機能を具備している反面、基礎側に固定されている関係上、横揺れに対する免震機能は弾性体の変形によるものだけで変形量には限界があるため、弾性体の変形量だけでは賄えない振幅の大きい地震になると、衝撃が建築物側に伝搬してしまって、建築物の一部破損、室内家具の倒壊等の可能性を否定し切れない等、解決せねばならない課題があった。 【課題を解決するための手段】 本発明は、上記従来技術に基づく、直下型で振幅の大きい地震に対応することが困難な課題に鑑み、上記従来の免震装置の下部に、該免震装置を任意方向にスライド可能にする転がり支承手段を設け、該免震装置を、基礎スラブ上に設けた複数個の支持基礎の上面に設けた凹部の底面上に載置すると共に、該免震装置上に土台を載架、固定して、地震による衝撃、振動による弾性体の急激な伸縮を緩和し免震性を向上させ、且つ免震装置自体も地盤に対し切り離されてスライド可能となって、免震装置における弾性体の変形量及び免震装置のスライド量の和により、大きい振幅の地震にも対応する様にしたことによって、直下型大地震における大きい縦・横揺れによる衝撃が建築物側へ伝搬しない様にして、上記課題を解決する。 【発明の実施の形態】 以下本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。 図7、8に示す様に、地盤W上に構築したコンクリート基礎スラブ1上の適所に多数の支持基礎3、3a…を設けると共に、該支持基礎3、3a…上に免震装置4、4a…を載置し、該免震装置4、4a…上に建築物2の土台5を載置固定し、免震装置4、4a…を支持基礎3、3a…(基礎スラブ1)と土台5間に介装している。 免震装置4、4a…の配置個所は少なくとも管柱、通し柱等の主要な柱6が立設される土台5下部に対応した位置に設け、又好ましくは前記配置個所及びかかる配置個所間の適所に単数又は多数配置するのが良く、要するに基礎スラブ1上に構築される建築物2の重量とバランスを考慮し、免震装置4、4a…により建築物2を基礎スラブ1に対し水平配置する様になしている。 各支持基礎3、3a…の上面に凹部7を形成し、該凹部7の底面7aの中央を平坦部7bとすると共に、該平坦部7bの外周部を緩斜面部7cとし、平坦部7b上に免震装置4、4a…が載置されている。 免震装置4、4a…は、図1〜3に示す様に、弾性体8の上下に座板9、9aを固定し、上方の座板9に土台5を固定する支持ボルト10、10a …を突設し、該支持ボルト10、10a …は座板9、9aに対しナット締め又は溶接等の手段によって固定している。 弾性体8は1つの圧縮コイルバネ11、又は図1に示す様に、少なくとも2つ以上の径の違った圧縮コイルバネ11、11a を同心に組み合わせ、且つ内外相互の圧縮コイルバネ11、11a のコイルの巻方向を反対にした同心圧縮コイルバネ12からなる。そして、弾性体8を同心圧縮コイルバネ12にすることで、地震による衝撃に対し横座屈、振動などが起きず、而も出来るだけ大きい能力の弾性作用を具有して、地震による振動の減衰をより早めることが可能になる。 座板9、9aは基礎スラブ1及び土台5の幅より若干大きな径又は辺を有する円板状又は方形状に形成され、各座板9、9aの対向面に所定高さの側壁13、13a を設けると共に、弾性を有する略円筒状の合成ゴム製の胴部14を座板9、9a間の空間を囲繞する様に設けて内部を気密閉塞し、上下の座板9、9aと胴部14によって設けられた空間を空気室15となしている。 胴部14は、図1に示す様に、蛇腹を形成したゴムベローズに弾性体8を内装してなり、胴部14と側壁13、13a の接合部となる各端部に接着剤を塗布して胴部14の端部を側壁13、13a の先端部に気密状に外嵌し、更に側壁13、13a と胴部14の接合部を弾性を有する環状のバンド16、16a にて締結して気密性を保持している。 又、胴部14の適所に、少なくとも1つ以上の小さな空気流通口17を貫設して、弾性体8の変形に伴い空気室15内へ空気を入出させて、弾性体8の伸縮時に生じる衝撃を緩和する様にしている。 支持ボルト10、10a …は、土台5の高さより長い直線状に形成し、上方の座板9上においてその中心より等間隔で十字方向に4本突設してなり、各突出個所を結んで構成される正方形の一辺の長さを土台5の幅よりも長く設定している。 下方の座板9aの下面に転がり支承手段18を設け、該転がり支承手段18により免震装置4、4a…を任意方向にスライド可能にしている。 尚、転がり支承手段18は、図示した様な4個の自在キャスター19、19a …に限定せず、例えば図4に示す様なボールキャスター27、27a …など、要するに免震装置4、4a…が任意方向にスライド可能になればどの様な構成のものでも良い。 図5〜8に示す様に、上方の座板9の上方にして土台5上に、支持ボルト10、10a …の先端部を固定する押さえ板20を設け、該押さえ板20は基礎スラブ1及び土台5の幅より若干大きな径又は辺を有する円形又は方形状に形成した鉄板、鋼板等の金属板からなり、柱6が立設される土台5下部に対応した位置に免震装置4、4a…を設けるものに限っては、押さえ板20の中央に所定の大きさの円形又は方形状の穴を貫設して柱6のほぞの差込み口21となしている。 又、差込み口21の周囲には押さえ板20の中心より所定半径を有する円上に等間隔置きに4個の挿通穴22、22a …を穿設している。 免震装置4、4a…は、十字状、T字状、直角に組む仕口部分やその他の継手部分の箇所、管柱、通し柱等の主要な柱6が土台5上に立設される個所に対応して設置され、柱6や間柱6aが立設される個所に設置される免震装置4、4a…に対しては差込み口21を設けた押さえ板20を使用し、その他柱6のない個所には差込み口21を設けない押さえ板20を使用する。 そして、基礎スラブ1及び支持基礎3、3a…を構築後、支持基礎3、3a…の凹部7の底面7a上に免震装置4、4a…を載置すると共に、該免震装置4、4a…間に土台5を載架する様に、各免震装置4、4a…における上方の座板9上に土台5を載置し、かかる状態において、免震装置4、4a…上の土台5は支持ボルト10、10a …間に位置している。 そして、押さえ板20を、その挿通穴22、22a …内に支持ボルト10、10a …の先端を挿通させて土台5上に載置し、支持ボルト10、10a …の突端部にナット23、23a …を螺嵌、締結して、上方の座板9及び押さえ板20で土台5を挟着し、免震装置4、4a…上に土台5を載置固定することで、基礎スラブ1と土台5間に免震装置4、4a…を介装出来る。 又、土台5を十字状、T字状、直角に組む仕口部分やその他の継手部分では、夫々の土台5の継手部分を押さえ板20と免震装置4、4a…の上方の座板9間に介在挟持出来るため、土台5の仕口部分や継手部分を堅固に連結固定出来る。而も、管柱、通し柱等の主要な柱6や間柱6aが土台5上に立設される個所では、差込み口21を設けた押さえ板20を使用すれば、差込み口21より柱6や間柱6aを土台5に差し込むことが出来、建築物2の軸組みに支障を及ぼすことはない。 図7、8に示す様に、基礎スラブ1と土台5間に複数個の圧縮弾性材24、24a …を適宜配置すると共に、該圧縮弾性材24、24a …の上下部を基礎スラブ1及び土台5に固定している。又、図面上、圧縮弾性材24、24a …をコイルバネとし、その上下部を、基礎スラブ1に打設されたアンカーボルト25の上部及び土台5に貫通固定されたボルト26の下部に掛止固定している。 建築物2を基礎側(基礎スラブ1又は支持基礎3、3a…)へ固定する手段28、28a …としては、各固定手段28、28a …の2個の構成部品の一方を建築物2に、他方を基礎側(基礎スラブ1又は支持基礎3、3a…)に固定すると共に、両者をワンタッチで係脱可能としている。具体的には、図7、8に示す様に、建築物2側に固定したラッチ29及び基礎側(基礎スラブ1又は支持基礎3、3a…)に固定したラッチ受け30で構成している。 次に、本発明に係る木造建築物における免震構造の作用について説明する。 基礎スラブ1と建築物2の土台5の間には免震装置4、4a…があることから、地震発生時に弾性体8の変形と免震装置4、4a…のスライドが同時又は随時開始して、免震装置4、4a…における弾性体8の弾性作用により、地震による振動の減衰を早め、且つ転がり支承手段18により免震装置4、4a…が支持基礎3、3a…(基礎スラブ1)から切り離されているため、支持基礎3、3a…(基礎スラブ1)に対し免震装置4、4a…が移動可能となり、許容振幅量が大きくなる。 而も、免震装置4、4a…を載置する凹部7の中央を低くして平坦部7bとすることで、地震が治まった後に免震装置4、4a…が必ず初期位置に戻る様に成っている。 強風時、例えば到来が予測出来る台風時には、例えば図9(a)に示す様に、ラッチ29におけるレバー31を起こしてU字杆32をラッチ受け30に引っ掛けた後に上記レバー31を倒して、ラッチ29及びラッチ受け30を連結するなどして、予め固定手段28、28a …により建築物2を基礎側(基礎スラブ1又は支持基礎3、3a…)に固定しておけば、建築物2に大きい風荷重が作用しても該建築物2は動かない。 尚、この固定手段28、28a …は、通常は、図9(b)に示す様に、解除状態としておかねばならなず、必要に応じて固定する様にしている。 尚、本発明に係る免震装置4、4a…を既存の建築物2に設置する場合、該建築物2をジャッキアップした後、既存基礎を撤去して基礎スラブ1及び支持基礎3、3a…を構築した後、建築物2を降ろして、免震装置4、4a…に建築物2を固定する様にしている。 【発明の効果】 要するに本発明は、木造建築物2における基礎スラブ1上に設けた複数個の支持基礎3、3a…上に、圧縮コイルバネ11、11a からなる弾性体8の上下に設けた座板9、9a間に弾性を有する筒状の胴部14を設けてその内部を気密閉塞すると共に、胴部14に空気流通口17を設けた免震装置4、4a…を載置し、該免震装置4、4a…間に土台5を載架、固定した免震構造において、上記免震装置4、4a…における下方の座板9aの下面に、上記支持基礎3、3a…の上面に設けた凹部7の底面7a上を任意方向に移動可能な転がり支承手段18を設けたので、免震装置4、4a…(弾性体8)が具備する、建築物2への衝撃及び振動の吸収・緩衝機能や、伸縮時に作用する衝撃の緩和機能により免震性を向上させる効果に加えて、免震装置4、4a…が基礎スラブ1(支持基礎3、3a…)側に固定されずに任意方向にスライド可能となって、地盤W側と建築物2を完全に切り離すことが出来るため、直下型大地震における大きい縦・横揺れに対する免震機能を具備させて建築物2の破壊、倒壊、室内家具類の倒れを防止出来る。 又、凹部7の底面7aの中央を平坦部7bとすると共に、該平坦部7bの外周部を緩斜面部7cとしたので、免震装置4、4a…が、地震が治まった時点で底面7aの外周側、即ち緩斜面部7cに位置していても、その後平坦部7bに自動的に戻るため、建築物2を初期位置に自動復帰させることが出来る。 圧縮弾性材24、24a …の上下部を基礎スラブ1及び土台5に固定したので、基礎スラブ1と建築物2を連結することが出来ると共に、免震装置4、4a…を支持基礎3、3a…の上面に押圧して、ある程度の風荷重が建築物2に作用しても該建築物2が揺れない様に固定することが出来る他、圧縮弾性材24、24a …の弾性復元力により免震装置4、4a…を初期位置に確実に復帰させることが出来る。而も、圧縮弾性材24、24a …によっても振動を吸収することが出来るため、免震機能の更なる向上を図ることが出来る。 又、建築物2の外周の適宜箇所に、建築物2を基礎側(基礎スラブ1又は支持基礎3、3a…)に固定する手段28、28a …の一方を、基礎側(基礎スラブ1又は支持基礎3、3a…)に固定手段28、28a …の他方を設けると共に、両者を係脱自在としたので、かかる固定手段28、28a …により建築物2を基礎側(基礎スラブ1又は支持基礎3、3a…)に固定することで、台風時の様な大きい風荷重が作用しても、建築物2は基礎側(基礎スラブ1又は支持基礎3、3a…)に一体化されているために揺れず、強風下であっても快適な居住環境を維持することか出来、而も台風は1年に数回しか到来せず、それ以外の日は固定手段28、28a …を解除状態にしておけば良く、大地震及び強風にたいしても揺れない建築物2にすることが出来る等その実用的効果甚だ大なるものである。 【図面の簡単な説明】 【図1】免震装置の断面図である。 【図2】図1の免震装置の平面図である。 【図3】図1の免震装置の底面図である。 【図4】転がり支承手段をボールキャスターとした免震装置の底面図である。 【図5】免震装置の設置状態を示す拡大平面図である。 【図6】図5のXーX断面図である。 【図7】図1の免震装置を用いた建築物における土台伏図の要部拡大図である。 【図8】図7のYーY断面図である。 【図9】固定手段の固定・解除状態を示す側面図である。 【符号の説明】 1 基礎スラブ 2 木造建築物 3、3a… 支持基礎 4、4a… 免震装置 5 土台 7 凹部 7a 底面 7b 平坦部 7c 緩斜面部 8 弾性体 9、9a 座板 11、11a 圧縮コイルバネ 14 胴部 17 空気流通口 18 転がり支承手段 24、24a … 圧縮弾性材 28、28a … 固定手段 |
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【図1】 |
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【図2】 |
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【図3】 |
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【図4】 |
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【図5】 |
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【図6】 |
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【図7】 |
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【図8】 |
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【図9】 |
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