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【考案の名称】防災用構造体 【実用新案権者】 【識別番号】520416118 【氏名又は名称】鴨川 登 【住所又は居所】愛知県安城市美園町2-17-2 【代理人】 【識別番号】110002424 【氏名又は名称】ケー・ティー・アンド・エス特許業務法人 【考案者】 【氏名】鴨川 登 【住所又は居所】愛知県安城市美園町2-17-2 【要約】 (修正有) 【課題】波浪及び暴風を制御し、被害を抑制することができる防災用構造体を提供する。 【解決手段】防災用構造体1は、海上に設置されて、波浪及び風雨を制御する。防災用構造体1は、高さ方向Hの大きさである高さhが1キロメートルから数キロメートルの寸法で形成される。また、防災用構造体1は、高さ方向Hに交差する幅方向Wおよび奥行方向Dの大きさが少なくとも100メートルの寸法で形成され、内部が中空に形成される。すなわち、防災用構造体1は、断面積が少なくとも100平方メートルの、中空の直方体形状である。 【選択図】図1 【実用新案登録請求の範囲】 【請求項1】 海上に設置され、 海面からの高さ方向の大きさが1キロメートルから数キロメートルの寸法で形成され、 波浪及び風雨を制御する防災用構造体。 【請求項2】 前記防災用構造体は、 前記高さ方向に交差する幅方向及び奥行方向の大きさが少なくとも100メートルの寸法で形成され、 内部が中空に形成される 請求項1に記載の防災用構造体。 【請求項3】 前記防災用構造体は、 海面からの深さ方向の大きさと、前記高さ方向の大きさとが同じ寸法で形成される 請求項1又は2に記載の防災用構造体。 【請求項4】 前記防災用構造体は、 海面からの深さ方向が大きくなるにつれて、肉厚が大きくなるように形成される、 請求項1から3に記載の防災用構造体。 【請求項5】 前記防災用構造体は、 内部が中空に形成された複数の金属製の立方体を、海上において溶接により接続して前記防災用構造体の外周とした後、 接続された前記金属製の複数の立方体の、隣接する面を切断し除去することで、前記防災用構造体の内部を連続する一の空間とすることで製造する、 請求項1から4のいずれか一項に記載する防災用構造体。 【考案の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本開示は、海上に設置され波浪及び風雨を制御する防災用構造体に関する。 【背景技術】 【0002】 従来、海上に複数の浮遊物体を設置して、波浪を軽減する防災装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の防災装置は、一辺が3メートルの立法形状の物体を、海上で連結することにより、海面において幅方向及び奥行方向の大きさが数キロメートルに亘る浮島を形成する。これにより、簡易に波浪の被害を軽減できる防災装置を設置することができる。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0003】 【特許文献1】 特開2019−127812 【考案の概要】 【考案が解決しようとする課題】 【0004】 特許文献1の防災装置は、海上に設置した際に、海面に沿った幅方向及び奥行方向の大きさにより波浪を軽減する。一方で、台風のように波浪に加えて暴風を伴う場合は、当該防災装置は、海面からの高さ方向の大きさが小さく、暴風を十分に軽減することができない場合があった。 【0005】 本開示の課題は、波浪及び暴風を制御し、被害を抑制することができる防災用構造体を 提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0006】 本開示にかかる防災用構造体は、海上に設置されて、海面からの高さ方向の大きさが1キロメートルから数キロメートルの寸法で形成され、波浪及び風雨を制御する。 【0007】 この構成によれば、防災用構造体は、波浪及び暴風を伴う台風が接近し又は接触した際に、台風の一部は、防災用構造体の表面に沿って上昇または下降し、台風の上空および外部に誘導することで、台風から離れた位置に離散するように制御することができる。また、台風を構成する空気中の水分は、防災用構造体に衝突し、防災用構造体付近の海上で雨滴となって落下する。これによって、防災用構造体付近の海水温度が低下し、台風の勢力を弱めることができる。また、防災用構造体は、台風に伴う波浪を、防災用構造体の海面付近の表面で打ち消すことができる。この結果、防災用構造体は、台風の波浪および暴風を制御し、台風の予想進路上の居住地における人的および物的被害を抑制することができる。 【0008】 防災用構造体は、高さ方向に交差する幅方向および奥行方向の大きさが少なくとも100メートルの寸法で形成され、内部が中空に形成されてもよい。 【0009】 この構成によれば、防災用構造体は、断面積が少なくとも100平方メートルの寸法で形成された中空の直方体として、海面で自立して浮遊することができる。これによって、海上で杭打ちなどの大規模な工事を実施することなく、簡易に防災用構造体を設置することができる。 【0010】 防災用構造体は、海面からの深さ方向の大きさと、前記高さ方向の大きさとが同じ寸法で形成されてもよい。 【0011】 この構成によれば、防災用構造体は、浮力によって海中に存する箇所を支えて、海上に自立することができる。これによって、防災用構造体は、海上の高さ方向において数百メートルから数キロメートルの大きさをもって、大規模な工事を実施することなく、自立することができる。また、防災用構造体は、海面からの高さ方向の寸法に対応して、海面から深さ方向に1キロメートルから数キロメートルに亘って形成される。これによって、防災用構造体は、海上の天候によらず、安定して自立することができる。 【0012】 防災用構造体は、海面からの深さ方向が大きくなるにつれて、肉厚が大きくなるように形成されてもよい。 【0013】 この構成によれば、防災用構造体は、海面からの深さである水深が大きな箇所に位置する部分ほど厚肉に形成することができる。これによって、防災用構造体の海中に存する箇所に掛かる、水圧による負荷を軽減することができる。 【0014】 防災用構造体は、内部が中空に形成された複数の金属製の立方体を、海上において溶接により接続して外周とした後、接続された複数の金属製の立方体の、隣接する面を切断し除去することで、防災用構造体の内部を連続する一の空間とすることで製造してもよい。 【0015】 この構成によれば、防災用構造体は、海上で複数の金属製の立方体を接続することで、任意の大きさに形成した上で設置することができる。これによって、防災用構造体を、簡易に海上に設置することができる。 【考案の効果】 【0016】 本開示によれば、波浪及び暴風を制御し、被害を抑制することができる。 【図面の簡単な説明】 【0017】 【図1】本開示の実施形態による防災用構造体の概念図。 【図2】本開示の実施形態による防災用構造体による波浪及び暴風の抑制の状況を示す概念図。 【図3】本開示の実施形態による防災用構造体の設置方法を示す概念図。 【図4】本開示の実施形態による防災用構造体の製造方法を示す概念図。 【考案を実施するための形態】 【0018】 以下、本開示の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下明細書において、本開示の実施形態による防災用構造体の幅方向をW、奥行方向をD、高さ方向Hと図面に記す。また、高さ方向Hにおいて、海面からの深度が深くなる方向を深さ方向Yとする。 【0019】 図1(a)は、防災用構造体1の概要を示した斜視図であり、図1(b)は図1(a)の断面指示線A−Aにおける断面を示した模式図であり、図1(c)は図1(a)の断面指示線B−Bにおける断面を示した模式図である。 【0020】 図1(a)および図2に示すように、防災用構造体1は、海上に設置されて、波浪及び風雨を制御する。防災用構造体1は、高さ方向Hの大きさである高さhが1キロメートルから数キロメートルの寸法で形成される。また、防災用構造体1は、高さ方向Hに交差する幅方向Wおよび奥行方向Dの大きさが少なくとも100メートルの寸法で形成され、内部が中空に形成される。すなわち、本開示の防災用構造体1は、断面積が少なくとも100平方メートルの、中空の直方体形状である。 【0021】 防災用構造体1は、一部が海中に配置されるとともに、海中に存する箇所が受ける浮力によって海上に自立して浮遊する。防災用構造体1は、海面WLからの深さ方向Yの大きさh1と、高さ方向Hの大きさh2とが同じ寸法で形成される。これによって、防災用構造体1は、海中に存する部分が受ける浮力によって、海上に自立することができる。また、防災用構造体1は、浮力によって海上に浮遊することができる。これによって、防災用構造体1は、牽引等により、海上の任意の位置に自由に配置することができる。 【0022】 図1(a)および図2に示すように、防災用構造体1は、海上に自立するとともに、海中から海上にかけて少なくとも1キロメートルから数キロメートルに亘って屹立する柱状の構造物である。波浪および暴風を伴う台風Sが防災用構造体1に接近し、又は、接触した場合、台風Sの一部sは、防災用構造体1の側面に沿って上昇または下降し、台風Sから離散するように制御される。また、台風Sを構成する水分は、防災用構造体1に衝突し、防災用構造体1付近の海上で雨滴rとなって落下する。これによって、防災用構造体1付近の海水温度が低下し、台風Sの勢力が弱めることができる。また、防災用構造体1は、台風Sが伴う波浪に対して障害物となるため、防災用構造体1に衝突した波浪を軽減し、これによって、台風Sの勢力が弱まる。この結果、防災用構造体1は、台風Sの波浪および暴風を制御し、台風Sの予想進路上の居住地における人的および物的被害を抑制することができる。 【0023】 また、防災用構造体1は、少なくとも、防災用構造体1が海上で自立可能な浮力を得られるように、海面からの深さ方向Yの大きさh1および高さ方向Hの大きさh2を定めて形成される。このため、台風Sが接近し、防災用構造体1が、台風Sの伴う波浪および暴風による衝撃を受けた場合でも、防災用構造体1付近の海中では、水深が深くなるにつれてうねりが小さくなることから、防災用構造体1全体では、大きく揺動し、又は、傾くこ となく、安定した姿勢で自立することができる。 【0024】 また、図1(b)および図1(c)に示すように、防災用構造体1は、海面からの深さ方向が大きくなるにつれて、肉厚Tが大きくなるように形成される。図1(a)の断面指示線A−Aで示した位置と、海面からの深さ方向が大きくなる断面指示線B−Bで示した位置とでは、防災用構造体1の外周の大きさは等しい一方で、防災用構造体1の断面積に占める、金属材料の割合が大きくなる。すなわち、図1(c)に示した図1(a)の断面指示線B−Bにおける断面の防災用構造体1の肉厚T2は、図1(b)に示した図1(a)の断面指示線A−Aにおける断面の防災用構造体1の肉厚T1よりも大きい。これにより、防災用構造体1が、海中で受ける水圧による負荷を軽減することができる。 【0025】 次に、図3および図4を用いて、防災用構造体1の製造方法について説明する。図3(a)に示すように、防災用構造体1は、複数の金属製の立方体2を、溶接することで接続して一つの構造物とする。立方体2は、内部が中空に形成されており、これらの立方体2を、海上において溶接により接続して、防災用構造体1の外周とする。 【0026】 図4(a)に示すように、本実施形態では、陸上で製造された立法体2を、海上の任意の地点まで牽引する。次に、図4(b)に示すように、複数の立方体2を、海面WLに沿って、幅方向Wまたは奥行方向Dに次々に溶接し接続する。上述の通り、防災用構造体1は、海上に自立して設置した際に、海面WLから深さ方向Yに進むにつれて、肉厚Tが大きくなるように形成される。本実施形態では、海面WLで溶接された複数の立方体2の内、防災用構造体1が完成した際に、海面WLからの深さ方向Yにおいて、最も低い位置に配置される立方体24は、他の立方体26よりも厚肉に構成されているため重量が重い。このように、立方体26から立方体24へ向かうにつれて、立方体2の肉厚は徐々に厚くなるように構成される。これによって、海面WLにおいて、立方体2の溶接を繰り返すにつれて、一方の端部付近の箇所の質量が他方の端部付近の箇所の質量よりも大きくなる。 【0027】 立方体2の溶接および接続と前後して、図3(b)に示すように、接続された複数の立方体2の、隣接する面である接続面22を、立方体2の内部で切断し除去することで、防災用構造体1の内部を連続する一の空間3とする。 【0028】 図4(c)に示すように、接続される立方体2の数が増えるに従って、最も重量の大きい立方体24が海面WLから下方G1に向かって沈降する。これに伴い、立方体24と反対側の他端は上方G2の方向へ上昇する。 【0029】 図4(d)に示すように、最終的に任意の数の立方体2を接続するとともに、内部に連続する一の空間3を防災用構造体1は、海面WLから高さ方向Hに自立することができる。これらの作業を、任意の個数の立方体2において繰り返すことにより、任意の大きさで、内部に連続する一の空間3を備える防災用構造体1を製造する。本実施形態では、20個の立方体2を溶接し接続することで、海面WLから高さ方向Hの大きさh1および深さ方向Yの大きさh2が、ともに1キロメートルの大きさを備える防災用構造体1を製造する。これによって、防災用構造体1は、空間的な制限の無い海上において、任意の大きさおよび位置で、簡易に製造することができる。 【0030】 上記の通り、製造された防災用構造体1は、内部に少なくとも高さ1キロメートルから数キロメートルの空間3を備える。空間3は、その高低差による位置エネルギーを利用して、発電を行うこともできる。例えば、防災用構造体1は、海面WL付近から海水を空間3に導入し加熱することで、蒸発した海水を空間3の上部に誘導する。空間3の上部で、蒸気を冷却することで液化し、液化した海水が空間3の下部へ滴下する際の落下エネルギーを用いて、発電機を駆動し発電することができる。 【0031】 また、空間3は、居住空間や商業空間として、人間の生活に利用してもよい。上述の通り、防災用構造体1は、海面WLから深さ方向Yの大きさh2の寸法で、海中に配置される。これによって、防災用構造体1は、海中資源の探索や、深海における研究や開発の拠点として利用することもできる。 【0032】 <他の実施形態> 以上、本考案の実施形態について説明したが、本考案は上記実施形態に限定されるものではなく、考案の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。 (a)上記実施形態では、空間3は一の連通する空間であったが、本考案はこれに限定されない。すなわち、空間3は大きさの異なる複数の空間に区画されてもよい。 (b)上記実施形態では、防災用構造体1は中空の直方体形状であったが、本考案はこれに限定されない。すなわち、防災用構造体1は、断面が円形の円筒形状をはじめ、任意の断面形状を備える柱形状であってもよい。 【符号の説明】 【0033】 1:防災用構造体 2:立方体 22:接続面 3:空間 WL:海面 W:幅方向 D:奥行方向 H:高さ方向 Y:深さ方向 S:台風 |
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【図1】 |
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【図2】 |
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【図3】 |
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【図4】 |
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