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【発明の名称】表面水流及び水流噴出を利用した油回収装置 【出願人】 【識別番号】522160723 【氏名又は名称】山口 裕 【住所又は居所】三重県四日市市楠町北五味塚1928-2 ベルスクエアくすT 201 【発明者】 【氏名】山口 裕 【住所又は居所】三重県四日市市楠町北五味塚1928-2 ベルスクエアくすT 201 【要約】 【課題】排水処理槽に浮いた油分の分離回収において、頻発する回収装置のメンテ、消耗品のコスト、運転管理者の交換作業等を含めたランニングコスト、回収した油のリサイクル費用等のコストをトータルで削減する。 【解決手段】排水処理槽内に油分離槽を設置し、配管より噴出させる水流の力によって、表面に浮いている油分等を強制的に油分離槽内に送り込む。油分離槽下側は排水処理槽とつながった構造となっている。分離した油分中の固形異物片や水分は時間の経過と伴に排水処理槽に戻ることになり、回収油分の品質が向上する。また、排水処理槽表面に意図的に水流を発生させて油分離槽側に油分等を集めさせることにより、油厚の増加による回収率向上、表面油分を一定の箇所に集めることによる下流処理槽への油分流入量が軽減される。回転機器やフィルター等を使用しないシンプル構造で運転管理者に特別な技量を必要としない。 【選択図】図1 【特許請求の範囲】 【請求項1】 油分等を含む水を排出する工場、車の解体工場、金属加工業等々の排水処理施設において、油分等の回収効率を上げるために油分等の油厚の厚さを増加させる目的に排水処理槽表面に油分離槽側に向いた水流を発生させる装置と排水処理槽の水面下側から水を噴出させその水流よって油分離槽側に集めた油分等を油分離槽内に送り込み、油分等の分離、回収をする装置。 【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は、意図的に発生させた水流によって油を分離、回収する装置に関するものである。 【背景技術】 【0002】 油を分離する排水処理槽の表面の油分等は、薄く、広く、まばらに浮いている状態のため、油分量が増加し油厚が厚くならないと回収効率があがらない。しかし、油分量の増加は、排水処理槽内に長時間油分が滞留することになり、結果として次の処理槽へ流出する油分等を増やすことになり、下流の処理槽での油分回収作業が発生することになる。 【0003】 よって、油厚が薄い状態でも油回収を始める必要があり、回収時の水分量が多くなりやすい。一般に広く採用されているベルトスキーマーはベルト状にした布を回転させながら、油分等を付着させ油を回収するが、回収時に水も一緒に回収してしまう。回収装置内に比重を利用した分離槽を設けてはいるが、分離槽の容量が小さく分離滞留時間も短くなるため、水分も一緒に分離されてしまい、回収油分中の含水量を下げることが難しい。 【0004】 排水処理槽の表面水と油分等を一緒に吸引して分離する装置は、大量の水を吸引するため大型の分離槽や比重差フィルターで油分等を分離する。比重差フィルターは固形異物片等の目詰まり防止のために、手前に固形異物片の除去用フィルターが必要になり、装置の大型化、フィルター等の消耗品コスト、メンテ作業など運用コストの負担が大きくなる。 【0005】 油分等の回収効率は油厚の他に、水温の影響も受ける。水温が高いと油の粘性が低くなるため回収率が下がる。ベルトスキーマーの場合は、水温20度と40度で比較すると、水温40度の回収率は水温20度に対して1/2程度に低下する。また、冬季の場合は油分等の粘性が高くなりすぎて、油分等が布から離れ難くなるため、回収量が低下する。 【先行技術文献】 【非特許文献】 【0006】 【非特許文献1】株式会社フクハラ ベルト式浮上油回収装置スーパースキーマー仕様書 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 排水処理槽の表面に浮いている油分等の油厚を増加させて回収率を上げるために、油分離槽の周囲に油分等を集め、それを維持する装置を提供すること。 【0008】 水温や固形異物片の影響を受けずに油分等を分離、回収ができる装置を提供すこと。 【0009】 分離した油分等の含有水分量を減らす装置を提供すること。 【課題を解決するための手段】 【0010】 油分離槽側に向かう水の流れを作る。油分離槽の対面側に、排水処理槽の表面に水流を発生させる表面水流発生板を設置して、連続した水流を油分離槽側に供給し、油分離槽側に油分等を強制的に集める。 【0011】 油分離槽側に集められた油分等に対して排水処理槽の水面下側から水流を噴出させ、その流れに乗せて油分等を油分離槽内に強制的に移動させ、油分等を分離する。油分離槽は排水処理槽の水面より十分な高さの板で仕切られており、分離した油分等を保持できる構造とする。 【0012】 油分等の多い排水処理槽内に設置する油分離槽は、油分離槽の下側を開放した形状とし、排水処理槽とつながった状態とする。分離された油分等に含まれる水や固形異物片は、時間経過と伴に排水処理槽へ落下し戻って行く。油より軽い固形異物片に対しては、金網メッシュを取付し除去する。油分離槽の下側は十分な深さの板で仕切られ、分離した油分等が排水処理槽に逆流せず、油分等を溜められる構造とする。 【0013】 油分等の少ない排水処理槽に設置する油分離槽は、排水処理槽とパイプでつながった構造とする。水と少量の油分等を一緒に油分離槽内に送り込むが、パイプが排水処理槽とつながっているため、油分離槽から水があふれることはなく、分離した油分等は油膜状態で溜めていく。パイプは十分な長さがあり、油分等が排水処理槽に逆流しない構造とする。また、同時に分離した固形異物片はパイプを通って排水処理槽に落下し戻って行く。油より軽い固形異物片に対しては、金網メッシュを取付し除去する。 【発明の効果】 【0014】 一般的に広く採用されているベルトスキーマーの油分等の回収量は水温20度、油厚5ミリとして、1時間当たり5.8リットル程度である。本発明の油回収装置は水流により一定の面積の油分等を強制的に移動させることで油分等を分離する。油分離槽の油分等流入側の長さを70センチ、水流が噴出する幅を15センチ、油厚を5ミリとすると、1回あたりの油分等回収量は70×15×0.5=525cc=0.525リットルとなる。30秒に1回作動させると1時間では120回作動することになり、1時間での回収量は0.525×120=63リットルとなり、ベルトスキーマーに対して、10倍以上の回収量となる。また、表面水流発生板により、油分離槽側に油分等を集めることで油厚を維持できるため、油分等の回収量も維持または増加させることもできる。 【0015】 本発明装置は水温による油の粘性変化の影響が小さく、回収量にほとんど影響を受けない。 【0016】 油分等の少ない排水処理槽では、表面水流発生板によりの処理槽表面に浮いた油分等の多くを油分離槽側に集めることによる油分等の回収の他に、油分等が下流の排水処理槽に流出する量を少なくすることができる。 【0017】 分離した油分等に含まれる水分や固形異物片が排水処理槽に戻ることにより、廃油品質が向上し、廃油リサイクル費用が抑えられる。 【0018】 本発明装置には、回転機器、回転部品、フィルター等を使用しないため、故障やメンテ作業の発生が非常に少なく、初期コストやランニングコストの削減が期待できる。 【図面の簡単な説明】 【0019】 【図1】排水処理槽での油分等の移動、分離方法の基本的な説明図である。(実施例1) 【図2a】排水処理槽表面の油分等を油分離槽に送り込む水流を噴出させる装置の説明図である。(実施例2[0022]、[0023]) 【図2b】排水処理槽表面の油分等を油分離槽に送り込むために噴出させる水流の役割、噴出させる順番の説明図である。(実施例2[0024]) 【図3】油分等の多い排水処理槽に設置する油分離槽の形状と分離した油分等を回収する仕組みの説明図である。(実施例3) 【図4】油分等の少ない排水処理槽に設置する油分離槽の形状と油を含んだ水を回収する仕組みの説明図である。(実施例4) 【発明を実施するための形態】 【0020】 油回収装置の初期コスト、ランニングコスト、廃油リサイクル費用の低減を、水流を利用した油分離装置と油分離槽を排水処理槽内に設置することにより実現した。 【実施例1】 【0021】 ポンプで吸引した水を表面水流発生板に噴出させることで水平方向の水の流れを作り、排水処理槽内に浮いている油分等を、油分離槽側に集め、その集めた油分等に水面下方からの水流噴出によって油分等を油分離槽内に送り込み油分等を分離する。 【実施例2】 【0022】 5の水流噴出配管固定板に取付した6、7、8の噴出口から水を噴出さる。油分離槽に油分等を送り込む7の分離水流、油分離槽に集められた油分等を更に油分離槽に寄せる8の強制移動水流、7の分離水流に油分等を押し出す6の補助分離水流の3つの水流噴出を組み合わせて油分等を分離する。 【0023】 7の分離水流の圧力が分散しないように、9の水流仕切板を設置する。 【0024】 水流噴出による油分等の分離は、7の分離水流と8の強制移動水流を同時に噴出させ、6の補助分離水流を3秒間、3回程度噴出させ、油分等を7の分離水流に乗せ、11の油移動斜面を上らせながら油分離槽内に送り込み、油分等を分離する。 【実施例3】 【0025】 4の下部面開放式油分離槽は油分等の多い排水処理槽に設置する。下部側は仕切板はなく開放されおり、固形異物片の落下による除去、油分中の水分除去を優先した形状としている。10の本体仕切板は上下方ともに十分な長さとし、分離した油分等を一定量溜められる構造とする。12の油分等吸引配管の吸引口は排水処理槽水面より高い位置に固定し、常に油分等のみが吸引される状態にする。油分等に含まれる成分にもよるが、水面上方に10センチの油分等が溜まった場合、水面下方側には5〜7センチ程度溜まることになる。 【実施例4】 【0026】 13の下部面開閉式油分離槽は油分等の少ない排水処理槽に設置する油分離槽で、下部側も仕切板で囲われており、パイプによって排水処理槽とつながっている。油分等の分離運転中は、14のバルブ開閉コントロール弁は開とし、油分等の分離を行っても油分離槽と排水処理槽の水面は同じ高さを維持する。油分等が少ないため油分離槽に溜まる油分等も少なく、油膜の状態で溜まることとなる。油分のみを回収しようとすると長い運転時間となるため、水と一緒に吸引して回収する。回収時は、14のバルブ開閉コントロール弁を閉にし、6、7、8の水流噴出を行い油と水を攪拌した状態にし吸引し、油分離槽内に付着する油分量を少なくさせる。吸引した油と水は、油分が多い排水処理槽に設置した油分離槽に送り、改めて分離、回収させる。 【産業上の利用可能性】 【0027】 本発明装置は、大型排水処理槽や処理槽内に強い水の対流がある油分等の分離水槽では使用が難しいが、多数を占める10m2〜50m2の大きさの油分離水槽に使用が可能で、使用する機器も少なく、フィルター等の消耗品を使用せず、回転機器もなくメンテナンスが容易で、シンプルな構造のため、運転管理者に特別な技量も不要で負担が少なくい。油の回収量も多く、最終処理槽への油分等の流入を抑えられるため、薬品等の使用も抑えらるため、環境負荷も小さくなる。 【符号の説明】 【0028】 1 表面水流発生板 2 表面の水の流れ 3 水流噴出 4 下部面開放式油分離槽 5 水流噴出配管固定板 6 補助分離水流 7 分離水流 8 強制移動水流 9 水流仕切板 10 本体仕切板 11 油移動斜面 12 油分等吸引配管 13 下部面開閉式油分離槽 14 バルブ開閉コントロール弁 |
【図1】 |
【図2a】 |
【図2b】 |
【図3】 |
【図4】 |
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