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【考案の名称】コンクリート型枠固定装置 【実用新案権者】 【識別番号】514204967 【氏名又は名称】稲村 聡律 【住所又は居所】福島県いわき市田人町旅人字前山4番地 【代理人】 【識別番号】100177747 【弁理士】 【氏名又は名称】鈴木 賢一 【考案者】 【氏名】稲村 聡律 【住所又は居所】福島県いわき市田人町旅人字前山4番地 【要約】 【課題】コンクリート擁壁工事において、コンクリート型枠内に充填する生コンクリートの圧力による型枠の浮きを防止するための操作性と効率性に優れた型枠固定装置を提供する。 【解決手段】ナット4を嵌合可能なねじ山10を切った軸部8と鎖等を係止可能な頭部9とを有する可動牽引ボルト3を、型枠に係止可能な係止具6を有する牽引具本体2に設けた内側面が滑らかな貫通穴に通し、突出した軸部8のねじ山10にナット4を嵌合させ、ナット4の回転に伴い、可動牽引ボルト3が貫通穴を進退可動する型枠牽引具1とした。同時使用する留め具については、ねじ山を切った軸部と鎖等を係止可能な頭部とを有する固定ボルトを、スペーサーに設けた内側面が滑らかな貫通穴に貫通させ、突出した軸部を、鉛直方向の投影面積がスペーサーより大きな留め具本体に設けたねじ穴に嵌合固定して使用するものとした。 【選択図】図1 【実用新案登録請求の範囲】 【請求項1】 ナットを嵌合可能なねじ山を切った軸部と牽引材を係止可能な頭部とを有する可動牽引ボルトの軸部を、コンクリート型枠に係止可能な係止具を有する牽引具本体に設けられた内側面が滑らかな可動牽引ボルト貫通穴に貫通させ、突出した軸部のねじ山にナットを嵌合させ、ナットの回転に伴うねじ運動により可動牽引ボルトが可動牽引ボルト貫通穴を進退可動するコンクリート型枠牽引具。 【請求項2】 係止具が角形パイプに適合した形状であることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート型枠牽引具。 【請求項3】 係止具が丸形パイプに適合した形状であることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート型枠牽引具。 【請求項4】 係止具固定装置を備え、着脱可能な係止具を牽引具本体に嵌合固定して使用することを特徴とする請求項1乃至3に記載のコンクリート型枠牽引具。 【請求項5】 可動牽引ボルトに牽引材を備えた請求項1乃至4に記載のコンクリート型枠牽引具。 【請求項6】 ねじ山を切った軸部と牽引材を係止可能な頭部とを有する固定ボルトの軸部を、スペーサーに設けられた内側面が滑らかな固定ボルト貫通穴に貫通させ、突出した軸部を、留め具設置時の鉛直方向投影面積がスペーサーより大きい留め具本体に設けられたねじ穴に嵌合固定して使用する留め具。 【請求項7】 牽引材と、請求項6に記載の留め具と、請求項1乃至4に記載のコンクリート型枠牽引具とを有するコンクリート型枠固定装置。 【考案の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本考案は、コンクリート擁壁工事に用いるコンクリート型枠を固定するためのコンクリート型枠固定装置に関する。 【背景技術】 【0002】 コンクリート擁壁の工事現場においては、構築しようとするコンクリート擁壁の形状に応じ、コンクリート擁壁の正面及び背面に沿って相対するように型枠パネルを設置する。 【0003】 この場合一般に、型枠パネルを固定して歪みや膨らみが生じないようにするとともに、コンクリート型枠全体の強度を確保するために、型枠パネルの外面に沿って縦に等間隔に縦支持部材を設置する。更にその縦支持部材上に水平そして等間隔に、縦支持部材と交差するように横支持部材を設置して、コンクリート型枠全体は組み上げられる。 【0004】 なお、この型枠パネル・縦支持部材・横支持部材を用いたコンクリート型枠の組み上げにおいては、構築しようとするコンクリート擁壁の形状により、型枠パネルを垂直に設置したり、斜度を持たせて設置したりと様々である。 【0005】 その後、組み上げられたコンクリート型枠の内部に生コンクリートを流し込み充填し、更に生コンクリートを養生硬化させた後にコンクリート型枠を取り外すことによって、コンクリート擁壁は構築される。 【0006】 生コンクリートの充填作業においては、コンクリート型枠内部の隅々まで隙間なく均等に生コンクリートを行き渡らせるため、バイブレーターを用いてコンクリート型枠内部の生コンクリートに振動を与える締め固めを行う。この場合、生コンクリートの重量と圧力により、コンクリート型枠を水平方向に押し広げようとする力が働く。 【0007】 また特に、型枠パネルに斜度を持たせて組み上げられた、その下部で内部容積が大きくなるコンクリート型枠の場合には、生コンクリートの重量はコンクリート型枠内の下部に集中することになる。そのため、コンクリート型枠を水平方向に押し広げようとする力とともに、コンクリート型枠を浮き上がらせようとする上方向への力も強く働くことになる。 【0008】 水平方向の力に対し、コンクリート型枠の形状を維持し、正面及び背面の型枠パネルに歪みや膨らみが生じないように適正な間隔で両型枠パネルを保持するためには、複数のセパレーターを両型枠パネルを貫くように水平に通して、各セパレーターの両端を型枠保持コーンで固定する方法が一般的である。 【0009】 そして、コンクリート型枠の上方向への浮き上がりに対しては、コンクリート型枠下の基礎コンクリートに設置したアンカーに、チェーンやワイヤーを利用してコンクリート型枠を繋ぎ止め固定し、浮き上がりを防ぐ方法が一般的である。 【0010】 この場合、コンクリート型枠の確実な固定のためチェーン等に張力を掛け牽引するが、その手段として、アンカーに繋いだチェーン等と、コンクリート型枠に繋いだチェーン等との間にターンバックルを介在させ、ターンバックルの締め上げにより双方のチェーン等を牽引し、浮き上がりを防ぐ方法が従来より行われてきた。 【0011】 そして、このターンバックルを使用したコンクリート型枠の固定に関しては、特許文献1及び特許文献2のような留め金具と掛け金具、そしてそれらを用いた施工方法が、従来の改善策としてこれまで提案されてきている。 【0012】 しかし、特許文献1及び特許文献2の方法を含む従来のコンクリート型枠の浮き止め防止対策では、コンクリート型枠へのチェーン等の掛け方、チェーン等を牽引するためのターンバックルの操作等に関し、作業者にある程度の熟練が必要とされた。 【0013】 特にターンバックルの締め上げ作業は、主として電動工具を用いない手作業により行われるため、作業の未熟練者の操作性、熟練者においても作業の効率性の面で、必ずしも十分なものとは言えず、改善が待たれるものであった。 【0014】 更に、平成23年東北地方太平洋沖地震において被災した防潮堤等の社会資本復旧事業においては、これまで以上に迅速で確実な作業遂行が求められており、従来技術を超えた作業操作性と作業効率性に優れたコンクリート擁壁の型枠作業が必要とされる状況になっている 【先行技術文献】 【特許文献】 【0015】 【特許文献1】特開平8−303001号公報 【特許文献2】特開2002−327544号公報 【考案の概要】 【考案が解決しようとする課題】 【0016】 本考案が解決しようとする課題は、従来技術の操作性及び効率性の低さの改善である。特許文献1及び特許文献2を含む従来技術においては、コンクリート型枠が浮き上がらないように固定するため、コンクリート型枠をチェーン等により地面側に牽引する。このチェーン等を牽引するためにターンバックルを用いるが、このターンバックルの締め上げ作業は手作業により行われ、慣れと手間が必要なものであった。 【0017】 特許文献1の技術に関しては、コンクリート型枠の型枠パネル又は横支持部材に容易に掛けることができる掛け金具(特許文献1の図3及び図4)を用い、作業の容易性を高めているが、ターンバックルの操作によりチェーン等を牽引してコンクリート型枠を固定する点においては、従来と変わりがない。 【0018】 特許文献2の技術に関しては、留め金具(特許文献2の図3)に工夫を凝らして、その設置容易性を高め、特許文献1の技術を改良してはいるが、従来と同様に、ターンバックルを介して掛け金具と留め金具にチェーン等を掛け、ターンバックルの操作によりチェーン等を牽引するものである。 【0019】 これらはともに、ターンバックルの操作が通常手作業により行われること、そして、掛け金具を型枠パネル又は横支持部材に掛けてからターンバックルを操作する際に、作業姿勢の変更が伴い作業点の動線移動も大きいことなど、作業の操作性と効率性が低いままに留まっている。 【課題を解決するための手段】 【0020】 ナットを嵌合可能なねじ山を切った軸部とチェーン・ワイヤー・ロープ(実用新案登録請求の範囲及び以下において「牽引材」という。)を係止可能な頭部とを有する可動牽引ボルトの軸部を、コンクリート型枠に係止可能な係止具を有する牽引具本体に設けられた内側面が滑らかな可動牽引ボルト貫通穴に貫通させ、突出した軸部のねじ山にナットを嵌合させ、ナットの回転に伴うねじ運動により可動牽引ボルトが可動牽引ボルト貫通穴を進退可動するコンクリート型枠牽引具とした。 【0021】 また、コンクリート型枠牽引具と同時に用いる留め具については、ねじ山を切った軸部と牽引材を係止可能な頭部とを有する固定ボルトの軸部を、スペーサーに設けられた内側面が滑らかな固定ボルト貫通穴に貫通させ、突出した軸部を、留め具設置時の鉛直方向投影面積がスペーサーより大きい留め具本体に設けられたねじ穴に嵌合固定して使用するものとした。 【考案の効果】 【0022】 本考案は、チェーン等の牽引に使用するターンバックルを不要としたことで、コンクリート型枠の固定作業に関する操作性と効率性を大きく向上させた。ねじの進退運動をチェーン等の牽引作業に利用するため、ナットの回転操作にインパクトレンチや電動工具も使用可能となる。そのため、作業の熟練者はもとより、作業の未熟練者であっても、安全かつ容易に迅速な作業を実施できる点が最も大きな利点である。 【0023】 また本考案では、コンクリート型枠にコンクリート型枠牽引具を掛けるための係止具と、ナットの回転操作を行う本体とを一体化している。これは、コンクリート型枠牽引具をコンクリート型枠に取り付ける作業と、チェーン等の牽引作業を、手元の一カ所で連続して行うことができるため、無用な作業点の移動が伴わない点においても、操作性と効率性の向上に寄与している。 【0024】 なお、留め具に関してであるが、通常の場合、コンクリート型枠を取り外した後にアンカーを切断し、その切断部が基礎コンクリート表面部に残らないよう後処理を行う必要がある。本考案の留め具の場合、スペーサーと固定ボルトを容易に取り外して、残った窪みについてはパテ埋めによる簡易で迅速な後処理が可能なものとなる。 【図面の簡単な説明】 【0025】 【図1】係止具の形状が角形パイプに適応したコンクリート型枠牽引具の斜視図である。 【図2】図1のコンクリート型枠牽引具の側面図である。破線はコンクリート型枠の横支持部材(角形パイプ)の断面である。 【図3】留め具の組み合わせ斜視図である。 【図4】図3の留め具の使用状況を示す断面図である。 【図5】コンクリート型枠牽引具及び留め具の使用状況を示す斜視図である。 【図6】係止具の形状が丸形パイプに適応した型枠牽引具の側面図である。破線はコンクリート型枠の横支持部材(丸形パイプ)の断面である。 【図7】係止具が着脱可能なコンクリート型枠牽引具(例1)の組み合わせ斜視図である。 【図8】係止具が着脱可能なコンクリート型枠牽引具(例2)の組み合わせ斜視図である。 【図9】板状の係止具を有するコンクリート型枠牽引具の斜視図である。 【考案を実施するための形態】 【0026】 本考案は、コンクリート擁壁工事の型枠作業において、コンクリート型枠内に注入される生コンクリートの重量と圧力によるコンクリート型枠の浮き上がりを防ぐため、コンクリート型枠の固定装置を提供するものだが、従来技術においてコンクリート型枠を繋ぎ止めるためのチェーン等を牽引するため広く活用されてきたターンバックルの使用を不要なものとした。以下、本考案の実施の形態を図に基づいて説明する。 【0027】 図1は、本考案のコンクリート型枠牽引具の第一の実施の形態の斜視図であり、図2は同じ実施の形態の側面図である。また図5には、そのコンクリート型枠牽引具の使用状況を示している。 【0028】 コンクリート型枠牽引具1の牽引具本体2には、ねじ山が切られたボルト等でも引っかかることなく滑らかに動くことができるよう、穴の内側面が滑らかな可動牽引ボルト貫通穴5が設けられている。そして、その可動牽引ボルト貫通穴5と平行するように、牽引具本体2の両側から立ち上がり、コンクリート型枠25の横支持部材28に対応する形状に折り曲げ成型された2本の係止具6がある。 【0029】 係止具6の形状は、コンクリート型枠25の横支持部材28として用いられることが多い角形パイプ29に適合するもので、コンクリート型枠牽引具1を横支持部材28に確実に掛けることができる大きさ、形状に折り曲げられている。なお、コンクリート擁壁の規模等によっても異なるが、一般に用いられる角形パイプ29の断面の一辺は、60mm又は75mmであることが多い。 【0030】 また、牽引具本体2の可動牽引ボルト貫通穴5に挿入され、自在に動く可動牽引ボルト3は、軸部8と、 牽引材18を掛けることができる頭部9とを有する。軸部8には、可動牽引ボルト3の可動域に対応した範囲にねじ山10が切られている。なお、頭部9に関しては、図のような一部が開いたフック形状のみならず、丸形で閉じた形状のアイボルト形状とすることも考えられる。 【0031】 コンクリート型枠牽引具1として使用するためには、牽引具本体2の可動牽引ボルト貫通穴5に可動牽引ボルト3の軸部8を貫通させ、突出した軸部8のねじ山10にナット4を嵌合させる。これにより、可動牽引ボルト3は、牽引具本体2から抜け落ちることはない。 【0032】 この状態で、可動牽引ボルト3の軸部8のねじ山10に取り付けられたナット4を回転させると、ねじの進退運動により、可動牽引ボルト3と係止具6の相対的な位置関係が可動牽引ボルト3の可動域の範囲内、すなわち、ねじ山10の範囲内で変動する。 【0033】 そして、可動牽引ボルト貫通穴5の内側面は滑らかであるから、ナット4を回転させた場合においても、 牽引材18によって張力が掛かっている可動牽引ボルト3は無用の回転運動を行うことなく、安定を保ったまま進退運動を行うことになる。なお、チェーン掛け7は、必要に応じて牽引材を掛けて使用することができるものだが、必須の構成要素ではない。 【0034】 次に、図3の留め具19であるが、牽引材18を係止するための固定ボルト22と、その固定ボルト22を嵌合固定させる留め具本体20と、スペーサー21を有するものである。固定ボルト22の軸部にはねじ山10が切られており、牽引材18を係止可能な頭部9は図のような一部が開いたフック形状の他に、アイボルト形状とすることも可能である。留め具本体20には固定ボルト22のねじ山10に嵌合するねじ穴24が設けられている。一方、スペーサー21の固定ボルト貫通穴23の内側面は滑らかである。そして、留め具19の使用時には、固定ボルト22をスペーサー21の固定ボルト貫通穴23に貫通させ、固定ボルト22と留め具ベース20の間にスペーサー21を挟み込み、固定ボルト22のねじ山10と留め具本体20のねじ穴24を嵌合固定して用いることになる。 【0035】 この留め具19は、図4のように、基礎コンクリート31に埋め込み使用するが、留め具設置時のスペーサー21の鉛直方向投影面積と比べ、留め具本体20の鉛直方向投影面積が大きいため、基礎コンクリート31から容易に抜けることなく設置される。そして、コンクリート型枠25を撤去した後、固定ボルト22及びスペーサー21を撤去し、残った窪みをパテ埋めすることで、基礎コンクリート31の表面部は平坦な状態とされる。 【0036】 次に、コンクリート型枠牽引具1の使用方法を説明する。コンクリート擁壁の施工時には、構築すべきコンクリート擁壁の形状に応じ、コンクリート擁壁の正面及び背面となる部分に、型枠パネル26を相対するように設置して、コンクリート型枠25を組み上げる。 【0037】 流し込み充填される生コンクリートの重量や圧力に耐えうるようにコンクリート型枠25は強固である必要があり、通常、型枠パネル26の外面に等間隔に配置する縦支持部材27により型枠パネル26を補強し、更にその縦支持部材27の上に等間隔に配置する横支持部材28で補強して、コンクリート型枠25は完成する。 【0038】 そしてこの状態で、コンクリート型枠25の内部に生コンクリートを流し込み、コンクリート型枠25の内部の隅々まで、不均等でなく等密度で行き渡るよう、バイブレーター等により生コンクリートに振動を与えて締め固めを行うことになる。 【0039】 この作業時及び生コンクリートを流し込んでから硬化するまでの間には、生コンクリートの重量が大きいために、内部に生コンクリートを充填されたコンクリート型枠25には、水平方向及び垂直方向ともに大きな内圧が働く。 【0040】 コンクリート擁壁の壁面が垂直でなく斜度を持ったものである場合、型枠パネル26を斜めに設置する必要があるが、この時、コンクリート型枠25の下部には生コンクリートの重量が集中し、水平方向への大きな圧力が生じるとともに、コンクリート型枠25を持ち上げようとする上方への圧力も働き、コンクリート型枠25が浮いてしまう。 【0041】 このコンクリート型枠25の浮き上がりにより、コンクリート型枠25の下部にある基礎コンクリート31と、コンクリート型枠25との間に隙間が生じるため、コンクリート型枠25の外へ生コンクリートが漏洩したり、コンクリート擁壁の仕上がりにも不具合が生じてしまうことになる。 【0042】 コンクリート擁壁工事の施工上管理すべき、これらの重要課題に対しては、次のような対策をとることになる。水平方向の圧力に対しては、セパレーターにより、コンクリート擁壁の正面及び背面を形作る型枠パネル26を適正間隔に保持し、横方向へのずれ、歪みや膨らみを抑える。そして、コンクリート型枠25の上方向への移動、すなわち浮き上がりを防止するためには、本考案のコンクリート型枠牽引具1を用いることになる。 【0043】 まず、図5のように、基礎コンクリート31に設置された留め具19に 牽引材18を掛け、牽引材18の他端は、コンクリート型枠牽引具1の可動牽引ボルト3に掛ける。次に、コンクリート型枠25の横支持部材28にコンクリート型枠牽引具1の係止具6を掛ける。この状態で、コンクリート型枠牽引具1の可動牽引ボルト3に嵌合しているナット4を、電動工具等により回転させると、ねじの進退運動により可動牽引ボルト3が移動して、牽引材18を牽引し、コンクリート型枠25を下方に強く引きつける力が働くことになる。 【0044】 従来、牽引材18を牽引する作業には、ターンバックルが使用されてきた。ターンバックルの場合、その本体を回転させると、本体の両端に設けられた右ねじ及び左ねじの進退運動によって、フックボルトやアイボルトが移動し、牽引材18が牽引されることになる。通常、このターンバックルの本体を回転させる作業は、スパナ等を用いて手作業により行われている。 【0045】 本考案のコンクリート型枠牽引具1では、電動工具も使用可能なように、可動牽引ボルト3のねじ山10とナット4による、ねじの進退運動を利用して牽引材18の牽引を行うこととした。そのため、作業の熟練者はもとより、作業の未熟練者であっても、安全かつ容易に迅速な作業を実施できる点が最も大きな利点である。 【0046】 また、本考案では、係止具6と可動牽引ボルト3を嵌入した牽引具本体2とを一体化している。これにより、作業者は、牽引材18を可動牽引ボルト3に掛けた状態で、コンクリート型枠牽引具1の係止具6を横支持部材28に掛け、作業姿勢の変化も少なく速やかにナット4の回転操作に移行できる。従来技術のように、掛け金具を設置した後に、姿勢を変えてターンバックルの操作を行うような無用な作業点の動線移動が伴わない点においても、操作性と効率性の向上に寄与している。 【0047】 同じようにして、例えば1m間隔など等間隔で、本考案のコンクリート型枠牽引具1を用いて、留め具19とコンクリート型枠25を牽引材18により固定する。以上の一連の作業により、生コンクリートの重量と圧力を受け、上方に浮き上がろうとするコンクリート型枠25は、本考案のコンクリート型枠牽引具1を介して、下方に牽引されるため、コンクリート型枠25の浮き上がりは確実に防止され、適正位置に保持されることになる。 【0048】 図6は、本考案の第二の実施の形態である、係止具6の形状が丸形であるコンクリート型枠牽引具1の側面図である。コンクリート型枠25の横支持部材28として、図2のような角形パイプ29の他に、丸形パイプ30が用いられることも多い。この場合、通称「単管」と呼ばれるものが多く用いられるが、その断面直径は日本工業規格により48.6mmとなっている。なお、コンクリート型枠牽引具1が、この丸形パイプ30に確実に掛かるよう、係止具6の形状が丸形である他は、コンクリート型枠牽引具1の各部の構成は第一の実施の形態と同様である。 【0049】 なお、第一及び第二の実施の形態のコンクリート型枠牽引具1は、いずれも、コンクリート型枠25の横支持部材28、すなわち角形パイプ29又は丸形パイプ30に係止具6を掛けるものであるが、係止具6を型枠パネル26の上端部に掛けるものとし、それに適した形状、例えば、パイプでなく板に適応した形状とすることも可能である。 【0050】 また、以上の実施の形態は、それぞれの係止具6の形状が角形や丸形と異なるものであり、横支持部材28の断面形状に応じ、適合する係止具6を有するコンクリート型枠牽引具1を適宜選択して使用するものである。しかしながら、他の実施の形態として、係止具6を着脱式としたコンクリート型枠牽引具1も考えられる。 【0051】 図7は、着脱式係止具11を有するコンクリート型枠牽引具1の第一の例を表す斜視図である。可動牽引ボルト3を貫通させるための可動牽引ボルト貫通穴に加え、着脱式係止具11を挿入するための係止具挿入穴12を牽引具本体2に設ける。 【0052】 また、係止具固定装置として機能させるため、係止具固定ピン13が通る大きさの固定ピン挿入穴14を牽引具本体2に設けるとともに、着脱式係止具11の係止具挿入穴12に嵌入する部分の相当する箇所に係止具固定ピン13が通る大きさの固定ピン挿入穴14を設ける。使用にあたっては、係止具固定ピン13を固定ピン挿入穴14に嵌合させ、着脱式係止具11を固定する。なお、係止具固定ピン13と固定ピン挿入穴14の組合せは一つでも良いが、着脱式係止具11の抜け防止、安定性の向上のために複数設けることも可能である。 【0053】 このコンクリート型枠牽引具1の使用時においては、横支持部材28(角形パイプ29又は丸形パイプ30)又は型枠パネル26上端部の形状に適した着脱式係止具11を選択し、牽引具本体2の係止具挿入穴12に嵌入させて、抜け落ち防止と安定性向上のための係止具固定ピン13で固定し、着脱式係止具11と牽引具本体2とを一体化して使用することになる。 【0054】 なお、着脱式係止具11の着脱方法及び係止具固定装置(抜け落ち防止と安定性向上の対策)は、図7の方法に限定されない。例えば、図8は第二の例である。着脱式係止具11の牽引具本体2への嵌入部位に連結棒15を設け、牽引具本体2は分割可能又は蝶番等により一部開放可能な構造とし、その分割又は開放された牽引具本体2の内面には着脱式係止具11の一部と連結棒15が嵌合する形状の嵌合溝16を設ける。 【0055】 使用にあたっては、着脱式係止具11を嵌合溝16に嵌合させた後、分割又は開放された牽引具本体2で着脱式係止具11を挟むように閉じ、容易に分割又は開放しないように牽引具本体2をバックル17で固定し、着脱式係止具11と牽引具本体2を一体化して使用することになる。 【0056】 更には、他の実施の形態として、可動牽引ボルト3の頭部9に、 牽引材18が連結されたコンクリート型枠牽引具1とすることも考えられる。 【0057】 また、これまでの説明における係止具6の形状は、折り曲げられた2本の棒状の形状を想定していた。しかしながら、コンクリート型枠牽引具1の型枠パネル26又は横支持部材28への取り付けが確実で、牽引材18の牽引に耐えうるものであれば、図9のように、係止具6の形状を1枚の板状のものとしても良く、更に意匠に工夫を凝らした様々な形状とすることも考えられる。 【0058】 着脱式係止具11を有するコンクリート型枠牽引具1を除いては、係止具6と牽引具本体2をそれぞれ別に成型し、それらを溶接して製作することもできるし、一体成形とすることも考えられるため、本考案のコンクリート型枠牽引具1の製作方法は一つに限らない。 【0059】 また、コンクリート型枠牽引具1及び留め具19の留め具本体20と固定ボルト22は、強度やコストの点から鋼等の金属製を想定してはいるが、牽引に耐えうる強度を有するものであれば、強化樹脂等によるものであってもかまわない。一方、スペーサー21については容易に取り外しができるよう、プラスティック製やゴム製とすることが考えられる。 【符号の説明】 【0060】 1 コンクリート型枠牽引具 2 牽引具本体 3 可動牽引ボルト 4 ナット 5 可動牽引ボルト貫通穴 6 係止具 7 チェーン掛け 8 軸部 9 頭部 10 ねじ山 11 着脱式係止具 12 係止具挿入穴 13 係止具固定ピン 14 固定ピン挿入穴 15 連結棒 16 嵌合溝 17 バックル 18 牽引材 19 留め具 20 留め具本体 21 スペーサー 22 固定ボルト 23 固定ボルト貫通穴 24 ねじ穴 25 コンクリート型枠 26 型枠パネル 27 縦支持部材 28 横支持部材 29 角形パイプ 30 丸形パイプ 31 基礎コンクリート 【図面の簡単な説明】 【0025】 【図1】係止具の形状が角形パイプに適応したコンクリート型枠牽引具の斜視図である。 【図2】図1のコンクリート型枠牽引具の側面図である。破線はコンクリート型枠の横支持部材(角形パイプ)の断面である。 【図3】留め具の組み合わせ斜視図である。 【図4】図3の留め具の使用状況を示す断面図である。 【図5】コンクリート型枠牽引具及び留め具の使用状況を示す斜視図である。 【図6】係止具の形状が丸形パイプに適応した型枠牽引具の側面図である。破線はコンクリート型枠の横支持部材(丸形パイプ)の断面である。 【図7】係止具が着脱可能なコンクリート型枠牽引具(例1)の組み合わせ斜視図である。 【図8】係止具が着脱可能なコンクリート型枠牽引具(例2)の組み合わせ斜視図である。 【図9】板状の係止具を有するコンクリート型枠牽引具の斜視図である。 |
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【図1】 |
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【図2】 |
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【図3】 |
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【図4】 |
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【図5】 |
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【図6】 |
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【図7】 |
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【図8】 |
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【図9】 |
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