閉じる | ||
【発明の名称】ベランダ構造 【出願人】 【識別番号】504264702 【氏名又は名称】有限会社ラムダ 【住所又は居所】千葉県千葉市緑区鎌取町2812―20 【発明者】 【氏名】柴田 英昭 【住所又は居所】千葉県千葉市緑区鎌取町2812−20 【要約】 【課題】 洗濯物、寝具などがベランダの手摺りの内側、外側に干された場合、これらが晒された光景は地域の景観を悪化させている。対策として目隠し部材の併用などもあるが、それでもベランダは単に物干し場としての利用が殆どである。これを単に物干しの目隠しのみでなく外気、陽光を楽しむ空間としてのベランダ本来の役割を生み出す。 【解決手段】 ベランダ周囲の手摺り2の外側の適当な距離と高さに格子状のパネル3および4を設置することにより、実用的な空気の流通と採光を確保しつつ、ベランダの内部を実質的に外の視線から遮断し、景観劣化を防ぐと共に外側に別に設けられた柵により、ベランダ利用者が高所恐怖から開放され、さらに特に椅子などに座ったときなどは利用者が外部視線を意識しなくて済むくつろぎ空間を生む。 【特許請求の範囲】 【請求項1】 手摺りまたは柵の外側に、間隙を有する格子パネルが設置されているベランダ構造。 【請求項2】 請求項1記載のベランダ構造において、設置される格子パネルはベランダ周囲の手摺りまたは柵の外側全面を囲繞する形態で構成されるベランダ構造。 【請求項3】 請求項1記載のベランダ構造に係る格子パネルは、手摺りまたは柵の外側の面とは概ね平行であり、かつ上端の内側面は柵または手摺りの上端の外側面から6センチメートルないし30センチメートル離れて設置されるベランダ構造。 【請求項4】 請求項1記載のベランダ構造において、居住空間から見て正面の手摺りまたは柵の外側に設置する格子パネルの下端は概ねベランダの床面高さと同等で、上端は概ね内側の手摺り上端より3センチメートル以上高くかつ床面からの高さが150センチメートル以下であるベランダ構造。 【請求項5】 請求項1記載のベランダ構造において、居住空間から見て側面に位置する手摺りまたは柵の外側に設置する格子パネルの一部または全部に関し、下端の位置は概ね床面と同等高さであり、上端の位置は居住空間から見て正面に位置する柵または手摺りの外側に設置する格子パネルより高く、且つ床面から170センチメートル以上であることを特徴とするベランダ構造。 【発明の詳細な説明】 【技術分野】 本発明は居住用建物および住宅街の景観を改善しつつ快適性を高めるベランダ構造に関する。特にベランダの手摺りまたは柵の外側に別個の格子パネルを設けてベランダの機能を新規なものにするための構造に関する。 【背景技術】 家屋に沿って外側に張り出した縁、縁側、濡れ縁はベランダ、バルコニー、あるいはテラスなどと呼ばれ建物の一部として広く普及している。本発明においてこれらを総称してベランダとする。これの基本構造は、戸外に張り出した床部分、転落防止などの安全確保の目的で設置される柵または手摺り/欄干で構成されているが、場合により、張り出し部分の上部に庇があるもの、他の居住空間との間に仕切のある複数の空間を含む全体を指すこともある。従来のベランダにおいて手摺り部分は笠木部分の下側に金属製の縦格子、コンクリートの壁、無機材料のパネル、金属またはプラスチックの板などがある構造である。柵、手摺り/欄干部の高さ、格子間隔、間隙は利用者が内側を歩くときの転落防止などの安全確保を一義として、意匠性なども考慮して作られていた。 ベランダの利用目的は、1)住居空間内にいるという安心感のなかで外気に直接触れ戸外の雰囲気をも楽しみ開放感をも味わう、2)洗濯物干し、3)布団・寝具干し、などであり、本来は1)ではなかったかと推測される。ところが、現下において2)と3)が殆ど全てと言って過言ではない。ベランダが洗濯物干し、布団・シーツ/寝具干し、としてしか利用されない理由としては、多くのベランダの幅が1メートル前後であることから来る狭隘感、ベランダに居る自分の姿が他人の目に晒されるということへの気後れ、高所恐怖感があると推測される。このほか、物干し専用の適当な場所が無い、日本人の太陽信仰、などが考えられる。 その結果、晴れた日の住宅街に展開される風景は、布団、寝具、洗濯物などの干し物が外気と太陽の恵みを受ける反面、自分のプライバシーの一部を戸外にさらすと共に都市景観を損ねる結果ともなっている。これに対する従来の対策の一つとして、手摺りまたは柵の内側に上下に移動可能な別の目隠し材を取り付けるものがある(例えば、特許文献1参照)また、ベランダの手摺りから一定の間隔を設けて突出する保持材に遮蔽部材と共に花などの収納部を設けるものがある。(例えば特許文献2参照) 【特許文献1】 特開平2003−20720号公報 【特許文献2】 実開平5−75302号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 しかし、従来のベランダ構造では例えば、特許文献1の場合、内側に設置する部材は物乾し場としてのベランダの外部視線からの遮断であり、目隠しのためにベランダ内の通気が妨げられるうえ、閉塞感を増してしまう。 特許文献2においては突出する部分の遮蔽部材、植え付けられた花などにより手摺りにかけた布団や洗濯物は外部視界から遮蔽され、花などによる美感向上も期待できるが、花を植え付ける土を充填した鉢の部分のためベランダ内への通気性が妨げられ、また全体が重くなり、例えば戸建て住宅に多いアルミ製ベランダなど、ベランダ、手摺り、柵の構造によっては、では強度上の問題を生じるおそれがあるほか、強風の際は花の鉢、花そのものが飛散落下する危険も生じる。 この出願の発明は日光と外気の恩恵を享受しながら、他人に不快感を与えず景観を維持し、かつ本来のベランダ内部の快適性を増すという一見相反する課題を解決するベランダ構造の提供を目的とするものである。 【課題を解決するための手段】 請求項1の発明は格子パネルが間隙を有するために太陽光の入射や風、空気の流入によってベランダに求められる物干しなどの機能を維持しつつ、離れた戸外の視線からは手摺り部分に掛けられた寝具、洗濯物などの干し物やベランダ内の様子が実質的に遮断される構造である。 請求項2の発明は干し物を外部に晒すことを防ぐ美観維持に限らず、多様な方向からの外部視線に対するベランダ内部の利用者の気遣い・意識・不快感を解消するか最小限度にする構造である。 請求項3の発明は柵または手摺りとの間に一定の間隔を設けることで、手摺りのみの場合よりベランダが拡がった感覚と高所恐怖感を緩和ないし消滅させるとともに、ベランダが特に布団などの厚みのあるもの、シーツ、ガウンなどの面積の大きな寝具類を掛けるときにその端が外側の格子パネルに接触して汚れたり、擦れたりするのを防ぐ構造である。 請求項4の発明は洗濯物、布団、シーツなどを手摺りに掛けたときに外部視線を防ぐと共に、利用者が立っているときはベランダ外部を見ることができ、デッキチェアなどを置いて座ったときは外界と適度に遮断されることにより、意識がベランダ内部に向かい、外部視線を意識しないでくつろいだ感覚を得ることができる構造である。 請求項5はベランダ内部でくつろぎ又は立ち歩きしているときも側面を通じての他者の視線、自己の視線も共に適度に遮断することで、利用者の安心感を増す構造である。 【発明の効果】 通常は他人には見せない、他人が見たら不快を催す可能性のある布団や寝具、下着、その他の衣類を公衆の視界に晒すことなく洗練された都市住宅景観を維持すると共に、ベランダ利用者の側ではプライバシーの保護となり、利用者が外部視線を意識せず、また、転落防止の外側にもう一つ柵があることにより、安全度が増し、高所恐怖からも解放されて、手摺りに寄りかかることもできるようになり、ベランダ全体に安心感が行き渡り、ベランダが広く感じるようになり、ベランダを単にモノ乾し場としてだけでなく、くつろぎの場にも変える効果を生む。 【発明を実施するための最良の形態】 外側に位置する格子パネルは洗濯物や布団に外気、風などおよび太陽光が当たりやすくすることと、それらを戸外の通行者などへ見えにくくする二つの機能、さらに本発明ではベランダを利用する人が高所恐怖感を軽減し、あわせて外部の視線を意識せずベランダ空間を意識上、あるいは感覚的に占有できる機能が求められる。以下、図面に示す実施例に基づいて説明する。 図1、はこの発明に基づく実施例のベランダ外部からの斜視概観イメージである。同じく図2はベランダ内部からの斜視概観イメージである。1はベランダ床面であり、これの周囲に転落防止の手摺り2、ベランダへの出入り口5を有する。本発明で言う、外側に位置する格子パネルはベランダ正面の外側に3、側面に4が設置される。格子パネルの形状は意匠上、あるいは製作過程の細かな凹凸を無視した場合で判断しかつ製作の容易さ等も勘案して平面かつ方形が原則であるが、必ずしもこれに限定されるわけではなく、意匠的観点から水平もしくは垂直断面である程度の曲面か三角形や矩形状を有していても、また円形、楕円、三角、五角形などの多角形であっても本発明の効果は発現される。 図3に外側に設置される格子パネル3と内側の転落防止手摺り2との位置関係を図1のA−A′断面により示した。図3の例は手摺り2と格子パネル3が共に床面に垂直で平行な場合である。外側に設置される格子パネル3とベランダ床1または本体、内側の手摺り2との結合手段はいかなる方法でも良い。一体構造で製造、設置されても良いし、既存のベランダの支柱などに腕木を取り付けてその先にパネルを固定する方法などもある。 外側の格子パネルの設置は内側の手摺りと平行でベランダ床面に垂直な方法の他、特に2階以上に設置されるベランダにおいて下側への視界を意識した場合には、外側に設置される格子パネルを若干内側に傾けるか、下側の部分が屈曲または湾曲して上部よりも狭くなる構造でもよい。さらに下側の端が内側の手摺り下部と繋がる構造にすることで手摺りに掛けた衣類などが脱落し場合、それを下側部分で受け止められ、地上などへの落下を防ぐ効果もある。その一例でパネル下部が湾曲している場合の概念図を図4に示した。この場合、格子パネル3の下端3Cは手摺り2の下側支持部2Cと接するか極めて近い位置となる。 図2、および図3の外側に設置される格子パネルとは、金属、木材、プラスチック板などの部材が格子状に組み合わされて、部材間に間隙を形成するもののほか、部材が縦、横、あるいは斜めに取り付けられてその間に空気、光を通す隙間を形成しているもの、あるいは金属、木材、プラスチックの板材に予め、あるいは後加工で多数の穴/開口が設けられているものであってもよく、いずれの間隙、または穴/開口も光、風、空気を通過できる大きさであるものであればよい。 次に、図1のA−A′断面を示した図5により外側の格子パネルと内側の手摺りとの位置関係を説明する。外側の格子パネル3の位置は内側の手摺り2の外側面から格子パネルの内側面までの距離L1で4センチメートル乃至30センチメートル離れていることが必要である。距離L1の測定の起点は笠木などと呼ばれる手摺りの上部が格子部分より大きな幅を有するときはその端からとなる。格子パネル側においても同様である。ここで、手摺り2と格子パネル3のそれぞれ、外側面、内側面とはそれぞれの構造が持つ取り付け用のボルト、部品、あるいは意匠的な意味合いを持つ細かい凹部、凸部を無視はしないがそれを起点にする意味でもなく、全体として判断される実質的な面のことである。 L1が4センチメートル以下または30センチメートルを越えるとベランダの内側を動き回る際の恐怖感の解消効果が減殺される。特にル格子パネルが平面形状の場合、L1が30センチメートルを超えると下側、上側、側面の視界が広がりすぎて、外部からの視線が入り込みやすくなる。また、ベランダの内側手摺り部分2の上部には布団やシーツなど厚めで大きな寝具が置かれることが多いのでこれらを外側に垂らすときに、4センチメートルより狭いと作業しにくく、また寝具類の端が外側の格子パネルに接触して汚れたり、擦れたりすることがあり不適である。好ましくはL1の値は10センチメートルから20センチメートルの範囲である。 本発明の重要な目的のひとつは、2階以上の高所においてベランダ内を歩行する際の高所恐怖感を取り除くとともにベランダの狭隘感を解消するか、著しく減少することである。これは前述の間隔で設置された外側の格子パネルがさらに適当な高さで設置されることにより効果が大きくなる。 図1,図2,及び図5,図6に示すように手すり2の外側に設置される格子パネル3および4はベランダを囲むかたちとなる。図1のA−A′断面を示す図5に沿ってベランダ正面のパネル3の位置関係を説明する。これらのうちベランダの長手方向側であってベランダが取り付けられている居住空間の正面に位置する高さh2の格子パネル3の上端3bと高さh1の手摺り2の上端2bの差は格子パネル3が3センチメートル以上高い位置に設置されていることが必要である。格子パネル3の下端3Cの位置はベランダ床面と同じか、およそ10センチメートルの範囲内で高くても低くてもよい。 公営住宅建設基準に規定されたベランダの手摺りの床面からの高さは110センチメートル、ベターリビング・手すりユニット規格では120センチメートルなどとなっているが、これらに従えば外側に設置される格子パネルは床面から113センチメートル以上または123センチメートル以上となる。手摺り2と格子パネル3の高さの違いが3センチメートルより小さいと手摺り2に干し物などをしたときに外部視線にこれを晒す可能性が高くなり、また、高所恐怖感の解消効果が小さくなる。 ベランダの有効活用の考え方として、立っているときは外界に関心をもって眺め、座ったときは自分だけの空間に浸るということでベランダに求められる開放感と、一方ある程度閉ざされることによる安心感と居心地の良さを両立させることが可能となる。このためには、格子パネルの上端の位置の制約はベランダ内の利用者の動きの中で、利用者の身長、座高などを参考にデッキチェア、簡易椅子などに座ったときの状況から決められる。 文部科学省がまとめた平成15年度の全国の高校男子生徒、女子生徒の平均身長はそれぞれ170.7センチメートル、157.8センチメートル、平均座高はそれぞれ、91.5センチメートル、85.4センチメートルである。これらの統計は、本発明の利用者を代表すると想定する。デッキチェア、簡易椅子などは概ね45センチメートル以下であり、座高92センチメートルの人が45センチメートルの椅子に座ったときの高さは136センチメートルとなる。目の位置は座高より約11センチメートル下にあるので、統計上のばらつきを考慮してもほとんどの場合、図5のh2は150センチメートルの高さがあれば利用者の視線は外部から遮断され、かつ利用者の姿が外部に晒されることがない。 一方、ベランダの側面は正面と違った考え方が必要となるが、図6で説明する。正面の場合、外部視線は道路の通行者、庭、空き地、道路などを隔ててある程度離れたところからのものであるのに対し、ベランダ横からの視線は水平位置がほぼ同じ隣家などからのものが主体でありかつ通常は住宅面にそって細長いベランダ全体が見通されることになるからである。このため、側面に設置される格子パネルの高さh4はこれを防ぐ意味で隣家などのベランダに立っている人の目の位置より大きいことが求められる。通常h4は170センチメートル以上あれば十分である。内側の手摺り2と外側の格子パネル4との距離L2はL1とは異なり干し物の取扱の利便性主体で考慮すればよい。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の実施形態の一例でベランダの外部からの概観斜視図。 【図2】図1におけるベランダの内側から見た概観斜視図。 【図3】同図1における外側パネルと内側の手摺りが互いに平面でかつ平行で、床面には垂直である場合を示すA−A′線断面図。 【図4】本発明の実施形態のひとつで外側パネルの下部が湾曲している場合を示す図1におけるA−A′断面図。 【図5】ベランダ正面の外側パネル、内側手摺り、ベランダ床面との位置関係を示す図1のA−A′断面図。 【図6】ベランダ側面の外側パネル、内側手摺り、ベランダの床面の位置関係を示す図1のB−B′断面図。 【符号の説明】 1 ベランダ床面 2 転落防止手摺り 2a 手摺り縦格子 2b 手摺り上部笠木 2c 手摺り下部支持根太 3 ベランダ正面外側格子パネル 3a 格子パネル本体部 3b 格子パネル外枠上部 3c 格子パネル外枠下部 4 ベランダ側面外側格子パネル 4a ベランダ側面外側格子パネル本体部 4b ベランダ側面外側格子パネル外枠上部 4c ベランダ側面外側格子パネル外枠下部 5 住宅からベランダへの出入り口 6 住宅の外壁面 |
||
【図1】 |
||
【図2】 |
||
【図3】 |
||
【図4】 |
||
【図5】 |
||
【図6】 |
||
ページtop へ |