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【発明の名称】平行波による波力発電装置
【出願人】
【識別番号】511211058
【氏名又は名称】田中 覚
【住所又は居所】千葉県館山市沼847
【代理人】
【識別番号】100100033
【弁理士】
【氏名又は名称】小杉 武夫
【発明者】
【氏名】田中 覚
【住所又は居所】千葉県館山市沼847
【要約】
【課題】 渚に設置して、平行波による浮き体の水平動に伴ってピストンを往復運動させて発電させる低コストで簡易な波力発電装置を提供する。
【解決手段】 棒状アームの全長に渡って取り付け水面や水面近傍に揺動する1乃至複数個の浮き体と、前記棒状アームが取着され前記浮き体の揺動により水平動するピストンと、前記ピストンを収容するシリンダと、シリンダを水底に設置するための設置具とを備え、平行波による浮き体の水平動に伴い個々の浮き体に及ぼす波力を集合した総波力によって前記ピストンを往復運動させて発電する発電装置が前記ピストンの一端側に連結してなる。また、前記シリンダを水面の高さに応じて昇降可能に係止させて、前記シリンダが水面の高さに応じて水面乃至水面近傍に位置するように構成してもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状アームの全長に渡って取り付け水面や水面近傍に揺動する1乃至複数個の浮き体と、前記棒状アームが取着され前記浮き体の揺動により水平動するピストンと、前記ピストンを収容するシリンダと、シリンダを設置するための設置具とを備え、平行波による浮き体の水平動に伴い個々の浮き体に及ぼす波力を集合した総波力によって前記ピストンを往復運動させて発電する発電装置が前記ピストンに連結してなることを特徴とする波力発電装置。
【請求項2】
前記シリンダが水面乃至水面近傍に位置するように前記シリンダ自体が浮力を備え、若しくは前記シリンダを浮力を備えた浮体に載設若しくは併設して、前記シリンダが水面の高さに応じて水面乃至水面近傍に位置するように構成してなることを特徴とする請求項1記載の波力発電装置。
【請求項3】
前記波力変換装置を複数台並列に並べて配置し、前記ピストンの一端を連接棒を介して枢軸に連結し、係る枢軸の一端に発電装置を連結してなることを特徴とする請求項1又は2記載の波力発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、波のエネルギーにより発電を行う波力発電に関し、より詳細には平行波による浮き体の水平動に伴ってピストンを往復運動させて発電させる低コストで簡易な波力発電装置に関する。
【背景技術】
従来の波力発電装置としては、特許文献1又は特許文献2に示すように浮体を海面に浮かしてこの浮体の上下動を利用して発電させる方式のものが殆どであった。特許文献1には、波浪海面に浮かぶ浮体の上下動によって鉛直部材の波状カムを上下動し、同カムに接触するローラを介して片持梁状の支持部材と一体の圧電素子が撓曲変形することにより発電する発電装置が開示されている。また、特許文献2には、波の上下動を浮力材とアームにより垂直に設けた2本の歯軸に伝え、この歯軸の中間に設けた歯車を回転させて発電させる発電装置が開示されている。しかし、特許文献1及び特許文献2の発明は海面に発生する波のエネルギーを浮体の上下動として吸収する点で本願発明とは相違する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【特許文献1】特開平6−280732号公報
【特許文献2】特開2006−233948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
従来の波力発電装置は前記のとおり波の上下動を利用するものが殆どであり、平行波の水平動を利用するものは見出されていない。特許文献2に示す発明はラックや歯車を使用することによりエネルギーの変換効率の低下が大きいという課題があった。また、海や湖における平行波は波の進行方向に対して直角方向に広がりを有して周期的に海側から押し寄せる波(以下「寄せ波」と称する)と海側へ引き返す波(以下「引き波」と称する)が交互に周期的に水平動を繰り返す。しかし、海底の地形、風向き或いは岩などの障害物によって波高や波周期が部分的に変化するので、従来式の球体や立方体等の単一の浮きでは前記の部分的に変化する波の影響で平行波本来の周期的な水平動が浮きに伝わらずピストンを往復運動させることが困難な課題があった。更に、砂浜などの波打ち際においては、砂浜から海底に至る傾斜が緩いために寄せ波に対して引き波の方が、相対的に力が弱く、前記の単一の浮きではピストンを往復運動させることが難かしいと言う課題があった。
本願発明者は、波力発電装置について長年、鋭意研究した結果、ラックや歯車を使用せずに波のエネルギーを直接ピストンの往復運動に変換してエネルギー変換効率を向上すると共に平行波に対向する長い棒状アームに沿って1乃至複数の浮き体を取り付けることによって、前述の障害物による波高や波周期が部分的に変化する波は周期的な水平波に吸収され、個々の浮き体に及ぼす波力を集合した総波力によって前記ピストンを往復運動させることができ、且つ、引き波に対してもピストンの往復運動に充分な波力を得ることができ、更に、波打ち際の水底に至る傾斜を30〜50度に形成すれば寄せ波と引き波の波力をより向上できることを知見して本発明に至ったものであり、本発明の主たる目的は、前記の課題を解消すると共に、簡単な構造と低コストで、しかも安全で効率のよい波力発電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
前記の課題を解決するために、本発明は、棒状アームの全長に渡って取り付け水面や水面近傍に揺動する1乃至複数個の浮き体と、前記棒状アームが取着され前記浮き体の揺動により水平動するピストンと、前記ピストンを収容するシリンダと、シリンダを設置するための設置具とを備え、平行波による浮き体の水平動に伴い個々の浮き体に及ぼす波力を集合した総波力によって前記ピストンを往復運動させて発電する発電装置が前記ピストンに連結してなることを特徴とする波力発電装置とする(請求項1)。
また、前記の課題を解決するために、本発明は、前記シリンダが水面乃至水面近傍に位置するように前記シリンダ自体が浮力を備え、若しくは前記シリンダを浮力を備えた浮体に載設若しくは併設して、前記シリンダが水面の高さに応じて水面乃至水面近傍に位置するように構成してなることを特徴とする前記の波力発電装置とすることが好ましい(請求項2)。
また、前記の課題を解決するために、本発明は、前記波力変換装置を複数台並列に並べて配置し、前記ピストンの一端を連接棒を介して枢軸に連結し、係る枢軸の一端を発電装置に連結してなることを特徴とする請求項1又は2記載の波力発電装置とすることが好ましい(請求項3)。
【発明の効果】
本願発明に係る平行波による波力発電装置は、前記のように構成したことにより、平行波による水平動を1乃至複数の浮き体で横方向に広範囲に直接吸収するので、広範囲の波から安定した電気エネルギーを効率よく回収できる。シリンダが水面の高さに応じて水面乃至水面近傍に位置するように構成してなる本願発明に係る波力発電装置は潮の干満いずれにも対応ができるので無駄のない効果的な稼働ができる効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
本発明を実施するための形態(以下「実施の形態」と称する)について、以下に詳細に説明する。しかし、本発明は、かかる実施の形態に限定されるものではない。
本発明の第1実施の形態において、本実施の形態に係る波力発電装置1は、棒状アーム11の全長に渡って取り付け水面や水面近傍に揺動する1乃至複数個の浮き体12と、前記棒状アーム11が取着され前記浮き体12の揺動により水平動するピストン13と、前記ピストン13を収容するシリンダ14と、シリンダ14を設置するための設置具15と、前記棒状アーム11が取着されていない前記ピストンの他端側に設けられるシリンダからの抜け防止用ストッパー16とを備え、平行波による浮き体の水平動に伴い個々の浮き体12に及ぼす波力を集合した総波力によって前記ピストン13を往復運動させて発電する発電装置17が前記ピストン13の一端側に連結されている。
図1は波力発電装置1を示し、波力発電装置1の主力部である波力変換装置2は、中空筒状プラスチック製のシリンダ14内に棒状のプラスチック製ピストン13がその両側をシリンダの外側に突出する状態で水平動可能に収容されており、ピストン13の一端にはプラスチック製の棒状アーム11がピストン13とほぼ直角に交差するように設けられている。棒状アーム11には、長尺方向のほぼ中央部にドッチボール程度の大きさの浮き体12が紐によって結ばれており、この中央の浮き体の両側に軟式テニスボール程度の大きさの浮き体12が片側に3個ずつ合わせて6個がそれぞれ適宜の間隔をおいて棒状アーム11に紐で結ばれている。前記ピストン13の他端にはピストン13がシリンダから抜けるのを防止するストッパー16が設けられている。
浮き体12の大きさや形状、個数は特に限定するものではないが、棒状アーム11の中央部に大きい球状の浮き体を配置し、その両側に小さい球状の浮き体を配置する方が波力を安定して受け止めることができ、総波力を中央に集中させる点で好ましい。また、1個の浮き体を棒状アーム11の全長に渡って設けたものであってもよい。浮き体12の材質は特に限定しないが、天然ゴム、合成ゴム等のゴム系で耐候性を付与した素材が好ましい。従来漁業用として用いられるプラスチック製の浮き等でもよい。これらの浮き体を例えば、網等で包囲して紐で棒状アームに連結する。
前記棒状アーム11、ピストン13及びシリンダ14の材料は、海水に対する耐水性、波力に対する衝撃強度と耐候性を有する限り特に限定されないが、例えば、ポリエチレン乃至ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチロール、ポリアクリロニトリル、その他のアクリル系樹脂、フッ素系樹脂等の熱可塑性樹脂、或いは、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケイ素樹脂等の熱硬化性樹脂の何れか又はこれらの合成樹脂のブレンド乃至共重合体等がある。エポキシ樹脂又は不飽和ポリエステル樹脂とカーボンファイバーを主成分とするカーボン繊維強化プラスチック(CFRP)或いはエポキシ樹脂又は不飽和ポリエステル樹脂とガラス繊維を主成分とするガラス繊維強化プラスチック(FRP)等が好ましい。
また、軽量化を図るために、前記の各種プラスチックを発泡させた発泡プラスチックを用いるのが好ましい。マイクロバルーンを保持した発泡シートの両面に前記のCFRP製シート乃至FRP製シートの何れかをサンドイッチ状に積層した材料が衝撃強度が大きく好ましい。前記のマイクロバルーンを保持した発泡シート以外に、アゾジカルボンアミド等の発泡剤を熱分解して発生するガスによって樹脂を発泡させたものや液状の樹脂組成物を攪拌して発泡させたものでもよく、特に独立気泡体が好ましい。前記発砲体は、請求項2記載の発明を含む実施の形態に係る浮力を保有する材料として特に好ましい。発泡倍率を高める程、浮力が大きくなるので、前記シリンダ14が水面近傍に浮くように浮力を勘案して適宜の発泡倍率を選択することが好ましい。或いは、前記シリンダを浮力を備えた浮体に載設するか若しくは浮体をシリンダに取り付けてもよい。
前記ピストン13の棒状アーム11側の先端に延長棒21を設け、延長棒21の他端に連接棒22を上下に回動自在に設け、連接棒22の他端をフライホイル18に設けた突起25に回動自在に係止し、フライホイル18の枢軸23に発電装置17を連結し、ピストンの往復運動を一定方向の回転運動に変換して発電させる。前記機構の他にクランク機構を用いてもよい。円滑な回転運動を得るためにはフライホイルを介することが好ましい。また、回転運動を一定方向に制限するためにラチェットを組み合わせてもよい。係る発電装置17を連結して本実施の形態に係る波力発電装置1が得られる。
本実施の形態に用いる発電装置17としては、例えばタービン式発電装置の他、あらゆる公知の発電装置を用いることが可能である。更に、図5に示すように、本実施の形態に係る波力変換装置2を複数台並列に並べて配置し、ピストンの工程位置が異なるように枢軸23(クランクシャフト)に連結し、係る枢軸23(クランクシャフト)の一端に発電装置17を連結し、他端にフライホイル18を連結して、より大きく均一な電気エネルギー変換が可能なようにすることが好ましい。「並列に並べて配置し」とは必ずしも横方向に一直線状でなくともよい。平行波の状態に応じて複数の波力変換装置2をそれぞれ前後方向に位置を変えて配置し、枢軸23(クランクシャフト)に連結させるようにしてもよい。
次に、図3は本発明の第1実施の形態に係る波力発電装置1の波力変換装置2を砂浜の波打ち際の傾斜面に浮き体が陸側に向くように設置する例を示す。設置方法は特に限定されないが、例えば波打ち際の設置面に杭を打ち込み、シリンダ14を設置具15で杭に固定して設置する。設置具15としては、例えばボルト・ナット又は結束バンドのような手段がある。ピストンは寄せ波と引き波が1回で1ストローク往復運動をする。引き波に対しても充分にピストンの往復運動が可能となる。
図3は、本発明の第1実施の形態に係る波力発電装置の波力変換装置2を岸壁又は堤防の海側前方に浮き体が岸壁側に向くように設置する例を示す。寄せ波によってピストンが最も岸壁に近づいたときに岸壁とピストンが適宜距離離れた状態でシリンダを設置することが好ましい。岸壁側に向かって押し寄せる波と岸壁で跳ね返えす波のタイミングによってピストンの往復運動が可能となる。
図4は、請求項2に係る本発明の第2実施の形態に係る波力発電装置の波力変換装置2を5〜10mの深さの水底にL字状のコンクリート製の構造物を設けて設置する例を示す。L字状構造物の水底V側の先端部αを30〜50度の傾斜面に形成することにより寄せ波と引き波の波力を増すことができるので好ましい。シリンダの両側面中央部にU字状の係止部19,19を設け、該係止部を前記シリンダを設置する前記構造物から垂直に伸びる長細リング状の支持棒20,20に水面の高さに応じて昇降可能に係止させて、前記シリンダが水面の高さに応じて水面乃至水面近傍に位置するように構成する。このシリンダ等の材料を独立気泡体の発泡プラスチック製とすれば水面乃至水面近傍に浮かすことができる。
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明について説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。先ず、前記第1実施の形態に係る波力変換装置2を作成した。仕様は以下のとおりである。
シリンダ:硬質プラスチック製の円筒形、直径8cm、長さ50cm
ピストン:硬質プラスチック製の円筒形、直径3cm、長さ80cm
棒状アーム:硬質プラスチック製の円筒形、直径2cm、長さ190cm
ストッパー:硬質プラスチック製の円筒形、直径2cm、長さ95cm
浮き体(大):ゴム製、ドッチボール
浮き体(小):ゴム製、軟質テニスボール
千葉県館山海岸において、図2に示すようにして、前記第1実施の形態に係る波力変換装置を波打ち際に設置し、ピストンが往復運動する状態を観測した結果、ピストンは平行波の寄せ波と引き波の水平動による浮き体の動きに応じて、4〜6秒に1ストローク往復運動することが確認された。また、前記シリンダを発砲プラスチックに代えた第2実施の形態に係る波力変換装置を岸壁の前に設けた垂直に伸びる長細リング状の支持棒に昇降可能に係止させて(図4参照)、観測をした結果、潮の干満に応じてシリンダが昇降し水面の高さに応じて水面近傍に位置し、ピストンが往復運動することを確認した。
【産業上の利用可能性】
本発明に係る波力発電装置は、平行波による浮き体の水平動に伴ってピストンを往復運動させて発電させる簡易な構造と低コストで、しかも安全で効率のよい波力発電装置であり自然環境保護並びに経済的にも極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施の形態に係る波力発電装置の説明図である。
【図2】第1実施の形態に係る波力変換装置を波打ち際に設置する例を示す説明図である。
【図3】第1実施の形態に係る波力変換装置を岸壁の海側前方に設置する例を示す説明図である。
【図4】第2実施の形態に係る波力変換装置を水底にL字状の構造物を設けて設置する例を示す説明図である。
【図5】第1実施の形態に係る波力変換装置を4台並列に並べて配置する例を示す説明図である。
【符号の説明】
1:波力発電装置、2:波力変換装置、11:棒状アーム、12:浮き体、12a:浮き体(大)、12b:浮き体(小)、13:ピストン、14:シリンダ、15:設置具、16:ストッパー、17:発電装置、18:フライホイル、19:U字状係止部、20:支持棒、21:延長棒、22:連接棒、23:枢軸、24:ピン、25:突起、
W:波、V:水底、L:陸、F:水面、C:コンクリート
【図1】
図1
【図2】
図2
【図3】
図3
【図4】
図4
【図5】
図5
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