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土木・建設
 
【発明の名称】複層構造体及び板材の結合方法
【出願人】
【識別番号】392034296
【氏名又は名称】金子 喜男
【住所又は居所】群馬県沼田市岩本町195番地
【代理人】
【弁理士】
【識別番号】100092808
【氏名又は名称】羽鳥 亘
【発明者】
【氏名】金子 喜男
【住所又は居所】群馬県沼田市岩本町195番地
【要約】
【目的】
接着剤や釘を使用せずして、2つの板材を容易かつ強固に結合して高断熱構造の複層構造体を得る。
【構成】
2つの板材1,2が長尺金物4により所定の間隔をあけて対面状に結合される。長尺金物4は、所定の長さを有する帯状のウェブ5と、該ウェブの長辺側の両端縁に沿って形成される一対の相対向するフランジ6とを有し、フランジ6にはその長手方向に沿って延びる複数の凸条7が形成される。又、ウェブ5は平行する複数の隔壁部5Aから構成され、それら隔壁部5Aの間が空気層5Bとされる。一方、板材1,2には、フランジ6を含む長尺金物の端縁部分8を差し込み得る嵌合溝10が形成される。そして、その嵌合溝10に長尺金物の端縁部分8が差し込まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の間隔をあけて対面する2つの板材と、その両板材を結合する長尺金物とを具備して構成される複層構造体であって、
前記長尺金物は、所定の長さを有する帯状のウェブと、該ウェブの長辺側の両端縁に沿って形成される一対の相対向するフランジとを有し、前記フランジにはその長手方向に沿って延びる複数の凸条が形成され、
前記板材には、前記フランジを含む長尺金物の端縁部分を差し込み得る嵌合溝が形成され、その嵌合溝に端縁部分を差し込んだ長尺金物を介して2つの板材が所定の間隔をあけて対面状に結合されて成ることを特徴とする複層構造体。
【請求項2】
長尺金物のウェブが平行する複数の隔壁部から構成され、それら隔壁部の間が空気層とされていることを特徴とする請求項1記載の複層構造体。
【請求項3】
対面する2つの板材の間に断熱材が配置されることを特徴とする請求項1、又は2記載の複層構造体。
【請求項4】
所定の長さを有する帯状のウェブと、該ウェブの長辺側の両端縁に沿って形成される一対の相対向するフランジとを有し、そのフランジにその長手方向に沿って延びる複数の凸条が形成される長尺金物を用い、2つの板材を所定の間隔をあけて対面状に結合する方法であり、結合すべき2つの板材の相対向する内面に、それぞれ前記フランジを含む長尺金物の端縁部分を差し込み得る嵌合溝を形成し、その嵌合溝に前記長尺金物の端縁部分を差し込むことを特徴とする板材の結合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、建物の壁や床、又は予冷庫、保冷庫における床、壁、天井、扉の構成材などとして用いられる複層構造体と、これを構成する板材の結合方法に関する。
【背景技術】
従来、建築資材としての板材を結合する方法として、合成樹脂系接着剤のほか、釘、木ネジ、かすがい、ジベル、又はボルト・ナットといった接合金物(結合金物)が多用されている。しかし、合成樹脂系接着剤は、大きな荷重が作用する部位の結合には適さず、しかもシックハウス症候群といって有害成分の揮発により居住者の健康を害する虞がある。
一方、釘に代表される金物では、これを一つずつ所定箇所に適正に打ち付けることは難しく、所定の結合強度を得るに足る量を打ちつけ終えるには多くの時間を要し、しかも一部が露出するので体裁を損なうという欠点がある。
そこで、結合すべき2つの板材にその接合面を跨いで略H型の係合穴を形成し、その係合穴に横断面略H型のポールを差し込んで2つの板材を緊締するという方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】
実開昭47−3154号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
然し乍ら、特許文献1のようなポールにより2つの板材を緊締結合するものでは、ポールの断面形状と係合穴の形状が同一形状とされることから、両者間の摩擦抵抗に起因して係合穴に対するポールの差込が困難となり、係合穴が精度よく加工されていないとポールの差込が全く行えず、これを防止するため係合穴をポールの断面形状に対して大きめに形成すると、係合穴内でポールががたついて板材が緊締されなくなるという欠点がある。
又、特許文献1は、接し合わせた状態の板材をポールで結合するものであるから、高断熱性の構造体とすることは困難である。
本発明は以上のような事情に鑑みて成されたものであり、その目的は2つの板材を結合して得られる高断熱構造の複層構造体と、これを構成する板材を釘や接着剤を使用せずして容易かつ強固に結合する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するため、所定の間隔をあけて対面する2つの板材と、その両板材を結合する長尺金物とを具備して構成される複層構造体であって、前記長尺金物は、所定の長さを有する帯状のウェブと、該ウェブの長辺側の両端縁に沿って形成される一対の相対向するフランジとを有し、前記フランジにはその長手方向に沿って延びる複数の凸条が形成され、前記板材には、前記フランジを含む長尺金物の端縁部分を差し込み得る嵌合溝が形成され、その嵌合溝に端縁部分を差し込んだ長尺金物を介して2つの板材が所定の間隔をあけて対面状に結合されて成ることを特徴とする。
加えて、長尺金物のウェブが平行する複数の隔壁部から構成され、それら隔壁部の間が空気層とされていることを特徴とし、更に対面する2つの板材の間に断熱材が配置されることを特徴とする。
又、本発明は、所定の長さを有する帯状のウェブと、該ウェブの長辺側の両端縁に沿って形成される一対の相対向するフランジとを有し、そのフランジにその長手方向に沿って延びる複数の凸条が形成される長尺金物を用い、2つの板材を所定の間隔をあけて対面状に結合する方法であり、結合すべき2つの板材の相対向する内面に、それぞれ前記フランジを含む長尺金物の端縁部分を差し込み得る嵌合溝を形成し、その嵌合溝に前記長尺金物の端縁部分を差し込むことを特徴とする。
【発明の効果】
本発明の複層構造体は、長尺金物により2つの板材が所定の間隔をあけて対面状に結合されることから高断熱構造であり、特に長尺金物は帯状のウェブとその長辺側の両端縁に沿って形成される一対の相対向するフランジとを有し、フランジにはその長手方向に沿って延びる複数の凸条が形成され、板材にはフランジを含む長尺金物の端縁部分を差し込み得る嵌合溝が形成されることから、嵌合溝に対する長尺金物の端縁部分の差し込みを凸条の作用による低摩擦抵抗の下で迅速かつ円滑に行うことができ、しかも板材を廃棄処分する場合には長尺金物を嵌合溝から抜き取るだけで両者を容易に分別することができる。
又、長尺金物のウェブが平行する複数の隔壁部から構成され、それら隔壁部の間が空気層とされていることから断熱性能が格段に向上する上、長尺金物を少ない材料で高強度にすることができる。
更に、対面する2つの板材の間に断熱材が配置されることから、断熱性能をより一層向上させることができる。
又、本発明の方法では、帯状のウェブと該ウェブの長辺側の両端縁に沿って形成される一対の相対向するフランジとを有し、そのフランジにその長手方向に沿って延びる複数の凸条が形成される長尺金物を用い、結合すべき2つの板材の相対向する内面にフランジを含む長尺金物の端縁部分を差し込み得る嵌合溝を形成し、その嵌合溝に長尺金物の端縁部分を差し込んで2つの板材を対面状に結合することから、接着剤や釘を使用せずして2つの板材を容易かつ強固に結合することができ、特に嵌合溝に対する長尺金物の端縁部分の差し込みを凸条の作用による低摩擦抵抗の下で迅速かつ円滑に行うことができ、板材を廃棄処分する場合には長尺金物を嵌合溝から抜き取るだけで両者を容易に分別することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、図面に基づいて本発明を詳しく説明する。図1は本発明に係る複層構造体を示した斜視図である。図1において、1および2はスギやヒノキなどの単板、合板、パーティクル板、又は羽目板から成る木製の板材であり、係る板材1,2は所定の間隔をあけて対面状に結合されている。尚、本例において、板材1,2の間には発泡スチロールなどから成る断熱材3が介在されるが、これを省略して板材1,2の相互間を空気層としてもよく、この場合でも高断熱構造の複層構造体とすることができる。
又、図1において、4は板材1,2を結合する横断面形状同一の長尺金物であり、この長尺金物4は板材1,2と同じ長さを有して該板材の間に複数(図示例において3つ)が所定の間隔で平行に配される。尚、長尺金物4は種々の金属材料を用いて製作することができるが、本例では軽量で加工性に優れるアルミニウム製とされる。
係る長尺金物4の構造を説明すると、図2において、5は板材1,2と同じ所定の長さを有する帯状のウェブであり、このウェブ5の長辺側の両端縁にはその長手方向に沿って一対の相対向するフランジ6が一体に形成される。尚、ウェブ5は単層構造でもよいが、本例のウェブ5は平行する複数(図示例において2つ)の隔壁部5A,5Aから構成され、それら隔壁部5A,5Aの間が空気層5Bとされている。これによれば、軽量にして高強度の長尺金物4を少ない材料で形成することができ、しかも空気層5Bにより高い断熱性を得ることができる。
又、フランジ6は、ウェブ5に直交してその両側に張り出す構造とされる。特に、フランジ6には、その長手方向に沿って延びる半円状の断面を有する複数の凸条7が平行に形成される。尚、本例において、それら凸条7はフランジ6の表裏両面に形成されるが、これをフランジ6の片面のみに複数形成するようにしてもよい。
しかして、長尺金物4は横断面略I型の輪郭を有し、ウェブ5の端部とこれに連なるフランジ6で形成される横断面略T字形を呈する2つの端縁部分8が結合すべき2つの板材1,2の部位に差し込まれる構成とされる。尚、以上のような長尺金物4は、鋳造や押出成形により容易に製作することができる。
図3において、10は長尺金物の端縁部分の形状に対応して、板材1,2の相対向する内面にそれぞれ所定の間隔で平行に形成される嵌合溝であり、これは板材1,2の一端から他端に亘って一連に形成され、その形態は上記ウェブの端部を通すために外部に開放される縦溝部11と、上記フランジを通すための横溝部12とを連ねた略T字形とされる。
尚、板材1,2が年輪を有する無垢材である場合、嵌合溝10を年輪に対して直交するように形成することが望ましく、これによれば板材1,2の割れや反りを防止することができる。又、係る嵌合溝10は回転刃物を用い、工作機械の盤面上で板材1,2を刳り削ることにより容易に形成することができる。
図4は、以上のような長尺金物4による2つの板材1,2の結合部分を拡大して示した断面図である。この図で明らかなように、2つの板材1,2は嵌合溝10を形成した面が向かい合わせにされ、両者1,2の嵌合溝10にはそれぞれ長尺金物の端縁部分8が差し込まれる。ここに、板材1,2の嵌合溝10(横溝部12)には、長尺金物4におけるフランジ6に形成した凸条7の各頂部が線接触されるのであり、このため大きな摩擦抵抗を生ずることなく、板材1,2と長尺金物4とを嵌合溝10の長手方向に相対的に摺動させながら、長尺金物の端縁部分8を嵌合溝10内に円滑に差し込むことができる。
又、長尺金物のウェブ5は、2つの板材1,2を離間させるに足る幅(板材1,2の厚さより大きな幅)を有しているのであり、このため板材1,2の嵌合溝10に長尺金物4の一方の端縁部分8を差し込むと共に、板材1,2の嵌合溝10に長尺金物4の他方の端縁部分8を差し込むことにより、2つの板材1,2が所定の間隔をあけて対面状に結合された上記のような複層構造体を得ることができる。つまり、係るウェブ5は従来の木質系複層板における心材(角材)の役割を果たす。
そして、係る複層構造体によれば、高断熱性を有する壁や床、あるいは戸板と成すことができ、廃棄処分に際しては長尺金物4を抜き取るだけで板材1,2との分別を簡単に行え、長尺金物4をリサイクルすることもできる。このように、本発明では釘や接着剤を一切使用せずに2つの板材1,2を容易かつ強固に結合して高断熱構造の複層構造体とすることができるが、用途上必要であれば、板材1,2の間でその周囲に角材を配し、これをビス止めするなどしてもよい。
以上、本発明について説明したが、係る複層構造体は、3つ以上の板材を結合して多層構造とすることもできる。要するに、本発明は少なくとも2つの板材が長尺金物を介して結合されていればよく、例えば3つの板材を結合する場合には、中間の板材の両面に嵌合溝が形成されることになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る複層構造体の構成例を示す斜視図
【図2】長尺金物を部分的に破断して示した斜視図
【図3】板材を部分的に拡大して示した斜視図
【図4】本発明に係る複層構造体の部分拡大断面図
【符号の説明】
1,2 板材
3 断熱材
4 長尺金物
5 ウェブ
5A 隔壁部
5B 空気層
6 フランジ
7 凸条
8 長尺金物の端縁部分
10 嵌合溝
11 縦溝部
12 横溝部
【図1】
図1
【図2】
図2
【図3】
図3
【図4】
図4
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