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電機
 
【発明の名称】電力変動緩和システム
【国際特許分類】
H02J 3/32 (2006.01)
H02J 1/00 (2006.01)
【FI】
H02J 3/32         
H02J 1/00 306L    
【特許権者】
【識別番号】523108522
【氏名又は名称】湯谷 浩次
【住所又は居所】山梨県大月市猿橋町藤崎294-4
【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
【発明者】
【氏名】湯谷 浩次
【住所又は居所】山梨県大月市猿橋町藤崎294-4
【要約】
【課題】交流負荷の急変などに起因する電力系統の定格電力を超える電力変動を制御遅れなく抑制する。
【解決手段】交流電源部10に接続されて交流/直流変換を行う複数の第1コンバータ45と、複数の直流中間コンデンサ65と、複数の第1コンバータ45のそれぞれに直流中間コンデンサ65を介して接続されて直流/交流変換を行い交流負荷70に給電する複数のインバータ46と、交流電源部10に接続されて交流/直流変換を行う第2コンバータ34の直流出力電力により充電可能な蓄電装置63と、複数の直流中間コンデンサ65のそれぞれと蓄電装置63との間に接続されて直流電力変換を行う一のDC/DCコンバータ51と、を備え、DC/DCコンバータ51は、絶縁型の双方向DC/DCコンバータであり、交流負荷70の変動に伴うインバータ46の出力変動時に、DC/DCコンバータ51を起動して得た直流電力を補償電力として供給する。
【選択図】図1
選択図
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源に接続されて交流/直流変換を行う複数の第1コンバータと、
複数の前記第1コンバータのそれぞれに対応して設けられる複数の直流中間コンデンサと、
複数の前記第1コンバータのそれぞれに前記直流中間コンデンサを介して接続されて直流/交流変換を行い交流負荷に給電する複数のインバータと、
前記交流電源に接続されて交流/直流変換を行う第2コンバータと、
前記第2コンバータの直流出力電力により充電可能な蓄電装置と、
複数の前記直流中間コンデンサのそれぞれと前記蓄電装置との間に接続されて直流電力変換を行う一のDC/DCコンバータと、を備え、
前記DC/DCコンバータは、絶縁型の双方向DC/DCコンバータであり、
前記交流負荷の変動に伴う前記インバータの出力変動時に、前記DC/DCコンバータを起動して得た直流電力を複数の前記直流中間コンデンサのそれぞれに補償電力として供給する、
ことを特徴とする電力変動緩和システム。
【請求項2】
前記第1コンバータの直流出力電力と前記補償電力との和が、前記交流負荷によって要求されている交流電力に等しくなるように前記DC/DCコンバータを制御する直流電力補償制御装置を備えた、
ことを特徴とする請求項1に記載の電力変動緩和システム。
【請求項3】
前記DC/DCコンバータを起動するタイミングを、前記第1コンバータの入力電力又は前記インバータの出力電力に基づいて決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電力変動緩和システム。
【請求項4】
前記DC/DCコンバータは直流電力を双方向に変換可能であり、前記DC/DCコンバータの直流出力電力により、前記蓄電装置を充電可能である、
ことを特徴とする請求項1に記載の電力変動緩和システム。
【請求項5】
複数の前記交流負荷が同時に電力変動を生じたときに、前記第1コンバータは出力を定格電力よりも低い電力に制限する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電力変動緩和システム。
【請求項6】
前記蓄電装置がキャパシタ又は電解コンデンサである、
ことを特徴とする請求項1に記載の電力変動緩和システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変動緩和システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力の変動を緩和して交流電力系統を安定化させる従来の技術として、制御に応じて充電あるいは放電を行うことにより、電力系統の電力の変動を抑制する蓄電装置と、蓄電装置よりも制御に対する充放電の応答が速く、制御に応じて充電あるいは放電を行うことにより、電力系統の電力の変動を抑制するキャパシタ装置と、蓄電装置の充電又は放電が発生する回数を少なく抑えるように、蓄電装置及びキャパシタ装置を制御する制御装置と、を有する系統安定化システムが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】 特許第5816288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば負荷が大規模計算機システムであり、様々な計算ジョブが並列的に実行される場合には、急峻かつ複雑な負荷変動が頻繁に発生する。このような場合、SOC(State Of Charge:充電率、蓄電残量)及び電力損失の測定、並びにオフセット量の演算などに多くの時間を必要として制御応答に遅れが生じ、電力系統の電力変動を迅速に抑制・緩和することが難しい、という問題がある。
【0005】
そこで本発明は、1つの側面では、交流負荷の急変などに起因する電力系統の定格電力を超える電力変動を制御遅れなく抑制することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る電力変動緩和システムは、交流電源に接続されて交流/直流変換を行う複数の第1コンバータと、複数の前記第1コンバータのそれぞれに対応して設けられる複数の直流中間コンデンサと、複数の前記第1コンバータのそれぞれに前記直流中間コンデンサを介して接続されて直流/交流変換を行い交流負荷に給電する複数のインバータと、前記交流電源に接続されて交流/直流変換を行う第2コンバータと、前記第2コンバータの直流出力電力により充電可能な蓄電装置と、複数の前記直流中間コンデンサのそれぞれと前記蓄電装置との間に接続されて直流電力変換を行う一のDC/DCコンバータと、を備え、前記DC/DCコンバータは、絶縁型の双方向DC/DCコンバータであり、前記交流負荷の変動に伴う前記インバータの出力変動時に、前記DC/DCコンバータを起動して得た直流電力を補償電力として供給する、ようにしてもよい。
【0007】
本発明に係る電力変動緩和システムは、前記第1コンバータの直流出力電力と前記補償電力との和が、前記交流負荷によって要求されている交流電力に等しくなるように前記DC/DCコンバータを制御する直流電力補償制御装置を備えた、ようにしてもよい。
【0008】
本発明に係る電力変動緩和システムは、前記DC/DCコンバータを起動するタイミングを、前記第1コンバータの入力電力又は前記インバータの出力電力に基づいて決定する、ようにしてもよい。
【0009】
本発明に係る電力変動緩和システムは、前記DC/DCコンバータは直流電力を双方向に変換可能であり、前記DC/DCコンバータの直流出力電力により、前記蓄電装置を充電可能である、ようにしてもよい。
【0010】
本発明に係る電力変動緩和システムは、複数の前記交流負荷が同時に電力変動を生じたときに、前記第1コンバータは出力を定格電力よりも低い電力に制限する、ようにしてもよい。
【0011】
本発明に係る電力変動緩和システムは、前記蓄電装置がキャパシタ又は電解コンデンサである、ようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、1つの側面では、交流負荷の急変などに起因する電力系統の定格電力を超える電力変動を制御遅れなく抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る電力変動緩和システムの概略構成図である。
【図2】1つのDC/DCコンバータが複数の配電線に対して接続される構成を説明する図である。
【図3】図1の電力変動緩和システムにおける電力の状態と電力変動緩和装置による補償電力とを概念的に示した図である。
【図4】図3における各部の電力の状態を、時間軸を揃えて図示した図である。
【図5】図1の電力変動緩和システムの交流負荷の急変時における各部の電力を概念的に示した波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0015】
(全体構成)
図1は、本発明に係る電力変動緩和システムの具体的な構成態様の一例としての、実施の形態に係る電力変動緩和システム1の概略構成図である。
【0016】
交流電源部10は、電力系統(高圧系統)の電圧を降圧する電源変圧器11と、電源変圧器11の二次側(二次巻線)と絶縁変圧器20の一次側(一次巻線)との間に接続された遮断器12と、電源変圧器11の二次側(二次巻線)と交流給電部40との間に接続された遮断器13とを備える。
【0017】
交流電源部10には配電線14を介して交流給電部40が接続され、交流給電部40が、出力側に接続されている交流負荷70に対して交流電力を供給している。交流負荷70の一例は、急峻かつ複雑な負荷変動が頻繁に発生する計算機システムである。
【0018】
交流給電部40は、交流入力電圧を交流/直流/交流変換して負荷(具体的には、交流負荷70)に供給する一般的な構成及び機能を備えており、具体的には、交流電源部10の遮断器13の出力側と交流負荷70との間に順次接続された、交流電源部10側の遮断器42、入力側LCフィルタ43、電磁接触器44、第1コンバータ45、直流中間コンデンサ65、インバータ46、出力側LCフィルタ47、電磁接触器48、及び交流負荷70側の遮断器49を備える。
【0019】
直流中間コンデンサ65を含み、直流中間コンデンサ65に対して第1コンバータ45の出力側とインバータ46の入力側とが接続される回路を「直流中間回路67」とも称する。
【0020】
第1コンバータ45やインバータ46の回路構成は、特に限定されず、半導体スイッチング素子の動作により交流/直流変換や直流/交流変換が可能であればよく、第1コンバータ45、直流中間コンデンサ65、及びインバータ46により、全体として交流/直流/交流変換を行うインバータ装置を構成していればよい。直流中間コンデンサ65は、例えば、電解コンデンサにより構成されてよい。
【0021】
交流給電部40のうちの交流電源部10側の遮断器42の入力側に第1電流・電圧測定器41が設けられ、また、第1コンバータ45の出力側に直流中間コンデンサ65の電圧を計測する電圧測定器66が設けられる。さらに、交流負荷70側の遮断器49の出力側に第2電流・電圧測定器54が設けられる。第1電流・電圧測定器41、電圧測定器66、及び第2電流・電圧測定器54による測定値は、制御装置55に対して出力される。
【0022】
制御装置55は、第1電流・電圧測定器41、電圧測定器66、及び第2電流・電圧測定器54のそれぞれから出力される測定値に基づいてパルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)された制御信号を第1コンバータ45及びインバータ46に対して出力する。これにより、第1コンバータ45は、直流中間コンデンサ65の電圧(つまりは、直流中間回路67の電圧)が定格値になるように動作する。この動作により、第1コンバータ45は、直流中間回路67を介して、交流負荷70に対して電力を供給する。また、インバータ46は、交流負荷70の入力電圧が定格値になるように動作する。
【0023】
なお、交流給電部40内の第1コンバータ45及びインバータ46の制御方式は、上記のパルス幅変調(PWM)制御には限定されない。
【0024】
第1コンバータ45、直流中間コンデンサ65、及びインバータ46の相互接続点は、双方向型のDC/DCコンバータ51及び直流の遮断器52を介して直流給電線64に接続される。
【0025】
DC/DCコンバータ51は、直流電力を双方向に変換可能で、入力と出力とが変圧器により絶縁された絶縁型の双方向DC/DCコンバータによって構成され、直流電力変換を行う。
【0026】
直流給電線64に、蓄電ブロック60が接続される。蓄電ブロック60は、直流給電線64側から遮断器61、抵抗68、初期充電回路62(具体的には、スイッチと限流抵抗との並列回路)、及び蓄電装置63の直列接続回路によって構成される。
【0027】
蓄電装置63としては、例えば、リチウムイオンキャパシタ(LiC)、電気二重層キャパシタ、又は大容量の電解コンデンサなどの容量性蓄電素子を多数直列に接続したものが好ましいものの、鉛蓄電池などの充電可能な化学電池(二次電池)を使用してもよい。蓄電装置63は、後述する交流/直流変換部30の第2コンバータ34の直流出力電力により、交流給電部40の直流中間回路67の電圧よりも低い電圧に充電される。
【0028】
DC/DCコンバータ51と直流の遮断器52との間に第3電流・電圧測定器53が設けられる。第3電流・電圧測定器53の測定値は、制御装置55に対して出力される。
【0029】
制御装置55は、適宜な伝送手段を介して、第1電流・電圧測定器41、電圧測定器66、第2電流・電圧測定器54、及び第3電流・電圧測定器53の測定値を、直流電力補償制御装置56及び監視装置57へと順次(適時、随時)伝送する。
【0030】
直流電力補償制御装置56は、制御装置55から順次(適時、随時)伝送される測定値を用いて、DC/DCコンバータ51を制御するための制御信号を生成し、生成した制御信号をDC/DCコンバータ51に対して出力する。
【0031】
DC/DCコンバータ51は、直流電力補償制御装置56によって生成されて出力される制御信号により、蓄電ブロック60の蓄電装置63に蓄えられている電力を交流給電部40の直流中間回路67に供給する。
【0032】
ここで、DC/DCコンバータ51、直流の遮断器52、第2・第3電流・電圧測定器54,53、制御装置55、及び直流電力補償制御装置56などは、同一の配電盤50に実装されている。
【0033】
絶縁変圧器20の二次側(二次巻線)に、交流/直流変換部30が接続される。交流/直流変換部30は、絶縁変圧器20の二次側(二次巻線)と直流給電線64との間に順次接続された、絶縁変圧器20側の遮断器31、電磁接触器32、LCフィルタ33、第2コンバータ34、及び気中遮断器35を備える。
【0034】
第2コンバータ34は、順変換により電力系統(高圧系統、交流電源部10)の交流電力を直流電力に変換して直流給電線64に供給する。第2コンバータ34から直流給電線64に供給される電力は、蓄電ブロック60の蓄電装置63の充電に用いられるとともに、直流給電線64に接続されている直流負荷に供給される。
【0035】
第2コンバータ34は、また、逆変換により直流給電線64の直流電力を交流電力に変換して電力系統(高圧系統)側に供給することも可能であり、交流/直流変換部30はパワーコンディショナシステム(PCS)として機能する。
【0036】
第2コンバータ34を制御するための制御信号は、直流電力補償制御装置56により生成される。直流電力補償制御装置56は、交流/直流変換部30に異常が発生したときに、交流給電部40の直流中間回路67の電力を用いて、蓄電ブロック60の蓄電装置63を充電するようにDC/DCコンバータ51を動作させることもできる。
【0037】
(DC/DCコンバータに纏わる構成)
図1では、1つのDC/DCコンバータ51が接続される配電線14を1本にまとめて表示しているが、実際には、1つのDC/DCコンバータ51が複数の配電線14に対して接続される。図2は、1つのDC/DCコンバータ51が複数の配電線14に対して接続される構成を説明する図である。図2では、図1に図示している構成のうちの一部の構成の図示を省略している。なお、直流給電線64に対して、図2に示す構成が複数設けられるようにしてもよい。
【0038】
すなわち、交流電源部10に、複数の配電線14を介して、第1コンバータ45、直流中間コンデンサ65、及びインバータ46を含む組合せが複数組接続され、これら複数組の組合せが各々の出力側に接続されている交流負荷70それぞれに対して交流電力を供給している。
【0039】
実施の形態に係る電力変動緩和システム1は、交流電源部10に接続されて交流/直流変換を行う複数の第1コンバータ45と、複数の第1コンバータ45のそれぞれに対応して設けられる複数の直流中間コンデンサ65と、複数の第1コンバータ45のそれぞれに直流中間コンデンサ65を介して接続されて直流/交流変換を行い交流負荷70に給電する複数のインバータ46と、交流電源部10に接続されて交流/直流変換を行う第2コンバータ34と、第2コンバータ34の直流出力電力により充電可能な蓄電装置63と、複数の直流中間コンデンサ65のそれぞれと蓄電装置63との間に接続されて直流電力変換を行う一のDC/DCコンバータ51と、を備え、DC/DCコンバータ51は、絶縁型の双方向DC/DCコンバータであり、交流負荷70の変動に伴うインバータ46の出力変動時に、DC/DCコンバータ51を起動して得た直流電力を補償電力として供給する、ようにしている。
【0040】
DC/DCコンバータ51は、直流電力を双方向に変換可能な絶縁型の双方向DC/DCコンバータであり、直流給電線64と配電線14側の交流負荷70とを相互に電気的に絶縁するため、直流給電線64からの直流電力を交流電力に変換するインバータ511と当該インバータ511の交流出力を直流出力に変換するコンバータ512とを絶縁変圧器513で結合して構成される。
【0041】
絶縁変圧器513は、直流給電線64側のインバータ511の交流側と接続する巻き線と、配電線14側のコンバータ512の交流側と接続する巻き線と、を有する。絶縁変圧器513のこれら2つの巻き線は、相互に電気的に絶縁されているとともに磁気的に結合されている。インバータ511とコンバータ512とは、絶縁変圧器513の2つの巻き線を介して、電気的な絶縁状態で、交流電力の授受が可能である。
【0042】
(動作)
実施の形態に係る電力変動緩和システム1は、複数の、第1コンバータ45、直流中間コンデンサ65、及びインバータ46の相互接続点の各々に対して1つのDC/DCコンバータ51及び蓄電ブロック60が接続されていることにより、複数の交流負荷70各々の変動に伴う複数のインバータ46の各々の出力変動時に、DC/DCコンバータ51を起動して得た直流電力を補償電力として直流中間コンデンサ65の各々に供給する。実施の形態に係る電力変動緩和システム1は、具体的には下記のように動作する。
【0043】
まず、交流/直流変換部30を運転し、その直流出力を用いて蓄電ブロック60内の蓄電装置63を、直流中間回路67の定格電圧値よりも低い電圧値に初期充電しておく。
【0044】
次に、直流給電線64とDC/DCコンバータ51との間の直流の遮断器52をオン(尚、蓄電ブロック60内の遮断器61、及び初期充電回路62のスイッチはどちらもオン)すれば、DC/DCコンバータ51に蓄電装置63が接続された状態となる。すなわち、直流の遮断器52をオンしてDC/DCコンバータ51に蓄電装置63を接続することにより、交流給電部40の複数の直流中間回路67それぞれに、電力変動緩和装置(具体的には、1つのDC/DCコンバータ51及び蓄電装置63を備える)が接続されていることになる。
【0045】
図3は、交流給電部40と電力変動緩和装置80とについて、交流給電部40の直流中間回路67並びにその入力側及び出力側における電力の状態と、電力変動緩和装置80による補償電力とを概念的に示した図である。なお、図3において、符号80は、1つのDC/DCコンバータ51及び蓄電装置63を備えた電力変動緩和装置を示している。図4は、図3における各部の電力の状態を、時間軸を揃えて図示したものである。
【0046】
図3及び図4は、交流給電部40の複数の直流中間回路67のうちの或る一の直流中間回路67(言い換えると、第1コンバータ45、直流中間コンデンサ65、及びインバータ46を含む複数の組合せのうちの或る一の組合せ)並びにその入力側及び出力側における電力の状態と、当該の或る一の直流中間回路67に対する電力変動緩和装置80による補償電力との関係であり、また、交流給電部40の複数の直流中間回路67(言い換えると、第1コンバータ45、直流中間コンデンサ65、及びインバータ46を含む複数の組合せ)並びにその入力側及び出力側における電力の合計の状態と、これら複数の直流中間回路67に対する電力変動緩和装置80による補償電力の合計との関係でもある。
【0047】
図3において、複数の交流負荷70のいずれも大きさに変動がない定常状態にあるとき、交流給電部40の複数の直流中間回路67それぞれは、交流電源部10の電力を変換した電力を、交流負荷70に供給する。すなわち、交流給電部40の直流中間回路67並びにその入力側及び出力側における各電力は、交流給電部40の内部損失を無視すればほぼ等しくなっている。このとき、複数の直流中間コンデンサ65それぞれの電圧は、各第1コンバータ45の働きにより、定格値に維持されている。また、複数の交流負荷70それぞれの入力電圧は、各インバータ46の働きにより、定格値に維持されている。
【0048】
図3の時刻t1〜t2に複数の交流負荷70のうちの少なくとも1つの大きさが急変(具体的には、急増)して交流給電部40の出力側の電力が増加した場合で、特に複数の交流負荷70のうちの少なくとも1つの電力が各第1コンバータ45の定格電力を超える場合を想定する。
【0049】
この場合、大きさが急変した交流負荷70と電気的につながる第1コンバータ45は、出力可能な最大電力としての定格電力を直流中間回路67に供給する。そして、当該の第1コンバータ45の定格電力を超える電力は、電力変動緩和装置80から、当該の第1コンバータ45を含む直流中間回路67に供給される。このとき、複数の第1コンバータ45及び1つのDC/DCコンバータ51は、直流中間回路67それぞれの電圧が定格値になるように動作している。なお、DC/DCコンバータ51は、例えばスイッチ(図示していない)と配線との機構により、複数の直流中間回路67のうちのいずれの直流中間回路67に対して電力を供給するかを選択可能であるように構成されている。
【0050】
電力変動緩和装置80から直流中間回路67それぞれに供給される電力は、各第1コンバータ45の最大入力電力を定格電力に制限して電力系統(高圧系統)における過大な電力変動を抑制するための補償電力である。
【0051】
ここで、第1コンバータ45及びインバータ46は、制御装置55により生成された制御信号に基づいて動作している。また、DC/DCコンバータ51は、直流電力補償制御装置56により生成された制御信号に基づいて動作している。
【0052】
制御装置55は、第1・第2電流・電圧測定器41,54及び電圧測定器66の測定値を用いて、第1コンバータ45及びインバータ46の制御信号を生成する。また、直流電力補償制御装置56は、上記測定値に加えて、第3電流・電圧測定器53の測定値を用いて、DC/DCコンバータ51の制御信号を生成する。
【0053】
図3の電力の状態において、直流中間回路67に係る、時刻t1〜t2における、符号PAは、交流給電部40の第1コンバータ45から供給される電力である。なお、図3及び図4では、符号PAは、或る一の第1コンバータ45から供給される電力でもあり、複数の第1コンバータ45から供給される電力の合計でもある。
【0054】
また、符号PBは、電力変動緩和装置80のDC/DCコンバータ51から供給される電力である。なお、図3及び図4では、符号PBは、1つのDC/DCコンバータ51から或る一の直流中間回路67に供給される電力でもあり、1つのDC/DCコンバータ51から複数の直流中間回路67に供給される電力の合計でもある。
【0055】
さらに、符号PCは、交流給電部40のインバータ46の出力電力である。なお、図3及び図4では、符号PCは、或る一のインバータ46の出力電力でもあり、複数のインバータ46の出力電力の合計でもある。
【0056】
直流電力補償制御装置56は、第1コンバータ45それぞれの直流出力電力(PA)と当該の第1コンバータ45を含む直流中間回路67にDC/DCコンバータ51から供給される補償電力(PB)との和が、当該の第1コンバータ45と電気的につながる交流負荷70によって要求されている交流電力(PC)に等しくなるように、DC/DCコンバータ51を制御する。
【0057】
ここで、図2における、第1コンバータ45それぞれの直流出力電力PAの大きさは第1コンバータ45それぞれで相互に異なり、また、直流中間回路67それぞれに供給される補償電力PBの大きさは直流中間回路67それぞれで相互に異なり、また、交流負荷70それぞれによって要求されている交流電力PCの大きさは交流負荷70それぞれで相互に異なる(但し、いずれも、偶々同じになることはありうる)。
【0058】
図3の電力の状態について、時刻t1〜t2に交流給電部40の出力電力が増加しても、上述したように、第1コンバータ45及び電力変動緩和装置80の働きにより、直流中間回路67を介して定格電力を超えた分の電力が補充される。その結果、交流給電部40の入力側では、符号PAにより示すように、定格電力を超える電力変動は表れない。
【0059】
なお、蓄電ブロック60の蓄電装置63は、DC/DCコンバータ51の停止後、第2コンバータ34によって充電される。第2コンバータ34による充電電力は、第1コンバータ45の定格電力よりも十分に小さい電力である。そのため、蓄電装置63の充電電力は、電力系統(高圧系統)の電力変動に影響を与えない。
【0060】
次に、図5は、交流負荷70の急変時における交流給電部40の第1コンバータ45の入力電力PA(図5では、或る一の第1コンバータ45の入力電力でもあり、複数の第1コンバータ45の入力電力の合計でもある)、電力変動緩和装置80による補償電力PB(図5では、1つのDC/DCコンバータ51から或る一の直流中間回路67に供給される補償電力でもあり、1つのDC/DCコンバータ51から複数の直流中間回路67に供給される補償電力の合計でもある)、及び交流給電部40のインバータ46の出力電力PC(図5では、或る一のインバータ46の出力電力でもあり、複数のインバータ46の出力電力の合計でもある)を概念的に示した波形図である。図5中の各電力PA,PB,PCは、図3中の各電力PA,PB,PCとそれぞれ対応する。なお、第1コンバータ45、インバータ46、及びDC/DCコンバータ51における内部損失は無視するものとする。
【0061】
各電力PA,PB,PCの間にはPA+PB=PCという関係があり、交流給電部40のインバータ46の出力電力PCは図5における包絡線波形に相当する。なお、複数の直流中間回路67の各々に関連してPA+PB=PCという関係がある。
【0062】
交流負荷70への給電時には、交流給電部40の入力電力PA(具体的には、複数の第1コンバータ45それぞれの入力電力)がその定格(100%とする)を超えないように制御することが必要であり、負荷の急変を考慮した場合、余裕を見込んで、交流給電部40の入力電力PA(具体的には、複数の第1コンバータ45それぞれの入力電力)を例えば定格の90%程度に抑えることが考えられる。
【0063】
この場合、図5に示すように、交流給電部40の入力電力PA(具体的には、複数の第1コンバータ45それぞれの入力電力のうちの少なくとも1つ)が定格の90%を超えた時刻T1で電力変動緩和装置80のDC/DCコンバータ51を起動し、その後、交流給電部40の入力電力PA(具体的には、複数の第1コンバータ45それぞれの入力電力のすべて)が定格の90%以下になってからオフディレイ時間tdを経過した後の時刻T2でDC/DCコンバータ51を停止する。
【0064】
すなわち、直流電力補償制御装置56は、DC/DCコンバータ51を時刻T1から時刻T2までの時間tcだけ運転するように、制御信号を生成すればよい。なお、DC/DCコンバータ51を起動するタイミングは、第1コンバータ45の入力電力(PA)に基づいて決定されるようにしてよく、或いは、インバータ46の出力電力(PC)に基づいて決定されるようにしてよい。
【0065】
なお、交流給電部40の入力電力PA(具体的には、複数の第1コンバータ45それぞれの入力電力のうちの少なくとも1つ)が定格の90%を超えてからDC/DCコンバータ51を起動するまでに若干の(例えば、ミリ秒程度の)時間遅れが許容される場合には、DC/DCコンバータ51の出力電圧(つまり、直流中間コンデンサ65の電圧)に微小幅の不感帯を設定し、DC/DCコンバータ51の出力電圧が不感帯の最低値に低下するまでDC/DCコンバータ51の起動を遅らせてもよい。
【0066】
上記の時刻T1,T2等については、直流電力補償制御装置56が、第1・第2電流・電圧測定器41,54による各測定値から交流給電部40の入力電力PA(具体的には、複数の第1コンバータ45それぞれの入力電力)を演算可能であるから、演算された入力電力PAに基づいて決定すればよい。
【0067】
また、直流電力補償制御装置56が第1・第2・第3電流・電圧測定器41,54,53による各測定値から各電力PA,PB,PCを演算して監視装置57へと伝送し、監視装置57では、伝送された各電力PA,PB,PCに基づいて電力変動緩和装置80の動作を監視するとともにその機能を評価することが可能である。
【0068】
また、交流給電部40の複数の直流中間回路67で同時に交流負荷70の電力変動が発生した場合(言い換えると、複数の交流負荷70で電力変動が同時に発生した場合)には、交流給電部40の入力電力PA(具体的には、複数の第1コンバータ45それぞれの入力電力)を、定格電力又は定格電力の90%の電力よりも更に低い電力に制限することが望ましい。このようにすれば、電力系統(高圧系統)の電力変動を一層抑制することができる。
【0069】
また、図5では、時刻T1〜T2に複数の交流負荷70のうちの少なくとも1つが第1コンバータ45の定格電力の90%以上に急増した場合にDC/DCコンバータ51を起動させる実施形態について説明したが、複数の交流負荷70のすべてが第1コンバータ45の定格電力の90%よりも小さい電力領域でも、DC/DCコンバータ51を起動させるようにしてもよい。例えば、図5における、第1コンバータ45の定格電力の90%に設定された閾値を、例えば過去の実績や想定に基づいて予め設定された定常状態の電力量に第1コンバータ45の定格電力の10%に相当する電力量を加えた電力に置き替えてDC/DCコンバータ51を起動させるようにしてもよい。この場合は、第1コンバータ45の定格電力よりも小さい電力領域でも、電力系統(高圧系統)の電力変動を抑制することができる。
【0070】
(作用効果)
実施の形態に係る電力変動緩和システム1によれば、交流負荷70の変動に伴うインバータ46の出力変動時にDC/DCコンバータ51を起動して得た直流電力を補償電力として供給するようにしているので、交流負荷70の急変などに起因する電力系統(交流電源部10)の定格電力を超える電力変動を制御遅れなく抑制することが可能となる。
【0071】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成態様は上記の実施の形態に限定されるものではなく、上記の実施の形態に、本発明の要旨を逸脱しない範囲の変形や変更などが加えられた形態も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0072】
1 電力変動緩和システム
10 交流電源部
11 電源変圧器
12 絶縁変圧器側の遮断器
13 交流給電部側の遮断器
14 配電線
20 絶縁変圧器
30 交流/直流変換部
31 絶縁変圧器側の遮断器
32 電磁接触器
33 LCフィルタ
34 第2コンバータ
35 気中遮断器
40 交流給電部
41 第1電流・電圧測定器
42 交流電源部側の遮断器
43 入力側LCフィルタ
44 電磁接触器
45 第1コンバータ
46 インバータ
47 出力側LCフィルタ
48 電磁接触器
49 交流負荷側の遮断器
50 配電盤
51 DC/DCコンバータ
511 インバータ
512 コンバータ
513 絶縁変圧器
52 直流の遮断器
53 第3電流・電圧測定器
54 第2電流・電圧測定器
55 制御装置
56 直流電力補償制御装置
57 監視装置
60 蓄電ブロック
61 遮断器
62 初期充電回路
63 蓄電装置
64 直流給電線
65 直流中間コンデンサ
66 電圧測定器
67 直流中間回路
68 抵抗
70 交流負荷
80 電力変動緩和装置
【図1】
図1
【図2】
図2
【図3】
図3
【図4】
図4
【図5】
図5
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