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土木・建設
 
【考案の名称】護岸構造物及びそれを構成するブロックの組み合わせ
【実用新案権者】
【識別番号】512043810
【氏名又は名称】兼子 治平
【住所又は居所】東京都品川区平塚一丁目6番5号
【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
【考案者】
【氏名】兼子 治平
【住所又は居所】東京都品川区平塚一丁目6番5号
【要約】 (修正有)
【課題】高い強度を有し、かつ、建設費用の低減と建設工期の短縮を可能とした護岸構造物及びそれを構成するブロックの組み合わせを提供する。
【解決手段】護岸構造物1は、海50側に設けられた第1壁10と、土砂等30を挟んで第1壁10に対向する第2壁20と、を含む。第1壁10及び第2壁20は、それぞれ地盤40から鉛直方向に延びる複数の壁体12,14,22,24を第1壁10または第2壁20の厚さ方向Aに積層して形成される。壁体12,14,22,24は、地盤40から鉛直方向に延びる複数の杭80と、杭80の少なくとも1本が貫通して千鳥状に積み重ねた複数の板状のコンクリート製のブロック100,200と、を含む。第1壁10から第2壁20までの土砂等30を含む護岸構造物1の奥行Dが第1壁10及び第2壁20の最大高さHよりも長い。
【選択図】図1
選択図
【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】
護岸構造物であって、
水域側に設けられた第1壁と、
土砂等を挟んで前記第1壁に対向する第2壁と、
を含み、
前記第1壁及び前記第2壁は、それぞれ地盤から鉛直方向に延びる複数の壁体を前記第1壁または前記第2壁の厚さ方向に積層して形成され、
前記壁体は、地盤から鉛直方向に延びる複数の杭と、該杭の少なくとも1本が貫通して千鳥状に積み重ねた複数の板状のコンクリート製のブロックと、を含み、
前記第1壁から前記第2壁までの前記土砂等を含む前記護岸構造物の奥行が前記第1壁及び前記第2壁の最大高さよりも長いことを特徴とする、護岸構造物。
【請求項2】
請求項1において、
複数の前記壁体は、前記土砂等から離れる方向に向かって徐々に壁体の地盤からの高さが低くなることを特徴とする、護岸構造物。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記第1壁は、前記土砂等の側から前記水域側に向かって徐々に地盤からの高さが低くなる3つの壁体が積層された3重構造を有することを特徴とする、護岸構造物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項において、
前記第1壁の長手方向の一方の端部と該一方の端部と対向する前記第2壁の一方の端部との間に渡って形成された第3壁と、
前記第1壁の長手方向の他方の端部と該他方の端部と対向する前記第2壁の他方の端部との間に渡って形成された第4壁と、
を含み、
前記第3壁及び前記第4壁は、それぞれ地盤から鉛直方向に延びる少なくとも2本の杭が貫通して積み重ねられた複数の板状のブロックによって構成されることを特徴とする、護岸構造物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の前記護岸構造物を構成する前記ブロックの組み合わせは、形状の異なる第1ブロック、第2ブロック及び第3ブロックから成り、
前記第1ブロックは、前記杭が該第1ブロックの厚さ方向に貫通できる2つの貫通孔と、前記土砂等の側に配置される側壁に溝と、を有し、
前記第2ブロックは、前記杭が該第2ブロックの厚さ方向に貫通できる1つの貫通孔と、前記土砂等の側に配置される側壁に溝と、を有し、かつ、前記第1ブロックの長さの1/2の長さを有し、
前記第3ブロックは、前記第1壁と前記第2壁との間に渡って配置される板状のブロックであって、厚さ方向に貫通する2つ以上の貫通孔と、長手方向の両端に前記溝に嵌合できる突部と、を有することを特徴とする、ブロックの組み合わせ。
【考案の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本考案は、護岸構造物及びそれを構成するブロックの組み合わせに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、海や河川における護岸構造物としては、コンクリートを一体に打設した帯状の壁体からなる防波堤や堤防などがある。
【0003】
しかしながら、東日本大震災の経験から、コンクリートを一体に打設した壁体だけでは巨大な津波のエネルギーによって破壊されることがわかっている。また、コンクリートを一体に打設した壁体を厚くするには大量のコンクリートを要するため、建設費用も高くなり現実的ではない。
【0004】
また、本願考案者が先に提案した擁壁もある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−170404号公報
【考案の開示】
【考案が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本考案は、高い強度を有し、かつ、建設費用の低減と建設工期の短縮を可能とした護岸構造物及びそれを構成するブロックの組み合わせを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本考案に係る護岸構造物は、
護岸構造物であって、
水域側に設けられた第1壁と、
土砂等を挟んで前記第1壁に対向する第2壁と、
を含み、
前記第1壁及び前記第2壁は、それぞれ地盤から鉛直方向に延びる複数の壁体を前記第1壁または前記第2壁の厚さ方向に積層して形成され、
前記壁体は、地盤から鉛直方向に延びる複数の杭と、該杭の少なくとも1本が貫通して千鳥状に積み重ねた複数の板状のコンクリート製のブロックと、を含み、
前記第1壁から前記第2壁までの前記土砂等を含む前記護岸構造物の奥行が前記第1壁及び前記第2壁の最大高さよりも長いことを特徴とする。
【0008】
本考案に係る護岸構造物によれば、予め製造した板状のブロックを杭に通して積み重ねることによって壁体を構築することができるため、大掛かりなコンクリート打設工事を伴わないため、建設費用を低減すると共に建設工期を短縮することができる。また、本考案に係る護岸構造物によれば、土砂等を挟んで設けられる第1壁と第2壁とが複数の壁体を厚さ方向に積層して形成されることで、高い強度を実現することができる。さらに、本考案に係る護岸構造物によれば、奥行が最大高さよりも長いことにより高い強度を有することができる。
【0009】
(2)本考案に係る護岸構造物において、
複数の前記壁体は、前記土砂等から離れる方向に向かって徐々に壁体の地盤からの高さが低くなることができる。
【0010】
本考案に係る護岸構造物によれば、壁体が鉛直方向に延びるように形成されても津波や洪水による水によって加えられるエネルギーによって破壊されることを防止することができる。また、壁の上面が階段状に形成されることにより、外観から与えられる圧迫感を抑制する視覚効果を得ることができる。
【0011】
(3)本考案に係る護岸構造物において、
前記第1壁は、前記土砂等の側から前記水域側に向かって徐々に地盤からの高さが低くなる3つの壁体が積層された3重構造を有することができる。
【0012】
本考案に係る護岸構造物によれば、津波や洪水のエネルギーが直接加えられる水域側に高い強度を有することができる。
【0013】
(4)本考案に係る護岸構造物において、
前記第1壁の長手方向の一方の端部と該一方の端部と対向する前記第2壁の一方の端部との間に渡って形成された第3壁と、
前記第1壁の長手方向の他方の端部と該他方の端部と対向する前記第2壁の他方の端部との間に渡って形成された第4壁と、
を含み、
前記第3壁及び前記第4壁は、それぞれ地盤から鉛直方向に延びる少なくとも2本の杭が貫通して積み重ねられた複数の板状のブロックによって構成されることができる。
【0014】
本考案に係る護岸構造物によれば、予め製造した板状のブロックを杭に通して積み重ねることによって壁体を構築することができるため、大掛かりなコンクリート打設工事を伴わず、建設費用を低減すると共に建設工期を短縮することができる。
【0015】
(5)本考案に係る護岸構造物を構成する前記ブロックの組み合わせは、形状の異なる第1ブロック、第2ブロック及び第3ブロックから成り、
前記第1ブロックは、前記杭が該第1ブロックの厚さ方向に貫通できる2つの貫通孔と、前記土砂等の側に配置される側壁に溝と、を有し、
前記第2ブロックは、前記杭が該第2ブロックの厚さ方向に貫通できる1つの貫通孔と、前記土砂等の側に配置される側壁に溝と、を有し、かつ、前記第1ブロックの長さの1/2の長さを有し、
前記第3ブロックは、前記第1壁と前記第2壁との間に渡って配置される板状のブロックであって、厚さ方向に貫通する2つ以上の貫通孔と、長手方向の両端に前記溝に嵌合できる突部と、を有することを特徴とする。
【0016】
本考案に係るブロックの組み合わせによれば、第1ブロックと第2ブロックを用いることで千鳥状に積み重ねた際に壁体の端部に凹凸が生じることを防止できる。また、本考案に係るブロックの組み合わせによれば、第3ブロックの突部が第1ブロックと第2ブロックの壁面の溝に嵌合することで護岸構造物の全体の強度を高めることができる。
【考案の効果】
【0017】
本考案によれば、高い強度を有し、かつ、建設費用の低減と建設工期の短縮を可能とした護岸構造物及びそれを構成するブロックの組み合わせを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施形態に係る護岸構造物のI−I断面図である。
【図2】第1の実施形態に係る護岸構造物の斜視図である。
【図3】第1ブロックの斜視図である。
【図4】第2ブロックの斜視図である。
【図5】第3ブロックの斜視図である。
【図6】第2の実施形態に係る護岸構造物の断面図である。
【図7】防潮橋の正面図である。
【図8】防潮橋のVIII−VIII断面図である。
【考案を実施するための形態】
【0019】
以下に本考案のいくつかの実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本考案の例を説明するものである。本考案は以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本考案の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお以下で説明される構成の全てが本考案の必須の構成であるとは限らない。
【0020】
1.第1の実施形態
1−1.護岸構造物
まず、図1及び図2を用いて、本実施形態に係る護岸構造物1について説明する。図1は第1の実施形態に係る護岸構造物の図2におけるI−I断面図であり、図2は第1の実施形態に係る護岸構造物1を水域側の上方から見た斜視図である。なお、図2では杭80を一点鎖線で示し、杭80の下端は地盤40の深部まで埋設されている状態を示す。
【0021】
図1及び図2に示す護岸構造物1は、海岸沿いに築造する防潮堤である。防潮堤は、津波や高潮などによって海水が陸地に浸入するのを防ぐために海岸線に沿って設けられる堤防である。護岸構造物1は、防潮堤に限らず、河川水や湖水の氾濫を防ぐため河岸や湖岸に沿って築造する堤防であってもよい。
【0022】
護岸構造物1は、水域(海50)側に設けられた第1壁10と、土砂等30を挟んで第1壁10に対向する第2壁20と、を含む。水域は、防潮堤であれば図1のように海50であるし、河川等の堤防であれば川である。
【0023】
第1壁10は海50に対向して海岸線に沿って直線的に長く築造され、例えば長手方向Bに十数メートル〜数キロメートルの長さを有する。第1壁10の最大高さHは、護岸構造物1の高さに等しく、例えば5m〜10mの高さを有している。第1壁10の最大高さHは、予想される津波の高さに応じて適宜設定することができ、例えば、遠州灘であれば10m、駿河湾であれば6mである。
【0024】
第2壁20は、第1壁10と対になるものであり、図2では第1壁10と平行に築造され、第1壁10と同じ長さ及び高さを有する。また、第2壁20は、第1壁10との間に土砂等30で埋められた領域を有する。土砂等30を挟み込むように第1壁10と第2壁20とを築造することで、コンクリートの使用量を削減できるため、費用削減効果がある。土砂等30の表面はコンクリートやアスファルトで覆ってもよい。
【0025】
第1壁10及び第2壁20は、それぞれ地盤40から鉛直方向の上方に延びる複数の壁体12,14,22,24を第1壁10または第2壁20の厚さ方向Aに積層して形成される。本実施形態では、第1壁10は第1壁体12と第2壁体14とをその厚さ方向Aに2重になるように設けられ、第2壁20は第3壁体22と第4壁体24とをその厚さ方向Aに2重になるように設けられている。第1壁10及び第2壁20の厚さは、例えば、それぞれ2メートル程である。このように、護岸構造物1は、土砂等30を挟んで設けられる第1壁10と第2壁20とが複数の壁体12,14,22,24を厚さ方向Aに積層して形成されることで、高い強度を実現できる。
【0026】
ここで、「複数の壁体」とは、本実施形態で説明するような2重に積層された壁体12
,14(又は壁体22,24)であってもよいし、第2の実施形態の第1壁10aように3重構造や、さらに4重構造以上のものを含むものである。壁体を積層する数は、想定される津波等のエネルギーに応じて適宜設定することができ、2重構造や3重構造に限定されるものでは無く、複数の壁体の積層構造であることができる。
【0027】
複数の壁体12,14,22,24は、土砂等30から離れる方向に向かって徐々に壁体の地盤40からの高さが低くなるように築造される。本実施形態では第1壁体12は第2壁体14よりも低く、第3壁体22は第4壁体24よりも低い。積層した壁体の上面によって第1壁10及び第2壁20は内側に向かって上る階段状に形成される。このようにすることで、壁体12,14,22,24が鉛直方向に延びるように形成されても津波や洪水による水によって加えられるエネルギーによる破壊を防止できる。また、第1壁10及び第2壁20の上面が階段状に形成されることにより、外観から与えられる圧迫感を抑制する視覚効果が得られる。
【0028】
壁体12,14,22,24は、地盤40から鉛直方向に延びる複数の杭80と、該杭80の少なくとも1本が貫通して千鳥状に積み重ねた複数の板状のコンクリート製のブロック100,200と、を含む。ブロック100,200の詳細については後述する。このように、予め製造した板状のブロック100,200を杭80に通して積み重ねることによって壁体12,14,22,24を構築することができるため、大掛かりなコンクリート打設工事を伴わない。その結果、護岸構造物1の建設費用を低減すると共に建設工期を短縮することができる。
【0029】
杭80は、護岸構造物1の長手方向Bに沿って等間隔に並んで配置され、その下端が地盤中に埋め込まれて固定される。杭80が地盤中に埋め込まれることで津波などを護岸構造物1が受けたときに壁体12,14,22,24の転倒を防止する。杭80の下端は、強固な地盤(支持層)40中に到達するまで延びていることが望ましい。杭80は鉄筋コンクリート製である。杭80は鋼管杭であってもよい。
【0030】
第1壁10から第2壁20までの土砂等30を含む護岸構造物1の奥行Dが第1壁10及び第2壁20の最大高さHよりも長い。このように、護岸構造物1は、奥行Dが最大高さHよりも長いことにより、高い強度を有することができる。
【0031】
図2に示すように、護岸構造物1は、さらに第1壁10と第2壁20との間に第3壁60aと第4壁60bとを含む。第3壁60aは、第1壁10の長手方向Bの一方の端部と該一方の端部と対向する第2壁20の一方の端部との間に渡って形成され、第4壁60bは、第1壁10の長手方向Bの他方の端部と該他方の端部と対向する第2壁20の他方の端部との間に渡って形成される。したがって、護岸構造物1は、第1〜第4壁10,20,60a,60bが巨大な枠となり、その枠に囲まれた内側の領域が土砂等30で埋められる。
【0032】
第3壁60a及び第4壁60bは、それぞれ第1壁10と同様に2重構造の壁体62〜68を有する。第3壁60aは第5壁体62と第6壁体64とからなり、第4壁60bは第7壁体66と第8壁体68とからなる。
【0033】
第3壁60a及び第4壁60bの各壁体62〜68は、それぞれ地盤40から鉛直方向に延びる少なくとも2本の杭80が貫通して積み重ねられた複数の板状のブロック600によって構成される。ブロック600については後述する。このように、護岸構造物1は、予め製造した板状のブロック600を杭80に通して積み重ねることによって壁体60a,60bを構築することができるため、大掛かりなコンクリート打設工事を伴わない。そのため、護岸構造物1の建設費用を低減すると共に建設工期を短縮することができる。
【0034】
1−2.ブロックの組み合わせ
図3〜図5を用いて本実施形態に係る護岸構造物1を構成するブロックの組み合わせについて説明する。図3は第1ブロック100の斜視図であり、図4は第2ブロック200の斜視図であり、図5は第3ブロック600の斜視図である。
【0035】
本実施形態のブロックの組み合わせは、形状の異なる第1ブロック100、第2ブロック200及び第3ブロック300から成る。第1〜第4壁10,20,60a,60bは、第1〜第3ブロック100,200,600を組み合わせて積み重ねることによって構築される。第1〜第3ブロック100,200,600は、コンクリート製、鉄筋コンクリート製などである。第1〜第3ブロック100,200,600としては、例えば、傾斜壁面に貼り付けて施工する平型のコンクリート矢板(JIS A 5372)の一部形状を変更することで利用すれば型枠を流用できるため費用削減効果に貢献できる。
【0036】
図3に示すように、第1ブロック100は、杭80が該第1ブロック100の厚さ方向A1に貫通できる2つの貫通孔120,122と、土砂等30(図1,2)の側に配置される側壁112に溝114と、を有する。第1ブロック100は、例えば、長さ10,000mm×幅996mm×厚さ220mmであり、開口径450mmの貫通孔120,122の位置は第1ブロック100の両端から2,500mmである。
【0037】
図4に示すように、第2ブロック200は、杭80が該第2ブロック200の厚さ方向A2に貫通できる1つの貫通孔220と、土砂等30(図1,2)の側に配置される側壁212に溝214と、を有し、かつ、第1ブロック100の長さL1(図3)の1/2の長さL2を有する。第2ブロック200は、例えば、長さ5,000mm×幅996mm×厚さ220mmであり、開口径450mmの貫通孔220の位置は第2ブロック200の端から2,500mmである。
【0038】
第1ブロック100と第2ブロック200の積み重ね構造について、図2を用いて説明すると、第1ブロック100の貫通孔120,122に2本の杭80を通して、第1壁体12の長手方向Bに沿って第1ブロック100の長手方向が合致するように1段目の第1ブロック100を複数並べる。次に、その1段目の上に、1段目の第1ブロック100と1本の杭80だけが共通するように杭80を貫通孔220に通して、2段目の第1ブロック100を積み重ねる。1段目から上段に向かって第1ブロック100は上下の他のブロックの一部が重なり合うように千鳥状に積み重ねられる。2段目の両端には第2ブロック200が積み重ねられる。第2ブロック200は第1ブロック100の半分の長さなので、下段及び上端の第1ブロック100と杭80の一本を共通にしながら、1段目の第1ブロック100の端から突出することが無い。そのため、第1ブロック100と第2ブロック200を用いることで千鳥状に積み重ねた際に壁体12,14,22,24の端部に凹凸が生じることを防止できる。
【0039】
図5に示すように、第3ブロック600は、第1壁10と第2壁20との間に渡って配置される板状のブロックであって、厚さ方向A3に貫通する2つ以上の貫通孔620,622と、長手方向B3の両端に突部624,624と、を有する。突部624は、第1ブロック100の溝114または第2ブロック200の溝214の形状に合致しており、組み合わせることで嵌合できる。図5では破線で表した第2ブロック200の溝214内に突部624が嵌合している状態を示している。したがって、第3壁60a及び第4壁60bにおける第3ブロック600は、第1壁10及び第2壁20における第1ブロック100または第2ブロック200が積み重ねられた各段と同じ高さで組み合わされる。第3ブロック600の前後左右への移動は杭80によって制限され、第3ブロック600の厚さ方向A3への移動はこの嵌合によって制限されるため、施工時の位置出しが容易であり、
工期の短縮に貢献する。
【0040】
第3ブロック600は、例えば、長さ10,000mm×幅996mm×厚さ220mmであり、開口径450mmの貫通孔620,622の位置は第3ブロック600の両端から2,500mmである。突部624は、第3ブロック600の全幅に渡って形成される。
【0041】
第3ブロック600の積み重ね構造について説明すると、図2に示すように、第3ブロック600を2本の杭80に貫通孔620,622を通して地盤40上に積み重ねる。その際、第3ブロック600の長手方向の両端部の突部624を第1ブロック100または第2ブロック200の溝114,214に嵌合させながら積み重ねる。第3ブロック600の長さは、第3壁60a及び第4壁60bの長さと等しく、すなわち第1壁10と第2壁20との間隔である。このように、第3ブロック600の突部624が第1ブロック100と第2ブロック200の側壁112,212の溝114,214に嵌合することで護岸構造物1の全体の強度を高めることができる。
【0042】
図示しないが、護岸構造物1の陸側及び/または海50側に階段を設けてもよい。護岸構造物の歩道や車道としての利用を促し、景観上の違和感を緩和するためである。
【0043】
各ブロック100,200,600の形状は、現在市場で流通するコンクリート矢板の形状を一部変更して用いたが、これに限定されることなく、使用態様に応じて適宜変更してもよい。
【0044】
2.第2の実施形態
第2の実施形態に係る護岸構造物1aについて説明する。図6は、第2の実施形態に係る護岸構造物1aの断面図である。護岸構造物1aの基本的な構成は、第1の実施形態に係る護岸構造物1と同様であるので、重複する説明は省略する。
【0045】
護岸構造物1aの第1壁10aは、土砂等30の側から水域(海50)側に向かって徐々に地盤40からの高さが低くなる3つの壁体12,14a,16が積層された3重構造を有する点で護岸構造物1と相違する。このようにすることで、津波や洪水のエネルギーが直接加えられる水域側に高い強度をさらに有することができる。すなわち、水域側により高い強度を持たせるため、第2壁20aを構成する壁体22a,24aの積層数よりも第1壁10aの方が壁体12,14a,16の積層数を多くすることが好ましい。したがって、第2壁20aが3重構造の壁体であれば、第1壁10aは4重構造や5重構造の壁体を採用してもよい。
【0046】
第1壁10における第2壁体14aは、第1の実施形態での第2壁体14よりも例えば5段高く、第2壁20aにおける第3壁体22aは、第1の実施形態での第3壁体22よりも例えば13段高く、第4壁体24aは、第1の実施形態での第4壁体24よりも例えば18段高く築造される。そして、第9壁体16は、第2壁体14aよりも例えば13段高く築造される。
【0047】
土砂等30及び図示しない第3壁及び第4壁は、護岸構造物1aの最大高さである第9壁体16及び第4壁体24aの高さと同じである。
【0048】
第9壁体16は、第1の実施形態での第1壁体12等と同様に、第1ブロック100を杭80に通して千鳥状に積み重ねられ、第9壁体16の端部では第2ブロック200を一部に用いている。
【0049】
このように護岸構造物1の高さはブロックを積み重ねる数を変更することで容易に変更することができ、予想される津波や洪水の高さに応じて適宜設定することができる。また、壁体を部分的に2重構造から3重構造へ、さらに4重構造以上の多重構造とすることで、護岸構造物1,1aの強度を向上させることができる。
【0050】
3.防潮橋
河口付近に護岸構造物1を築造する場合に、河川52の両岸まで延びた2つの護岸構造物1,1の間を繋ぐ防潮橋90について説明する。図7は防潮橋90の正面図であり、図8は防潮橋90の図7におけるVIII−VIII断面図である。
【0051】
防潮橋90は、河川52の上方で両岸の護岸構造物1,1の間に掛け渡されている。防潮橋90は、地盤あるいは河川の川底から上方へ延びる複数の支柱91に支えられている。支柱91の上には、H鋼93,94が格子状に組み上げられ、その格子状の間に鉄板92が固定されている。したがって、防潮橋90は海側から見て多数の鉄板92によって1枚の巨大な壁面を形成する。
【0052】
本考案は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本考案は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法、及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本考案は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本考案は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本考案は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0053】
1,1a…護岸構造物、10,10a…第1壁、12…第1壁体、14,14a…第2壁体、16…第9壁体、20…第2壁、22,22a…第3壁体、24,24a…第4壁体、30…土砂等、40…地盤、50…海、52…河川、60a…第3壁、60b…第4壁、62…第5壁体、64…第6壁体、66…第7壁体、68…第8壁体、80…杭、90…防潮橋、91…支柱、92…鉄板、93,94…H鋼、100…第1ブロック、112…側壁、114…溝、120,122…貫通孔、200…第2ブロック、212…側壁、214…溝、220…貫通孔、600…第3ブロック、620,622…貫通孔、624…突部、A,A1,A2,A3…厚さ方向、B,B3…長手方向、D…奥行、H…最大高さ、L1,L2…長さ
【図1】
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【図2】
図2
【図3】
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【図4】
図4
【図5】
図5
【図6】
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【図7】
図7
【図8】
図8
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