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【発明の名称】直流電源装置
【出願人】
【識別番号】597102222
【氏名又は名称】星野 弘之
【住所又は居所】茨城県日立市中成沢町1の17の2
【代理人】
【弁理士】
【識別番号】100097098
【氏名又は名称】吉原 達治
【発明者】
【氏名】星野 弘之
【住所又は居所】茨城県日立市中成沢町1−17−2
【要約】
【課題】
商用交流電圧を入力として任意の直流電圧を得る直流高圧電源装置を実現する。
【解決手段】
端子AとCの間に、整流機能を有するn個(nは任意の整数)の2端子回路(単体整流器を除く。以下「サブセル」という。)が整流方向に直列に接続され、各サブセル(5)間の接続点が一つおきにキャパシタ(3)で結ばれてなる2端子整流回路(2)を備え、
該2端子整流回路の端子Aを交流電源の第1極に接続し、該整流回路中端子A側から数えて最大奇数番目に当たるサブセルの出力端子を直流阻止用キャパシタ(4)を介して交流電源の第2極に接続するとき、端子Cと交流電源各極との間に所定の直流電圧を生じる直流電源装置であって、
前記サブセルが、その始点・終点間にm個(mは3以上の奇数)の単体整流器(1)が極性方向に直列に接続され、各整流器間の接続点が一つおきにキャパシタで結ばれてなる2端子回路(2)である、前記直流電源装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子AとCの間に、整流機能を有するn個(nは任意の整数)の2端子回路(単体整流器を除く。以下「サブセル」という。)が整流方向に直列に接続され、かつ各サブセル間の接続点が一つおきにキャパシタで結ばれてなる2端子整流回路を備え、
該整流回路の端子Aを交流電源の第1極に接続し、該整流回路中端子A側から数えて最大奇数番目に当たるサブセルの出力端子を直流阻止用キャパシタを介して交流電源の第2極(端子B)に接続するとき、端子Cと交流電源各極との間に所定の直流電圧を生じる直流電源装置であって、
前記サブセルの任意の1個が、当該サブセルの始点・終点間にm個(mは3以上の奇数)の単体整流器が極性方向に直列に接続され、かつ各整流器間の接続点が一つおきにキャパシタで結ばれてなる2端子回路である、前記直流電源装置。
【請求項2】
前記n個のサブセルとして、mの値が同一又は異なる前記2端子回路を、任意の順序で配列し混用する、請求項1記載の直流電源装置。
【請求項3】
前記整流回路中で、前記最大奇数より小さい奇数番目のサブセルの出力端子を、直流阻止用キャパシタを介して交流電源の第2極に接続する、請求項1記載の直流電源装置。
【請求項4】
前記直流阻止用キャパシタを、直列に接続された複数のより低耐電圧のキャパシタにより置き換える、請求項1乃至3のいずれかに記載の直流電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、商用交流電圧を入力として、健康器具のための直流高電圧を得ることができる電源装置に関するものである。
【背景技術】
発明者は、高電圧が作り出す静電界が人の健康に及ぼす各種の積極的効果に着目し、その応用について検討している(特願2003−154675)。その前提となるものは、数kVまでの直流高電圧を安全・簡便に発生することができる電源装置である。
その電源装置は利用者の身近かに置かれるから、軽量・コンパクトであると同時に、耳につく唸り等を発しないことが望まれる。したがってトランスレスで、整流器、キャパシタ、抵抗器などの受動的部品のみからなることが望ましい。なお、この電源装置の役割は専ら静電界形成用の高電圧を得ることであるから、電流負荷は実質的にゼロとして良い。
そのような電源回路として、従来からコッククロフトの回路(Cockcroft-Waltonの回路;CW回路と略記)が知られている。この回路はテレビ回路、静電塗装、電気集塵、電子顕微鏡等に用いられてきた。図1に示すものは、4個又は6個の整流器を含むCW回路の例である。
CW回路の出力電圧は、教科書的には、入力交流波高値の整流器段数倍とされる。例えば商用交流電源の波高値は100×√2≒140ボルト(以下v0と略記)であるから、整流器段数が3段の回路に期待される直流電圧は3×v0≒420ボルトの筈である。
ところが発明者の経験によれば、整流器1段当たりの電圧倍率は通常1未満であり、さらに段数が増えるに従ってその値が低下する。例えば整流器段数が3段の場合に300ボルトが得られたとしても、5段ではせいぜい450ボルト程度、7〜8段でも600ボルト程度しか得られない。しかも、この付近では段数を増やしてもほとんど電圧が増加しないから、CW回路で1〜2kVの電圧を発生させることは至難である。CW回路が発明されてから80有余年を経た今日でもその限界を大きく破る方策は見出されていない。
発明者は、上記の現象について直感的に次のように理解している。CW回路は図1に示すように、整流器とキャパシタからなる梯子状の回路であるが、交流電圧は梯子の基部に供給され、途中の各段で整流と昇圧を行いつつ、梯子の先端から直流高電圧を取出している。すなわち、この回路では交流入力点と直流出力点が離れている。高い電圧を得るには梯子段を追加しなければならないが、それと共に入力点と出力点の距離がますます離れ、その間の内部損失が増大し、しかも損失増分は追加部分に集中する。CW回路における上記の現象はこの内部損失の増大が原因ではなかろうか。
【特許文献1】
特公昭36−21618号公報
【非特許文献1】
静電気学会誌、6、4(1982) 210-216、太田 進「コッククロフト回路の諸特性」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、商用交流電圧を入力として数kVまでの所望の直流電圧を得ることができる直流電源装置であって、CW回路に見られる上記の問題点を持たないものを実現することである。
【課題を解決するための手段】
CW回路の上記問題点が交流供給点と直流出力点が離れていることに起因するのであれば、上記課題の後半部分は両者を場所的に重ね合わせることで解決されるであろう。すなわち、回路の両端に交流電圧を供給し、同時に同じ端子から目的とする直流電圧を取り出せば良い。したがってその回路は整流機能を備えた2端子回路(以下「2端子整流回路」又は単に「整流回路」という。)にほかならず、その両端子間へ直流阻止用用キャパシタを介して交流電圧を供給することになる。図2(A)はこの考え方を表した概念図である。
図2(B)は上記の考え方に基づいてCW回路を再構成した図である。この回路と従来のCW回路(図1)とを比較すると、回路への交流供給点(交流電源B極への接続点)が異なっている。つまり図2(B)では、交流供給点が梯子状回路の先端(端子C側)へ移されている。この回路は図2(A)にいう2端子整流回路の一例に当たる。
さらに、図2(B)の2端子整流回路中の整流器(ダイオード)をそれぞれ2端子整流回路で置き換えたもの(整流器を置き換える2端子整流回路を特に「サブセル」と呼ぶ。)も、図2(A)にいう2端子整流回路に当たる。
すなわち、端子AとCの間に、n個(nは任意の整数。奇・偶いずれも可。)のサブセルが整流方向に直列に接続され、各サブセル間の接続点が一つおきに電圧保持キャパシタで結ばれてなる2端子整流回路を備え、該整流回路の端子Aを交流電源の第1極(A極)に接続し、該整流回路中端子A側から数えて最大奇数番目に当たるサブセルの出力端子を直流阻止用キャパシタを介して交流電源の第2極(B極)に接続するとき、端子Cと交流電源各極との間に所定の直流電圧を生じる直流電源装置であって、前記サブセルの任意の1個が、当該サブセルの始点・終点間にm個(mは3以上の奇数)の単体整流器が極性方向に直列に接続され、かつ各整流器間の接続点が一つおきにキャパシタで結ばれてなる2端子回路である、前記直流電源装置(請求項1)である。
図3(A)、(B)に示す回路は、始点と終点の間に3個又は5個の単体整流器を極性方向に直列に接続し、その接続点を一つおきにキャパシタで結んで形成される2端子回路である。いずれも上記サブセルの候補になる。なお、これらの2端子回路がサブセルとして有効に動作するには、mは奇数でなければならない。
前記2端子整流回路の、交流電源の第2極(B極)への接続を上述のようにする理由を以下に説明する。
各サブセルが整流作用を営むには、端子A側から数えて奇数番目の各サブセルの入力端に交流電源のA極由来の、その出力端にB極由来の電圧相が供給され、他方、偶数番目の各サブセルの入力端に交流電源のB極由来の、その出力端にA極由来の電圧相が供給される必要がある。このような接続関係を実現するには、各サブセル間の接続点を一つおきにキャパシタで結び、奇数番目の各サブセルの入力端同士を結ぶキャパシタ列を交流電源のA極に、偶数番目の各サブセルの入力端同士を結ぶキャパシタ列を、直流阻止キャパシタを介して交流電源のB極に接続すれば良い。ここの最後に挙げた接続は、当該整流回路に含まれる最大奇数(サブセルの総個数が奇数の場合はその数、偶数の場合はその偶数から1を引いた数)番目のサブセルの出力端を交流電源のB極に接続することで実現される。
【発明の効果】
上記の2端子整流回路を備える本発明の電源装置は、交流供給点と直流出力点を場所的に重ね合わせ、かつ単体整流器に替えてサブセルを採用したので、サブセルの個数nを増加させた効果が飽和することなく、ほぼ正確に出力電圧に反映される。さらに、各サブセルは入力交流波高値v0をほぼm倍する機能を有するから、nの効果とmの効果が相乗的に現れ、v0×Σmi (i=1〜n)の公称(電流負荷がゼロに近い場合。以下同じ)直流電圧を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
(第1実施形態)
本発明の第1の実施形態はサブセルの選択・組合わせに関する。
すなわち、本発明に係る2端子整流回路中の端子AとCの間に接続されるサブセルとして、mの値が同一又は異なる複数の2端子回路を任意に選択し、任意の順序で配列し混用するというものである(請求項2)。
図4は、端子A、C間に1〜4個のそれぞれ同一又は異なるサブセルA、B、‥、R、S等が配列されている様子を示している。図中の交流供給点の矢印は、直流阻止用キャパシを介した交流電源B極への接続点(端子Aとは逆相の交流供給点)を示す。図5は、上記サブセルの候補となるべき2端子回路3例を挙げる。図5(A)は420ボルトの公称直流電圧を与える3倍電圧型、同(B)は同700ボルトの5倍電圧型、同(C)は同980ボルトの7倍電圧型のサブセルである。
(第2実施形態)
本発明の第2の実施形態は、直流阻止用キャパシタの耐電圧低減のための第1方策に関する。
本発明の課題解決原理が、交流供給点と直流出力点を場所的に重ね合わせることであることから、整流回路の端子Aを交流電源の第1極に接続し、同第2極に対しては、端子A側から数えて最大奇数番目に当たるサブセルの出力端子を、直流阻止用キャパシタを介して接続することが原則である。しかしこの原則通りに接続を行うと、複数の電圧保持キャパシタに蓄積された電圧が全て加算された直流高電圧が直流阻止用キャパシタにフルに掛かるので、このキャパシタは高い耐電圧を要求される。
そこで、整流回路に対して直流阻止用キャパシタを接続する箇所を、所要の条件を満たしつつ、より電圧の低い場所に移すことを考える。その条件とは、その箇所に交流電源第1極由来の電圧相が供給されていないことである。そのような箇所は、端子A側から数えて奇数番目に当たるサブセルの出力端子が該当する。つまり、請求項1にいう最大奇数でなくとも、奇数番目であれば良いことになる(請求項3)。
このような、課題解決原理に逆行する構成は、再びCW回路の弱点に近づくことを意味するにも拘わらず、実際には本整流回路の各部電圧が定常状態に達する時間が交流の数サイクル分遅くなる、という以上の深刻な不具合を生じない。回路が一旦定常状態に達した後は支障なく動作する。これはサブセル採用の利点と思われる。そして耐電圧が低いキャパシタを利用できるという効用が得られる。
(第3実施形態)
本発明の第3の実施形態は、直流阻止用キャパシタの耐電圧低減のための第2方策に関する。
直流阻止用キャパシタには、第2実施形態で述べたように、高耐電圧を要求される。しかし、直流阻止用キャパシタを、複数のキャパシタを直列に接続したもので置き換えれば各キャパシタに掛かる電圧が分散されるので、耐電圧の低いキャパシタを利用することができる(請求項4)。
この場合、直列キャパシタの中間接続点の電位を安定させるために、各中間接続点を整流回路中の適宜な箇所に接続することが望ましい。そして、この直列キャパシタを介して供給される電圧が交流電源の第2極に由来することを考慮すれば、その接続箇所は、整流回路中で端子A側から数えて奇数番目に当たるサブセルの出力端子を候補として、実験により定めることが望ましい。なお、上記各中間接続点とそれらが接続されるサブセルの出力端子との間には、整流回路に擾乱を与えないため、高抵抗を介することが望ましい(図6参照)。また、本方策と上記第1方策とを併用することもできる。
図7は、本発明に係る直流電源装置の実施例4例を示す。
図7(A)〜(D)は、3倍電圧型サブセルを5〜8個備え、それぞれ2100,2520、2940及び3360ボルトの公称出力電圧を発生する直流電源装置の例である。このうち図7(A)〜(C)に示すものは、整流回路中の端子A側から数えて3つ目のサブセルの出力端子を交流電源第2極に接続しており、請求項3の発明に関する実施例である。
これに対して図7(D)の実施例では直流阻止用キャパシタとして直列接続した2個のキャパシタを用いており、交流電源第2極に近い側のキャパシタを端子A側から数えて3つ目のサブセルの出力端子に、遠い側のキャパシタを7つ目のサブセルの出力端子に接続する、請求項4の発明に関する実施例である。
図8は、本発明に係る直流電源装置の別の実施例2例を示す。
図8(A)は、5倍電圧サブセル2個と3倍電圧サブセル1個を組合せて、合計で1820ボルトの公称出力電圧を発生する直流電源装置の例である。サブセルの個数は3個で奇数であるから、端子Cを直流阻止用キャパシタを介して交流電源第2極に接続することもできるが、このケースでは、請求項3の発明を適用して、端子A側から数えて1つ目のサブセルの出力端子を第2極に接続し、直流阻止用キャパシタの低耐電圧化を図っている。
図8(B)は、5倍電圧サブセル1個と3倍電圧サブセル1個を組合せて、合計で1120ボルトの公称出力電圧を発生する直流電源装置の例である。サブセルの個数は2個で偶数であるから、端子Cを交流電源第2極に接続することができず、請求項1の発明に従って、1個分端子A寄りのサブセルの出力端子に接続している。
【図面の簡単な説明】
【図1】CW回路の例示である。
【図2】本発明における課題解決手段を示す概念図である。
【図3】本発明における2端子回路3例を示す。
【図4】本発明の第1実施形態に関する説明図である。
【図5】各種サブセルの候補となる2端子回路の例を示す。
【図6】本発明の第2実施形態に関する説明図である。
【図7】本発明の各種実施例を示す回路図である。
【図8】本発明の別の実施例を示す回路図である。
【符号の説明】
1 整流器
2 2端子整流回路
3 直流阻止用キャパシタ
4 電圧保持キャパシタ
5 サブセル
6 高抵抗
【図1】
直流電源装置 図1
【図2】
直流電源装置 図2
【図3】
直流電源装置 図3
【図4】
直流電源装置 図4
【図5】
直流電源装置 図5
【図6】
直流電源装置 図6
【図7】
直流電源装置 図7
【図8】
直流電源装置 図8
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